準備週間


 税吏及びファリセイの譬の聖福音經を讀む主日 


「スボタ」の晩課に首誦聖詠の後に第一「カフィズマ」全分を誦す。

「主よ、爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の主日の三、及びアナトリイの四、三歌齋經の自調の二、其第一は二次。第一調。

兄弟よ、ファリセイの如くるべからず、蓋自ら高くする者は卑くせられん。我等己を神の前に卑くし、齋して税吏の如く呼ばん、神よ、我等罪なる者を潔め給へ。

ファリセイは虚栄に勝たれ、税吏は痛悔に傾けられて、爾惟一の主宰に就きたり。然れども彼は高ぶりて福を失ひ、此は一も言ふことなくして恩賜を獲たり。ハリストス神よ、我を斯の歎息の中に堅め給へ、爾は人を愛する主なればなり。

光栄、第八調、主全能者よ、我涙が如何なることを能くするを知る、蓋エゼキヤを死

の門より起し、罪女を多年の罪より救ひ、税吏をファリセイに超えて義と爲せり。

----------------[税吏及びファリセイの主日 「スボタ」の晩課   1]---------------------

る、我を彼等に加へて、憐み給へ。

   今も、順序の調の第一の生神女讚詞。

  「リティヤ」には常例の如く本堂の聖人の讚頌。

光榮、第三調、吾が靈よ、税吏とファリセイとの別を知りて、此の高ぶる聲を惡み、彼の善き傷感の祈に効ひて呼べ、神よ、我罪人を潔めて、我を憐み給へ。

   今も、主日の生神女讚詞、同調。

   挿句に八調經の又讚頌。

光榮、第五調、我不法に因りて倦みたる吾が眼を擧げて天の高きを見る能はず。祈る、救世主よ、痛悔する税吏の如く我を接けて、我を憐み給へ。

今も、同調の生神女讚詞、「最尊き童貞女よ、爾は殿及び門なり」。讚詞、「生神童貞女よ、慶べよ」、三次。餅の祝福及び分與あり。又使徒經講義の誦讀

 

【注意】斯の主日及び蕩子の主日に當る聖人の奉事式は、若し大聖人にあらず、又本堂の聖人にあらずば、金曜日の晩堂課に、或は本堂首長の定むる時に歌ふ。本堂の聖人は大聖人にあらずと雖、其祭日に行ふべき奉事は必其日に行ひて、他日に移すべからず。本堂の祭日の奉事は主の迎接の奉事の如く其の當日に行ふを規とす。

-----------------[税吏及びファリセイの主日 「スボタ」の晩課   2]---------------------

 

 税吏及びファリセイの主日の早課

 

六段の聖詠の後に「主は神なり」、八調經の調に据る。主日の讚詞二次、生神女讚詞一次、并に常例の聖詠誦讀。八調經の坐誦讚詞。「ネポロチニ」の後に諸讚詞、「救世主よ、天使の軍は」。應答歌。品第詞、并に本調の提綱「凡そ呼吸ある者」。主日の順序の福音經。「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。

光榮、第八調、生命を賜ふ主よ、我に痛悔の門を啓けよ、蓋吾が靈全く汚れし體の堂を衣たる者は爾の聖堂に向ひて朝の祈を奉る。願はくは爾仁慈なるに因りて、爾の恩寵にて我を潔め給へ。

今も、生神女讚詞、生神女よ、我を救の道に導けよ、蓋我恥づべき罪を以て吾が靈を汚し、怠りて生命を費せり。願はくは爾の祈を以て我を凡の汚より救ひ給へ。

次に第六調、神よ、爾の大なる憐に因りて我を憐み、爾が惠の多きに因りて我の不法を抹し給へ。

我不當の者は多くの犯しし罪を念ひて、畏るべき審判の日に慄く。惟爾の深き仁慈を頼みて、ダワィドの如く爾に呼ぶ、神よ、爾の大なる憐に因りて我を憐み給

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   3]---------------------

へ。

規程は八調經の復活の、「イルモス」と共に四句に、十字架復活の二句に、生神女の二句に。

又三歌齋經の六句に。ゲオルギイの作。第六調。

 

