大斎 第4週


第四週間の月曜日の早課

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の傷感の坐誦讃詞を誦す。第二の誦文の後に左の坐誦讃詞を誦す、イオシフ師の作。第八調。

信者よ、我等は至尊なる木、萬有の造成主が擧げられし所の者に伏拜せん。此は前に置かれて、來り就く者の靈と體とを聖にし、熱心に齋して、常にハリストス惟一の恩主を歌頌する者の罪の汚を潔む。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課  579]---------------------

   光榮、同上。

   今も、生神女讃詞。

父の言が地に降りしに、光明なる天使は生神女に呼べり、祝福せられし者よ、慶べ、爾は獨童貞を守りて、永遠の神及び主を孕み給へり、彼が神として人類を迷より救はん爲なり。

 

第三の誦文の後に坐誦讃詞、第三調。

ハリストスよ、我等は今節制の半を過ぎ、爾の生命を施す十字架に伏拜するに至りて、俯伏して爾に呼ぶ、人を愛する主よ、爾は大なり、爾の行事も大なり、蓋爾は尊き十字架を現し給へり。我等畏を以て之に伏拜して呼ぶ、光榮は爾の無上なる慈憐に歸す。

   光榮、同上。

   今も、生神女讃詞。

童貞女よ、爾は耕作せられざる葡萄の樹として、至りて美しき葡萄の房、我等の爲に衆人の靈と體とを樂しましむる救の酒を流す者を生じ給へり。故に我等爾を諸善の縁由として讃揚して、常に天使と偕に爾に呼ぶ、恩寵を蒙れる者よ、慶べ。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課  580]---------------------

規程は月課經の、及び左の三歌頌。并に歌頌を誦文す。第八調。

 

   第一歌頌

イルモス、「昔奇跡を行ふモイセイの杖は」。

救の光を放ち、凡そ諸慾に昧まさるる者を照す光明なる十字架に伏拜する時は衆の爲に至れり。我等趨り集まりて、浄く之に接吻せん。

我等齋の恩寵に潔められて、潔き心を以て獨潔き主に就きて、感謝の聲を以て呼ばん、言よ、爾は己の血を我等の爲に傾け給へり、爾は又十字架を以て我等を聖にし給ふ。

我は蛇の攻撃に因りて躓きて、深く陷りて臥す。爾の苦と十字架とを以て始めて造られし者を堕落より起しし救世主よ、我を起して、爾の旨を行ふに導き給へ。

生神女讃詞、主よ、婚姻に與からざる者は爾の十字架の前に立ち、爾主宰の傷を見て、心に傷つけられて言へり、鳴呼吾が子よ、我爾を生む時産苦を免れしに、今は痛く苦しむ。

 

   又、フェオドル師の作。第三調

イルモス、「紅の海に至妙なる奇跡を行ひし主に歌はん」。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課  581]---------------------

斯の聖にして光明なる週間は最尊き十字架を世界の前に置く。來りて伏拜し、畏と愛とを以て靈を照して、其上に釘せられしハリストスを歌を以て讃榮せん。

ハリストスよ、我等皆爾の十字架に伏拜して、之を爾の復活の前期と爲す。我等爾の釘を歌ひ、爾の戈を尊む、此等を以て我が口と目、靈と體を潔む。

 

光榮、三者讃詞、惟一の性に於て歌はるる三者、父、子、聖神、無原にして、永在なる、造られざる神性、光と生命との泉よ、我等衆人は爾萬有を造りし主に伏拜す。』

生神女讃詞、潔き童貞生神女よ、我等は爾ヘルワィムのの輅たる者を歌ふ、神は爾より生れ給へり。故に爾は獨不朽の泉、衆に生命を流す者と爲れり、我等是より汲みて醫治を受く。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

齋の四十日の半を過ぎし者よ、來りて、愛を以てハリストスと偕に神聖なる苦に往かん、彼と共に十字架に釘せられて、其復活にも與る者とならん爲なり。

 

イルモス、紅の海に至妙なる奇跡を行ひし主に歌はん、蓋彼は海を以て敵を掩ひ、イズライリを救ひ給へり。我等獨彼に歌はん、彼光榮を顯したればなり。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課 582]---------------------

 

   第八歌頌

イルモス、「ハルデヤの窘迫者は怒に堪へずして」。

主よ、我毒害の欲にて傷つけられし靈と思とを有つ者を憐みて、爾の十字架を以て扞ぎ衛り、爾の脅より流しし滴にて醫し給へ、我が熱心に歌はん爲なり、司祭よ、崇め讃めよ、民よ、萬世に讃め揚げよ。

最尊き十字架よ、昔モイセイは山に於て爾を預象し、手ち擧げてアマリクに勝てり。我等今日爾に伏拜して、異族たる惡鬼の軍に勝ち、信を以て歌ふ、司祭よ、崇め讃めよ、民よ、萬世に讃め揚げよ、

慈憐なる主よ、我諸慾に屈められ、諸敵に跌かせられ、惡しき風習に引かるる者を宥めて、爾の十字架を以て扞ぎ衛り給へ、我が直き心を以て歌はん爲なり、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

生神女讃詞、爾は痛く歎き、母として泣き、内心の悲に勝へずして、十字架に、爾の腹より生れし者に目を注ぎて呼べり、子よ、此の見る所は何ぞ、性を以て苦

に與からざる者にして如何ぞ苦を受くる、此れ全く人類を滅亡より救はんと欲するに因りてなり。

 

又、イルモス、「至高きに天使等より黙さずして」。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課  583]---------------------

兄弟よ、我等は聖堂に前に置かれたるハリストスの十字架を見て、畏と信とを以て來りて伏拜して、之に呼ばん、光明なる者よ、爾は人人の爲に生命の華を發けり。

生命を施す十字架よ、天は爾を我等の爲には戰に勝つ者、諸王の爲には敗られぬ武器、敵の爲には滅す者、敎會の爲には角、信者の爲には救と現せり。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、我聖なる父を讃榮し、聖なる子を尊み、聖なる神を歌ひて、各神なりと雖、一性單一の三者、日より出づる三光線にして共に一の日光を成す者に伏拜す。

生神女讃詞、過られぬ門よ、慶べ、焚かれぬ棘よ、慶べ、純金の壷よ、慶べ、截られざる山よ、慶べ、爾を恃む者の爲に破られぬ固及び墻なる生神女よ、慶べ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

兄弟よ、我等は齋の半を過ぎて、勇ましき神を以て毅然として神と共に其前に趨らん、復活せしハリストスの「パスハ」にも欣ばしく遇はん爲なり。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、至高きに天使等より黙さずして讃榮せらるる神を、諸天の天と地、

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課  584]---------------------

山と岡と深處、及び悉くの人類は、歌を以て造成主及び贖罪主として崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

  第九歌頌

イルモス、「凡の者は神の言ひ難き寛容の事」。

昔イアコフは孫に祝福して、明に尊き十字架を預象せり。洪恩なる主よ、此を以て我等に祝福し、此に伏拜して爾衆人の贖罪主を讃榮する者に成聖の恩寵を與へ給へ。

信者よ、我等齋の水を以て靈と思とを潔めて、生命を施す神聖なる木に接吻せん、蓋此は現に衆の前に置かれて、聖なる赦、天の光と生命、及び眞の喜を流す。

主よ、我爾が神性の光榮を以て來りて、衆人の隠なる事を顯さんとする畏るべき審判者なるを知る。故に爾に祈る、至善なる主よ、我罪を犯せり、我を赦して、我が多く且甚しき諸罪を責むる勿れ。

生神女讃詞、昔牝羊は羔が十字架に釘せられ、日の光の晦まされたるを見て、哭きて云へり、光榮の日なるイイススよ、爾は殺されて没したり、然れども爾を愛する者の爲に復活の光を輝かし給へ。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課 585]---------------------

又、イルモス、「モイセイはシナイ山に於て棘の中に」。

我等皆爾主宰及び神の足の立ちし庭に於て今日至尊なる十字架に伏拜す、神に感ぜられしダワィドの呼ぶが如し、蓋萬物を手に持つ主は其上に擧げられたり。

齋に潔められたる地上の者よ、來り就きて、今日前に置かれたる至尊なる十字架を見て、畏と信とを以て伏拜し、喜び樂しみて、靈の爲に成聖を汲め。

 

三者讃詞、至りて神聖なる三者、性に於て惟一にして分離せざる者は、位に於て分れて、一なる者は三と爲り給へり、是れ父と子と生活の神、萬有を護り給ふ神なり。

生神女讃詞、子を生む童貞女、又夫に與らざる母の事を誰か聞きたる、マリヤよ、爾は奇跡を行ひ給ふ、然れども是れ如何に、我に言へ。我が神産の深きを窮むる勿れ、是の奥密は實に人の智慧に超ゆ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等衆人今接吻せらるる至聖なる十字架を見て、感謝の讃歌を神に奉らん。

故に惡鬼よ、此を知りて從へよ、異邦人よ、知りて從へよ、神我等と偕にすればなり。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課 586]---------------------

イルモス、モイセイはシナイ山に於て棘の中に、爾を焚かれずして神性の火を胎内に孕みし者として觀、ダニイルは爾を截られざる山として觀、イサイヤは芽を萌しし杖、ダワィドの根より出でし者なりと呼べり。

 

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調、二次。第六調。

ハリストスよ、爾は高きに登る爲に最善き途は謙遜なりと示して、己をして僕の形を受け、ファリセイの高ぶれるを聞かずして、税吏の痛悔の歎息を無の祭として最高きに受け給へり。故に我も爾に呼ぶ、神よ、潔めよ、我が救世主よ、我を潔めて救ひ給へ。

 

致命者讃詞、主よ、爾の聖者の記憶に於て悉くの造物は祭る、天は天使等と偕に喜び、地は人人と偕に樂しむ。彼等の祈に由りて我等を憐み給へ。

光榮、今も、同調、生神女よ、爾は天使首の言を受けて、ヘルワィムの寶座と現れ、爾の手に我が靈の恃頼を抱き給へり。

 

第一時課に尊き十字架に伏拜の禮を行ふ、主日に記す所の如し。此の時「我が足を爾の言に固め給へ」に代へて、「主宰よ、我等爾の十字架に伏拜し」を歌ふ。時課には「天に在す」の後に小讃詞の剣は既にエデムの門を守らず」を誦す。

---------------------[大齋第四週間月曜日 早課 587]---------------------

此くの如く亦水曜日及び金曜日に、凡て此の四日間に行ふ。金曜日には十字架を故の處に納む。

          ~~~~~~

 

   第六時課に預言の讃詞、第七調。

主よ、爾は仁慈なるに因りて、爾の憤を以て罪を犯しし人人を責むる勿れ、爾の怒を以て我等を罰する毋れ、蓋全地は爾を讃榮す。祈る、聖なる者よ、我等を宥め給へ。

   提綱、第六十一聖詠、第六調。

我が救と我が榮とは神にあり。句、我が靈唯神に在りて安ず。

 

   イサイヤの預言書の讀。第十四章。

主サワオフ是くの如く言ふ、我が思ひし事は必成り、我が定めし事は必立たん、我アツスルを我が地に敗り、彼を我が諸山に蹂らん、是に於て其置きし軛は彼等より離れ、其負はせし重負は彼等の肩より離れん。是は全地の事に就きて定めたる旨なり、是は萬民の上に伸べたる手なり、蓋主サワオフ定めたり、誰か之を癈するを得ん、其手を伸べたり、誰か之を轉ずるを得ん。アハズ王の死せし年に是くの如き預言ありき、フィリスティヤの地よ、爾を撃ちし杖の折れたるに因りて喜ぶ毋れ、蓋蛇

---------------------[大齋第四週間月曜日 第六時課 588]---------------------

の根より蝮出でん、其實は飛蛇と爲らん。其時最貧しき者は食ひ、乏しき者は安然として息はん、爾の根は、我饑饉を以て之を滅し、爾の遺餘は殺されん。門よ、泣け、邑よ、號べ、フィリスティヤの全地よ、爾は崩れん、蓋北より烟來る、其軍中に後れて行く者なし。諸民の使等は何をか言はん、云ふ、主はシオンを固めたり、其民の貧しき者は彼に庇所を得んと。

 

   提綱、第六十二聖詠、第四調。

是くの如く我生ける時爾を崇め讃めん。句、神よ、爾は我の神なり、我暁より爾を尋ぬ、我が靈は渇きて爾を望む。

          ~~~~~~

 

  第四週間の月曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に左の讃頌、第八調。

我等は今十字架の力に由りて節制の日の半を過りて、其上に地の中に擧げられし救世主及び神を讃榮して呼ぶ、主宰よ、我等を爾の苦及び尊き復活を見るに堪

---------------------[大齋第四週間月曜日 晩課 589]---------------------

ふる者と爲して、我等に潔浄と大なる憐とを賜へ。

我等は食の節制と逸樂の禁止とを以て肉慾を制して、熱心に十字架の木に接吻せん、蓋此は現に見られ、伏拜せられて、神聖なる恩寵を以て衆を聖にす。故に我等主に呼ばん、慈憐なる者よ、我等は爾此を以て吾が靈を救ふ主に感謝す。

   又、同調。

我等皆今十字架に伏拜して呼ぶ、生命の木よ、慶べ、ハリストスの聖なる笏よ、慶べ。人人の天の光榮よ、慶べ、諸王の譽よ、慶べ。信の能力よ、慶べ、勝たれぬ武器よ、慶べ、諸敵を逐ふ者よ、慶べ。輝く光、世界の救たる者よ、慶べ、致命者の大なる光榮よ、慶べ。義者の力よ、慶べ、諸天使の樂よ、慶べ、最尊き者よ、慶べ。

   又月課經の三。光榮、今も、生神女讃詞。

   提綱、第六十三聖詠、第六調。

神よ、我がの時我が聲を聽き給へ。句、我が生命を敵の懼より護り給へ。

 

   創世記の讀。第八、九章。

主神は其意に謂へり、我復人の行爲の爲に地を詛はざらん、人の心の圖る所其幼き時より惡しければなり、我復爲しし如く、凡の生ける肉を滅さざらん、地の有ら

---------------------[大齋第四週間月曜日 晩課 590]---------------------

ん間は播種と収穫、寒と暑、夏と冬、晝と夜は息まざらん。神はノイ及び其諸子を祝して彼等に謂へり、生めよ、殖えよ、地に充てよ、之を治めよ、地の凡の獸、地の凡の家畜、天空の凡の鳥、地に動く凡の物、海の凡の魚は爾等を畏れ、爾等に懾かん、我此等を爾等の手に予へたり、凡の生ける動物は爾等の食と爲らん、菜蔬の如く我皆之を爾等に予ふ、惟肉を其生命の血と共に食ふべからず、爾等の生命の血に至りては、我之を凡の獸より討め、亦人の手其兄弟の手より之を討めん、人の血を流す者は、之に代へて其血は流されん、蓋我神の像に縁りて人を造れり、爾等生めよ、殖えよ、地に充てよ、之に蕃殖せよ。

 

     提綱、第六十四聖詠、第六調。

神、我が救世主よ、我等に聽き給へ、句、神よ、讃頌はシオンに於て爾に屬す。

    箴言の讀。第十一、十二章。

義は生命に導き、惡を追ふ者は己の死を追う。心の戻れる者は主の惡む所なり、直く途を行く者は彼の悦ぶ所なり。手に手を執ると雖惡人は罰を免れず、義を播く者は必報を得ん。無知なる婦の美しきは、金の環の豕の鼻に在るが如し。義者の望む所は惟善、惡者の待つ所は怒なり。或者は吝まずして散せども愈彼に増す、或者は度に過ぎて吝めども貧しきに至る。施を好む靈は飽かせられ、人に飲

---------------------[大齋第四週間月曜日 晩課 591]---------------------

ましむる者は己も飲ませられん。穀物を留めて糶らざる者は民之を詛ふ、售る者の首には祝福あり。善に進む者は恩を求む、惡を求むむる者は惡彼に臨む。己の富を恃む者は仆れ、義者は青葉の如く榮えん。己の家を擾す者は風を繼ぎ、愚なる者は心智き者の僕と爲らん。義の果よりは生命の樹生じ、不法の者の靈は期に及ばずして取らる。若し義者僅に救を得ば、不虔者と罪人とは何處にか立たん。訓誨を愛する者は知識を愛す、譴責を惡む者は無知なり。善人は主より恩を獲、惡しき謀を設くる人は主其罪を定めん。人は不法を以て堅く立たず、義者の根は動かざらん。徳ある婦は夫の爲に冤なり、辱を致す者は其骨の腐の如し。義者の思慮は義なり、惡者の謀る所は詐僞なり。惡者の語は人の血を流す爲に伺ひ、義者の口は彼等を救ふ。

 

   挿句に自調の讃頌、第八調、二次。

言の高ぶれるファリセイは誇りて、忌はしき者と爲り、謙る税吏は黙してりて、義とせられたり。故に吾が靈よ、二人の者の異なるを知りて、謙遜を受けて之を愛せよ、蓋ハリストスは人を愛する主として、謙る者に恩寵を賜はんことを約し給へり。

