『第三全地公会規則』
第一條 教会の事故に由り若くは身體の故に由り聖公会に臨席せずして己の任所或は市府に止りたる者にも此の公会に於て制定せし所のことを知らしめざる可らざるに因り爾等聖にして愛す可き者に報ず。若し或州の府主教にして聖全地公会に背反して背教徒の党に加はりし時若くは此後加はる時又はケレスティイの説を受けし時若くは此後受くる時は自今既に公会にて悉く教会の親與を絶たれ既に本務に非ざる者として其の州の主教等に対し決して何事も為す能はず。且つ全く之を主教の位より除黜するが為め其の州中の正教を奉ずる諸主教及び近隣の府主教等に審鞠せらる可し。
第二條 若し教区(エパルヒヤ)を有するの主教聖公会に臨席せずして背教に加はりたる時若くは加はらんと欲する時又はネストリイの逐斥に署名しつつ背教徒の党に転ぜし時は聖公会の命に由りて全く神品より除かれ其の位を除黜せらる可き者とす。
第三條 各市府或は邑村に於て教衆に属する者にして正教を奉ずるが為にネストリイ及其の徒党に神品職を奪はれたる者には我等其の位に復するの権利を與へり。凡て正教全地公会と同説なる教衆の者は決して正教に背きし者或は背くの主教に従属す可らざるを命ず。
第四條 若し教衆たる者背反して私かに若くは公然とネストリイ或はケレスティイの説を奉ぜんと欲する者あれば聖公会は彼等をも同じく聖位より除黜するを至當と認めたり。
第五條 若し不合法なる行為の為に聖公会若くは本主教に定罪せられし者有る時ネストリイ及び其の党人は定規に反し其の専横の所為ょ以て彼等に教会の親與若くは神品の位を復せしことあり或は復せんとすることあれば我等其の事の無効たるべきを至當と認めたり彼等は依然聖位を除黜せられたる者たる可し。
第六條 又同じくエフェスの聖公会に於て制定せられしものを変更せんと欲する者あれば聖公会若し主教或は教衆に属する者なれば全く其の位を除黜せられ俗人なれば教会の親與を絶たる可き者と議約定せり。
第七條 此を誦読せし後聖公会議定せしこと左の如しニケヤ府に聖神と共に集会せし諸聖父確定せし者の外何人にも他の教理を口述し或は書し或は編成するを許す可からず。若し敢て他の教理を編成して或は異教或はイウデヤ教或は凡そ其他の異端より反正して眞理を識らんと欲する者に示し或は勧むる者は若し主教或は教衆に属する者なれば主教は主教の職、教衆は教衆の職を免ぜらる可し俗人なれば「アナフェマ」に處せらる可し。又同く主教或は教衆或は俗人にして若し司祭ハリシイの提出したる神の獨生子の藉身に関する説若くは之に附加せしネストリイの不浄にして壊傷せる定理を主張し若くは之を教ふること露顕する時は此の聖全地公会の決議に服す可し即ち主教は主教の職を免ぜられて除黜せられ教衆は同く教衆より除黜せらる可し俗人は前述の如くアナフェマに處せらる可し。
公会に於てこの規則を定むる前にニケヤの信経及びフィラデルフィヤの司祭ハリシイの公会に提出したる変壊せる信経を誦読せり。
第八條 最も神に愛せらるる我等の同主教リギン及び之と共に居るキブル州の最も敬粛なる主教ジノン及びエワグリイは教会の定規及び聖使徒の規則に反して衆人の自由を妨害せんとする新事の起こりたるを報ぜり。世に流行するの病は大害を醸すを以て厳重なるの治方を要し且つ殊に最も敬粛なる人々聖公会に来り書を以て言を以て我等に報ぜし如くアンテオヒヤ府の主教はキプルに於て叙聖を行ふの舊慣なきに由りキプルの聖教会を治管する者は彼等の干渉圧虐を受けず。