第一歌頌、「イズライリは陸の如く淵を蹈み渡り」。

ハリストスは譬を以て衆を度生の更新に導きて、税吏を謙遜に因りて高くし、ファリセイが高ぶりに因りて卑くせらるるを示し給へり。

謙遜に因りて高くする尊貴の生ずるを見、高ぶりに因りて甚しき堕落の出づるを見て、税吏の善なるに效ひ、ファリセイの惡しきを惡め。

高ぶりに因りて凡の善は虚しくせられ、謙遜に因りて凡の惡は滅さる。信者よ、我等謙遜を愛して、驕慢の風習を惡まん。

萬衆の王は其門徒の謙遜ならんことを欲して、税吏の歎息と謙卑とに效ふを敎へ給へり。

光榮、主よ、我税吏の如く歎息し、息めざる涕泣を以て今爾の慈憐に來り就く。我をも宥めて、今より謙遜を以て生を度らしめ給へ。

生神女讚詞、女宰よ、我智慧と意思と希望、體と靈と神とを爾に託す。我を強暴

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   4]---------------------

なる諸敵、諸難、及び將來の苦痛より脱れしめて、救ひ給へ。

共頌、「我が口を開きて」。

 

第三歌頌、「爾が信者の角を高うし。」

謙遜の者は諸慾の穢地より擧げられ、凡の傲慢の者は諸徳の高處より墜さる。我等其惡の風習より脱るべし。

虚榮は義の富を空しくし、謙遜は慾の多きを掃ふ。救世主よ、我等に之に效ひて、税吏の分に與らしめ給へ。

我等も税吏の如く膺を拊ちて、傷感を以て呼ぶ、神よ、我等罪人を潔めて、彼の如き赦罪を得しめ給へ。

我等信者は心の歎息と、涕泣と、祈とを以て務めて謙遜を獲べし、神より赦免を蒙らん爲なり。

光榮、我等信者はファリセイの高ぶる傲慢、甚しき驕、惡むべき誇、及び神に對する至りて惡しき頑陋を退けん。

生神女讚詞、潔き者よ、我獨爾を避所として頼む。願はくは我善き望を失はずして、爾の助を獲て、諸惡の害より脱れん。

   坐誦讃詞、第四調、

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   5]---------------------

謙遜は惡に盈ちたる税吏、歎息して潔めよと造成主に呼びし者を高くし、驕傲は不當なるファリセイ、高慢を言ふ者を義より墜せり。故に我等は善なることに效ひて、惡なることを退けん。

光榮、謙遜は昔税吏を擧げたり、蓋彼は泣きて呼べり、潔めよと、乃義とせられたり。我等皆惡の深處に陷りし者は彼に效ひて、心の深處より救世主に呼ばん、我等罪を犯せり、獨仁愛なる主よ、潔め給へ。

今も、生神女讚詞、至浄なる女宰よ、速に我等のを納れて、之を爾の子及び神に攜へ給へ。純潔なる女君よ、爾に趨り附く者の諸難を解き、無慙に爾の諸僕と戦ふ者の惡謀を破り、強暴を倒し給へ。

 

第四歌頌、「尊き敎會は浄き心より」。

僕の形に至るまで己を卑くせし言は謙遜を以て上升の最善き途と示せり。凡そ之に效ひて己を卑くする者は擧げらる。

義なるファリセイは己を高くして墜ちたり、多くの惡に壓せらるる税吏は己を卑くして擧げられ、失望せし者は義とせられたり。

狂愚は諸徳の富ある者の爲に貧窮の縁由と爲れり、謙遜は至りて貧窮なる者に義の富を獲しめたり、願はくは我等之を得ん。

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   6]---------------------

主宰よ、爾は高ぶる者に敵し、謙る者に爾の恩寵を賜はんことを預言ひ給へり。救世主よ、今謙卑なる我等に爾の恩寵を降し給へ。

光榮、主宰救世主は我等を神聖なる上升に導きて、高くする謙遜を顯せり、蓋己の手を以て其門徒の足を洗ひ給へり。

生神女讚詞、童貞女よ、近づき難き光を生みし者として、輝ける光線を以て吾が靈の幽闇を散じて、吾が生命を救の道に導き給へ。

 

第五歌頌、「至仁なる神の言よ、切に祈る」。

我等は務めてファリセイの諸徳に效ひ、税吏の謙遜に順ひて、兩の者の不當なる自慢と諸罪の害とを惡まん。

ファリセイは馳すべき程に於て義に自慢を駕して、義を虚しくし、税吏は謙遜を同行者と爲して、高くする徳を得たり。

ファリセイは諸徳を厳なる車として乗らんと思へり、然れども徒歩にて行く税吏は欺息に謙遜を駕して、リディヤの車に乗るよりも疾く馳せて彼に先驅せり。

我等皆智慧を以て税吏の譬を暁り、來りて、其涙に效ひて、痛悔する神を神に捧げて、諸罪の赦を求めん。

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   7]---------------------

光栄、我等主に敎へらるる者はファリセイの傲慢強暴にして甚しく高ぶる惡しき風習を遠く斥けん、神聖なる恩寵を失はざらん爲なり。

生神女讃詞、仁慈なる者よ、我等衆爾に趨り附く者に能力の杖を遺し、諸敵に

勝つを賜ひて、悉くの害より脱れしめ給へ。

 