致命者讃詞、主の致命者よ、爾等に祈る、我等の神に祈りて、吾が靈の爲に多く

---------------------[大齋第四週間月曜日 晩課 592]---------------------

の慈憐と多くの罪の潔めとを求め給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、同調、聖なる童貞生神女よ、我爾の庇に趨り附く、我爾に倚りて救を得んことを知る、爾は、潔き者よ、我を援くるを能すればなり。

 

              ~~~~~~

 

 

  第四週間の火曜日の早課

 

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の傷感の坐誦讃詞。

第二の誦文の後に左の坐誦讃詞を誦す、第八調。

我等節制を以て吾が靈を照して、ハリストスの釘せられたる救の十字架に伏拜して之に呼ばん、齋する者の甘味及び確なる扶助よ、慶べ、諸慾を滅する者、諸惡鬼に敵する者よ、慶べ、福たる木よ、慶べ。

   生神女讃詞

我等信者は信の動なき防固、吾が靈の尊き賜たる生神女を歌を以て崇め讃む。

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 593]---------------------

生命の石を爾の腹に容れし者よ、慶べ、四極の恃頼、迫害せらるる者の保護者よ、慶べ、聘女ならぬ聘女よ、慶べ。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、同調。

主よ、全地は前に置かれたる爾の十字架を造物の生命として之に接吻し、伏拜して爾に呼ぶ、大仁慈なる主よ、其行動を以て、節制に由りて、爾を歌ひて讃め揚ぐる者を深き平安に護り給へ。

   生神女讃詞、同調。

天使に由りて世界の喜を受けし者よ、慶べ、爾の造成者及び主を生みし者よ、慶べ、神の母と爲るを得たる者よ、慶べ。

規程は月課經の、及び左の三歌頌、イオシフ師の作。并に歌頌を誦文す。第八調。

 

   第二歌頌

イルモス、見よ、見よ、我は神、昔イズライリ民を引きて紅の海を過らしめ、之を養ひ、之を救ひ、之をファラオンの苦しき奴隷より釋きたる者なり。

メッシヤ神の言よ、爾は造物の中に十字架を忍び給へり。我等今日齋の中節に於て熱信に之に伏拜して、爾の復活をも見んことを求む。

我等はモイセイに預象せられし能力の杖を以て諸慾の海を斷ちて、約地に至り、

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 594]---------------------

豊に神靈の「マンナ」を以て樂しまん。

靈よ、誰か爾の爲に歎かざらん、誰か爾惡を望み、愛を以て善を求むるを爲さず、爾を永く忍び給ふ義なる審判者を常に輕ずる者の爲に哭かざらん。

 

生神女讃詞、童貞女よ、爾は本性を變へずして肉體と爲りしハリストスを生み給へり。彼に熱切に祈りて、其肉體を以て忍びたる十字架に伏拜する者を肉體の諸慾より救はんことを求め給へ。

又、同調、イルモス、「見よ、見よ、我は爾等の神、世世の先に」。

 

見よ、見よ、我は神、全地に我が十字架を救の武器として與へし者なり、今之に伏拜して接吻する者が敵の惡謀を空しくせん爲なり。

主よ、爾は至大至仁なる者なり、蓋我等に今爾の生命を施す十字架、爾の手と足との釘せられし所、爾の至浄なる脅の血が灌ぎて、我等に生命を流しし所の者に伏拜するを得しめ給へり。

三者讃詞、至りて完全にして至りて神聖なる三位の惟一者、生れざる父、獨生の子、父より出でて子に由りて現るる聖神、一性一體の神よ、我等衆を救ひ給へ。

生神女讃詞、母童貞女よ、爾の産の奇跡は言ひ難し、如何ぞ生みて童貞を守る、

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 595]---------------------

如何ぞ子を生みて夫の誘を知らざる。性に超えて我より神妙に生れし神の言の知るが如し。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

十字架よ、大なるモイセイは爾を預象し、手を舒べてアマリクに勝てり。我等は爾を身に及び空中に畫して、惡の首たる敵を防ぎ、之に勝ちて、ハリストスを讃榮す。

イルモス、見よ、見よ、我は爾等の神、世世の先に父より生れ、人を愛するに因りて、末の時に夫なき童貞女に孕まれ、原祖アダムの罪を滅しし者なり。

 

   第八歌頌

イルモス、「水の上に己の宮を建て」。

神として全地の基を建てし主よ、爾は木の上に擧げられて、衆信者に動かざる防固として、爾の十字架の救の武器を與へ給へり。我等之に伏拜して、爾を萬世に崇め讃む。

齋に輝かさるる者よ、今來りて、日の光よりも輝く十字架の木に接吻して、光明なる恩寵、世世にハリストスを讃め揚ぐる者より暗昧を逐ふ者を斟まん。』

涌きて永生に至らしむる活ける水たる言主宰よ、爾は十字架に於て己の脅より

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 596]---------------------

罪の流を涸らす血と水とを流し給へり。故に爾に祈る、我が諸慾の邪なる流を涸らし給へ。

生神女讃詞、聖にして潔き神の母童貞女よ、爾は神靈の成聖として、聖者の中に息ふ神を生み給へり。彼は肉體にて釘せられし至聖なる木、今日伏拜せらるる者を以て地の四極を聖にし給ふ。

又、イルモス、「諸天使諸天よ、光榮の寶座に坐し」。

 

人人よ、來りて、今前に置かれたる生命を施す木、ハリストス我等の神が肉體にて擧げられし者を見て、畏を以て歌ひて、世世之に伏拜せん。

我等は三合格の十字架を三者の記號として歌頌し、畏を以て伏拜して呼び、ハリストスを崇め讃め、彼を歌ひて、世世に讃め揚げん。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

惟一の神は三者なり、父は子の本質に入らず、子も聖神の位に變ぜず、三位各其本質を守りて、共に惟一の光、惟一の神なり、我世世に彼を讃榮す。

 

生神女讃詞、爾は獨無にして生み、獨婚姻に與らずして嬰兒に乳を哺ませ、獨母及び婢にして爾の造成主及び主宰を生み給ふ。母童貞女よ、我等爾を世世に歌ふ。

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 597]---------------------

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

言を以て生ながらの瞽者の目を啓きしハリストスよ、我が昧みたる心の目を啓き給へ、我が爾の誡の光を世世に見ん爲なり。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、諸天使諸天よ、光榮の寶座に坐し、神として絶えず讃榮せらるる主を崇め讃め、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「祝讃せらるる哉主、イズライリの神」。

祝讃せらるる哉主、イズライリの神、己の十字架を以て古の詛を解きて、之を我等に防固と、避所、及び堅固なる基として賜ひし者や。我等今此を以て吾が諸敵を破らん。

ハリストスよ、我無量の惡にて縲絏の如く縛られて、甘じて爾の救の道を知るを欲せず。求む、爾の十字架を以て我を還して、爾の言ひ難き大仁慈に由りて、我が昏昧を掃ひ給へ。

我ファリセイの高慢に效ひて、劇しき堕落を以て陷り、伏して敵に踐まるる者と爲れり。ハリストス、慈憐に因りて己を卑くせし至上なる光榮の王よ、我を憐みて救ひ給

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 598]---------------------

へ。

生神女讃詞、潔き童貞女よ、萬族は爾を讃揚す、蓋爾の腹より生れ給ひしイイススは、其親ら知るが如く、爾に至大なる事を爲せり。爾の牧群及び民の救はれんことを彼に祈り給へ。

   又、イルモス、同上。

 

祝讃せらるる哉主、イズライリの神、己の十字架を以て古の詛を解きて、之を我等に進めて伏拜せしむる者や。我等熱信に之に接吻し、之を歌頌して、絶えず爾の大なる慈憐を歌ふ。

尊き十字架よ、爾は敎會の譽、諸王の武器、全世界の爲に神の賜ひし平安なり。

正敎者の喜、全地の守護者たる十字架よ、爾に伏拜する者を守りて聖にせよ。』

光榮、聖なる三者、同尊なる惟一者よ、光榮は爾に歸す。神の性、惟一の畏るべき國、父、子、聖神、萬衆の爲に近づき難き光、無原なる神、萬有の造成主よ、爾に奉事する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、イイススハリストスよ、爾の牝羊は十字架の側に立ち、己の牧者及び主宰を見て、痛く哭きて、爾の爲に心を裂きて呼べり、驚くべき顯見は何ぞ、生命よ、如何ぞ死する。

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課 599]---------------------

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

神よ、痛悔せしマナッシヤを救ひし如く、我泣きて痛く悔ゆる者をも救ひて、爾の僕を退くる勿れ。蓋我は彼の昔のイズライリ人の如く、吾が靈を迷はして、我が在世の日を悉く放蕩に費せり。

イルモス、祝讃せらるる哉主、イズライリの神、我等の爲に救の角を其僕ダワィドの家に興しし者よ、東旭は上より我等に臨みて、我等を平安の道に向はしめたり。

   光耀歌は本調の。

   挿句に本日の自調、二次。第八調、

吾が靈よ、傲慢なるファリセイが高ぶりに由りて定罪せられ、謙遜なる税吏が諸罪の痛告に由りて義とせらるるを思ひて、務めて彼の徳を恃む心を退け、此の犯しし罪の痛告を受けよ。起きて、諸慾を制するて以て己の爲に卑くせられざる高きを獲よ、ハリストスの大なる憐を有つに因りてなり。

致命者讃詞、聖なる者よ、爾等は大に勤勞し、不法者より受けたる苦を勇ましく忍びて、ハリストスを諸王の前に承け認めたり。斯の生命より移されし後復世に異能を行ひて、病む者を其苦より醫し給ふ。聖なる者よ、我等の靈の救はれんことを

---------------------[大齋第四週間火曜日 早課  600]---------------------

祈り給へ。

   光榮、今も、生神女讃詞、同調。

生神童貞女よ、爾の庇は屬神の醫治なり、我等之に趨り附きて、靈の諸病より救はるればなり。

          ~~~~~~

 

   第六時課に預言の讃詞、第六調。

主宰よ、我等爾の十字架に伏拜し、爾の聖なる復活を讃榮す。

 

   提綱、第六十五聖詠、第六調。

崇め讃めらるる哉神、我が祈を卻けず、其憐を我より離さざりし者や。句、諸民よ、我が神を讃揚せよ。

 

   イサイヤの預言書の讀。第二十五章。

主よ、爾は我の神なり、我爾を崇め、爾の名を讃め揚げん、蓋爾は奇妙なる事を行へり、古より定めたる事は眞なり、「アミン」。爾邑を變じて石堆と爲し、堅固なる城を荒墟と爲せり、外人の宮室は已に邑に在るなし、此れ永く復建つを得ざらん。故に有能なる諸民は爾を崇め、強暴なる諸族の邑は爾を懼れん、蓋爾は貧しき者の保砦と爲り、乏しき者の其患難の時の保砦と爲り、狂風を遁るる避所と爲り、

---------------------[大齋第四週間火曜日 第六時課  601]---------------------

熱を避くる蔭と爲れり、蓋暴虐者のは暴風の墻を撲つが如くなりき。爾は水無き地の熱の如き敵の暴行を抑へたり、雲の影の熱を遏むるが如く、迫害者の凱歌は遏められたり。主サワオフは此の山に於て萬民の爲に肥えたる物を以て宴を設け、醇酒を以て、骨の髄と至りて清みたる酒とを以て宴を設けん、又此の山に於て萬民を蔽へる、萬族に被らせたるを除かん。死は呑まれて、永遠に至らん、主神は悉くの面より涙を拭ひ、全地に於て其民より陵辱を除かん、蓋主は是くの如く言ふ。其日に人人言はん、視よ、此れ我が神なり、我等彼を頼めり、彼我等を救へり、此れ主なり、我等彼を頼めり、彼の救の爲に喜び樂しむべし。

 

     提綱、第六十六聖詠、第六調。

願はくは神我が神は我等に福を降さん。願はくは神は我等に福を降さん。句、神よ、我等を憐み、我等に福を降し給へ。

 

          ~~~~~~

 

 

---------------------[大齋第四週間火曜日 第六時課  602]---------------------

 

 

 中の週間の火曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に六句を立てて三歌經の讃頌を歌ふ。第六調。

洪恩なる神の言よ、爾は地の中に十字架と苦とを忍びて、今齋の中節に於て衆に苦なきと贖罪とを賜ふ、故に我等皆之を伏拜の爲に進めて、欣ばしく接吻す。獨大仁慈なる主よ、願はくは皆神聖なる諸徳に照されて、爾の苦と生を施す復活とを見るを得ん。

恒忍なる主よ、爾は十字架に舒べられて死者と爲り、戈を以て刺されたり、モイセイの手を以てメッラの水を甘味に變ぜし主宰よ、爾は膽を飲ませられたり。故に我爾に祈りて求む、最苦き諸慾を我が思より遠ざけ、痛悔の蜜を以て吾が心を樂しませて、我を爾の尊き苦に伏拜する者と爲し給へ。

   又、第一調。

人人よ、我等は昔モイセイが己の手を以て預象して、アマリクに勝ちし所の大なる十字架の今日我が目の前に置かるるを見て、潔き智慧と口とを以て敬みて之に觸れん、蓋ハリストスは其上に擧げられて、死を死し給へり。我等皆此くの如き恩寵を蒙りし者は神聖なる歌を以て衆人の救主を歌頌して、救の復活にも至ることを

---------------------[大齋第四週間火曜日 晩課  603]---------------------

祈らん。

 

   又、讃頌、第四調。

來りて、我等の生命の仲保者、今日現れたる木、ハリストス吾が神の十字架、死の死され、我等堕落せし者に復活の賜はりたる所以の者に伏拜して、贖罪主に呼ばん、衆人を救はんと欲して、我等の爲に苦を受け給ひし吾が神よ、光榮は爾に歸す。

ハリストス我が救世主よ、爾の十字架は我等「ハリスティアニン」に勝たれぬ能力として與へられしに、此を以て異邦民の大數は勝たれ、善く正敎を守る爾の敎會に平安は賜はる。我等今之に接吻して、熱切に爾に呼ぶ、我等にも爾の諸聖者の分を得しめ給へ。

我等涙と齋とを以て靈の感覺を浄めし者は來りて、十字架の木、節制を以て靈を治めて、之を害する肉慾を絶つ者に伏拜して、釘せられし主に呼ばん、救世主よ、我等に爾の三日目の復活の光に伏拜するを得しめ給へ。

 

    光榮、今も、第八調。

今日造物の主宰、光榮の主は十字架に釘せられ、脅を刺さる。敎會の甘味たる者は膽と醯とを嘗む、雲を以て天を覆ふ者は棘の冠を冠らせられ、侮辱の衣を衣せら

---------------------[大齋第四週間火曜日 晩課  604]---------------------

る。手を以て人を造りし者は朽つべき手にて批たる、雲を以て天に服する者は頬を批たれ、唾及び傷、辱及び笞を受く。我の贖罪主并に神は、慈憐なるに因りて、我定罪せられし者の爲に一切を忍ぶ、世界を迷惑より救はん爲なり。

月課經の讃頌を用いず。聖人の規程を晩堂課に誦す。

 

   提綱、第六十七聖詠、第六調、

我等の神に歌ひ、其名に歌へよ。句、諸天を行く者を崇め讃めよ。

 

   創世記の讀。第九章。

神はノイ及び彼と偕に其諸子に謂ひて曰へり、視よ、我は爾等及び爾等の後の子孫、又凡そ爾等と偕に在る生物、鳥、家畜、凡の地の獸、凡そ爾等と偕に方舟より出でたる者と我が約を立つ、我我が約を爾等と偕に立てん、凡の肉は復洪水に縁りて死なざらん、全地を滅す洪水は復有らざらん。主神はノイに謂へり、我が我と爾等との間、及び爾等と偕にする凡の生物の間に、永世に予ふる所の約の徴は是なり、我我が虹を雲の中に置く、是れ我と地との間に永遠の約の徴と爲らん、我雲をして地を蔽はしめん時、我が虹は雲の中に現れん、我乃我と爾等との間、及び凡そ肉ある總の生物の間に在る所の我が約を念はん、水は復凡の肉を滅す洪水

---------------------[大齋第四週間火曜日 晩課  605]---------------------

と爲らざらん。我が虹は雲の中に在らん、我之を觀て、我と地との間、及び地上の凡そ肉ある總の生物の間に在る所の永遠の約を念はん。神はノイに謂へり、是れ我が我と地に在る凡の肉との間に立てし所の約の徴なり。

 

    提綱、第六十八聖詠、第六調。

神よ、願はくは爾の助は我を起さん。句、苦しむ者は之を見て悦ばん。

 

   箴言の讀。第十二章。

人は其聡明に循ひて譽められ、心の戻れる物は藐ぜらる。卑しくして己の爲に勞する者は、自ら大なりとして食に乏しき者に愈れり。義者は其家畜の生命をも顧る、惡者の心は殘忍なり。己の田を耕す者は食に飽かん、虚しきを追ふ者は智慧なし。酒を飲みて時を費すことを樂しむ者は己の家に恥を遺さん。惡者は惡の網に捕へんと欲す、惟義者の根は固し。惡者は其唇の愆に因りて罟せられ、惟義者は艱難より脱れん。柔和にして見る者は矜恤を獲、門に遇ふ者は他人を窘めん。人は其口の果に因りて善に飽き、人の手の行爲は其身に返らん。愚なる者は己の道を見て正しとす、智慧ある者は勸を聽く。愚なる者は直に怒を顯し、達き者は辱を掩ふ。知る所を言ふ者は正しきを言ひ、虚僞の證者は欺く。妄に語りて劍を以て刺すが如