諸聖父の規則と舊慣に循ひて自ら最も敬粛なる主教を立るの自由を有す可し。其の他の諸州及び各教区(エパルヒヤ)に於ても皆同く之を遵守す可し即ち最も神に愛せらるる主教は曾て最初より己れ若くは其前任者に属せざる他の教区(エパルヒヤ)に其の権を及ぼす可らず若し或は権を及ぼし脅迫的に他の教区(エパルヒヤ)を従属せし者あれば宜しく之を還附し諸父の規則を破る可らず聖務執行の口実の下に世の権威の傲慢を隠蔽す可らず且つ吾主イイススハリストス萬人の救者が己の血を以て我等に與へたる自由を少許づつ不識不知の間に失ふ可らず。依りて聖全地公会定むること左の如し凡ての教区は古より慣例に由りて碓定したて最初より之に属せし権利は圧虐を受けずして完全に之を保守す可し。府主教は各々己の証と為すが為め自由にして此定規の写を取るを得可し。若し今議定せし所に反するの定規を示す者あれば聖全地公会之を無効の者と為す可き事と定む。
聖書に萬事相議して行ふ可し(箴言三十一章四節)と云ふに由り就中聖務の籤を受たる者は凡そ其の行ふ可き事に細心注意を加へざる可らず。蓋し斯の如く己の生命を送らんと欲する者は安然なる地位に居り恰も順風によるが行く己の望みの向ふ所に徒て行かんとす。此の言最も眞なるに似たり。或は時として辛艱忍ぶ可らざるの憂悲人智を圧迫し太だ之を錯乱して其の當さに行ふべき事に向ふの念を飜し眞実宜しからざる者を以て有益の者の如く思はしむることあり。我等最も篤実にして且最も敬虔なる主教エウスタフィイに此に類するが如きこと有るを認めたり彼れが教会の規則に循ひて按手せられたることは巳に証明せられたる如し。言ふが如くんば彼れ或者に心を乱され不図の事件に遇ひ而して甚だ働なきの故に由り其煩労と戦ふに由りて疲困し其の反対者の謗言を反駁する能はずして何故にや其の教区(エパルヒヤ)よりの辞表を提出したりと。蓋し彼は一旦聖治の任務を受けたれば心霊の剛毅を以て之を保守し恰も労苦に向ひて戒厳するが如くし欣然として報賞を約するの汗を忍受せざる可らず。然るに彼は緩慢怠惰に由ると云はんより寧ろ働なきに由るとは雖ども一旦自ら不親切の者たるを示せしに由り敬虔なる卿等は教会を治理するが為め巳むを得ざるによりて最も敬粛且最も敬虔なる我等の兄弟、同主教フェヲドルを按手せり蓋し教会は孤立す可らず救世主の群に司長の欠く可らざるを以てなり。然るに彼れ流涕涕して来り前記の最も敬虔なる主教フェヲドルと都会若くは教会を相争ふに非ずして唯主教の尊敬と其の名称を保たんことを請へり故に我等此の老人の為に痛嘆し彼の流涕に同情を表し速に彼れは合法的に除黜せられたるや若くは彼の名譽を傷つけんとする者ありて単に些少の錯行の為に罪せられたるや否やを探究せり。而して我等は彼に毫も此の如きの所為なく其教区(エパルヒヤ)を辞したるを以て特に其罪とせられたるを知れり。故に我等亦敬虔なる卿等が彼の代りに當然にして前記の最も敬虔なる主教フェオドルを立てたるを非とせず。然れども亦甚だ此人の働なきを誹謗す可らず殊に己の故郷を去り斯く久しく父家を離れ居たるの老人を憐愍せざる可らざるに因り我等至當に裁決議定せしこと左の如し彼は無論主教の名称、尊敬及び親與を有す可し唯按手を行はず教会を管有せず擅に聖務を行はざる可し然れども或は兄弟及同主教たる者に招かるるか又は其好意とハリストスを愛するとに由りて之に許すこと有る時は此の限りに非ず。若し卿等彼れの事につき如今若くは今後更に寛大なるの議を立るあらば則ち亦聖公会の嘉みする所たる可し。