第六歌頌、「誘惑の猛風にて」。

ファリセイと税吏とは共に生命の程を馳せたり。然れども彼は高慢に圍まれて恥かしく溺れ、此は謙遜に因りて救はれたり。

我等は生命の窮迫の程を馳せて、熱切に税吏の思に效ひ、ファリセイの憎むべき誇を逃るべし、然らば活きん。

我等生くる者の地に入りて絶えざる歡喜の居處を得んと望む者は、救世主イイススの規範と其謙遜とに效はん。

主宰よ、爾は己の門徒に高くする謙遜を示して、手巾を取りて腰に帯し、彼等の足を濯ひて、斯の規範に效はんことを命じ給へり。

光栄、ファリセイは諸徳を以て、税吏は諸罪を以て生を送れり。然れども彼は靈を害する傲慢に由りて卑くなり、此は謙遜の者と顯れて擧げられたり。

生神女讃詞、我質朴正直の者として造られしに、敵は我より其徳を剥ぎ、誘感を以

て我に犯罪と肉體の慾とを衣せたり。童貞女よ、今我爾の中保に因りて救はる。

-------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   8]------------------

    小讚詞、第四調。

我等ファリセイの高慢の言を逃れ、税吏の謙遜の言の高きに效ひて、痛悔を以て呼ばん、世界の救主よ、爾の諸僕を潔め給へ。

    第二の小讚詞、第三調。

我等罪なる者は税吏の歎息を主に捧げて、彼主宰たる者に就かん。蓋彼は衆人の救を望み、悉くの痛悔する者に赦を賜ふ、父と同無原なる神にして、我等の爲に人體を受けたればなり。

    同讚詞

兄弟よ、我等皆己を卑くし、歎息と涕泣とを以て良心を潔めん、我等信者が赦罪を得て、其時永遠の審判に於て罪なき者と顯れん爲なり。蓋彼處には實に安息あり、之を見ん爲に我等今祈らん。彼處に、奇妙なるエデムには疾病も悲哀も深處よりの歎息も遠ざかりたり、父と同無原なる神ハリストスは斯のエデムの造成主なり。

 

第七歌頌、「天使は敬虔なる少者の爲に」。

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   9]---------------------

義の行にて擧りたるファリセイは甚しく誇り、虚榮の網に罹りて、最卑くせられたり。税吏は謙遜の輕き翼を以て擧りて、神に近づきたり。

税吏は謙遜を梯の如く用いて天の高きに升り、不當なるファリセイは朽ちたる誇と狂愚とを以て擧りて、最下なる地獄にまで降れり。

兇惡者は義なる者を執ふる爲に虚榮の法を用いて之を奪ひ、罪なる者を失望の網にて縛る。然れども我等税吏に效ふ者は務めて斯の二の難より脱れん。

我等信者は祈を以て我が神の前に俯伏し、涕泣と熱切なる歎息とを以て税吏の高くする謙卑に效ひて歌はん、吾が先祖の神よ、爾は崇め讚めらる。

光榮、主宰救世主よ、爾は門徒を敎へて、思を高きに騖する勿くして、謙卑に順はんことを命じ給へり。故に我等信者は爾に呼ぶ、吾が先祖の神よ、爾は崇め讚めらる。

今も、生神女讃詞、潔き者よ、我等は爾をイアコフの榮、及び其始めて見たる神聖なる梯として識る。是れ下より天に至り、上より人體を取り給ふ神を降して、地上の者を復上に升す者なり。

 

第八歌頌、「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲に」。

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   10]---------------------

税吏は謙卑の心より歎息して、主を慈憐なる者として得て救はれたり。ファリセイは高慢の言を言ふ舌に因りて義を失ひたり。

我等信者はファリセイの傲慢の心と己を潔浄の者と稱ふることとを避け、務めて税吏が憐を得たる謙遜の情に效はん。

我等信者は聖なる堂に於て税吏の聲を以て、神よ、潔め給へと呼ばん、彼と共に赦罪を得て、傲慢なるファリセイの亡を免れん爲なり。

我等衆税吏の欺息に效ひ、熱き涙を以て神と對話して、彼に呼ばん、人を愛する主よ、我等罪を犯せり、洪恩慈憐なる主よ、潔めて救ひ給へ。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