---------------------[大齋第四週間火曜日 晩課  606]---------------------

くする者あり、智者の舌は醫を爲す。眞を言ふ唇は永く存す、の舌は瞬の

間のみ。惡を謀る者の心には欺あり、和平を謀る者には喜あり。義者には何の惡も加はらず、不虔者は惡にて充たされん。の唇は主の惡む所、眞を行ふ者は其喜ぶ所なり。

 

   挿句に自調、第三調、二次。

我は諸罪を以て税吏に超えて、其痛悔に效はず、ファリセイの善き行を得ずして、其高慢に效ふ。祈る、爾の無上なる謙遜を以て十字架に於て惡鬼の驕を倒ししハリストス神よ、我より第一の者の惡、第二の者の無知を除きて、二人の善き所を吾が靈の内に堅めて、我を救ひ給へ。

致命者讃詞、諸預言者ハリストスの使徒及び致命者は一體の三者を歌はんことを敎へ、迷へる異邦民を照し、人の諸子を諸天使の侶と爲せり。

   光榮、今も、自調、第五調。

一切の造物は爾萬有の造成主及び造物主が十字架に裸體にして懸れるを見て、畏に由りて變じて歎き、日は光て晦まし、地は震ひ、磐は砕け、殿の飾は裂けたり。死者は墓より起き、天軍は驚きて言へり、鳴呼奇跡や、審判者は審判せられ、甘じて世界の救及び更新の爲に苦を受け給ふ。

---------------------[大齋第四週間火曜日 晩課  607]---------------------

 

  中の週間の水曜日の早課

 

聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞

第二の誦文の後に左の坐誦讃詞を誦す、イオシフ師の作。第六調。

節制の時なり、聖を成す神聖尊貴なる十字架は伏拜の爲に置かれたり。我等潔き良心を以て就きて、成聖と光照とを汲みて、畏を以て呼ばん、仁愛なる吾が救世主よ、光榮は爾の慈憐に歸す。二次。

   十字架生神女讃詞

婚姻に與からざる母は彼より種なく生れし者の十字架の前に立ちて呼べり、鳴呼子よ、劍は吾が心を貫けり、我爾、萬有が造成主及び神として戰く者の木に懸れるを見るに忍びず。恒忍なる主よ、光榮は爾に歸す。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第一調。

我等は諸徳に照され、節制の潔浄を得て、尊き十字架に就き、伏拜して呼ばん、萬有の惟一なる神よ、我が靈と體とを聖にし、我等に爾の至淨なる苦にも伏拜するを得しめて、爾の慈憐を垂れ給へ。二次。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  608]---------------------

   十字架生神女讃詞、同調。

ハリストスよ、純潔なる母は爾が十字架に舒べられて死せしを覩て呼べり、父及び聖神と同無原なる吾が子よ、斯の爾の言ひ難き攝理は何ぞ、洪恩なる主よ、爾は此を以て爾の至浄なる手の造物を救ひ給へり。

 

規程は十字架の。其冠詞は、至尊なる木に伏拜せん。フェオファン師の作。第四調。

 

   第一歌頌

イルモス、「我が口を開きて、聖神に満てられ」。

我等齋に潔められて、聖なる木、ハリストスが其上に手を舒べて、敵の首領に勝ちたる者に伏拜して、讃美と光榮とを全能者に奉らん。

成聖を與ふる救の十字架は前に置かれて見らる、我等は體と心とを潔めて、之に就きて、救の恩寵を汲まん。

人を愛する主よ、爾の誡の火を以て我を潔め、十字架を以て防ぎ護りて、我に爾の救の苦を見、愛を以て之に伏拜するを得しめ給へ。

生神女讃詞、人を愛する主よ、爾を生みし者は爾が十字架に擧げられしを見て、泣きて呼べり、如何ぞ萬衆を審判すべき者は定罪せられ、光榮の主は懸りて見らるる。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  609]---------------------

 

   第三歌頌

イルモス、「生神女、生活にして盡きざる泉よ」。

我等は齋の水を以て心を潔めて、熱信に十字架の木を抱かん。ハリストスは其上に懸りて、恩主として、我等に赦罪の水を流し給へり。

見よ、救の舟は十字架の帆に進められて、齋の半を過ぎたり。メッシヤイイスス神よ、此を以て我等を爾の苦の港に送り給へ。

十字架よ、モイセイは山に於て爾を形りて、敵の殺さるるを致せり。我等は心の中に爾を形り、爾を見て伏拜して、爾の力を以て無形の敵に勝つ。

生神女讃詞、吾が子ハリストスよ、爾は萬有の神及び造物主にして、甘じて人と爲れり、今我爾が十字架に懸れるを見て心刺さると、爾を生みし者は言へり。

 

   三歌頌。第六調。

   第三歌頌

イルモス、「萬有の主、造物主たる者」。

萬有の主及び造物主神よ、爾は地の中に十字架に升りて、敵の惡計に因りて陷りし人の性を己に升せ給へり。故に我等爾の苦に堅められて、熱信に爾を讃榮す。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  610]---------------------

信者よ、我等齋の光にて感覺を潔め、十字架の無形の光線にて盛に輝かされて、其今日前に置かるるを見て、敬みて浄き口と心とを以て接吻せん。

我等はハリストスの足の立ちし所に、神聖なる十字架に伏拜して、吾が靈の足が神の誡の石に堅められて、神の恩寵に因りて其歩を平安の途に向はしむるを求めん。

 

生神女讃詞、ハリストスよ、爾は夫に與らざる童貞女より靈ある肉體を取り、彼より出でて、爾の十字架を以て敵を滅して、朽ちたる人の性を復新にし給へり。故に我等爾の慈憐を讃榮す。

 

   又、第一調、イルモス、「主よ、爾が敵に勝ち」。

地の四極よ、伏拜せらるる木、ハリストスが其上に懸けられて、惡魔を滅しし所の者を見て、歡喜の歌を奉れ。

今日生を施す歡喜は進めらる、皆來りて、畏を以てハリストスの尊き十字架に伏拜せん、聖神を受けん爲なり。

 

三者讃詞、三光線の日、三光の煇煌、神父、子、及び聖神、無原なる性、及び光榮よ、爾を歌ふ者を患難より救ひ給へ。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  611]---------------------

生神女讃詞、恩寵を蒙れる讃美たる生神童貞女よ、天使の品位は爾を歌ふ、彼等と偕に人類は今爾を聘女ならぬ聘女として讃榮す。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

生を施す十字架よ、我爾に觸れん爲に來りて畏れ戰く、吾が主の神聖なる血が爾の上に流されしを知ればなり。

イルモス、主よ、爾が敵に勝ち、世界を照しし所の爾の十字架の力にて獲たる爾の敎會を固め給へ。

   坐誦讃詞、第六調。

獨人を愛する主よ、今日預言者の言は應へり。蓋視よ、我等は爾の足の立ちし處に伏拜し、木に縁る救を嘗めて、生神女の祈を以て罪に縁る苦を釋かるるを得たり。

光榮、主よ、爾の十字架は聖にせられたり、蓋此に縁りて諸罪を病む者に醫治は行はる。故に我等、爾の前に俯伏す、我等を憐み給へ。

今も、ハリストス主よ、爾の十字架の木の樹てられしのみにして、死の基は動けり、蓋地獄は貪りて呑みし者を戰きて放てり。聖なる者よ、爾は其爲しし救を我等に顯し給へり、故に我等爾を讃揚す。神の子よ、我等を憐み給へ。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  612]---------------------

 

   第四歌頌

イルモス、「光榮の中に神性の寶座に坐するイイスス神は」。

昔光榮なるイアコフは手を叉へ伸べて、十字架の形を兆し、孫に祝福して、我等衆に至る所の救の祝福を兆せり。

我等は十字架の印に護られ、其我等の前に置かるる者に靈の喜を以て接吻し、害を爲す肉慾を殺して、救の苦に往かん。

最尊き十字架よ、我等爾を救の器、勝たれぬ、歡喜の徴、死の殺されたる武器として抱きて、爾の上に釘せられし主の光榮を以て飾らる。

生神女讃詞、我に見らるるイイスス吾が子、我より身を取りし者よ、爾は諸天使に近づき難き者として見られたり、今我爾が木に釘せられしを見て哭くと、ハリストスの母は言へり。

 

   第五歌頌

イルモス、「萬物は爾が神妙の光榮に驚かざるなし」。

萬衆の生命及び救なる主よ、爾は十字架に釘せられて死者と爲れり。故に救世主よ、我等に潔められたる靈を以て之を抱きて、喜びて爾の救の苦を見るを得しめ給へ。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  613]---------------------

生を施す木よ、無形の品位は敬みて爾の前に立つ、蓋ハリストスは爾の上に其尊き血を流して、人類を惡鬼の汚より潔め給へり。

言よ、我敵の劍に傷つけられし者を爾の血を以て醫し給へ。救世主よ、爾に呼ぶ、戈を以て速に吾が罪の書券を裂きて、我を救はれし者の書に録し給へ、爾は慈憐なる主なればなり。

生神女讃詞、熟したる葡萄の房よ、如何ぞ爾木に懸りたる、光榮の日、爾の苦にて日の光を晦ましし者よ、如何ぞ没したると、救世主よ、爾を生みし牝羊は昔母として哭きて爾に呼べり。

 

   第六歌頌

イルモス、「三日の葬を預象する預言者イオナは」。

主の最尊き十字架よ、爾は建てられて地獄の居處を震はせ、信者の爲に動かされぬ防固及び堅固なる帲幪と爲れり。

我等は諸徳の果を結ぶ者と爲りて、神聖なる木の生を施す果、其上に伸べられしイイスス、豊に實れる葡萄樹たる主の生ぜし者を摘まん。

イイススよ、我等は爾の多くの仁慈を歌ひて、爾の十字架と、戈と、葦とに伏拜す、蓋爾は、洪恩なる主よ、此等を以て仇の隔の墻を毀ち給へり。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  614]---------------------

生神女讃詞、至浄なる者は爾を活ける水の川として生じたり、蓋爾は我等の更新の泉として、十字架に伸べられて、救の流を注ぎ給へり。

イルモス、三日の葬を預象する預言者イオナは鯨の中に在りて祈りてべり、イイスス萬軍の王よ、我を淪滅より救ひ給へ。

 

    小讃詞、第七調。

の劍は既にエデムの門を守らず、蓋之を卻くる至榮なる十字架の木は至れり。死の刺及び地獄の勝は亡びたり、蓋爾は、吾が救世主よ、現れて、地獄に在る者に呼べり、復樂園に入れ。

    同讃詞

ピラトはゴルゴファに於て三の十字架を樹てたり、二は盗賊の爲、一は生命を施す者の爲なり。地獄は之を見て、下にある者に謂へり、鳴呼我が役者、我が能力よ、誰か釘を吾が心に打ち、俄に木の戈を以て我を刺したる。我割かれて、吾が内は痛み、腹は傷つけられ、吾が感覺は吾が神を擾して、我はアダム及びアダムより以來木に縁りて我に與へられし者を吐くを促さる、蓋木は復彼等を樂園に入らしむ。

 

    第七歌頌

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  615]---------------------

イルモス、「敬虔の者は造物主に易へて」。

ハリストスよ、エリセイがイオルダンより出しし斧は十字架を示せり、爾は此を以て諸民を空虚の深處より引き出して、歌はしむ、主、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

十字架よ、天の者は地の者と偕に爾に伏拜するを喜ぶ、蓋爾に由りて諸天使と人人とは合せられて呼ぶ、主神よ、爾は崇め讃めらる。

我等は松の如く矜恤、杉の如く馨しき信、黄楊の如く眞の愛を獻じて、主の十字架に伏拜し、其上に釘せられし贖罪主を崇め讃めん。

生神女讃詞、神の選びたる城邑よ、神は天の者を動かさずして爾の腹に入りたり、十字架に懸りて造物を動かし給へり。我が彼の動かざる石の上に常に立たん爲に彼に祈り給へ。

 

   第八歌頌

イルモス、「生神女の産は敬虔の少者を爐の中に守れり」。

主よ、爾は木の上に手を舒べて、不節制の手の罪を解き、戈にて刺されて、此を以て敵に傷つけ、膽を嘗めて、逸樂の惡を除き、醯を飲ませられて、衆に樂を與へ給へり。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  616]---------------------

我等潔き智慧と良心とを以て欣ばしく近づきて伏拜せん、聖なる尊き木は前に置かる、ハリストスは此に由りて恥づべき死を受けて、罪犯に由りて甚しく辱かしめられたる者に最上の尊貴を被らせ給へり。

我罪の木にて殺され、逸樂の嗜慾にて葬られたり。主よ、我を活かし、我臥す者を起して、爾の苦に伏拜する者、神聖なる復活に與る者、爾を愛する聖者の嗣業に分ある者と爲し給へ。

生神女讃詞、獨生の子よ、我は肉體を取りし爾を人の諸子より最美しき者と知れり、爾が釘せられしを見るに、華麗もなく、華榮もなし、衆人の救なる者よ、爾の光榮を顯し給へと、純潔なる童貞女は呼べり。

   又、イルモス、「福たる少者はワワィロンに於て先祖の律の爲に」。

 

洪恩なる主よ、爾は甘じて地の中に日中に釘せられて、地の四極を蛇の口の中より引き出し給へり。故に我等は神聖なる齋の中の週間に爾の尊き十字架に伏拜して、之を讃榮して呼ぶ、主を歌ひて、世世に崇め讃めよ。

歡喜の記號、勝たれぬ武器、敎會の墻、致命者の譽、使徒の飾、司祭首の固よ、我が弱りたる靈を堅めて、爾に伏拜して呼ぶを得しめよ、造物は主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  617]---------------------

恒忍なる主よ、我定罪に當る者は爾の偏頗なき審判を我が思念の中に入るる時、歎きて泣く。故に我を宥めて、吾が靈の重き任を輕くし給へ、我が歡びて呼ばん爲なり、造物は主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

 

生神女讃詞、純潔なる童貞女よ、棘は智慧に超ゆる爾の産の奥密を預象せり、蓋此の如く、爾は焚かるるなく止まりて、火なるハリストス救世主、十字架に擧げられし者を生み給へり。彼に我を永遠の火より救はんことを祈り給へ、蓋我呼ぶ、造物は主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

   又、イルモス、「斯の擇ばれたる聖なる日は」。

 

來りて、齋に潔められて、前に置かれたる主の十字架に愛を以て接吻せん、蓋此は我等の爲に成聖と能力との寶なり。故に我等此を世世に歌はん。

斯の三合格の十字架は小く見ゆれども、其力は天に戻りて、常に人人を神に升す。我等此を以てハリストスを世世に崇め讃めん。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、我三の本質の中に惟一の神性を讃榮して、三位を一に混淆せず、又神性を分たず、蓋父、子、及び聖神は三位にして惟一なる神、萬有の上にある主なり。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  618]---------------------

 

生神女讃詞、童貞女、神の聘女マリヤよ、爾は母の中に獨の者と現れて、童貞の印を守りて、夫なくハリストス救世主を生み給へり。我等信者は世世に爾を讃揚す。

 

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

斯の至聖なる木、昔預言者イエレミヤの預見せし如く、イズライリ人がハリストスを害せん爲に設けられたる者は尊まるべし。我等此を世世に讃め揚げん。

イルモス、昔獅の穴に投げられたる預言者の中に大なるダニイルは十宇形に手を伸べて、其口に殘はるるなく救はれて、ハリストス神を世世に崇め讃む。

 

   第九歌頌

イルモス、「凡そ地に生るる者は聖神に照されて樂しみ」。

人を愛する主よ、爾は戈に由りて爾の脅を開きて、我が爲に赦罪の泉を流し、地の中に木の上に釘せられて、木を以て定罪を止め給へり。我等今齋の半に之に接吻して、爾の仁慈を讃め歌ふ。

生を施す十字架伏拜の今日、愛を以て山は甘味を、岡は喜悦を滴らせよ、主の

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  619]---------------------

樹リワンの柏香木は祝へ、預言者、致命者、使徒、及び義者の靈は慶賀せよ。

主よ、畏を以て爾を歌ふ爾の民及び嗣業、爾が甘じて彼等の爲に死を忍びし所の者を顧み給へ、願はくは我等の惡の無量の多きは爾の慈憐に勝たざらん。至仁なる主よ、爾の十字架を以て我等衆を救ひ給へ、爾は人を愛する主なればなり。

 

生神女讃詞、ハリストスよ、爾は釘せられて己の瞬を以て見ゆる世界を動かせども、懸れる者として止まれり、始めて造られし者の慾の念を滅し、爾の仁慈を以て其損傷を醫さんと欲したればなりと、生神女は泣きて言へり。

   又、イルモス、「生神女よ、爾の位に合ひて能く爾を讃美する舌なし」。

 

十字架よ、昔エリセイは木を以て斧を河より引き出して、爾生命を施す木を示せり、蓋ハリストスは爾の上に釘せられて、此を以て諸民を偶像の邪敎の深處より引き出し給へり。故に我等爾に伏拜して、彼の權能を讃榮す。

