『誰でも知っておきたい正教会の諸習慣と常識』



   ≪ 正教徒の義務 ≫

   <正教会の規定>
   聖なる教会では新しく正教徒になられた方,又古くか
ら正教徒である方に神が霊能(ちから)を賜い,この厳しい
世の生活の中で全ての凶悪から正教徒を守るために,又益々
優ぐれた栄えある生活,平和な生活に導くために次のような
正教会の規定を守られて,教会の変の家庭の一員となられる
事を勧め実行される事をすすめています。これは正教徒とし
ての最低線である事も御承知下さい。
  1.凡そ主日(日曜)及び諸祭日はよろしく聖堂(或い
   は教会)に参りて聖書を開き,祈祷すべし。
  2. 正教会に定められたる斎期(ものいみ)を守るべし
  3. 痛悔(告白又はざんげ)は年に四回するを例とす。
   至って少なきも毎年一次なすべし。
4. 聖体を受ける事も亦同じく毎年至って少なきも一次
   なすべし。

   <正教会の諸祭日>
     祭日一覧表
   定祭日(祭日の一定しているもの) 諸習慣メモ
 降誕祭(クリスマス)  一月七日
 割礼祭         一月十四日 ヨルカ
 洗礼祭(神現祭)    一月十九日 水の十字架,聖水
 迎接条         二月十五日
 生神女福音祭      四月七日
 聖ニコライ記憶祭    五月二十二日
 聖使徒べトル・パウェル祭七月十二日 果物を献じる
 顕栄祭(変容祭)    八月十九日
 生神女就寝祭      八月二十八日
 前駆授洗イオアン致命祭 九月十一日
 生神女誕生祭      九月二十一日
 挙栄聖架祭       九月二十七日
 生神女守護条      十月十四日
 生神女進堂祭      十二月四日
 
   不定祭日(祭日の一定していないもの)
 復活祭 昇天祭 五旬祭

   <斎について>
  正教会の斎
  1)降誕斎         11月28日から1月7日迄
  2)大斎と受難週間    40日間
  5)聖べトル・パウェル斎 6月21日から7月12日迄
  4)就寝の斎       8月14日から8月28日迄

   <天主経>
  天に在す我等の父よ。願は爾の名は聖とせられ。爾の国
は来り。爾の旨は天に行はるるが如く,地にも行はれん。我
が日用の糧を今日我等に輿へ給へ。我等に債ある者を我等免
すが如く,我等の債を免し給へ。我等を誘に導かず,猶我等
を凶悪より救いひ給へ。蓋国と権能と光栄は爾こ世々に帰す。
「アミン」

   <真福九端>
  神の貧しき者は福なり,天国は彼等の有なればなり。
泣く者は福なり,彼等慰を得んとすればなり。
温柔なる者は福なり,彼等地を嗣がんとすればなり。
義に飢え渇く者は福なり,彼等飽くを得んとすればなり。
矜恤ある者は福なり,彼等矜恤を得んとすればなり。
心の清き者は福なり,彼等神を見んとすれはなり。
和平を行う者は福なり,彼等神の子と名づけられんとすれば
なり。
義の為に窘逐せらるる者は福なり,天国は彼等の有なればな
り。
人我の為に爾等を詬り,窘逐し,爾等の事を譌りて諸の悪し
き言を言わん時は,爾等福なり,喜び楽めよ,天には爾等の
賞多ければなり。

   <十 戒>
1.我は爾の主神なり,我の外に何物をの神と為す勿れ。
2. 偶像及び凡そ上は天に在る者,下は地に在る者,土の中
  水の中に在る者の何の形状をも作る勿れ,之を拝む勿れ
  之に事うる勿れ。
3.妄に爾の主神の名を口にあぐる勿れ。
4. 安息日を憶えて之を聖とすべし,六日の間労きて爾の一
  切の業を為すべし。
5. 爾の父母を敬え,吉祥爾に及び且地に爾の生命長からん
  為なり。
6. 殺す勿れ。
7. 淫する勿れ。
8. 盗む勿れ。
9. 隣人に対して虚妄の証拠を立つる勿れ。
10.隣人の妻を願う勿れ,隣人の居宅,田園,僕婢,牛,驢
  等一切の家畜,並に凡そ隣人の物を貧る勿れ。