神は税吏の歎息に耳を傾け、彼を義と爲して、衆人に常に謙りて、歎息と涕泣とを以て諸罪の赦を求めんことを示し給へり。

今も、生神女讃詞、純潔無なる者よ、我爾の外に他の保護を知らず、爾を祈者として捧げ、爾より生れし主の前に爾を轉達者として進む、凡そ我を攻むる者より救ひ給へ。

 

第九歌頌、「天使の品位すら見るを得ざる神は」。

我等は上升の道たる謙遜をハリストスより救の規として受けて、税吏の風に效ひ、

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   11]---------------------

傲慢を遠く斥けて、謙卑の心を以て神の惠を求めん。

我等は靈の驕慢を退け、謙遜の正しき風習を得、己を義なる者とせずして、虚榮の高慢を惡みて、税吏と偕に神の惠を求めん。

我等は税吏のを以て仁慈なる造成主に捧げ、ファリセイの眞實なきと近者を罪する高慢の聲とを避けん、神より慈憐と光照とを蒙らん爲なり。

我多くの罪に壓せられ、諸惡の夥しきを以て税吏に超え、ファリセイの傲慢をも有てり、我に諸善の一だにもあるなし。主よ、我を憐み給へ。

救世主よ、爾の爲に神の貧しくなれる者に爾の福を獲しめ給へ、蓋我等は爾の敎の命に因りて謙卑の心を爾に捧ぐ。主よ、之を受けて、爾に務むる者を救ひ給へ。

光榮、税吏は昔殿に登り、神に祈りて、義とせられたり。蓋歎息と、涕泣と、心の痛悔とを以て來れり、故に重き諸罪を悉く潔められたり。

今も、生神女讃詞、至潔にして獨祝福せらるる者よ、我等宜しきに合ひて爾を尊み、爾の産を崇むる者に爾を歌頌し、讃美讃榮するを賜へ、爾は「ハリスティアニン」等の譽と神の前に嘉く納れらるる祈者なればなり。

   復活の差遣詞。次ぎて三歌斎經の

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   12]---------------------

光榮、我等はファリセイの至りて惡しき高慢を避け、税吏の至りて善なる謙遜に效はん、彼と偕に擧げられて神に呼ばん爲なり、甘じて童貞女より生れ、十字架を忍び、爾の神たる能力を以て己と偕に世界を興ししハリストス救世主よ、爾の諸僕を潔め給へ。

今も、生神女讚詞、讃美たる生神女よ、萬物の造成主、萬有の神は爾の無なる胎より人の身を受けて、我が朽つべき性を全く新にし、又爾を産の後にも産の前の如き者として遺し給へり。故に我等皆信を以て爾を崇め讃めて呼ぶ、世界の光榮よ、慶べ。

 

「凡そ呼吸ある者」に八調經の主日の讚頌四章。

又三歌斎經の自調の四。「兄弟よ、ファリセイの如くるべからず」。「ファリセイは虚榮に勝たれ」。晩課に載す。

句、主我が神よ、起きて、爾の手を擧げよ、苦しめらるる者を永く忘るる毋れ。

第三調、吾が靈よ、税吏とファリセイとの別を知りて、此の高ぶる聲を惡み、彼の善き傷感の祈に效ひて呼べ、神よ、我罪人を潔めて、我を憐み給へ。

句、主よ、我心を盡して爾を讚め揚げ、爾が悉くの奇蹟を傳へん。

我等信者はファリセイの高慢の聲を惡みて、税吏の善き傷感の祈に效ひ、思を高

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   13]---------------------

きに騖する勿く、己を卑くして傷感を以て呼ばん、神よ、我等の諸罪を潔め給へ。

光榮、第八調。主よ、爾は、行を以て誇りて己を義と爲ししファリセイを罪し、己を卑くせし税吏、歎息を以て潔浄を求むる者を義と爲し給へり、蓋爾は高きに騖する思を顧みず、又心の謙卑なる者を輕ぜず。故に我等も謙遜を抱きて爾我等の爲に苦を受けし主の前に俯伏す、我等に赦罪と大なる憐とを與へ給へ。

今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌及び発放詞。常例の如く前院に出でて「リティヤ」を行ひ、其中に光榮、今も、早課の福音の讚頌を歌ふ。并に第一時課。

 

【注意】 知るべし、十一の早課の福音の讃頌は本主日より衆聖人の週間に至るまで、前院に於て早課の「リティヤ」に光榮、今もに歌はる。

又知るべし、本主日より前院に於て「リティヤ」の發放詞の後に我が聖神父フェオドルストゥディトの敎訓の誦讀を始む。若し院長あらば、自ら之を讀む、若しなくば、堂長之を誦讀し、兄弟立ちて、敬みて聽く。畢りて後克肖者フェオドルの讃詞を歌ふ、第八調、「正敎の敎導師よ」。生神女讃詞なし。并に最後の發放詞。