救世主よ、爾の釘せらるるに因りて日の光線は黒暗と爲り、月の光は消え、五行は戰きて變じたり。故に我爾に呼ぶ、言よ、諸慾の暗昧に因りて變じたる吾が思を爾の手を以て變易し、之を照して我を救ひ給へ。

ハリストスよ、爾の創傷を以て吾が靈の慾を醫し、爾の脅の刺さるるを以て

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  620]---------------------

惡鬼の傷ましく我を刺すを止め、爾の釘を以て我が逸樂の欲望を釘うちて、我に無慾にして爾の尊き苦と復活とに伏拜するを得しめ給へ。

生神女讃詞、救世主よ、美しき童貞女は爾人の子より美しき者を生みたりしに、爾が苦の時に華麗もなく華榮もなきを見て、泣きて言へり、吾が子よ、我爾が智慧に超ゆる謙遜を奇とす、爾は此を以て謙りたる人の性を救ひ給ふ。

   又、イルモス、「新なるイエルサリムよ、光り光れよ」。

 

神の衆民よ、光潔なる心を以て來りて、前に置かれたる十字架を見、畏を以て之に接吻し、喜を抱きて其上に擧げられし光榮の主を常に讃榮せよ。

十字架よ、爾は我が生命の神聖なる器なり、主宰は爾の上に升りて、我を救はん爲に脅を刺されて、血と水とを流し給へり、我喜を以て之を領けて、彼を讃榮す。

 

三者讃詞、聖なる神よ、我は爾位の三者、性の惟一者、父、子、聖神、惟一の原始、惟一の國、萬有を宰制する主に伏拜す。

生神女讃詞、至福なる童貞女よ、爾は大なる山、ハリストスの其中に入りたる者と現れたり、神聖なるダワィドの呼ぶが如し、我等は子たる神を以て此に由りて天に升るを得たり。

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  621]---------------------

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

神聖の帝笏たる十字架、軍士の勇力よ、我等爾を恃みて、戰ふ者を畏れず。爾に伏拜する我等に常に諸敵に勝つを得しめ給へ。

イルモス、嗚呼母童貞女、眞の生神女、種なくハリストス我が神、身にて十字架に擧げられし主を生みし者や、我等信者皆宜しきに合ひて今爾を彼と偕に崇め讃む。

   光耀歌は本調の。又左の差遣詞。

至尊なる木は齋の中節に於て凡そ己の苦難を以て宜しきに合ひてハリストスの苦難に從ふ者を伏拜の爲に招く。信者よ、皆來りて、畏るべき奥密の木に伏拜せん。

十字架生神女讃詞、聘女ならぬ聘女、純潔なる神言の母は歎き泣きて呼べり、子よ、ガウリイルが我に攜へし福音の喜は此くの如きか。言ひ難き旨及び神聖なる定制を成就せん爲に往き給へ。

 

   挿句に本日の自調、二次。第八調。

我等は爾の尊き十字架に送る齋の途の半を過ぎて祈る、爾の日、アウラアムが生けるイサアクを岡の墓より受けて喜びし日を、信を以て敵より救はれし我等にも

---------------------[大齋第四週間水曜日 早課  622]---------------------

見るを得しめ、秘密の晩餐に與りて、平安に呼ぶを賜へ、我等の光照及び救世主よ、光榮は爾に歸す。

致命者讃詞、勝たれぬハリストスの致命者よ、爾等は苦しむる者の恐嚇を畏れずして、苦を以て樂と爲し、十字架の力を以て迷に勝ちて、永遠の生命の恩寵を受けたり。今爾等の血は我等の靈の爲に醫治と爲れり。我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

光榮、同調、人を愛する主よ、我等は節制の海の半を過りて、救の港として爾の自由なる苦の時を受けん。然れども爾は慈憐洪恩の主なるに因りて、我等に爾の光榮なる復活の日をも平安に見るを得しめ給へ。

   今も、同上。

十字架の伏拜は第一時課に之を行ふ。其時本週間の主日に録されたる自調の讃頌を歌ふ、第二調、「信者よ、來りて、生を施す木に伏拜せん」。其他。并に發放詞。

          ~~~~~~

 

 

   第六時課に預言の讃詞、第六調。

主宰よ、我等爾の十宇架に伏拜し、爾の聖なる復活を讃榮す。

 

    提綱、第六十九聖詠、第六調。

---------------------[大齋第四週間水曜日 第六時課  623]---------------------

神よ、凡そ爾を求むる者は、願はくは爾の爲に喜び樂しまん。句、禍を我に望む者は、願はくは退けられて嘲られん。

 

   イサイヤの預言書の讀。第二十六、二十七章。

視よ、主は其居所より出でて、地に在る者を其不法の爲に罰せんとす、地も其呑みたる血を露し、復其殺されたる者を掩はざらん。當日主は重くして大なる硬き劍を以て、直く走る蛇「レワィアファン」、及び曲り紆る蛇「レワィアファン」を撃ち、又海に在る龍を殺さん。當日爾等彼の事、愛すべき葡萄園の事を歌へ、我主は之を保ち、刻刻之に灌ぎ、晝夜之を護る、之に侵し入る者なからん爲なり。我に怒なし、然れども若し誰か我に敵して、其中に棘と荊とで樹てば、我之に向ひて戰ひ、悉く之を焚き盡さん。或は我の防護に趨り付きて、我と和平を結ばんか、然らば我と和平を結ぶべし。後來の日にイアコフは根を深くし、イズライリは芽を出し、花を發き、果は世界を盈たさん。其彼を撻ちしは、彼を撻ちたる者を撻ちし如くせしか、其彼を殺ししは、彼を殺したる者の殺されし如くせしか、爾彼を棄つる時、度を以て彼を罰せり、東風の日に於けるが如く、爾の強き吹嘘にて彼を吹き出せり。此に縁りてイヤコフの不法は抹され、之に因りて結ぶ果は其罪を除くを爲さん、彼が諸祭壇の悉くの石を碎けたる石灰と爲し、森と日の像とは再建たざらん時なり。

---------------------[大齋第四週間水曜日 第六時課 0624]---------------------

 

   提綱、第七十聖詠、第六調。

主よ、我爾を恃む、願はくは我世世に羞を得ざらん。句、爾の義に縁りて我を援け給へ。

 

          ~~~~~~

 

 

   中の週間の水曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に十句を立てて歌ふ、左の自調及び致命者讃詞并に月課經の四章。

 

   自調の讃頌、第四調。

諸善の縁由なる齋は今其中節に入り、過ぎ去りし日を以て悦を爲して、是より先の日をも善く用いんことを勸む、蓋益善に勤勞せば、益善は加はる。故に我等萬善を賜ふ主ハリストスの悦を爲して呼ぶ、我等の爲に齋して、十字架に釘せらるるを忍び給ひし主よ、我等に定罪なく平安に生を送り、宜しきに合ひて父及び聖神

---------------------[大齋第四週間水曜日 晩課  625]---------------------

と偕に爾を讃榮する者に爾の神聖なる「パスハ」にも與るを得しめ給へ。

 

又、第五調、隠に諸徳を行ひて、屬神の報を望む者は市及び街に之を顯さずして、心の中に守る、衆人の隠に行ふことを知る主は我等に節制の報を賜ふ。我等は齋を行ふ時憂はしき容を爲さずして、吾が靈の密室にりて、絶えず呼ばん、天に在す吾等の父よ、祈る、我等を誘に導かず、猶我等を兇惡より救ひ給へ。

致命者讃詞、聖なる致命者よ、爾等は靈の愛を傾けてハリストスを愛し、彼を諱まずして、種種の苦を忍び、殘虐者の強暴を倒し、屈せず撓まざる信を守りて、天に移り給へり。故に主の前に勇を得て、世界に平安、我等の靈に大なる憐を賜はんことを祈り給へ。

 

   又、讃頌、第一調。

我等皆齋の水を以て靈を洗ひて、生を施す尊き主の十字架に就き、信を以て伏拜して、神聖なる光照を斟み、平安と、大なる憐と、永遠の救とを得ん。使徒の譽たる十字架、首領、能力、天使首の繞る所の者よ、爾に伏拜する者を凡の害より救ひ、我等に善く齋の神聖なる途を過ぎて、救の日に至るを得しめよ、我等此

---------------------[大齋第四週間水曜日 晩課 626]---------------------

を以て救はれん。

 

   又、第七調。

我等今日主の十字架に伏拜して呼ばん、生命の木、地獄を破る者よ、慶べ、世界の歡喜、朽壞を滅す者よ、慶べ、爾の力を以て惡鬼を逐ふ者よ、慶べ。信者の固、勝たれぬ武器よ、祈る、爾に接吻する者を護りて聖にせよ。

 

   又、月課經の四章。

   光榮、今も、自調。第八調。

今日性の捫られぬ者は我に捫らる、我を苦難より解く者は苦難を受く。瞽に光を賜ふ者は不法の口より唾せられ、虜にせられし者の爲に其肩を笞に予ふ。至浄なる童貞女母は彼を十字架に見て、痛く哀しみて曰へり、噫吾が子よ、何ぞ之を爲したる、衆人より美しき者は氣息なく、華榮なく、美しき容なき者と現る。噫吾が光よ、我爾の寢ぬるを見るに忍びず、心は裂かれ、利き劍は我が靈を貫く。我爾の苦を尊み歌ひ、爾の慈憐に伏拜す、恒忍の主よ、光榮は爾に歸す。

 

   聖入「穏なる光」。

   提綱、第七十一聖詠、第四調。

---------------------[大齋第四週間水曜日 晩課  627]---------------------

主神、イズライリの神、獨奇跡を行ふ者は崇め讃めらる。句、神よ、爾の裁判を王に賜ひ、爾の義を王の子に賜へ。

 

   創世記の讀。第九、十章。

ノイの諸子、方舟より出でたる者は、シム、ハム、イアフェトなりき。ハムはハナアンの父なり。是れノイの三人の子なり、全地の諸民は彼等より出でて廣まれり。ノイ地を耕すことを始めて葡萄園を樹えたり、葡萄酒を飲みて醉ひ、其幕の中に在りて裸と爲れり。ハナアンの父ハムは其父の裸なるを見て、出でて其二人の兄弟に語れり。シムとイアフェとは衣を取りて、之を兩肩に掛け、後向に行きて其父の裸體を蓋へり、彼等の面を後に向けて、其父の裸體を見ざりき。ノイ酒醒めて、其稚子の如何なる事を彼に爲ししかを知れり、乃曰へり、ハナアン詛はるべし、彼は諸僕の僕と爲りて其兄弟に事へん。又曰へり、シムの主神は崇め讃めらるる哉、ハナアンは彼の僕と爲らん、願はくは神はイアフェトを廣大にせん、願はくは彼はシムの幕に住はん、ハナアンは彼の僕と爲らん。ノイは洪水の後三百五十年生存せり。ノイの齢は總て九百五十年なりき、而して死せり。ノイの子シム、ハム、イアフェトの世系は是なり。洪水の後彼等に諸子生れたり。

 

---------------------[大齋第四週間水曜日 晩課 628]---------------------

   提綱、第七十二聖詠、第四調。

我に在りては神に近づくは善し。句、神は何ぞイズライリ人に、心の浄き者に仁慈なる。

 

   箴言の讀。第十二、十三章。

達者は知識を蔵し、愚なる者の心は愚なる事を示す。勤むる者の手は主り、惰る者は貢を納めん。憂は人の心に在りて彼を屈ませ、善き言は彼を樂します。義者は其鄰に途を示し、惡者の途は彼等を迷はす。惰る人は獵せし物を燔かず、勤むる人の産業は價貴し。義の途には生命あり、惡を忘れざる者の途は死に至る、智慧ある子は父の敎訓を聽き、不順の子は責を聽かず。人は其口の果に因りて善を食ひ、不法の者の靈は惡を食はん。其口を守る者は己の生命を守り、其唇を廣く哆くる者は艱難を來す。惰る者の靈は望めども得る所なし、勤むる者の靈は飽かん。義者はの言を惡み、惡者は羞を蒙りて勇なからん。義は罪なき者を其途に守り、惡は罪人を仆す。自ら富めりと爲して一も有るなき者あり、自ら貧しと爲して財多き者あり。人は其富を以て己の生命を贖ふことあり、唯貧しき者は威嚇を聽くこともあらず。義者の光は輝き、惡者の燈は滅ゆ。詐僞ある靈は罪中に迷ひ、義者は惠みて憐む。

---------------------[大齋第四週間水曜日 晩課  629]---------------------

  次に先備聖體禮儀を行ふ。

 

         ~~~~~~

 

 

  中の週間の木曜日の早課

 

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の使徒の坐誦讃詞。

第二の誦文の後に左の坐誦讃詞、イオシフ師の作。第一調。

光榮なる使徒、我が靈の爲の祈者よ、爾等は十字架の力に固められて、實に敵の悉くの迷を破れり。故に今日其伏拜に於て喜びて、獨人を愛する主に我等の爲に祈り給ふ。二次。

   生神女讃詞

マリヤ、主宰の尊き居處よ、我等甚しき失望と、諸罪と、憂愁との淵に陷りし者を起し給へ。蓋爾は罪なる者の救と、援助と、有能なる轉達にして、爾の諸僕を救ひ給ふ。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  630]---------------------

第三の誦文の後に坐誦讃詞、フェオドル師の作。第七調。

主よ、我等は今日前に置かれたる爾の十字架を見て、信を以て之に就き、詩賦と歌頌とを奉りて、畏懼と喜悦とを以て之に接吻す。獨大仁慈なる主よ、其顯見を以て爾の諸僕を聖にし、爾の世界を平安ならしめ給へ。二次。

   生神女讃詞

主よ、我等は爾の民、爾の草場の羊、迷ひて亡に近き者なり。人を愛する主よ、我等を還し、牧者として散らされし我等を聚め、爾の牧群を憐み給へ。獨罪なき者よ、生神女の祈に由りて我等に慈憐を垂れ給へ。

 

規程は月課經の、又左の三歌頌、イオシフ師の作。并に歌頌を誦文す。第一調。

 

   第四歌頌

イルモス、「神の預言者アウワクムは我等と偕に」。

我等に成聖の恩寵を賜ふ聖なる十字架、使徒の固及び譽よ、爾は今日前に置かれて全地に伏拜せられ、我等にも齋の時を輙く過さしむ。

モイセイは十字架を預象し、手を舒べてアマリクに勝てり。我等は之を畫し、手を舒べて祈し且齋す、常に猜忌に因りて我等と戰ふ惡鬼の軍に勝たん爲なり。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  631]---------------------

聖なる門徒よ、爾等は十字架の神聖なる犁を以て地を耕して、之を豊に敬虔の實を結ぶ者と爲せり。故に我等は祈の聲を以て爾等を讃め揚げて、常にハリストスを讃榮す。

生神女讃詞、仁慈なる神の母よ、吾が靈、兇惡者が我を誘ひて惡しき風習を以て惡しくせし者を善ならしめ給へ、我が爾讃美たる者を救の縁由として常に讃め歌はん爲なり。

 

   又、第七調。イルモス、「ハリストスよ、預言者アウワクムは」。

今日至聖なる十字架は進めらる、就きて之に接吻せん、蓋此は我等の救の角なり。ハリストスの十字架、勝たれぬ武器よ、爾を畫するに因りて爾の恩寵は來りて、惡鬼の大數を逐ふ。

 

三者讃詞、父、子、及び至聖なる神よ、我爾を性に於て惟一者として歌ひ、位に於て三者として尊む。

生神女讃詞、夫に與からざる純潔なる少女よ、爾は手に四極を持つ神、萬有より先に存在する者を生み給へり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  632]---------------------

世界の祈者たる使徒よ、我等武器としてハリストスの十字架を保つ者の救の爲にも祈り給へ。

イルモス、ハリストスよ、預言者アウワクムは爾が肉體を以て來るを信ぜしめて呼べり、主よ、光榮は爾の力に歸す。

 

   第八歌頌

イルモス、「斯の擇ばれたる聖なる日は」。

三合格の神聖なる十字架よ、慶べ、聖三者の一位、肉體を取りし主は爾の上に擧げられて、我等不虔の深處に陷りし者を救ひて、世世に彼を讃榮せしむ。』

言の門徒よ、爾等は勝たれぬ力たる十字架を獲て、兇惡者の甚しき權に奴隷とせられし者を釋きて、主に歌ふ、我等世世に爾を崇め讃む。

鳴呼言よ、彼の寶座、爾が其上に坐して、吾が無感覺を責め、我が隠に行ひし事を顯さんとする所の者は何ぞ畏るべき。祈る、ハリストスよ、性の仁慈なる主として、其時我を宥め給へ。

生神女讃詞、イイススよ、爾は父の懐を離れずして、童貞女の懐に臥し給へり、爾が慈憐に因りて其形を受けし所の人類を喚び起さん爲なり。故に我等人人は爾を世世に歌ふ。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  633]---------------------

   又、イルモス、「惟一無原なる光榮の王」。

主の十字架の尊き木よ、我等は爾の伏拜の週間を尊みて、爾に伏拜して呼ぶ、司祭よ、主を歌へ、人人よ、彼を萬世に讃め揚げよ。

嗚呼奇跡や、世世の王よ、爾は己が釘せられし木を爾の諸僕に見て之に伏拜するを得しめ給へり。故に我等畏を以て世世に爾を歌ふ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、嗚呼一性の至聖なる三者、父、子、及び至聖なる神、惟一の神よ、我爾の分れざる權柄を讃榮し、惟一の國を世世に歌ふ。

