主教区冬季セミナー2006
   「リトゥルギア」への参加をめざして、講話と実習

毎年恒例となりました二月十一日の冬季セミナーが、今年も大阪教会を会場に開催されました。西日本の各教会から総勢七十二名の参加者があり、日曜日も併せて二日間に渡り学びを深めました。

 先ず一日目の午前は、イオアン小野神父様より「神は我等と共にす」と題した講演があり、午後は名古屋教会のマリヤ松島純子マトシカによる「みんなで歌おう、聖体礼儀」をテーマにした講義と実技が行われました。午後の部を一旦終了して休憩をはさんだ後、引き続き行われた前晩祷では、その日に学んだことを実際に取り入れた祈祷が行われました。そしてこれは二日目の聖体礼儀にも引き継がれ、参祷した全員が祈祷に参加し、まさに「リトルギア」を体験したのでした。

 一日目午前の講演では「神が私達と共に居ます」ことが奉神礼の意味であるとお話しいただきました。奉神礼とは祈祷に参祷した全員で作り上げていく共同作業(リトルギア)であり、それらの働きをつなぐ力は聖神によるものであること、ハリストスご自身が私達の集まりの中に『世の終末まで在る』と宣言されていることなどを、祈祷文や聖書の箇所から取り上げてご説明くださいました。日頃馴染んでいる祈祷文の中に、神の臨在や聖神との交わりが強く表現されています。私達自身が『活ける神の殿』と言われていることを自覚し、奉神礼(共同作業)に参加していかなければならないことを教えていただきました。

 午後の部では、聖体礼儀で歌われる連祷・アンティフォン・領聖詞について意味や歴史を学びながら、参加者全員が(司祭・輔祭・誦経者も各自の役割を担当して)実習する形で進められました。歌うための資料として配られた主日聖体礼儀の冊子には楽譜がなく、祈祷文(歌詞)に簡単な印がついただけのものを頼りに歌うことになりました。

 まず始めの課題は『聴いて歌おう』です。連祷には受け答えの決まり文句があるので、祈願の言葉(司祭または輔祭の言葉)を受けて何と答えるかは覚えておかなければなりません。楽譜ばかりを頼りにしていてはズレが生じた時に対応できなくなります。そのために輔祭がランダムに連祷を唱え、それを聴いて答える練習をしました。

 次の課題は『みんなで行こう』です。昔、アンティフォンは教会へ市民を誘導するための行進曲の役割を持っていました。ソロの聖歌者の歌う聖詠の句に続いて、簡単なメロディーの繰り返しを全員で歌い、聖堂前につくと前庭でトロパリを繰り返し、全員が一斉に聖堂の中に入ってゆきました(元々はこれを『聖入』と言った)。会場では参加者が右列左列に分けられ、文字通り交互にアンティフォンで歌われました。

 最後の課題は『みんなでいただこう』です。10世紀頃のビザンチンではソロの聖歌者が聖詠の句を歌い、領聖詞を繰り返し全員で歌う手法が行われていました。繰り返し部分は、日本語にあわせたメロディーが既に作られています。ソロを松島マトシカが歌い、参加者は軽やかなテンポで領聖詞を練習しました。

 楽譜のない資料を使っての練習でしたが、聞き覚えのあるメロディーを繰り返したり、ソロの歌を聴いて真似をしたりすることで聖歌が歌えることを体験した実習でした。

 ここで学んだことを踏まえ、土曜日の前晩祷と日曜日の聖体礼儀には、参祷者全員が役割を持って祈祷に参加することになりました。この日、聖堂の入り口で観客のように立っているだけの参祷者はいませんでした。聖堂にいる信徒全員を左右に分け、アンティフォンを交互に歌います。後半部分は聖歌隊が担当しましたが、信経と天主経はみんなが歌えるように単音にしました。領聖詞は前日の練習通りソロの後に続いて全員が繰り返し部分を歌いました。始め口をモゴモゴしていた方達が何回も繰り返されるその親しみやすく簡単で美しいメロディーを口ずさみ、次第に聖堂全体がそのメロディーで一杯になりました。日曜学校の子どもたちも大きな声で歌に参加し、いつもとは違う雰囲気を楽しんでいました。

 午後にはフリーディスカッションが行われ、多くの意見や質問が出ました。「今回の企画は今までの聖歌隊の役割を再考することになったが、決して否定しあうのではなく、正教会らしい多様性の一致を知って欲しい。」「楽譜にとらわれて歌っていた時は気づかなかった歌詞が、音符を追わないで歌ったことで意味深い祈祷文であることに気づいた。」「神品も共同作業としての奉神礼にのっとってきちんとした音を取れるよう努力したい」など、時に笑いありのディスカッションで、二日間のセミナーを終了しました。