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   14]---------------------

聖體禮儀に眞福詞は八調經の、又規程の第六歌頌。提綱は順序の調の。使徒はティモフェイ書二百九十六端。「アリルイヤ」。福音經はルカ八十九端。領聖詞は「天より主を讃め揚げよ」。

               ~~~~~~

【注意】 正敎會は信者に斎を守るを以て誇りしファリセイに似ざらんことを敎へん爲に、税吏及びファリセイの主日の次の週間の水曜日及び金曜日に於て俗人には肉を食ひ、修士には乾酪及び鶏卵を食すことを許す。故に此の週間を不禁食週間と稱す。

時として税吏及びファリセイの主日の次の「スボタ」、蕩子の主日の前の「スボタ」に總死者の記憶を行ふことあり。此の記憶の奉事は規に循ひて斷肉の「スボタ」に行ふべきなれども、若し主の迎接祭が斷肉の「スボタ」に當ることあらば、此の奉事は彼の「スボタ」に移さる。然れども是くの如き時は總死者の記憶は斷肉の週間の木曜日にも行ふを得。

 

               ~~~~~~

 

 

 

---------------------[税吏及びファリセイの主日 早課   15]---------------------

 


 蕩子の譬の聖福音經を讀む主日 


「スボタ」の晩課に常例の聖詠誦讀の後に、「主よ爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の主日の三、及びアナトリイの三、又三歌齋經の四、之を復誦す。第一調。

我無罪生活の地に委ねられて、罪を播き、鎌を以て怠惰の穂を刈り、手づから我が行の束を約ねて、之を禾場に布けり、痛悔の禾場にあらず。然れども爾永遠の農夫たる我が神に祈る、爾の慈憐の風を以て我が行の糠を吹き散らし、麥たる赦罪を吾が靈に與へて、我を爾の天の倉に斂めて、我を救ひ給へ。

兄弟よ、我等機密の力を悟らん、蓋至仁なる父は罪より父の家に上りし蕩子を迎へて接吻し、又之に己の光榮を知るを賜ひ、上なる者の爲に奥密なる樂を設けて、肥えたる犢を宰り給ふ、我等が宰を爲しし仁愛の父、及び光榮の宰なる吾が靈の救主と偕に宜しきに合ひて住はん爲なり。

光榮、第二調、嗚呼我不當の者は如何なる福をか失ひたる、嗚呼我慾に耽る者は如何なる國にか離れたる、我は受けし富を浪費し、誡に背けり。憐なる哉我が慾に耽る靈や爾は是より永遠の火に定められん。故に終の至らざる先にハリストス神に

---------------------[蕩子の主日 「スボタ」の晩課 16]---------------------

呼べ、神よ、我を蕩子の如く納れて、我を憐み給へ。

   今も、本調の第一の生神女讃詞。

聖入。「穏なる光」。提綱、「主は王たり」。

   「リティヤ」には常例の如く本堂の讃頌。

光榮、第四調、洪恩なる主よ、我も遠く離れて生命を費しし者は蕩子の如く來れり。父よ爾が我に賜ひし富は我浪費せり。神よ、痛悔する我を納れて、我を憐み給へ。

   今も、同調の生神女讃詞。

   挿句に八調經の又讃頌。

光榮、第六調、我不當の者は父の賜ひし富を浪費して、無知の獣と共に豢はれ、其食を食はんと欲したれども、飽くを得ずして飢えて苦しみたり。故に慈憐なる父に還りて、涙を流して呼ぶ、我爾の仁愛に俯伏する者を傭人の如く納れて、我を救ひ給へ。

今も、生神女讃詞、「至浄なる者よ、我の造成者及び贖罪者」。發放の讃詞、「生神童貞女よ、慶べよ」、三次。其他常例の如し。

            ~~~~~~

 

--------------------[蕩子の主日 「スボタ」の晩課 17]---------------------

 

 蕩子の主日の早課

 

「主は神なり」に八調經の主日の讃詞及び生神女讃詞。常例の聖詠誦讀及び多燭詞。

常例の二聖詠。此に又第百三十六聖詠を加ふ、「我等曾てワワィロンの河邊に坐し」、傷感の「アリルイヤと偕に。

品第詞、及び提綱は本調の。「凡そ呼吸ある者」。早課の福音經。次に光榮、第八調、「生命を賜ふ主よ、我に痛悔の門を啓けよ」。今も、生神女讃詞、「生神女よ、我を救の道に導けよ」。次に第六調、「神よ爾の大なる憐に因りて」。「我不當の者は多くの犯しし罪を念ひて」。(第三頁を看よ)。