生神女讃詞、アダムを己の像に循ひて造り、其合成より出でて、古の詛を解きたる主を、司祭よ、歌へ、人人よ、萬世に讃め揚げよ。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

敎會の十二絃の琴、睿智なる言を歌ふ使徒よ、爾等を歌頌する者が主の苦を見て、世世に之を歌はん爲に祈り給へ。

  我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、惟一無原なる光榮の王、天軍の崇め讃め、天使の品位の戰く主を、司祭よ、歌へ、人人よ、彼を世世に讃め揚げよ。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  634]---------------------

 

   第九歌頌

イルモス、「新なるイエルサリムよ、光り光れよ」。

神の敎會よ、爾が衆信者に伏拜の爲に進むる所の十字架の光線にて輝き光れよ。爾惡鬼の大數よ、幽暗に滿たされて逃ぐべし。

神聖なる十字架は節制の力、警醒する者の扶助者、修齋者の防固、戰ふ者の保護者なり。信者よ、愛を以て之に就きて、欣ばしく伏拜せん。

ハリストスの敎會の神聖の基たる光榮なる使徒よ、我等衆を敬虔に堅く守りて、爾等を選びし主の堅固なる石の上に堅め給へ。

生神女讃詞、天使首の聲に由りて欣慶を受けし潔き者よ、今靈を害する吾が心の憂を解きて、我に欣慶を成す涕泣を與へ給へ、我が彼處に神聖なる慰を得ん爲なり。

   又、イルモス、「我等は爾、至浄なる母、童貞女」。

最尊き木、今日伏拜せらるるハリストスの十字架よ、爾は昔預象せられて、メッラの流を甘くせり、今は吾が節制を甘くせよ。

ハリストスの十字架よ、我等皆爾國の勝たれぬ武器、軍の力、國政の固なる者を歌を以て崇め讃む。

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  635]---------------------

三者讃詞、我等衆信者は敬虔の心を抱きて、爾無原なる父及び主宰、同無原の言と聖神とを崇め讃む。

生神女讃詞、我等は爾光榮なる惟一の生神女、容れ難き言を腹に容れて身にて生みし者を、歌を以て崇め讃む。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

我等は爾火の言たる諸使徒、凡の迷の物質を焚きて、敬虔を世界に植えし者を、歌を以て崇め讃む。

イルモス、我等は爾、至浄なる母、童貞女、容れ難き言を腹に容れて、身にて生みし者を、歌を以て崇め讃む。

   光耀歌は本調の。

   挿句に自調の讃頌、二次。第七調。

我等信者は税吏の痛悔に效ひ、ファリセイの如く高ぶらずして、心の深處より歎息を衆人の恩主たる神に捧げん。蓋彼は誡めて曰へり、凡そ自ら高くする者は卑くせられ、自ら卑くする者は高くせられんと。故に我等は同心に彼に呼ばん、神よ、我等罪人を潔めて、救ひ給へ。

致命者讃詞、受難者致命者は一の事を慕ひ、一の事に目を注ぎ、一の事を生命の道

---------------------[大齋第四週間木曜日 早課  636]---------------------

と爲せり、是れ互に勵みてハリストスの爲に死を受くることなり。鳴呼奇跡や、競ひて寶の如くに苦を求めて、相語りて云ふ、我等若今日死せずば後に必死せん、是れ生ける者の免れざる分なり、然らば最必要なる事を行ひ、公の事を己に歸し、死を以て生を買はんと。神よ彼等の祈に因りて我等を憐み給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、我等爾に、仁慈なる主よ、光榮は爾に歸すと、呼ぶ者の生命を、生神女の祈に由りて、平安ならしめ給へ。

            ~~~~~~

 

   第六時課に預言の讃詞、第六調。

主宰よ、我等爾の十字架に伏拜し、爾の聖なる復活を讃榮す。

 

   提綱、第七十三聖詠、第四調。

神、我が古世よりの王は救を地の中に作せり。句、神よ、何爲れぞ永く我等を棄てたる。

 

   イサイヤの預言書の讀。第二十八章。

主は是くの如く言ふ、爾等侮慢者、イエルサリムに在る斯の民を治むる者よ、主の言を聽け。爾等云ふ、我等死と約を立て、地獄と契を結べり、溢るる災害の過ぐる時、

---------------------[大齋第四週間木曜日 第六時課 637]---------------------

此れ我等に及ばざらん、蓋我等は僞を以て我が避所と爲し、欺を以て身を匿さんと。故に主神は是くの如く言ふ、視よ、我シオンに一の石を置きて其基と爲せり、此れ試みられたる屋隅の石、貴くして堅く置かれたる石なり、之を信ずる者は羞を得ざらん。我審判を以て尺度と爲し、公義を以て權衡と爲さん、雹は僞の避所を壞り、水は匿所を溺さん。爾等が死と立てし約は破れ、地獄と結びし契は立たざらん。溢るる災害の行く時爾等踐まれん、其行く毎に爾等を執へん、朝毎に行き、晝も夜も然り、此の音信を聞くのみにても慴かん。床短くして身を舒ぶる能はず、衾狭くして身を蔽ふ能はざるに至らん。蓋主はペラチムの山に於けるが如く起ち、ガワヲンの谷に於けるが如く怒を發せん、其作爲、非常の作爲を爲し、其行、奇妙の行を成さん爲なり。故に侮る毋れ、恐くは爾等の縲絏は更に嚴しくならん、蓋我は主神サワオフより、全地の爲に敗亡の定められたるを聞けり。

 

    提綱、第七十四聖詠、第四調。

我永く傳へて、イアコフの神を歌ひ頌めん。句、神よ、爾を讃榮し、爾を讃榮す。

           ~~~~~~

 

 

---------------------[大齋第四週間木曜日 第六時課  638]---------------------

 

  中の週間の木曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に六句を立てて、左の讃頌三章を歌ふ、第四調。

主よ、我等信者は爾の常に福なる十字架、爾が此を以て我等を救ひし者に接吻するを得て、爾の慈憐を歌ひ、熱切に爾に祈る、救世主よ、衆に爾の救の喜悦を與へ、我等に痛悔を以て爾の尊き苦と爾の復活とを見るを得しめ給へ。』

主よ、爾は十字架に擧げられ、死を忍びて死を死し、爾の生を施す言を以て死者を復活せしめ給へり。故に我爾に祈る、人を愛する主よ、罪に由りて殺されたる吾が靈を活かして、我に齋の爾の聖なる日に於て傷感と諸惡の赦とを與へ給へ。

 

   又讃頌、フェオドル師の作。第四調。

神我が救世主よ、我等喜を以て爾の聖なる十字架を見て、之に接吻するを得て、爾に祈る、願はくは我等は齋に堅められて、爾の至浄なる苦にも至り、之に伏拜して、釘殺、戈、海絨、及び葦を歌はん、蓋爾は此等を以て我等を不死の者と爲して、復古の欣ばしき生命に升せ給へり、人を愛する主なればなり。故に我等今感謝して爾を讃榮す。

---------------------[大齋第四週間木曜日 晩課  639]---------------------

    又月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。

    提綱、第七十五聖詠、第八調。

主、爾等の神に誓を作して償へよ。句、神はイウデヤに知られ、其名はイズライリに大なり。

 

    創世記の讀。第十、十一章。

ノイの諸子の諸族は其世系と其邦國とに循ひて是くの如し。洪水の後此等より地の邦國の諸民は分れ出でたり。全地は一の言一の音のみなりき。茲に人衆東より徙りて、センナアルの地に平野を得て、其處に居たり。彼等互に曰へり、來りて甎を作り、火を以て之をかん。乃石に代へて甎を獲、灰沙に代へて石漆を獲たり。又曰へり、來りて邑と塔とを建て、塔の頂を天に至らしめん、斯くして我等名を揚げて、全地の面に散ずるを免れん。主は人衆の建つると所の邑と塔とを見ん爲に降れり。主曰へり、視よ、民は一にして、言語も亦衆に一なり、彼等既に之を爲すことを始めたり、今凡そ彼等の爲さんと圖る所は、必之を止めざらん、來れ我等降りて、彼處に彼等の舌を淆し、互に言語を通ずるを得ざらしめん。是に於て主は彼等を全地の面に散ぜしめ、彼等邑と塔とを建つるを罷めたり。是の故に其名はワワィロン(淆亂)と呼ばれたり、主は彼處に全地の言語を淆し、主は彼處より彼等を全地

---------------------[大齋第四週間木曜日 晩課 640]---------------------

の面に散ぜしめたればなり。

 

   提綱、第七十六聖詠、第八調。

我が聲神に向ふ、我彼に呼ばん、我が聲神に向ふ、彼我に聆かん。句、我憂の日に主を尋ぬ。

 

   箴言の讀。第十三、十四章。

既に得たる望は心に甘し、惡を棄つるは愚者の惡む所なり。智者と偕に行く者は智者と爲り、愚者の友と爲る者は亂されん。害は罪人を追ひ、義者は善き報を受く。善人は嗣業を子の子に遺す、罪人の財は義者の爲に畜へらる。義者は富を樂しみて多くの年を送り、不義者は速に亡ぶ。鞭を惜しむ者は其子を惡むなり、子を愛する者は嚴しく之を責む。義者は食を得て飽く、惡者の腹はし。智慧ある婦は其家を建て、愚なる婦は己の手を以て之を毀つ。直き途を行く者は主を畏れ、其途の曲れる者は彼を藐る。愚者の口には驕傲の鞭あり、智者の唇は己を守る。牛なき處には槽虚し、牛の力に因りて土産多し。正しき證者はらず、正しからざる證者はを吐く。侮慢者は智慧を求むれども得ず、哲者は知識を得ること易し。

   挿句に自調、第六調。

---------------------[大齋第四週間木曜日 晩課  641]---------------------

吾が靈よ、爾の爲に己を卑くして、十字架及び死にまで至りし主に、高ぶりより卑きが出で、卑きより高きが出づるを學びて、諸徳を以て高ぶる勿れ、傲慢なるファリセイの如く、己を義と爲し、近者を罪する勿れ、乃謙卑なる思念の中に只爾の諸罪を記憶して、税吏の如く呼べ、神よ、我罪人を潔めて、我を救ひ給へ。二次。

致命者讃詞、主よ、爾の致命者は爾を諱まざりき、爾の誡より離れざりき。彼等の祈に因りて我等を憐み給へ。

光榮、今も、十字架生神女讃詞、純潔なる者は爾が十字架に懸れるを見る時呼べり、吾が子よ、我が見る所の驚くべき祕密は何ぞ、生を賜ふ主よ、如何ぞ身にて懸けられて、木の上に死する。

 

 

 

         ~~~~~~

 

 

 

---------------------[大齋第四週間木曜日 晩課  642]---------------------

 

 

  中の週間の金曜日の早課

 

本調の聖三の讃歌。

第一の聖詠誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞を誦す。第二の誦文の後に左の坐誦讃詞、イオシフ師の作。第四調。

節制の時を聖にする至尊なる十字架は見らる、我等今日之に伏拜して呼ばん、人を愛する主宰よ、其助にて我等に齋の餘日を傷感を以て送りて、我が救はれし所の爾が生を施す苦を見るを得しめ給へ。二次。

光榮、今も、十字架生神女讃詞、ハリストスよ、爾無原なる父より生れし主を末の時に生みし者は爾が十字架に懸れるを見て呼べり、鳴呼我が至愛なる子イイススよ、爾諸天使より神として讃榮せらるる者は如何ぞ今甘じて不法の人人より十字架に釘せらるる。恒忍なる主よ、我爾を歌ふ。

   第三の誦文の後に坐誦讃詞、第四調。

ハリストスよ、我等は今吾が靈の光なる爾の至尊なる十字架を見て、歡喜を以て之に伏拜し、樂しみて呼ばん、光榮は爾甘じて其上に擧げられし主に歸す、光榮は爾此を以て萬物を照しし主に歸す。我等は此に因りて絶えず歌を以て爾を讃榮す。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  643]---------------------

十字架生神女讃詞、神の言よ、聘女ならぬ爾の母は爾が十字架に擧げられしを見る時、母として泣きて曰へり、吾が子よ、此の新なる驚くべき奇跡は何ぞや、爾萬有の生命、慈憐なるに因りて死者を活かさんと欲する者は如何ぞ死に與る。

 

第五十聖詠。規程は尊き十字架の。月課經の規程を晩堂課に歌ふ。

規程、其冠詞は、我衆伏拜せらるる木を歌ふ。第八調。

 

    第一歌頌

イルモス、「昔奇跡を行ふモイセイの杖は」。

我等今日潔き智慧を以て主の十字架に來りて、敬虔の心を以て之に伏拜せん、蓋此は置かれて、伏拜する者に救の成聖と光照、光榮と慈憐を與ふ。

生命を施す十字架、置かれて見らるる者は恩寵の輝ける光を放つ。我等就きて、樂の光照と、救と、赦免とを承けて、讃美を主に奉らん。

觀る者の前に奇異なる觀覧たる尊き十字架は置かれて、潔き心を以て此に來る人人の爲に泉の如く神聖なる恩賜を涌かし、諸罪を解き、諸病を醫し、善き思を竪む。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  644]---------------------

海を截り分つ杖は十字架の勝利を預象せり。我等此を以て信に由りて溺るるなく生命の穏ならざる水を渉り、罪の凡の流を免れて、神聖なる平穏に滿てらる。

 

生神女讃詞、子よ、我言ひ難く爾を生みし時産苦を免れたり、如何ぞ今苦痛に滿てらるる、蓋爾寄する所なく地を懸けし主が罪犯者の如く木の上に懸れるを見ると、純潔なる者は泣きて言へり。

 

   第三歌頌

イルモス、「始に智慧にて天を堅め」。

凡の善を與ふる十字架は伏拜して見らる、凡の造物は喜を以て祝ひて、此の上に甘じて擧げられし我が神の恩寵にて照さる。

我等は聖にせられし節制の中節に於て十字架の光線の光に輝かされ、諸罪の暗昧を脱れて呼ばん、衆人の光照たる慈憐の主よ、光榮は爾に歸す。

十字架よ、我等爾を歌頌し、信を以て接吻して求む、爾の力を以て我等を敵の網より出し、我等衆爾を尊む者を救の港に導き給へ。

 

生神女讃詞、潔き童貞女は殺されたる生命を十字架の上に見て、心の苦痛に勝へずして、泣きて呼べり、鳴呼吾が子よ、不法なる民は何をか爾に報いたる。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  645]---------------------

   坐誦讃詞、第六調。

ハリストス主よ、爾の十字架の木の樹てられしのみにして、死の基は動けり、蓋地獄は貪りて呑みし者を戰きて放てり。聖なる者よ、爾は其爲しし救を我等に顯し給へり、故に我等爾を讃揚す。神の子よ、我等を憐み給へ。

   光榮は同上の末辭。今も、

獨人を愛する主よ、今日預言者の言は應へり。蓋視よ、我等は爾の足の立ちし處に伏拜し、木に縁る救を嘗めて、生神女の祈を以て罪に縁る苦を釋かるるを得たり。

 

   第四歌頌

イルモス、「主よ、爾は我の固、我の力なり」。

視よ、人人の有能なる帲幪及び更新、信の敗られぬ武器たる救の十字架は置かれて見られ、熱信に此に來る衆の心を恩寵を以て聖にして照す。

人を愛する主よ、節制の中節に衆人の中に置かれたる至善なる尊き十字架、爾が甘じて其上に地の中に擧げられし者は伏拜せらるるを以て世界を聖にして、惡鬼の軍を遠ざく。

天及び全地は共に樂しみ、受難者、致命者、使徒、諸義人の靈は今大に喜ぶ、神

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課 0646]---------------------

の賜ひし衆を救ふ木が信者の中に置かれて、恩寵を以て彼等を聖にするを見ればなり。

主よ、我良心を失ひたる者は爾の法を守らざりしに因りて、爾が天より人人の行を審判する爲に來らん時に定罪せらるべし。故に爾に呼ぶ、爾の十字架の力を以て我を反正せしめ、痛悔の涙を我に與へて、我を救ひ給へ。

生神女讃詞、子よ、我童貞の腹より爾を生みし者は爾が木に懸けらるるを見て訝りて、奥密の高きと爾の大なる議定の深きとを悟らずと、純潔なる者は呼べり。我等黙さざる聲を以て彼を神の母として讃揚す。

 

   第五歌頌

イルモス、「隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし」。

諸民よ、呼びて歌へ、諸族よ、動なき固なる十字架を賜ひし神を讃美せよ。我等今節制の時に之を樂しみて、心と思とを養ふ。

至聖なる十字架よ、無形の衆軍は爾を尊み、我等人人も塵の口にて今日爾に觸れて、愛を以て成聖と祝福とを汲みて、爾の上に釘せられし主を讃榮す。』

慈憐なる主よ、吾が靈の固結したる慾を醫して、我を爾の聖なる苦に伏拜する者と爲し給へ。至仁なる主よ、齋の時に我を改めて、諸惡より離れしめ給へ。』

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  647]---------------------

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾は仁慈に由りて爾より不可思議に生れし主が十字架に在るを見て、心刺されて言へり、嗚呼我が神聖なる子よ、如何ぞ爾は衆の爲に苦しめる、主よ、我爾の慈憐に伏拜す。

