教区学びの会 
      熊本・人吉において開催

松島神父講話「バベルの塔から主の晩餐へ」
   
〜祈りとしての聖歌を学ぶ〜

熊本正教会(一月九日)
 熊本での学びの会は、マリヤ松島純子先生をお招きして行われました。 八日(土)熊本小聖堂で、夕方五時半から徹夜祷が行われました。参祷者は十人でした。祈祷の前後には、さっそく松島先生から、聖歌を歌う際の心得、ご指導がありました。
 翌九日(日)主の降誕祭聖体礼儀。参祷者十五人。朝九時の痛悔機密のあと、十分ほどの聖歌練習。これだけでも、いままでとは異なる聖歌が響きました。熊本の小聖堂は十畳ほどなので、聖変化時の祈り、司祭が手で尊貴なる聖体(聖パン・仔羊)、聖血(赤ぶどう酒)を指し示しての「取りて食らえこれ我が体(血)」の祈りも、すぐ目の前で行われます。まさに主イイススの最後の晩餐、初代のキリスト教会の原体験が出現します。これは素晴らしい体験です。
 昼食(降誕祭のお祝い)をはさみ、午後からは聖歌の説明と実技指導。残念ながら半数の人が諸事情により帰ってしまいましたが、祈りの心に満たされた、充実の二日間でした。


人吉正教会(一月十日)

 九日(日)人吉生神女マリヤ庇護聖堂で、晩祷が行われたあと、半田正教会での奉神礼を終え、急ぎ駆けつけられたケオルギー松島雄一神父様が到着。
 十日(月・祝日)聖体礼儀はふたりの司祭が立って執行。いま人吉には休職された長司祭ペトル及川淳師がおられるので、神品領聖時には、三人の司祭が宝座をかこみました。これも実にうれしい体験でした。参祷者は二五人。
 領聖詞は、聖体礼儀の前に練習した聖詠(旧約聖書の詩編)の朗唱と聖歌の合唱。参祷者一同、新たな経験の連続でした。
 昼食・自己紹介をはさんで、まず松島神父による講話。質疑応答。つづいて松島純子先生による聖歌指導が行われました。
 夜には民宿しらさぎ荘で交歓会。九州ではなかなか本州の教会の司祭・信徒と交流する機会に恵まれないので、とてもよい意見交換の場となりました。

松島神父の講話「バベルの塔から主の晩餐へ」
 松島神父様には、せっかくの機会なので祈祷中の説教もお願いしました。
 午後の講話は創世記十一章の説明から始まりました。神の怒りにふれて言葉が通じなくなった人間は、主イイススの十字架・死・復活により、永遠の生命を獲得するチャンスを得ました。特に重要なことは聖体礼儀において人間が一体となる機会を得たことです。
 人間がひとつに回復する聖なる集いを生かさないのは、ほんとうに惜しいことです。主の聖体・聖血を分かち合うことで、人々は結び合い、ひとつになります。バベルの塔において、バラバラになった人間が、ようやく一体化し、お互いを理解し合えるようになったのです。
 聖体礼儀の聖歌は、単なる歌ではなく、人間性の復活、人間の一体化、生命の素晴らしさを歌い上げる讃美の歌であり、復活の喜びの歌です。
 また領聖(聖体拝領)は、人間の一致、神の国への凱旋、愛の回復につながる大いなる奇蹟を生みだします。いろいろな理由をつけて、この領聖を行わないことは、せっかくもたらされた救いの道を自ら閉ざすことになります。素晴らしい救いの祝宴、聖体礼儀に参祷し、領聖しましょう。
 松島神父のお話の概要は、以上のようなものでした。
 
松島純子先生の聖歌指導「祈りとしての聖歌」
 今回は特に主日聖体礼儀の聖歌を中心にご指導をお願いしました。
 日曜日は、主の日、復活日、復活祭です。基本的に、まず復活の喜びを胸に秘め、心軽やかに、元気に明るく(そして楽しく)聖歌を歌いましょう。難解な聖歌に挑戦し、苦しみながら眉間にシワをよせ、歌う必要はありません。できる形に応用して聖歌を歌う柔軟さも大切です。
 聖堂や祈りの場で歌われる聖歌は、芸術性ばかりを追求するのではなく、あくまでも祈りの心を深めるように専念しましょう。
 このほかには、腹式呼吸、息の継ぎ方、聖歌の指揮の方法など、多岐にわたるご指導を受けました。
 
まとめとして
 教区「学びの会」は、司祭や講師の先生が、司祭常住の教会や地方の小教会を巡り、お話をし、意見を交換し、教区全体を盛りあげ活性化させようという趣旨で、数年前から始まりました。
 たとえ参加者が少人数でも、互いに学び合い、高め合い、肩を組んで成長をうながし合うことが大切ではないでしょうか。こうした地道で謙虚な姿勢こそが、新たな信徒の獲得、信仰の発見、教会の成長につながっていくことでしょう。
 十日夜の交歓会では、「松島神父様のお話と純子先生のご指導は、自分にとって第二の洗礼のような経験となった。新たな心で信仰生活を始めたい」と語った信徒もおられました。この一事をもってしても、学びの会は良い体験でした。
 今回は遠く、大阪の武石姉、佐賀の徳永姉、鹿児島の信徒はじめ、多くの皆様の参加によって、豊かな祈り、充実した会が営まれました。司祭であるわたしにとっても、学ぶことの多い、心に刻まれる三日間でした。
 皆様、ありがとうございました。 みんなで、この一歩を、次なる一歩につなげていきたいと思います。
                      (人吉 パウエル 及川神父)