規程は八調經の復活の、「イルモス」と共に四句に、十字架復活の二句に、生神女の二句に、及び三歌齋經の六句に。月課經の奉事は金曜日の晩堂課に歌ふ。

 

   規程、イオシフ師の作。第二調。

第一歌頌、「靈よ、モイセイの歌を採りてべ。」

イイスス神よ、蕩子の如く痛悔する我、怠惰の中に一生を費して、爾を怒らせし者をも今納れ給へ。

---------------------[蕩子の主日 早課 18]---------------------

我爾より遠く離れ、放蕩に生活して、爾が先に我に賜ひし神聖なる富を惡しく費せり。慈憐なる父よ、求む、還りたる我をも納れ給へ。

光榮、至りて洪恩なる主よ、今父の懐を啓きて、我をも蕩子の如く納れ給へ、我が感謝して爾を讃榮せん爲なり。

生神女讃詞、神よ、恩主として、我の上に爾の悉くの仁慈を顯し、爾の母の神聖なる祈に由りて、我が罪の多きを顧みること勿れ。

   共頌に規程の「イルモス」を歌ふ。

靈よ、モイセイの歌を採りてべ、佑け護る者顯れて、我が救と爲れり、彼は吾が神なり、我彼を讃め揚げん。

 

第三歌頌、「諸善を耕作し、諸徳を培養する神よ」。

我本心を失ひて、無知にして諸慾の創意者に身を寄せたり。ハリストスよ、求む、我を蕩子の如く納れ給へ。

我蕩子の聲に效ひて呼ぶ、父よ、我罪を犯せり。彼の如く今我をも抱きて、我を退くる毋れ。

光榮、ハリストスよ、爾の懐を啓きて、慈憐を以て我罪及び諸慾の遠き地より還る者を納れ給へ。

---------------------[蕩子の主日 早課 19]---------------------

生神女讃詞、女の中に善なる潔き者よ、我多くの罪に由りて貧しくなりたる者をも諸善に富まし給へ、我が爾を讃榮せん爲なり。

イルモス、諸善を耕作し、諸徳を培養する神よ、爾の慈憐に因りて、實を結ばざる我が智慧を實を結ぶ者と顯し給へ。

   坐誦讃詞、第一調。

救世主よ、急ぎて父の懐を我が爲に啓き給へ。我爾の洪恩の費されぬ富を見て、放蕩に我が生を費せり。今我の貧しくなりたる心を棄つる毋れ、蓋主よ、我傷感の情を以て爾に呼ぶ、父よ、我天及び爾の前に罪を獲たり。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

聘女ならぬ潔き生神童貞女、獨信者の轉達及び帲幪なる者よ、爾に恃頼を負はしむる衆人を諸の災禍、憂愁、及び甚しき誘惑より脱れしめ、爾の神聖なる祈を以て我等の靈を救ひ給へ。

 

第四歌頌、「預言者は爾が童貞女より生るるを預見して」。

天の父よ、爾が我に賜ひし福の富を我惡しく費して、異邦の住民に服從せり。故に爾に呼ぶ、我爾の前に罪を獲たり、爾の懐を我が爲に啓きて、昔蕩子を納れし如く我を納れ給へ。

---------------------[蕩子の主日 早課 20]---------------------

我不當にして諸慾の創造者に就き、不用意に本心を失ひて、凡の惡に服せり。救世主、上天の父よ我爾の多憐に趨り附く者を憐み給へ。

光榮、我凡の恥に盈ちて、天の高きを仰ぐ能はず、無知にして罪に服したればなり。今は還りて傷感の情を以て呼ぶ、我爾の前に罪を獲たり、萬有の王よ我を納れ給へ。

生神女讃詞、人人の佑助、衆信者の堅固なる恃頼、救はるる者の避所たる潔き童貞女よ、爾の母たる祈を以て我を救ひて、將來の生命を得しめ給へ。

イルモス、預言者は爾が童貞女より生るるを預見して、傳へて呼べり、ハリストスよ我爾の風聲を聞きて懼れたり、蓋爾は南より、樹蔭繁き聖山より來給へり。

 