 

   三歌頌、第四調。

   第五歌頌

イルモス、「萬物は爾が神妙の光榮に驚かざるなし」。

獨義なる主、救世主よ、光體は爾恒忍なる主が非義に木の上に釘せられて、爾の權能を以て兇惡者の暗き權柄を辱かしむるを見て、己の光を隠せり。

我等は齋の水を以て面を洗ひて、木に接吻せん、蓋死すべき肉體を衣たるハリストス、獨萬有の主たる者は其上に擧げられたり、我等を殺しし者を殺さん爲なり。

至尊なる十字架、使徒の譽、受難者の武器、司祭等の光榮、克肖者の保護、衆信者の守護者よ、信を以て爾に伏拜する者を守りて聖にし給へ。

生神女讃詞、葡萄の樹たる童貞女は其生ぜし所の房が木に懸れるを見て呼べり、子よ、爾至りて恒忍なる主を妄に十字架に釘せし諸敵の醉を醒ます甘味を滴らせ給へ。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  648]---------------------

   又、同調。イルモス、「生を施すハリストスの十字架よ」。

今日爾の十字架、伏拜せらるる生命の木が進めらるるに、世界は神の來るに因りて喜びて、之に接吻す。

主よ、天の役者は前に置かれたる爾の十字架を見て、爾を歌ひ、惡鬼は爾の權能に忍びずして戰く。

 

三者讃詞、我等は正敎の信を抱きて、三者なる父、子、及び聖神、惟一の神性、三位の惟一者を讃榮せん。

生神女讃詞、我等信者は正敎の信を抱きて、爾言ひ難くハリストス我等の神、惟一の大仁慈なる主を生みし者を、母及び童貞女として讃揚す。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

黄楊と松と杉との上に釘せられし神の子よ、我等衆を聖にして、爾の生を施す苦を見るを得しめ給へ。

イルモス、生を施すハリストスの十字架よ、我等夜より寤めて、畏を以て爾に伏拜する者を照して、常に我等に救の日を輝かし給へ。

 

   第六歌頌

イルモス、「救世主よ、我を浄め給へ」。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  649]---------------------

十宇架が地に樹てられしに、惡鬼は倒れ、我等は今其至榮にして前に置かれたるを見て、之に接吻して、罪の倒より起く。

我等は爾ハリストスを王及び主として崇め讃めて、爾が我等に賜ひし壞られぬ墻なる十字架に接吻して、神聖なる齋の中節を樂しむ。

我等衆に大なる恩賜を與ふる主の十字架は置かれて見らる。人人よ、之に就きて、心と靈との光照を汲まん。

 

生神女讃詞、衆人の轉達なる潔き童貞女よ、我等を凡の惡を齋まん爲に堅め、常に邪なる、行を禁ずるを助け給へ。

 

   小讃詞、第七調。

の劍は既にエデムの門を守らず、蓋之を卻くる至榮なる十字架の木は至れり。死の刺及び地獄の勝は亡びたり、蓋爾は、吾が救世主よ、現れて、地獄に在る者に呼べり、復樂園に入れ。

 

   同讃詞

ピラトはゴルゴファに於て三の十字架を樹てたり、二は盗賊の爲、一は生命を施す者の爲なり。地獄は之を見て、下にある者に謂へり、鳴呼我が役者、我が能力よ、誰か釘を吾が心に打ち、俄に木の戈を以て我を刺したる。我割かれて、吾が内

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  650]---------------------

は痛み、腹は傷つけられ、吾が感覺は吾が神を擾して、我はアダム及びアダムより以來木に縁りて我に與へられし者を吐くを促さる、蓋木は復彼等を樂園に入らしむ。

 

   第七歌頌

イルモス、「昔ワワィロンに於て火は神の降臨に慙ぢたり」。

時より上なる主は時の中に肉體を衣る者と現れて、其仁慈に因りて、我等の固結したる慾を、節制の時に、斯の我等を聖にする神聖なる十字架の置かるる時に醫し給ふ。

主よ、我等爾の權柄を歌ひ、讃め、崇め、之に伏拜す、蓋爾は我等爾の諸僕に神聖なる十字架、盡きざる樂及び吾が靈體の守護者たる者を賜へり。

主よ、詰問の日に於て我を惡の爲に定罪せられし者と爲す勿れ、爾の顔より恥を蒙りし者として遠ざくる勿れ。求む、我を宥めて、爾の尊き十字架を以て我を救ひ給へ、爾は至仁なる主なればなり

十字架よ、モイセイは木を以て最苦き水を甘くして、爾の恩寵を預象せり、蓋我等は爾の力に因りて諸慾の苦きを免る。故に今靈の傷感を以て爾に接吻する我等を樂しましめ給へ。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  651]---------------------

生神女讃詞、敵の悉くの惡謀を抑制せし女宰、神の母よ、爾の祈を以て我が智慧の狭きを廣くし、我に狭き途を以て廣き生命に往くを敎へ給へ。

 

   第八歌頌

イルモス、「ハルデヤの窘迫者は怒に堪へずして」。

至尊なる十字架よ、昔神聖なるエリセイは木を以て斧を河より引き上げて、迴に爾を預兆せり、蓋我等は爾に由りて迷の深處より確なる信に上げられて、今日爾を見、熱切に爾に伏拜するを得て、救を承く。

至尊なる十字架よ、イアコフは祝福に於て迴に爾を明に預象せり。我等は恩寵の時に於て爾を覩るを得て、皆疑なき信を以て就きて、爾に觸れて、豊なる祝福と、光と、諸罪の赦と、救とを承く。

我等は徳行を以て潔められて、節制の中節に樂しみて主の十字架に就き、信を以て之に接吻せん、其力に治められ照されて、善き旨を以て途を終へて、神聖なる苦に至らん爲なり。

 

三者讃詞、一性にして同無原、同永在、同寶座なる單一の神性、位に於て分れたる、生れざる父、子、及び聖神、造られざる性、惟一なる神を我等皆讃揚して歌はん、司祭よ、讃め揚げよ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  652]---------------------

生神女讃詞、吾が子、無原なる主よ、我今爾が無なる羔として、不法者より十字架に釘せられて懸れるを見て、痛く泣き號びて、母たる苦に堪へずと、純潔なる童貞女は呼べり。我等は黙さざる聲を以て職として彼を萬世に歌はん。

   又、イルモス、「生神女の産は敬虔の少者を爐の中に守れり」。

恒忍なる主よ、造物は爾苦に與らざる者の苦を見て、爾と偕に苦しみ、日は晦み、磐は砕け、全地は震ひ、畏を以て呼べり、造物は主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

我が洪恩なる神救世主よ、我を内密に責むる葦間の猛獸を禁ぜよ、蓋爾は、ハリストスよ、恥づべき強暴を忍び、葦にて打たれたり、凡そ古の罪犯に由りて辱かしめられし者に尊貴を還さんと欲したればなり。

至りて義なる審判者よ、我爾の畏るべき審判を心の中に入るる時、我が定罪に當る行を思ひて、恐れ戰きて、悲しみ泣く。故に救世主よ、爾の多くの慈憐に祈る、願はくは我が惡の多きは爾に勝たざらん。

生神女讃詞、我産苦なく爾を生みし者は爾が十字架に釘せらるるに因りて苦痛を忍び、吾が内は燬かる、蓋恒忍なる主よ、爾は釘にて打たれ、爾の脅は戈にて刺されたりと、至浄なる童貞女は呼べり。我等彼を生神女として同心に歌頌す。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  653]---------------------

   又、イルモス、「神の悉くの作爲と悉くの造物とは」。

 

十字架の木の伏拜せらるるを見て、山は靈妙に義を流し、岡は樂を灌ぐべし。

ハリストスよ、我等此を世世に崇め讃む。

ハリストスよ、爾の十字架の恩寵は畏るべし、蓋惡鬼の軍を逐ひ、人人に醫治の水を與ふ。故に我等爾を世世に歌ふ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

我等は無原なる父及び子を聖神と偕に歌頌して、一性なる三者、惟一の原因、惟一の神を敬虔に讃め揚げて、世世に彼を歌はん。

生神女讃詞、童貞女よ、凡そ地上の者の舌は爾を歌ふ、蓋爾は世界を照す近づき難き光たるハリストス神を輝かせり。我等彼を世世に崇め讃む。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

人を愛する主よ、地の極は爾の十字架の伏拜を喜び、天使等は天に於て今日我等と偕に祝ひて、ハリストスよ、爾を世世に歌ふ。

イルモス、神の悉くの作爲と悉くの造物とは主を崇め讃めよ、蓋人人の爲に地に光は輝き、全地を照して、世界に永遠の生命を賜へり。人人よ、歌ひて、彼を

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  654]---------------------

世世に讃め揚げよ

 

   第九歌頌

イルモス、「天は懼れ、地の極は驚けり」。

至仁なる萬有の王、衆人の樂、甘味、光榮、永遠の救なる者よ、爾は昔爾の手と足とを十字架に釘せられ、脅を刺され、膽と醋とを飲ませられて、我の敗壞を醫し給へり。

神聖なる十字架よ、爾は青玉及び黄金より美しく、日の如く耀く。爾は限られたる處に臥し、無形なる軍に愼を以て繞られて、爾の力の神聖なる光線を以て遍く全地を照す。

十字架は荒さるる者の港、迷ふ者の指導及び防固、ハリストスの光榮、使徒と預言者との能力、修齋者の力、悉くの人の避所なり。我等皆此が中に置かるるを見て、節制を以て接吻す。

主よ、爾が己の造りし世界を審判する爲に地に來らん時、爾の天軍は前驅し、十字架は日の光線よりも明に輝かん。其力にて我を扶けて、我衆人より多く罪を犯しし者を救ひ給へ。

 

生神女讃詞、子よ、我は爾父が世世の先に生みし者を害なく腹より生みたり、

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  655]---------------------

如何ぞ爾は害はるる、人人は爾を苦しめ、戈を以て脅を刺し、手と足とを無慙に十字架に釘すと、純潔なる者は呼べり。我等宜しきに合ひて彼を崇め讃む。

   又、イルモス、「凡そ地に生るる者は聖神に照されて樂しみ」。

 

ハリストスよ、爾は十字架の木を以て罪のを滅し給へり。大仁慈なるハリストスよ、爾は手を舒べて、不節制にして唯一の食の爲に禁ぜられたる木の果に手を舒べたる者を敵の手より救ひ給へり。

ハリストスよ、無慾にして爾の尊き十字架に伏拜する者に衆人に苦なきを流す爾の苦を潔く見るを得しめて、我等の諸罪を顧みずして、我等を眞の復活の諸子と爲し給へ。

我等の爲に爾の血を流しし恩主よ、爾は我等死に陷りたる者を上げて、爾の復活を以て仇を解きて、我等を爾の父と和睦せしめ給へり。故に我等爾を神、全能なる贖罪主として讃榮す。

 

生神女讃詞、獨神の實在の睿知を生みし生神女、婚姻に與らざる童貞女、信者の確なる避所よ、祈る、我に誘惑者の惡謀と惡計と網とを逃れん爲に智慧を授け給へ。

又、イルモス、「潔き生神女よ、我等は種なき爾の産」。

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  656]---------------------

尊き十字架、天軍の繞れる者に我等も伏拜して崇め讃む。

我等は救世主の十字架、至淨なる木、我等先に死せし者が此に由りて生を得たる者を崇め讃む。

 

三者讃詞、我等は無原の父、同無原の子、及び同寶座の神、聖なる三者を崇め讃む。

生神女讃詞、潔き者よ、我等は爾聘女ならぬ母及び童貞女を讃め歌ふ、蓋爾は種なく造成主を生み給へり。

  我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスの十字架よ、我等爾を見及び伏拜するを得たる者が至聖なる苦に至るを助けよ。

イルモス、潔き生神女よ、我等は種なき爾の産なるハリストス我が神を黙さざる歌を以て崇め讃む。

 

   光耀歌、本調の。

   挿句に自調の讃頌、第四調。

眞實を試み、隠なることを知る主よ、爾は高慢に勝たれて、徳行を以て己を義と爲すファリセイを定罪し、傷感の情を以て祈りて、彼より定罪せらるる税吏を

---------------------[大齋第四週間金曜日 早課  657]---------------------

義と爲し給へり。十字架に釘せられし主よ、我等をも彼の痛悔に效ふ者と爲して、人を愛する主なるに因りて、赦罪を得しめ給へ。二次。

致命者讃詞、聖なる致命者よ、誰か爾等が戰ひし善き戰を見て驚かざらん、如何ぞ肉體に在りて、ハリストスを承認し、十字架を武器として、肉體なき敵に勝ちたる。故に爾等は宣しきに合ひて惡鬼を逐ふ者、諸敵を退くる者と顯れて、常に我等の靈の救はれんことを祈り給ふ。

   光榮、今も、自調の讃頌、第八調。

今日造物の主宰、光榮の主は十字架に釘せられ、脅を刺さる。敎會の甘味たる者は膽と醯とを嘗む、雲を以て天を覆ふ者は棘の冠を冠らせられ、侮辱の衣を衣せらる。手を以て人を造りし者は朽つべき手にて批たる、雲を以て天に服する者は頬を批たれ、唾及び傷、辱及び笞を受く。我の贖罪主并に神は、慈憐なるに因りて、我定罪せられし者の爲に一切を忍ぶ、世界を迷惑より救はん爲なり。

   第一時課及び發放詞。

          ~~~~~~

 

   第六時課に預言の讃詞、第六調。

---------------------[大齋第四週間金曜日 第六時課  658]---------------------

主宰よ我等爾の十字架に伏拜し、爾の聖なる復活を讃榮す。

 

   提綱、第七十七聖詠、第六調。

慈憐なる神は我等の罪を赦さん。句、我が民よ、我が法を聽け。

 

   イサイヤの預書書の讀。第二十九章。

主是くの如く言ふ、斯の民は口にて我に近づき、唇にて我を敬へども、其心は遠く我に離る、彼等は人の誡を敎と爲して、敎へて、徒に我を尊む。故に視よ、我復非常の事を以て斯の民を待たん、非常にして奇妙なる事なり、其智者の智は亡び、其謀畧者の謀畧は失せん。禍なる哉彼の深きに潜みて、其策を主に隠さんと欲し、其事を幽暗に行ひて、誰か我等を見ん、誰か我等を識らんと謂ふ者。何ぞ無知なる。陶人を視て、土塊の如く意ふべけんや、造られし物は己を造りし者を指して、彼我を造りしに非ずと云うふを得んや、形づくられたる器は己を形づくりし者を指して、彼知識なしと云ふを得んや。尚頃くして、リワンは變じて園と爲り、園は林の如く視らるる時來らざらんや。當日聾者は書の言を聞き、盲者の目は瞑より暗より見るを得ん、苦しむ者は主の爲に益喜び、貧しき人はイズライリの聖者の爲に樂まん。蓋強暴者は絶え、侮慢者は失せ、不義を逞しくして、言を以て人を害し、門に在りて鞠を促す者に機檻を設け、正しき人を退くる者は盡く滅び

---------------------[大齋第四週間金曜日 第六時課  659]---------------------

ん。故にアウラアムを贖ひし主はイアコフの家の事に就きて是くの如く言ふ、其時イアコフは羞を啓かず、其面は色を失はざらん。蓋彼は己の諸子、我が手の造工を己の中に見ん時、彼等は我の名を聖とし、イアコフの聖なる者を聖とし、イズライリの神を畏れん。

 

   提綱、第七十八聖詠、第五調。

神、我等の救主よ、我等を助け給へ。句、神よ、異邦人爾の業に入れり。

時課の畢る時、最後の聖三祝文の後に十字架の伏拜あり。此の時讃頌を歌ふ、第二調、「信者よ、來りて」(第五百七十五頁を看よ)

畢りて後、尊貴なる十字架を捧持して至聖所に入り、故の處に安置す。

          ~~~~~~

 

  中の週間の金曜日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に十句を立てて歌ふ、本日の自調、二次、本調の致命者讃詞四章、及び月課經の四章。

---------------------[大齋第四週間金曜日 晩課  660]---------------------

    自調、第七調。

ハリストスよ、我の吾が靈の尊きを諸慾に服せしめて、家畜の如くになれり。目を擧げて爾至上者を仰ぐを得ずして、下に俯し、税吏の如く祈りて爾に呼ぶ、神よ、我を潔め我を救ひ給へ。

    光榮、死者の讃詞、イオアンダマスキンの作。今も、本調の第一の生神女讃詞。聖入。「穏なる光」。

 

    提綱、第七十九聖詠、第四調。

イズライリの牧者よ、耳を傾けよ。句、イオシフを羊の如く導く者、ヘルワィムに坐する者よ、己を顯せ。

 

