生神女に祷る(例外の)カノン




至聖なる生神女に祷る例外の規程
 敬虔なる帝フェオドルドゥカラスカリの作。斯の規程は「イヅライリは乾ける地」の祈祷礼儀の次第の如く歌わる。
第八調


   第一歌頌

イルモス、昔奇跡を行うモイセイの杖は、十字形に撃ちて、海を分ち、車に乗りて追い来るファラオンを沈め、徒歩にて逃るるイズライリ、神を讃め歌う者を救い給えり。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 神の聘女よ、憂愁の浪は我が卑微なる霊を荒し、災禍の雲は我が心を蔽う。神聖にして永遠なる光を生みし者よ、我に欣ばしき光を輝かし給え。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 純潔なる者よ、我爾の堅固なる力を以て、無量の災禍と、憂愁と、残忍なる諸敵と、度生の誘惑より救われて、爾の至大なる仁慈を歌いて、爾の我に於ける寛容を崇め讃む。   
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 女宰よ、我今恃頼を抱きて爾の堅固なる保護に走り附き、霊を全うして爾のおおいの下に至り、膝を屈めて、泣きて祈る、「ハリスティアニン」等の避所よ、我不当の者を棄つる勿れ。   
    今も何時も世々に、アミン。
 童貞女よ、我朗に爾の威厳を唱へて息めず、若し爾常に我が為に転達して、爾の子に祈らずは、誰か我を斯くの如き暴風と甚しき患難より救わん。


   第三歌頌

イルモス、主天の穹蒼の至上なる造成者、教會の建立者、冀望の極、信者の固、独人を愛する者よ、我を爾の愛に堅め給え。

     至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 我甚しく惑える者は切に爾に呼ぶ、女宰よ、速に転達して、我爾の卑微なる不当の僕、熱切に爾の保護を求むる者に爾の援助を与え給え。
     至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 女宰生神女よ、爾は今我の上に爾の諸恩と爾の慈憐とを実に奇異なる者と為し給えり。故に我爾を讃栄して、爾の無量なる仁慈を崇め歌う。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 女宰よ、災禍の颶風は我を荒し、憂愁の激浪は我を沈む。速に我に援助の手と爾の熱切なる保護とを与え給え。
    今も何時も世々に、アミン。
 女宰よ、我爾を実の生神女、死の権を破りし者と承け認む、蓋爾は活かす者として、地に入りたる我を地獄の桎梏より釈きて、生命に升せ給えり。


   第四歌頌

イルモス、主よ、爾は我の固、我の力なり、爾は我の神、我の喜なり、爾は父の懐を離れずして、我等の貧しきに臨み給えり。故に預言者アウワクムと共に爾に呼ぶ、人を慈む主よ、光栄は爾の力に帰す。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 嗚呼我度生の憂愁と暴風とに蕩かさるる者は、何の処にか保護を求めん、何処に走り附かん、何れに救を獲ん、孰をか熱切なる扶助者と恃まん。童貞女よ、我独爾に恃頼を負はせ、爾に由りて勇み、爾を以て誇り、爾のおおいに走り附く。我を救い給へ。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 至浄なる者よ、我爾の仁慈の甘愛の河、災禍と憂愁との爐に焚かるる我が卑微なる不当の霊を豊に潤す者を崇め讃めて、爾のおおいに走り附く。我を救ひ給へ。   
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 至浄なる生神女よ、我独爾を壊られぬ垣墻と、避所と、堅固なるおおい及び救の武器として有つ。望を失う者の冀望、弱る者の扶助、憂うる者の喜悦と保護なる童貞女よ、我放蕩の者を棄つる勿れ。   
    今も何時も世々に、アミン。
 嗚呼女宰よ、如何ぞ我宜しきに合いて爾の無量なる慈憐を述べん。爾の仁慈は常に甚しく苦しめる吾が霊を水の如く覆う。爾の慮と諸恩とは大なる哉、唯我不当の者は無知にして之を失う。


   第五歌頌

イルモス、隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし、外の闇は憐なる我を掩えり。祈る、我を返して、我が途を爾の誡の光に向わしめ給え。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 我感謝の心を抱きて爾に呼ぶ、母童貞女よ、慶べ、神の聘女よ、慶ぺ、神聖なるおおいよ、慶べ、武器と壊れざる垣墻よ、慶ぺ、信を以て爾に走り附く衆人の為に転達と、援助と、拯救なる者よ、慶べ。二次。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 故なく我を悪む者は矢と、剣と、おとしあなとを備えて、我が不当なる身を斃して、地に埋めんと欲す。潔き者よ、速に我を彼等より援けて救い給え。
   今も何時も世々に、アミン。
 我が楽しみし爾の諸恩と爾の無量なる慈憐との為に我何の感謝の礼物をか爾に捧げん。我唯爾を讃栄し、歌頌して、爾の我に於ける言い難き仁慈を崇め讃む。