第五歌頌、「夜過ぎて日近づき」。

我異邦の住民に服し、亡滅の地に旅行して、恥に盈ちたり。今は還りて爾に呼ぶ、洪恩の主よ、我罪を犯せり。

天の父よ、我惡より還りたる者の爲に今父たる爾の慈憐を啓き給へ。至大なる仁慈を有つ主よ、我を退くる毋れ。

光榮、ハリストスよ、我無量に爾を怒らせて、天の高きを仰ぐ能はず。唯爾の大

---------------------[蕩子の主日 早課 21]---------------------

なる仁慈を知りて呼ぶ、我爾の前に罪を獲たり、我を潔めて救ひ給へ。

生神女讃詞、恩寵を蒙れる至聖なる童貞女、衆人の爲に潔浄を生みし者よ、我が諸罪の重き任を爾の祈を以て輕くし給へ。

イルモス、夜過ぎて日近づき、光は世界を照せり、故に主よ、天軍は爾を歌ひ、萬物は爾を崇め讃む。

 

第六歌頌、「救世主よ我罪の深處に圍まれ」。

諸罪の深處は常に我を圍み、罪過の激浪は我を沈む。ハリストス神よ我を生命の港に導き給へ、光榮の王よ、我を救ひ給へ。

我父の富を悉く費し、貧しくなりて恥に盈ち、結果なき思に服從せり。故に爾に呼ぶ、人を愛する主よ我を憐みて救ひ給へ。

光榮、至善なる主よ、我爾より離れて、凡の善に飢えたり。ハリストスよ、今還れる我を憐みて、爾の仁愛を歌ふ者を救ひ給へ。

生神女讃詞、救世主及び主宰たるハリストスを生みし潔き童貞女よ我凡の善に貧しくなりたる者に救を得しめ給へ、我が爾の偉大なるを歌はん爲なり。

イルモス、救世主よ我罪の深處に圍まれ、世俗の淵に沈めらる。求む、イオナを猛獣

---------------------[蕩子の主日 早課 22]---------------------

より救ひし如く、我をも諸慾より引き上げて救ひ給へ。

   小讃詞、第三調。

我無知にして父たる爾の光榮に遠ざかり、爾が我に託せし富を惡の中に費せり。故に蕩子の聲を爾に捧ぐ、洪恩なる父よ、我爾の前に罪を獲たり、痛悔する我を納れて、爾が傭人の一の如く爲し給へ。

   同讃詞。

我が救世主が日日に己の聲を以て敎を述ぶるに、我等は放蕩にして復潔浄に爲りし者の事を記す書を聞く。信を以て彼の善なる痛悔に效ひ、謙卑の心を以て衆人の隠なる事を知る主に呼ばん、洪恩なる父よ我爾の前に罪を獲て、既に前の如く爾の子と稱へらるるに堪へず。然れども爾は本性の仁愛なる主として、我を納れて、爾が傭人の一の如く爲し給へ。

 

第七歌頒、「少者は爐の中に、ヘルワィムに效ひて」。

人を慈む主よ我至りて不當にして肉體の逸樂に耽り、全く諸慾の創意者に服して、爾より遠かりたり。今は蕩子の聲を以て呼ぶ、ハリストスよ、我罪を犯せり、獨仁慈なる主として我を棄つる勿れ。

萬有の王よ我呼ぶ、我罪を犯せり、敢て天の高きを仰ぐ能はず、蓋我獨爾の命に悖

---------------------[蕩子の主日 早課 23]---------------------

りて、無知にして爾を怒らせたり。求む、爾獨仁慈なる主として、我を爾の顔より退くる勿れ。

光榮、主ハリストスよ、使徒、預言者、克肖者尊き致命者、及び義人等の祈に因りて、我が罪を犯して爾の仁慈を怒らせしを悉く赦し給へ、我が萬世に爾を歌頌せん爲なり。

生神女讃詞、ヘルワィム、セラフィム、及び悉くの天軍より最光明なる者と顯れし純潔なる生神女よ、彼等と偕に無原の父の神聖なる言、爾が身にて生みし主に祈りて、我等衆に永遠の福を得しめ給へ。

イルモス、少者は爐の中にヘルワィムに效ひて、祝ひて呼べり、神よ爾は崇め讃めらる、蓋眞實と義判とに縁りて、悉く之を我等の諸罪の爲に降せり。爾は萬世に歌はれ、讃め揚げらる。

 

第八歌頌、「昔シナイ山に於て棘の中」。、

至大なる仁慈に由りて甘じて受けたる貧窮を以て世界を救はん爲に地に降りし主よ、我今凡の恩惠に貧窮と爲りし者を慈憐なる主として救ひ給へ。』

上天の父よ、我爾の誡より遠ざかり、至りて不當にして詭譎の者に服從し、今還りて爾の前に俯伏する者を昔の蕩子の如く納れ給へ。

---------------------[蕩子の主日 早課 24]---------------------

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

洪恩なる主よ、我滅亡を致す思に圍まれて昧まされ、爾より遠かりて全く本心を失へり。故に痛悔して爾の前に俯伏する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、潔き神の母、獨倒されたる人の提起なる者よ、諸の罪に由りて全く殘はれし謙卑なる我をも起し給へ。