   創世記の讀。第十二章。

主はアウラムに謂へり、爾の地より、爾の親族より、爾の父の家より出でて、我が爾に示さんとする地に往け、我爾より大なる民を出し、爾を祝し、爾の名を大にせん、爾は祝福の基と爲らん、我は爾を祝する者を祝し、爾を詛ふ者を詛はん、爾に因りて地の萬族は祝福を獲ん。アウラムは主の彼に言ひし所に從ひて出でたり、ロトも彼と偕に行けり。アウラムはハルランの地を出でし時七十五歳なりき。アウラムは其妻サラ、其兄の子ロト、及び其集めたる總ての所有と、ハルランに

---------------------[大齋第四週間金曜日 晩課  661]---------------------

て獲たる人衆とを攜へて、出でて、ハナアンの地に往けり。アウラムは其地を縦に經て、シヘムの處に及び、高き橡の樹に至れり、其時ハナアンの人其地に住めり。主はアウラムに現れて曰へり、我斯の地を爾の裔に予へん。アウラムは彼處に於て、彼に現れし主の爲に祭壇を築けり。

 

   提綱、第八十聖詠、第四調。

歡びて神、我等の防固に歌へ。句、歌を執り、鼓と佳琴と瑟とを與へよ。

 

   箴言の讀。第十四章

拙き者は凡の言を信じ、達き者は己の途を慎む。智者は懼れて惡を離れ、愚者は己を恃みて不法者と交る。怒り易き者は愚なることを行ふを得、惟謀りて惡を行ふ人は惡まる。拙き者は無知を嗣業と爲し、達き者は知識を冕と爲す。惡者は善人の前に俯伏し、罪者は義人の門に俯伏せん。貧しき者は其隣にも惡まる、富める者には親友多し。其隣を藐る者は罪あり、貧しき者を憐む人は福なり。惡を謀る者は迷へるに非ずや、惡を行ふ者は慈憐と眞實とを知らず、唯善を謀る者には慈憐と眞實あり。凡の勞には益あり、唯多言には損あるのみ。智者の富は其冕なり、愚者の度生は禍なり。正しき證者は人の生命を救ひ、正しからざる者は

---------------------[大齋第四週間金曜日 晩課 662]---------------------

を吐く。主を畏るる寅畏には堅き依頼あり、彼は其諸子の爲に避所なり。

   次に先備聖體禮儀を行ふ。

        ~~~~~~

 

  第四週間の「スボタ」の早課

 

「アリルイヤ」及び諸讃詞、第二調、「使徒致命者及び預言者」。光榮、「主よ、仁慈なるに因りて爾の諸僕を記憶して」。今も、「言ひ難き光の聖なる母よ」。聖詠誦文。次ぎて當調の致命者の坐誦讃詞。「ネポロチニ」の後に諸讃詞を歌ふ、「聖人の群は生命の泉と」。の後に死者の坐誦讃詞、第五調、「我が救世主よ、爾の諸僕を諸義人と偕に安ぜしめて」。光榮、末節。今も、生神女讃詞、「童貞女より世界に輝き」。次に規程は月課經の、及び本堂の聖人の、并に左の四歌頌を順次に歌ふ。

四歌頌、其冠詞は、致命者に捧ぐる歌。イオシフ師の作。并に歌頌を誦文す。第四調。

 

   第六歌頌

イルモス、「我行を以て世俗の淵に沈み」。

受難者よ、爾等は多くの忍耐を以て肉體の界を踰えて、諸の苦及び痛傷を忍び

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  663]---------------------

給へり。故に爾等を歌頌する者の凡の病を醫し、憂を解き給ふ。

聖なる受難者の軍は天使の萬萬に合せられて、ハリストスの悦を得たる者として、至仁なる神に我等を無數の諸罪より救はんことを祈る。

ハリストスよ、爾は殺されて墓に寢ねて、死者を起し、信に於て死せし者に恩寵の富として、諸聖人と偕に安息を給ふ。

生神女讃詞、潔き者よ、神の言及び神は人を神成せんと欲して、爾より身を取りて、地上の者と見らる。我等が審判の時に慈憐を得んことを絶えず彼に祈り給へ。

 

   又、フェオドル師の作。同調。

イルモス、「我罪の暴風に沈められて」。

聖なる者よ、爾等は肉と血とを吝まず、畏るることなく己を凡の苦に付して、ハリストスを諱まざりき。故にハリストスは爾等に天より榮冠を降し給へり。』

我等は行に照されて、致命者の慶賀を迎へ、神に感ぜらるる歌を以て呼ばん、ハリストスの致命者よ、爾等は實に地上に於ける明星なり。

三者讃詞、聖なる三者、無原の神性よ、我は爾惟一の神、惟一の主、三位なる父、子、及び聖神、生れざる者、生れし者、出づる者、常に同一にして永在なる主を讃榮す。

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  664]---------------------

生神女讃詞、鳴呼福たる神の聘女よ、如何にして爾は夫なく生みて、先の如く童貞女に止まりたる。蓋爾は神を生み給へり、畏るべき奇跡や。求む、爾を歌ふ者の救はれんことを祈り給へ。

句、神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なり。

致命者讃詞、至榮なる致命者よ、爾等は己の百體の斬らるるを見て、血の流を樂しめり。求む、熱切に我等の爲に主に祈り給へ。

句、彼等の靈は福に居らん。

我を地より造り、我を生かし、我に復地に還らんことを命ぜし主よ、爾が受けし諸僕を安ぜしめて、死の滅亡より救ひ給へ。

 

イルモス、我罪の暴風に沈められて、鯨の腹に閉さるるが如く、預言者と偕に爾に呼ぶ、主よ、我が生命を淪滅より引き上げて、我を救ひ給へ。

 

小讃詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に」同讃詞、「人を造りし主よ、爾は獨死せざる者なり」。(第四十三頁を看よ)

 

   第七歌頌

イルモス、「黄金の偶像に伏拜せざりしアウラアムの少者は」。

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  665]---------------------

朽つべき肉體の裸にせらるに因りて神聖なる不朽を衣せられたる光明なる受難者よ、爾等は我等の爲に不朽なる童貞女より肉體を受けし主の前に今立ち給ふ。故に惡に因りて裸體と爲りたる我に聖にせられし衣を衣せ給へ。』

節制を以て生を送りし受難者の會よ、爾等は己の途に於て勇ましくハリストスを傳へしに因りて、今榮冠を冠りて、其寶座の前に立ち、諸天使と偕に靈智なる樂を享くる者として、我等を礙なく節制の途を趨らん爲に堅め給へ。』

神よ、爾の聖なる致命者の祈に由りて、信に於て寢りし爾の諸僕を樂園の住者と爲し、之に靈智なる光を獲しめて、絶えず爾に呼ばしめ給へ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

生神女讃詞、童貞女よ、我等爾獨善なる者に祈る、我等惡者と爲りし者を善者と爲し、熱切にハリストス、性の至善なる主に、我等が善を爲して節制の時を終へんことを祈り給へ、蓋我等歌ふ、我が先祖の神は崇め讃めらる。

   又、イルモス、「山の上にモイセイと語りて」。

 

爾の衆聖者を偉大なる者と爲して、之を奇跡に由りて世界に奇異なる者と爲しし主、我が先祖の神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

ハリストスの致命者よ、爾等は種種の苦を經て、膝をワアルの前に屈むるを

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  666]---------------------

肯ぜずして、神より光榮の冠を受け給へり。

三者讃詞、惟一にして三者、伏拜せらるる神性、父、子、及び聖神、我が先祖の神よ、爾を歌ふ者を護り給へ。

生神女讃詞、童貞女母、至りて光明なる少女、獨神の前に轉達者なる女宰よ、我等の救はれんことを絶えず祈り給へ。

句、地上の聖人と爾の奇異なる者とは、我專ら之を慕ふ。

致命者よ、爾等は不死の王の爲に戰ひて、彼に於ける完全なる信を證して、彼の爲に己の血を流し給へり。

句、主よ、爾が選び近づけし者は福なり。

主我が先祖の神よ、暫時の生命より移しし爾の信なる諸僕を爾の生命の光の流るる所に入れ給へ。

イルモス、山の上にモイセイと語りて、棘の中に童貞の形象を顯しし我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「主よ、ヘルワィムセラフィム等は火の中に爾の前に立ち」。

ハリストスの大名なる受難者、神に於て尊き者よ、彼に奉る爾の大なる祈

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  667]---------------------

以て我等衆爾の記憶を歌ふ者を大なる罪及び彼處の苦より救ひ給へ。』

ハリストス神の選びたる實に堅固なる聖軍、致命者の會よ、爾等の聖なる祈を以て、此の齋の聖なる日に於て我等の智慧と心とを聖にし給へ。

主ハリストスよ、凡そ信に於て受けし者を苦しむる蟲と、切歯と、外の幽暗より脱れしめて、彼等を爾の顔の光の世世に輝く處に入れ給へ。

生神女讃詞、潔き生神女よ、我等ハリストスの尊き十字架を見て、心より之に伏拜せし者に、爾が主宰に奉る祈を以て諸慾より潔められし者として、尊き苦をも見るを得しめ給へ。

   又、イルモス、「地と凡そ其上に在る者」。

 

鳴呼善なる貿易や、ハリストスの聖にせられし致命者よ、爾等は死を以て生を獲、火と劍、嚴寒と猛獸を聊も畏れずして呼べり、主を歌ひて、彼を萬世に讃め揚げよ。

ハリストスの致命者よ、上には天使の品位、下には我等地上の者は爾の驚くべき苦と爾の勇敢なる功とを讃美して、主を崇め讃め、彼を歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

  我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  668]---------------------

我は爾光、三一の生命、父と子、及び出づる神、惟一の神性、三位を尊み、惟一の神を歌頌し、爾主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚ぐ。

生神女讃詞、至浄なる雌鴿よ、地に生るる者は誰か爾を歌はざらん、蓋爾は我等の爲に大なる光、生命の富たるイイスス救世主を生み給へり。我等彼を主として崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚ぐ。

句、神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なり。

致命者よ、我等は爾等の奇異なる功勞を讃榮して、爾等を戰の馳場の爲に堅めし恩主及び神を崇め讃め、彼に伏拜して、萬世に讃め揚ぐ。

句、彼等の靈は福に居らん。

死及び生の主神よ、敬虔の心を抱きて移りし者を起して、彼處に義人等の居所に入れて、爾主を崇め讃め、歌ひて萬世に讃め揚ぐるを得しめ給へ。

 

イルモス、地と凡そ其上に在る者、海と諸の泉、諸天の天、光と暗、嚴寒と暑、人の諸子と司祭等とは主を崇め讃めて、彼を世世に讃め揚げよ。

 

    第九歌頌

イルモス、「權能者は我に大なる事を成せり」。

動なき星たるハリストスの受難者よ、我等の思を照して、神の光明潔浄なる望を

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  669]---------------------

行はん爲に堅め給へ。

ハリストスの勇敢なる受難者よ、爾等は諸敵を殺す劍と見らる。求む、爾等の轉達を以て我等を兇惡者の矢より脱れしめ給へ。

洪恩なる主よ、信を以て我等より爾萬有の造成者及び至仁なる主に移りし爾の諸僕をアウラアムの懐に安ぜしめ給へ。

生神女讃詞、智慧に超えて肉體にて神を生みし童貞女よ、我が肉體の亂れたる動揺を殺せ、光の潔き雲よ、我が意念に光照を與へ給へ。

   又、イルモス、「ハリストス我が救世主」。

 

至りて讃美たる致命者よ、我等皆爾の聖にせられし苦の功績を見て、之を奇とし、爾等の記憶を歌頌して、ハリストスを崇め讃む。

受難者は苦を受けて互に言へり、我等肉體を惜まずして、來りて、ハリストスの爲に死なん、萬世に絶えず喜びて生きん爲なり。

三者讃詞、鳴呼惟一の神性の三者、生れざる父、生れたる子、及び出づる神よ、爾を歌頌する者を爾の仁慈を以て害なく護り給へ。

生神女讃詞、慶べ、至尊至潔なる者、童貞の譽、母の固、人人の助、世界の喜、我が神の母及び婢なるマリヤよ。

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の早課  670]---------------------

句、神よ、爾は爾の聖所に於て嚴なり

聖者の會よ、我が祈を納れて、我に十字架に接吻するを得しめし如く、救の苦にも伏拜せん爲にハリストスに祈り給へ。

句、主よ、爾が選び近づけし者は福なり

洪恩なる主よ、爾人を愛する主に移りし者を宥めて恕し、之を選ばれれたる者の居處に安ぜしめ給へ、爾は生命及び復活なればなり

イルモス、ハリストス我が救世主爾の諸僕の光榮、信者の榮冠、爾を生みし者の記憶を輝かしし主よ、我等皆爾の仁愛を崇め讃む。

 

差遣詞は第二の週間の「スボタ」に載す(第四百五十七頁を看よ)。「凡そ呼吸ある者」に本調の致命者讃詞。挿句にフェオファン師の讃頌。

          ~~~~~~

聖體禮儀に代式及び本調の眞福詞。提綱は本日の、及び死者の。使徒は三百十三端。又安息の爲にコリンフ書百六十三端。「アリルイヤ」は死者の。福音經はマルコ三十一端。又安息の爲にイオアン十六端。領聖詞は「義人よ、主の爲に喜べ」。又安息の爲に、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり」。

         ~~~~~~

---------------------[大齋第四週間 「スボタ」の聖體禮儀  671]---------------------

 

 

  聖大齋の第四主日

 

「スボタ」の晩課に復活の讃詞三、アナトリイの四、及び月課經の三。又此の主日に階梯者聖イオアンの奉事を歌ふ例あり。

   讃頌、第八調。

克肖なる神父イオアン、福たる睿智者よ、實に爾は常に心と口とに神の至高なる旨及び其光榮を有ち、此より出づる恩寵に富まされて、神に感ぜらるる言を獲、人人に諸徳を敎へて、悉くの不虔者の謀を破れり。

至榮至福なる神父イオアン、克肖なる神智者よ、爾は涙の流を以て靈を潔め、徹夜の祈を以て神の惠を得て、翼を以て飛ぶが如く、神を愛する愛と其華麗とに上れり。今宜しきに合ひて之を樂しみて、爾の同勞者と偕に絶えず喜び給ふ。

克肖なる神父イオアンよ、爾は信を以て智慧を神に飛ばして、世俗の諸事の常住なきを惡み、爾の十字架を任ひて、見ざる所なき主に順ひ、勤勞を以て、聖神の助に由りて、肉體の情を制して智慧に服せしめたり。

光榮、第五調、克肖なる神父よ、爾は主の福音經の聲を聽きて、世を捨てて、

---------------------[大齋第四主日 「スボタ」の晩課 672]---------------------

富と榮とを無と爲せり。故に衆に呼べり、神を愛せよ、然らば永遠の恩寵を獲ん、彼の愛に過ぎて一も尊む勿れ、彼が其光榮の中に來らん時、爾等が衆聖人と偕に安息を得ん爲なり。ハリストスよ、彼等の祈に由りて我等の靈を護りて救ひ給へ。

 

   今も、本調の第一の生神女讃詞。

   挿句に八調經の讃頌。光榮、克肖者の、第二調。

我等は地上に於ける天使、天上に於ける神の人、世界の装飾、善者の樂、修齋者の諸徳の譽たるイオアンを尊まん。蓋彼は神の宮に植えられて、實に榮え、柏香木の如く高くなりて、聖を以て義を以て、野にハリストスの群の靈智なる羊を増し給へり。

 

   今も、同調の生神女讃詞、「鳴呼新なる奇跡」。「主宰よ、今爾の言に循ひて」。

   讃詞、第一調。

捧神なる我が神父イオアンよ、爾は野の住者にして肉體に於ける天使及び奇跡者と顯れたり。爾は齋と、警醒と、祈とを以て天の恩賜を獲て、信を以て爾に趨り附く者の靈體の病を醫し給ふ。光榮は爾に力を與へし主に歸し、光榮は爾に榮冠を冠らせし主に歸し、光榮は爾を以て衆に醫治を賜ふ主に歸す。

---------------------[大齋第四主日 「スボタ」の晩課 673]---------------------

 

 

          ~~~~~~

 

 

  第四主日の早課

 

常例の次第の後に規程、復活の、及び生神女の、六句に、又三歌經の左の、四句に、又聖人の、四句に。

 

   三歌經の規程、第五調。

   第一歌頌

イルモス、「我等は、民に足を濡らさずして海を渡らしめ」。

ハリストス救世主よ、我は盗賊の手に陷り、傷つけられて、幾ど死するばかりにして捨てられたる人に似たる者と爲れり。我も斯く吾が罪に由りて傷つけられたり。

救世主よ、我痛く病める者を棄つる勿れと、爾の富を盗賊の爲に費しし者は泣きて呼べり。我も斯く祈る、我を宥めて救ひ給へ。

---------------------[大齋第四主日 早課 674]---------------------

ハリストス救世主よ、不義なる盗賊と惡しき思とに由りて罪にて痛く傷つけられし我が智慧を醫して、我を救ひ給へ、爾は大仁慈なる主なればなり。』

生神女讃詞、ハリストスの至浄なる母よ、父の懐を離れずして爾より身を取りし神に、其造りし者を凡の患難より救はんことを常に祈り給へ。

  又、克有者の規程、第八調。

イルモス、「イズライリは乾ける地の如く水を過り」。

無形にして靈智なる光に世俗の累より上りし克肖なるイオアンよ、主に奉る爾の祈を以て我を照し給へ。

神父よ、爾は節制の甘味を吸ひて、逸樂の苦きを棄てたり。故に蜜に愈り、房より滴る蜜に愈りて我等の感覺を樂しましむ。

克肖なる神父よ、爾は諸徳の高きに登り、下に在る逸樂を忌みて、爾の牧群に救の甘味を顯せり。

生神女讃詞、父の睿智及び言を言ひ難く生みし童貞女よ、吾が靈の甚しき傷を醫し、心の痛を止め給へ。

共頌、「我が口を開きて」。

 