   第六歌頌

イルモス、我祷を主の前に灌ぎ、我が憂を彼に告げん、我が霊は悪に満ち、我が生命は地獄に近づきたればなり。我イオナの如く祈る、神よ、我を淪滅より引き上げ給え。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 童貞女よ、憂愁の雲は我が不当なる霊と心とを覆いて、幽暗を我が内に入る。近づき難き光を生みし者よ、爾の神聖なる祈祷の吹嘘を以て此等を我より遠く逐い給え。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 女宰よ、我爾を憂の中の慰藉、諸病の医師、死の全き滅亡、生の尽くされぬ河、凡そ患難の中に在る者の速なる援助として知る。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
女宰よ、我爾の仁慈の深処と、無量の奇跡の流、及び我に於ける爾の慈憐の実に絶えず注がるる泉を隠さずして、衆の前に之を承け認め、之を伝へ、之を崇め讃む。
    今も何時も世々に、アミン。
 蜂の其巣を囲むが如く、度生の暴風は我を囲み、憂の矢は吾が心に傷つく。至浄なる者よ、願わくは我爾を此等を我より逐い、我を助け、我を護る者として得ん。


   第七歌頌

イルモス、エウレイの少者は爐に在りて勇ましく焔を践み、火を露に変じてよべり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 光を生みし生神女よ、光の潔浄無てんなる器として、諸罪の夜に昧まされたる我を照し給え、我が愛を以て爾を讃栄せん為なり。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 童貞女、援助なき者の力、恃頼なき者の恃頼よ、我今凡の援助を失ひし者の為におおいと、転達と、保護、及び美誉と為り給え。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 女宰よ、我爾の大なる恩賜を楽しめる者は霊と、思と、心とを全うして、口を以て爾を讃栄す。嗚呼爾の慈憐と爾の奇跡とは無量なる哉。
    今も何時も世々に、アミン。
 童貞女よ、爾の慈憐なる眼を以て我が苦痛を顧みて、爾の無量なる仁慈に因りて我を甚しき憂愁と、災禍と、敵の害、及び諸の誘惑より救い給え。


   第八歌頌

イルモス、聖なる山に光栄を顕し、棘の中に火を以てモイセイに永貞童女の奥密を示しし主を歌いて、万世に讃め揚げよ。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 潔き童貞女よ、爾の大なる仁慈に由りて、我度生の激浪に溺らさるる者を棄てずして、患難に遇いし者に援助の手を授け給え。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 潔き者よ、災禍と憂愁とは我に及び、度生の懊悩と誘惑とは偏く我を囲めり。祈る、我を顧みて、爾の堅固なるおおいを以て我を護り給え。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 女宰よ、願わくは我爾を暴風の中に港、憂の中に喜と楽、病の中に速なる援助、患難の中に拯救、誘惑の中に保護として獲ん。
    今も何時も世々に、アミン。
 主の火の状の宝座よ、慶べ、神聖なる「マンナ」の壷よ、慶べ、金の燈台、滅されぬ燈よ、慶べ、処女の光栄と、母の飾及び誉よ、慶べ。


   第九歌頌

イルモス、天は懼れ、地の極は驚けり、神は身にて人人に現れ、爾の腹は天より広き者と為りたればんり、故に天使と人人の群は爾生神女を崇め讃む。

    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 潔き者よ、我誰にか走り附かん、何処にか救を得ん、何れにか避所或は篤き保護を求めん、誰をか憂の中に扶助者とせん。我独爾を恃み、獨爾を以て誇と為し、爾に頼りて勇みて、爾に走り附きたり。
    至聖なる生神女よ、吾等を救い給え。
 神の聘女よ、爾の偉大なるは測り難し。実に神を生みし者よ、愛を以て爾を尊み、信を以て爾に伏拝する者の為に行われし智慧に超ゆる爾の奇跡は数え難し。
    光栄は父と子と聖神に帰す、
 生神女よ、我感謝の歌を以て爾の無量なる慈憐を尊みて讃栄し、爾の大なる力を衆の前に承け認め、我に施しし爾の諸恩を伝へ、霊と、心と、思とを全うして、舌を以て常に爾を崇め讃む。
    今も何時も世々に、アミン。
 童貞女よ、我が卑しき祷を受けよ、吾が歎息と涕泣とを忌む勿れ。慈憐なる者として我を護りて、我が願を応わせ給へ。蓋爾若し我が不当にして卑微なるを顧みば、全能の主宰・神の母として能せざるなし。




   第三及び第六歌頌の後に讃詞(トロパリ)。

 生神童貞女よ、爾の諸僕を災禍より救い給え、我等皆爾を破られぬ墻及び転達として、神の次に爾に走り附けばなり。
 讃美たる生神女よ、慈憐を以て我が肉体の甚しき不能を顧み、我が霊の病を医し給え。


   坐誦讃詞(セダレン)、第二調。

 熱切なる祷、壊られぬ墻、慈憐の泉、世界の避所たる女宰生神女、独速に転達する者よ、我等切に爾に呼ぶ、急ぎて我等を諸難より救ひ給へ。


   第六歌頌の後に小讃詞(コンダク)、第六調。

 「ハリスティアニン」等の辱を得ざる転達、造物主の前に変らざる中保よ、罪なる者の祷の声を斥くる勿れ、仁慈なるに因りて速に我等を助け給え。蓋我等切に爾に呼ぶ、生神女よ、爾を尊む者に常に代りて、急ぎて祷り、切に求め給え。


   讃頌(ステヒラ)、第六調。

 至聖なる女宰よ、我を人の転達に委ぬる毋れ、爾の僕の祷を納れ給え、蓋憂は我を囲み、我悪鬼の矢を忍ぶ能わず。我不当の者にはおおいもなく、走り附く処もなし、常に勝たれて、慰藉を得ず。世界の女宰、信者の恃望と転達よ、我唯爾を恃む、我が祷を忌む勿くして、之を我が為に益ある者と為し給え。

TOP | BACK