2011年 西日本主教教区 秋季セミナー 開催
「亜使徒たちの伝道」

講師に横浜国大名誉教授長縄光男先生、パウェル及川信神父


例年、2月11日を定例として開催してきた「冬季セミナー」は亜使徒聖ニコライ永眠100年記念祭とのかねあいから、今年度は秋にシフトし「秋季セミナー」として大阪教会で開催されました。参加者は関西を中心に教役者も含めて64名。一般からもインターネットなどによるPRを受けて4名の方が参加されました。

セミナーのグランドテーマは「亜使徒たちの伝道」。まさに身を挺して極東へ正教を伝えた近代ロシアの3人の亜使徒(使徒と等しい伝道の生涯を送った聖人への尊称)たちの活動にスポットを当てました。

午前の部は、京都教会管轄(九州地区兼務)のパウェル及川信神父による「二人の聖インノケンティ」と題した講演。聖ニコライが極東開拓伝道の先輩として仰ぎ敬愛した、イルクーツクの聖インノケンティ(1680-1731)、アラスカの聖インノケンティ(1797-1879)の活動と生涯が紹介されました。

昼食を挟んで午後の部は、横浜国立大学名誉教授で近代ロシアの思想家ゲルツェン研究の傍ら、日本正教会史研究に携わり「ニコライ堂の人々」「ニコライ堂遺聞」などの著書もある長縄光男先生による「宣教師ニコライの西国巡礼」と題した講演。1882年と1891年の二度にわたる九州から東海への聖ニコライの宣教の旅が、詳細にたどられ、「日記」に残る聖ニコライの思いが紹介されました。ほぼ10年を隔てて行われた「西国巡回」、第1回では教勢発展の希望に満ちた思いがあふれているのに対し、第2回では思うように進まない教勢や各教会の現実への失望と悲しみがうかがわれるとし、前者には文明開化・国際主義が基調であった時代背景、後者には帝国憲法の発布によって天皇を中心にした国作りに国論がいわば「内向き」になり、キリスト教の普遍主義が受け入れがたくなっていったという時代背景があったのではないかというお話でした。それでも一部を除いて、各教会ともその十年間に教勢は、現在の日本正教会の現状から見れば、「破竹の勢い」ともいえる発展をしており、聖ニコライの思い描いていた目標がどれほど高いものであったかが、うかがわれました。

教区ではもっと多くのかたがたにもその内容をお伝えできるようお二人の講演記録を制作する予定です。