教区「定例学びの会」京都で開催
西日本主教教区「定例学びの会」が、司祭パワェル及川信師(九州・人吉)を講師に迎え、去る3月31日(木)京都正教会を会場として開催されました。講演主題は、「互いに祈り、愛し合いなさい――サーロフの聖セラフィムに学ぶ」。大阪・神戸からも参加者を迎え、二十六名が学びの時を持ちました。
当日は、修道院の祈りの生活の例として、ドイツのテレビ局が制作したギリシャ・聖山アトスの修道院を紹介する30分番組を見てから及川師の講演を伺いました。
午前の部では、2003年8月に開催されたロシア正教会「サーロフの聖セラフィム列聖百周年記念祭」の様子について、及川師は実際に式典に参加した視点から感想を交えながら紹介されました。
核兵器研究施設の町として一般人の入域が制限されていたという聖セラフィム縁の町サーロフ近郊にあって、プーチン大統領が列席する国家的祭典として聖人の記念式典が挙行されたことに触れ、「悲惨な戦争で使用され、沢山の人を殺戮する大量殺戮兵器に関係する町に、生命を守り育て、愛と慈しみをもたらす聖人を記念する聖堂が建設された。……聖セラフィムは、人々に神の存在を知らせ、生と死の意味を示唆し、生きることの素晴らしさ、生命の尊厳を身をもって伝えている。サーロフは、ある意味では、死の町から生命の町へと復活した。そしてひとりの聖人がもたらした波紋は、このちいさな町から全世界へと波及しつづけている」と強調されました。
午後の部では、聖セラフィムの祈祷文・トロパリや、聖セラフィムの教訓を紹介し、及川師は次のようにまとめられました。
聖セラフィムのトロパリ(第4調)『克肖者よ、爾は若き時よりハリストスを愛して、彼独りに、熱心に務めんことを望めり。 歌頌において、天のセラフィムにしたがい、走りつく者を愛する愛において、ハリストスにならう者よ、爾は寂寞の地におりて、息(や)めざる祈祷と苦労とをもって、勲功(いさおし)を立て、傷感の心をもってハリストスの愛を得たり。故に選ばれて、神の愛に、母に愛せらるる者と現れたり。ここをもって我等爾に呼ぶ。我が喜悦(よろこび)、神の前に熱心なる転達者(てんたつしゃ)、福たるセラフィムよ、爾の祈祷をもって、我等を救い給へ。』
「聖セラフィムのトロパリには、『愛』という言葉が散りばめられており、聖セラフィムが求め、伝えようとしたものがまさに『愛』であったことを明確に示している。聖セラフィムは、隠遁者として何十年も孤独な祈りの生活を送った後に『庵を開いて』巡礼者を迎え入れた。『我が喜びは、ハリストスの復活』と言ってにこやかに巡礼者を迎え入れ、現実の社会で困難に直面する人達を温かく励まし、『手を取り、立ち上がらせた』。祈りと愛は、教会の柱。全ての信徒が祈りの心に満たされ、隣人に喜びを伝えることこそ、福音伝道の根幹であることを、聖セラフィムは私達に示している。」
和やかな雰囲気で行われた質疑応答は多岐にわたり、充実した学びの時を持ちました。