   第三歌頌

---------------------[大齋第四主日 早課 675]---------------------

イルモス、「神よ、爾の力を以て我等を堅め」。

ハリストスよ、我生命の道を旅して、盗賊の爲に慾にて傷つけられたり。祈る、我を起し給へ。

盗賊は我が智慧を壞り、我が諸罪の傷の中に我を幾ど死するばかりにして捨てたり。祈る、主よ、我を醫し給へ。

救世主ハリストスよ、諸慾は我より爾の誡を剥ぎて、我逸樂に傷つけられたり。祈る、我に慈憐を沃ぎ給へ。

生神女讃詞、潔き者よ、爾の腹より出でし主に爾を神の母として歌ふ者が惡魔の誘惑より救はれんことを絶えず祈り給へ。

   又、イルモス、「主よ、爾は爾に趨り附く者の固」。

 

爾は勤勞の熾炭を以て諸慾の棘を焚きて、修道士の會を温め給ふ。

克肖者よ、爾は常に修齋の諸徳にて己を薫らせて、全く神に獻ぜらるる馨しき香と爲れり。

務めて神の法を行ひて、爾の涙の流の中に、彼のファラオンの軍に於けるが如く、諸慾を溺らし給へり。

生神女讃詞、潔き神の母よ、我が思の擾亂を止めて、吾が心を爾の子に向はし

---------------------[大齋第四主日 早課 676]---------------------

め給へ。

 

   坐誦讃詞、第五調。

我が救世主よ、我等は爾の至浄なる十字架を救の武器と有ちて、爾に呼ぶ、甘じて我等の爲に苦を受けし萬有の神よ、我等を救ひ給へ、爾は大仁慈の主なればなり。

   光榮、克肖者の、第四調。

諸徳の階梯たるイオアンよ、爾は諸徳を以て天の前に輝き、敬虔を以て神を知る智識の無量の深きに登れり。自ら惡鬼の悉くの惡謀に勝ちて、今人人を其害より蔽ひて、爾の諸僕の救はれんことを祈り給ふ。

   今も、生神女讃詞。

女宰よ、ヘルワィムの寶座に坐し、及び父の懐に居る主は、己の聖なる寶座に於けるが如く、身にて爾の懐に坐し給ふ、是れ萬民の上に王と爲りし神なり。我等忠信に彼に歌ふ。潔き者よ、爾も我等、爾の諸僕の救はれんことを彼に祈り給へ。

 

   第四歌頌

イルモス、「主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり」。

---------------------[大齋第四主日 早課 677]---------------------

盗賊は我が神聖なる行を掠めて、我を傷に苦しめらるる者として捨てたり。

救世主よ、我が擾れたる思は我より爾の誡を剥ぎたり。故に我は諸罪にて傷つけられたり。

「レワィト」は我が傷に蔽はれたるを見て過ぎ去れり。我が救世主よ、求む、爾我を救ひ給へ。

生神女讃詞、聘女ならぬ生神女よ、我等信者は爾を嚴に讃榮して、爾の港に趨り附く。

   又、イルモス、「主よ、我爾が摂理の秘密を聆き」。

 

爾は最芳しき花園の如く、諸徳の活ける樂園の如く、盛に節制の花を發けり、此を以て凡そ爾を尊む者を樂しませ給ふ。

神父よ、我等は實に爾をモイセイ及びダワィドの如き勤行の法律者及び修道士等の至りて温柔なる規定者として得て、爾を讃揚す。

福たる神父よ、爾は節制の水の邊に植えられて、美しく華さく葡萄の樹、敬虔の房を生ずる者と現れたり。

生神女讃詞、神の母よ、爾は我等の爲に父より時なき先に輝きて、時に從ふ者と

---------------------[大齋第四主日 早課 678]---------------------

爲りし主を生み給へり。爾を歌ふ者を救はんことを彼に祈り給へ。

 

   第五歌頌、            

イルモス、「主よ、我等夙に興きて爾にぶ」。

イイススハリストスよ、祈る、昔盗賊の手に陷りし者に於けるが如く、吾が靈の傷を顧みて、我が病を醫し給へ。

我がハリストスよ、我諸罪の傷を病みて弱れり、故に神聖なる諸徳を剥がれて臥す。祈る、我を救ひ給へ。

司祭及び「レワィト」は我を見て、助けずして過ぎ去れり。然れども爾は親ら慈憐なるに因りて、今助を與へて救ひ給へり。

生神女讃詞、主宰救世主よ、祈る、我靈が盗賊に痛く傷つけられし不當の者を捨てずして、爾を生みし者の祈に因りて宥め給へ。

   又、イルモス、「隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし」。

 

福たる神父よ、爾は功勞の露を以て諸慾を滅し、愛と信との火を以て豊に節制の燈と無慾の光照とを燃して、光の子と爲れり。

神父よ、爾は勤行に勞し、神聖なる耕作を以て信の葡萄の房を養ひ、之を酒に入れて、節制の屬神の爵を充てて、爾の牧群の心を樂しましむ。

---------------------[大齋第四主日 早課 679]---------------------

福たる者よ、爾は惡敵の攻撃と傷とを善く忍びて、忍耐の柱と現れ、神聖なる杖を以て爾の牧群を堅めて、之を節制の草場と水とに養ひ給へり。

生神女讃詞、純潔なる者よ、我等は爾の口の言に從ひて、爾を讃揚す、蓋爾に實に大なる事を成しし主は爾を至大なる者と爲し、爾の腹より生れし者は爾を神の眞の母と現し給へり。

 

   第六歌頌

イルモス、「主よ、淵は我を圍み」。

主宰よ、我神より賜はりし生命を諸慾の爲に費し、諸罪にて甚しく傷つけられし者は爾に趨り附きて祈る、我を憐み給へ。

盗賊は我が財寶を掠め、諸慾を以て我が智慧に傷つけて、我を死者の如く捨てたり。主よ、我を憐みて救ひ給へ。

「レワィト」は我が傷つけられて惱めるを見て、傷を顧みずして過ぎ去れり。人を愛する主よ、爾親ら我に爾の豊なる慈憐を沃ぎ給へり。

生神女讃詞、至榮なるマリヤ、正敎者の譽よ、我等爾を焚かれぬ棘及び山、活ける梯及び天の門として宜しきに合ひて讃榮す。

   又、イルモス、「救世主よ、我を浄め給へ」。

---------------------[大齋第四主日 早課 680]---------------------

爾は聖神の神聖なる富たる無の祈、潔浄、正直、不斷の警醒、節制の勤勞を靈の中に承けて、此を以て神の家とせられたり。

睿智者よ、爾は下なる貴からざる物質に目を注がずして、靈智なる祈を以て心を高く飛ばし、無の度生に由りて上なる安息を嗣ぐ者となれり。

爾は修齋者の汗を以て實に敵の火箭を滅し、信の火を燃して、無神と諸異端との傲慢を焚き給へり。

生神女讃詞、婚姻に與からざる童貞女よ、爾の産の言ひ難き合成に由りて上なるシオンより華麗は耀きて、世界を照せり。

 

   小讃詞、第四調。

嚮導師イオアン、我等の神父よ、主は爾を眞の節制の高きに、動かざる星、其光を以て四極を導く者として置き給へり。

   同讃詞

嚮導師イオアン、我等の神父よ、爾は神聖なる爾の諸徳を以て誠に己を神の家と爲し給へり。黄金の如く耀ける信と、望と、眞の愛とを以て美しく己を飾り、神聖なる、規範を述べ、肉體なき者の如く節制を守り、智慧と、勇敢と、潔浄とを得、謙遜を以て上れり。故に絶えざる祈に由りて輝きて、天の居處に入り給へり。

---------------------[大齋第四主日 早課 681]---------------------

 

   第七歌頌

イルモス、「尊まるる先祖の主はを滅し」。

盗賊は我不當の者に當り、傷つけて、氣息なき者として死者の如く捨てたり。故に我爾に祈る、神よ、我を顧み給へ。

亂れたる思は我が智慧をにし、諸慾にて傷つけ、多くの罪に由りて死せし者として我を捨てたり。祈る、救世主よ、我を醫し給へ。

「レワィト」は我が傷つけられしを見て、醫されぬ者として過ぎ去れり。我が救世主よ、爾親ら我を醫し給へ。

生神女讃詞、童貞女より身を取りしハリストスよ、爾は豊なる慈憐と爾の洪恩とを吾が傷に沃ぎて、我を救ひ給へり。故に我爾を讃榮す。

   又、イルモス、「昔ワワィロンに於てイウデヤより來りし少者は」。

 

神父よ、爾は牧群を上なる國の草場に養ひ、定理の杖を以て諸異端の猛獸を敺りて歌へり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

爾は呼びし者に合ふ衣を衣せられ、ハリストスの國の上なる婚筵の宮に入りて、其内に息ひて呼べり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

---------------------[大齋第四主日 早課 682]---------------------

神父よ、爾は罪に汚されぬ節制の河と現れて、信者の思を潔め、汚を滌ひて、呼ばしむ、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

生神女讃詞、童貞女よ、爾の腹より萬有の主は身を取りて出で給へり。故に我等正敎の心を以て爾を生神女と承け認めて、爾の子に呼ぶ、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「少者は爐に在りて爾萬物を造りし主」。

救世主よ、我は盗賊たる吾が思に由りて諸罪の傷を以て吾が生命を殘へり、故に爾仁愛なる神の神聖なる像を剥がれたり。祈る、我を憐み給へ。

洪恩なる救世主ハリストスよ、爾は上より地に來り、我諸罪の傷に由りて全體痛苦に惱める者を憐みて、爾の慈憐を我が上に沃ぎ給へり。

主宰救世主よ、爾は仁慈なるに由りて、體と靈とを我が爲に贖罪として與へて、我諸罪の劍に傷つけられて痛く疾める者を救ひ給へり、

生神女讃詞、童貞女よ、爾神の言に由りて測り難く主を生みて、童貞女に止まりし者を、我等悉くの造物は崇め歌ひて、世世に讃め揚ぐ。

   又、イルモス、「天使の軍の歌ふ所の天の王を崇めて」。

---------------------[大齋第四主日 早課 683]---------------------

神父イオアンよ、我等皆爾を活ける柱及び節制の規範として得て、爾の記憶を尊む。

修道士の大數は喜び、克肖者及び義人等の會は祝ふ、爾宣しきに合ひて彼等と偕に榮冠を受けたればなり。

爾は諸徳に飾られ、言ひ難き光榮の婚筵の宮に入りて、世世にハリストスに歌を奉る。

生神女讃詞、童貞女よ、爾に助を求め、歌ひて世世に爾を讃め揚ぐる者を遺つる勿れ。

 

   第九歌頌

イルモス、「イサイヤ祝へよ、童貞女は孕みて」。

主宰よ、我無智にして爾の戒を守らず、逸樂の諸慾に陷りて、恩寵を剥がれ、傷つけられて、裸體にして捨てられたり。故に爾に祈る、救世主よ、我を救ひ給へ。』

「レワィト」は我が傷を洗ふ能はざりき。然れども爾は、仁慈なる救世主よ、慈憐に由りて我に來り、爾の仁慈の洪恩を我に注ぎて、至善なる醫師として我を醫し給へり。

ハリストス救世主よ、爾は我盗賊より無慙に傷つけられて死すべき者を憐み、

---------------------[大齋第四主日 早課 684]---------------------

慈憐なるに因りて、己の靈と體とを二「ディナリイ」の如く贖として與へて、我を救ひ給へり。

生神女讃詞、神の母よ、爾の産は智慧に超ゆ、蓋爾は夫なくして孕み、童貞を守りて生み給へり、生れし者は神なればなり。童貞女よ、我等彼を崇めて、爾を讃揚す。

   又、イルモス、「人人よ、至浄なる生神女を嚴に尊まん」。

 

福たる者よ、爾は諸罪を病める者の爲に神より賜はりたる醫師なり、爾は惡鬼を逐ひ、之を滅す者と現れたり。故に我等爾を讃揚す。

神父よ、爾は地を朽壞の居處として棄てて、温柔なる者の地に入り、彼等と偕に悦びて、神聖なる甘味を樂しむ。

今日は慶賀の日なり、蓋修道士の全群を集めて、屬神の詠隊と爲し、不朽なる生命の宴を進む。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾の内に入りて生れし主は昔惡謀を以て原祖を誘ひし兇殺者を斃して、我等衆を救ひ給へり。

   差遣詞、復活の。又克肖者の。

克肖者よ、爾は世俗の樂を卑しき者として避けて、禁食を以て肉體を制し、靈

---------------------[大齋第四主日 早課 685]---------------------

の力を新にして、天の光榮に富める者と爲れり。故に至榮なるイオアンよ、我等の爲に絶えず祈り給へ、

生神女讃詞、女宰童貞女よ、我等爾に由りて救はれし者は敬みて爾を生神女と承け認む、蓋爾は言ひ難く神を生み給へり。彼は十字架を以て死を滅し、克肖者の會を己に就かしめたり。彼等と偕に我等爾を崇め讃む。

「凡そ呼吸ある者」に八調經の復活の、及びアナトリイの讃頌。

次ぎて句を誦す、「主我が神よ、起きて、爾の手を擧げよ」。

   并に自調を歌ふ、第一調。

來りて奥密の葡萄園に工作して、其中に痛悔の果を結び、飲食の爲に勞せずして、祈と禁食とを以て諸徳を行はん。此等に悦ばせらるる工作の主、獨大仁慈なる者は「ディナリイ」を與へ、此を以て靈の罪の債を贖ふ。

光榮、同上。今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。并に發放詞。光榮、今も、福音の讃頌、并に敎訓の誦讀。第一時課、及び其他の式、常例の如し。

           ~~~~~

 

聖體禮儀に代式、及び本調の眞福詞。使徒の提綱は順序の調の、及び克肖者の、第七調、諸聖人は光榮に在りて祝ひ、其榻に在りて歡ぶべし。句、「新なる歌を主に歌

---------------------[大齋第四主日 聖體禮儀 686]---------------------

へ」。

使徒は本日の、エウレイ書三百十四端。又克肖者の、エフェス書二百二十九端。「アリルイヤ」は本調の、及び克肖者の、句、「彼等は主の宮に植えられて」。福音經はマルコ四十端。又克肖者の、マトフェイ十端。領聖詞、「天より主を讃め揚げよ」。「義人は永く記憶せられ」。

           ~~~~~

 

 

  第四主日の晩課

 

首誦聖詠の後に、「主よ、爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の傷感の、當調の四、及び三歌經の三、イオシフ師の作。第三調。

信者よ、我等節制の時に大なる勤勞を顯さん、大なる神の慈憐に因りて「ゲエンナ」のより救はれて、大なる光榮を得ん爲なり。

今齋の時の半を過ぎて、神聖なる度生の始を爲し、徳行の生命の終に至らんことを熱切に勤めん、老いざる樂を獲ん爲なり。

---------------------[大齋第四主日 晩課 687]---------------------

   又フェオドル師の作。第七調。

我等は齋の此の聖にせられし途の半を過ぎて、矜恤の油を靈に傳けて、欣ばしく其前途を趨らん、ハリストス我が神の神聖なる苦に伏拜して、其畏るべき聖なる復活にも至るを得ん爲なり。

 

   又月課經の三章。光榮、今も、生神女讃詞。聖入。提綱、第八調。「爾の顔を爾の僕に匿す毋れ」。(第百八十一頁を看よ)。

 

   挿句に本日の自調。第七調。

葡萄園を樹え、工作者を呼びし救世主は邇し。齋の勤勞者よ、來りて報を受けん、蓋與ふる者は富める者にして且仁慈なり、我等僅に工作して、靈に恩惠を承けん。

   又自調、第六調。

アダムは盗賊の思に遇ひて、智慧は迷はされ、靈は傷つけられて、扶助なくして臥したり。律法の前の司祭も彼を顧みざりき、律法の後の「レワィト」も彼に目を注がざりき、唯爾、神よ、サマリヤよりするにあらずして、生神女より來りし者は之を爲し給へり。主よ、光榮は爾に歸す。

致命者讃詞、主よ、爾の致命者は爾を諱まざりき、爾の戒より離れざりき。彼等

---------------------[大齋第四主日 晩課 688]---------------------

の祈に因りて我等を憐み給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、第六調、信者よ、我等は天使首の如く天の宮と實に封印せられたる門とを歌頌せん。我等の爲に衆人の救主ハリストス、生命を賜ふ主及び神を生みし者よ、慶べ。至浄なる女宰、「ハリスティアニン」等の憑恃よ、爾の手を以て神に逆ふ暴虐者なる我が諸敵を斃し給へ。

   其他の次第は常例の如し。

晩堂課には大規程の木曜日に當る聖人の奉事を歌ふ。

 

         ~~~~~~