   <罪について>
(問) 罪とは何ですか。
(答) 罪とは神の律法と教会の律法に不服従する事です。

(問) 罪にはどのようにして陥りますか。
(答) 考える事をもつて,言葉をもつて,行いをもつて
  の三つです。

(問) なぜ神は人が罪を犯す事を許しているのですか。
(答) 全能の神は人が罪を行つている事を簡単に止める
  事ができますが,そのようにすれば人の自由意志は失
  われるでしょう。神は人に善悪を知る知識を与えまし
  た。人は自分の自由意志に依つて神の意志に適う事が
  できますが,神の言葉に従わぬ事もあります。聖書に
  次のような言葉があります“善を行ふを知りて,之を
  行はざる者は罪あり”(イアコフ公書4の17)。 “神
  は各人に,其行いに循ひて報いん”(ロマ2の6)。

(問) どのような種頻の罪がありますか。
(答) 1.原罪・・・・アダムから受け継ぎ,洗礼に依つ
      て洗われる所のもの。
    2.自作罪・・・誕生の後に私たちの犯したもの。
      自作弛こは三つの棟類があります.
     イ)主罪・・・誇り,不潔,羨み,嫉妬,貧欲,
       怒り,怠惰など。
     ロ)聖神に反する罪。
       a. 信仰の真実に対しての背反。
       b. 神の書に対する軽蔑。
       c. 神の助けに希望をもたぬ事。
       d. 神の恩恵の否定。
       e. 正教の信仰を捨てる事。
     ハ)天に叫ぷ罪・・・意志に放る殺人,貧者へ
       の圧力,労働者への支払いの滞納,両親に
   対する不行為。

(問) 罪に対する正教徒の義務は何ですか.
(答) 正教徒は罪を避けなければなりません。信者はそ
  れと戦つて良き事をするよう努力しなければなりませ
  ん。誘惑やあるいは弱さのために,もし人が罪を犯す
  事があれば,彼は痛悔して告白し,領聖をしなければ
  なりません。

(問) 罪と戦うにはどのようにしたらよろしいでしよう
  か。
(答) 罪を避け良き事をするために人は次のような原則
  を守らなけれはなりません。
    1.私祈祷。
    2.公祈祷。
    5.諸機密と司祭の諸祈祷。
    4.宗教的,精神的書籍の読書。
    5.誘惑への原因となるものを避ける事。
    6. 肉体の欲を征服する斎を守る事。
    7. 良き事を他人に行う事。

   <正教徒の完徳>
  もしも正教徒がより聖なる生活と基督者としての完全を
得ようと望むならば,つまり自分の全生涯を主の仕事のため
に捧げようとするならば,教会が完徳について教えておりま
す。つまりこれらの完徳は修道的生活を望む者に対して設け
られたものです。完徳は主基督に従う事に依って勇気づけて
くれるもので,完徳を更に早く得る事を人は自由意志に依つ
て望まなけれはなりません。これらの完徳は修道士と修道女
に対して次のような事を望みます。
  1.自由に依る清貧。
  2.貞潔あるいは肉体的喜びの全体的破棄
  五 従順。.
すべての正教徒がこれらの完徳に進む事はできません。しか
し基督者としての完全な生活を得るために,次のような基督
の教えに従わなけれはなりません。“人若し我に従はんと欲
せば,己を舎て,日々其十字架を負ひて,我に従へ”(ルカ
9の25)。

   <自分自身に対する義務>
  基督者は神からの賜物として,魂と身体との生命を受け
ました。賜物として人は魂と身体を慮らなけれはなりません。
これらの義務は自分自身に対する義務として知られています

(問) 自分自身に対する義務の主なものはどんなものが
  ありますか。
(答)  1.人々のうちに於て自分の尊厳を保つ事。
     2.神から受けた賜物を使い増す事。
     3.謙遜なると同時に高饅でない事。
     4.身体を清潔にし,良く整えておく事。なぜな
      らば,身体は魂の家だからです。
     5.自殺に依つて自分の生命を断たない事。それ
      を私達に与えて下さった神だけがそれを召し
      あげる事ができます。
     6.柔和のうちに世間の品物を使う事。余つた物
      を他人に分け与える事。

   <隣人に対する義務>       −
(問) 鱗人に対する義務こはどのようなものがあります
    か。
(答) 私たちの隣人に対する義務で最初で最も重要なも
  のは隣人を愛する事です。主は他人への愛の上に神の
  愛をおきました。偽善者ファリセイが主に尋ねました
  “師よ,律法の中に何の誡か大なる。基督えに謂えり
  爾心を尽し,霊を尽し,意を尽して,主爾の神を愛せ
  よ。此れ誡の第一にして大なる者なり。第二は是に同
  じき者,即爾の隣を愛すること己の如くせよ”(マトフェ
イ22の36〜39)。また聖イオアンは言いました
  “人若し我神を愛すと言ひて,その兄弟を悪まば,偽る
  者なり,蓋見る所の兄弟を愛せざる者は,焉ぞ見ざる
  所の神を愛するを得ん。神を愛する者は,亦其兄弟を
  愛すべし”(イオアン第一公書4の20〜21)。

(問) 私たちは自分たちの敵を愛すべきでしようか。
(答) 主基督はそれに答えておられます“爾の隣を愛し
  爾の敵を憎めと言えるありを聞けり。然ども我爾等に
  語ぐ,粛等の敵を愛し,爾等を詛ふ者を祝福し,爾等
  を憎む者に善を為し,爾等を虐げ,爾等を窘逐する者
  の為に祈れ”(マトフエイ5の43〜46)。

(問) 私たちの隣人とは誰ですか。
(答) 聖書に依ると隣人とは神に依って造られたすべて
  の人々を言います。社会的地位,貧富の差,年齢,人
  種の差別はありません。“爾等皆基督に在りて一なり”
 (ガラティヤ3の28)と聖バウェルは言つております。

(間) 隣人に対する義務はどのようにして果したら良い
  でしようか。
 
(答) 1.身体的行動において。
     イ)飢える者を養い,渇く者を飽かしむ事。
.    ロ)裸なる者に着せる事。
     ハ)旅人や知らない人に宿を与え,食物を与え
       る事。
     ニ)寡婦や孤児を助ける事。
     ホ)病者を尋ねる事。
     へ)囚人を尋ねる事。
     ト)死者を葬る事。
    2.精神的行動において
     イ)教育する事。
     ロ)疑う者を導く事。
     ハ)罪人を善に向わしめる事。
     エ)悲しむる者,憂いる者を慰める事。
     ホ)過ちを許す事。
     へ)忍耐する事。
     ト)他の生者や死者のために祈る事。

   <信者の心得>
1. 聖書と宗教書を教会の定めた章節目こそつて毎日読む事。
2. 教会の諸祈祷に出席する事。
3. 教会への奉仕をすすんでする事。
4. 教会への拝げ物,献金などを怠らぬ事。
5. 朝,目が醒めた時,十字架の印をして一日を神に捧げる
  朝の祈りから始める事。
6. 夜には夕の祈りをなし,その日をかえり見て神こ感謝し
  神のお守を穎います。
7. 日中,仕事や食事の前終に祈りをする事。
8. 教会の定めた禁食を守る事。
9. できるだけ領聖をする事。
10. 正教会の教育を自分や子供に受けさせる事。
11.死者の記憶を行なう事。
12.十字架を印する時,心を用いる事。
13.聖職者を尊敬する事。

   <祭服の色>
  諸祈祷の祭服の色は六つあって,教会暦の祝日に依つて
かわります。
1. 白(金)色・・喜びと神性(聖性)などを示し降誕祭や
        復活祭その他の主の主日に用いられます。
2. 青色・・聖生神女マリヤ,天使,致命女などの祝日に用
      いられます。
3. 赤色・・聖神の愛の炎を,あるいは致命などを示し,聖
      神降臨祭,致命者の祭日などに用いられます。
4. 紫色・・痛悔,償い,苦しみなどを示し,降誕祭や大斎
      などに用いられます。
5. 緑色・・希望を示し,神現祭や聖神降臨後の諸主日に用
      いられます。
6. 黒色・・主の苦しみを示します(黒色の祭服は元来,正
      教会でなかつたもので,中世期こ西方教会から
      入つてきたものです)。



   正教会の聖職者(神品階級

修道者・独身者 妻帯者 尊称
総主教(PATRIARCH)
府主教(METROPOLITE)
大主教(ARCHBISHOP)
主教(BISHOP)
  ナシ 聖下
座下
座下
座下
掌院(ARCHMANDRITE)
長司祭(ARCHPRIEST)
司祭(PRIEST)
首司祭
長司祭
司祭
尊師、神父、尊父
長輔祭(ARCHDEACON)
輔祭(DEACON)
副輔祭(SUBDEACON)
長輔祭
輔祭
副輔祭
尊師
誦経者(READER)
堂役(ALTAR BOY)
修道士、女(MONK,NUN)
誦経者
堂役
特になし

  


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