イルモス、昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに童貞女の奇跡を預め示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

第九歌頌、「童貞女が孕める者と現れて」。

ハリストス救世主よ、我が心の悲を見、我が還るを見、涙を見て、我を棄つる勿れ、乃慈憐を以て復我を抱きて、救はるる者の大數に加へ給へ、我が感謝して爾の仁慈を歌はん爲なり。

我盗賊の如く呼ぶ、我を憶ひ給へ。税吏の如く傷感を懐き、膺を拊ちて、今呼ぶ、至りて洪恩なる萬有の王よ、我が悉くの惡より我を潔めて、蕩子の如く我を納れ給へ、我が爾の至極の寛容を歌はん爲なり。

我が至りて不當なる靈よ、今歎息してハリストスに呼べ、甘じて我が爲に貧窮と爲りし主よ、我凡の恩惠に貧窮と爲りし者を、獨仁慈慈憐なる主として、善の富

--------------------[蕩子の主日 早課 25]---------------------

を以て富まし給へ。

光榮、仁慈なる主よ爾が昔甘じて還りたる蕩子の爲に設けし樂、之を今我不當の者の爲に行ひて、爾の尊き懐を我の爲に啓き給へ、我が救はれて、爾の至極の寛容を歌頌せん爲なり。

生神女讃詞、童貞女よ祈る、爾の光明なる祈を以て惡に昧まされたる我が靈の目を照して、我を痛悔の途に入れ給へ、我が爾言に超えて身にて言を生みし者を宜しきに合ひて歌頌せん爲なり。

イルモス、童貞女が孕める者と現れて、産苦なく子を生みし事、地上の者の中誰か是くの如きを聞き、或は誰か何の時にか見たる。潔き童貞女よ爾の奇蹟は斯くの如し、我等爾を崇め讃む。

   差遣詞は八調經の。次に三歌齋經の、左の如し。

救世主よ、我不當の者は遠く離れて、爾が我に賜ひし恩寵の富を惡しく費し、放蕩に生活して、詭譎なる惡鬼の爲に浪費せり。求む、洪恩なる父よ我還る者を蕩子の如く納れて救ひ給へ。

又、主よ、我不當の者は爾の富を悉く浪費して、詭譎なる惡鬼に服せり。求む、至りて仁慈なる救世主よ、我放蕩の者を憐み、汚されし者を潔めて爾の國の始の衣

--------------------[蕩子の主日 早課 26]---------------------

を我に還し給へ 

生神女讃詞、聖なる童貞女、神の母よ諸使徒、致命者、預言者、及び克肖者の大なる譽よ、爾の子及び主が坐して各人を其行に應ひて審判せん時、其時彼を我等爾の諸僕の爲に慈憐の者と爲し給へ。 

 

「凡そ呼吸ある者」に讚頌は八調經の主日の四章、アナトリイの一、及び三歌齋經の自調の三。第二調。

主よ、我蕩子の聲を爾に捧ぐ、仁慈なる者よ、我爾の目の前に罪を犯し、爾の恩賜の富を費せり。求む、救世主よ、我痛悔する者を納れて、我を救ひ給へ。 

第四調。句、「主我が神よ起きて」。  

洪恩なる主よ我も遠き地に生を費しし者は蕩子の如く來れり。父よ我爾が我に賜ひし富を浪費せり、神よ我痛悔する者を納れて 我を憐み給へ。 

第八調。句、「主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ」。

我放蕩に生活して、父の産業の富を浪費し、兇惡なる住民の地にありて最貧しくなれり 復彼等と同居するに忍びずして、爾洪恩なる父に還りて呼ぶ、我天及び爾の前に罪を獲たり、既に爾の子と稱へらるるに堪へず、神よ我を爾が傭人の一の如く爲して、我を憐み給へ。

--------------------[蕩子の主日 早課 27]---------------------

光榮、第六調、仁慈なる父よ我爾より遠かれり、我を棄つる勿れ、爾の國に當らざる者と爲す勿れ。至りて兇惡なる敵は我を剥ぎて、我が寶を取れり、我放蕩にして靈の恩賜を費せり。故に起ちて爾に還りて呼ぶ、我を爾が傭人の一の如く爲し給へ。蓋爾は獨大仁慈なる主として、我の爲に爾の至りて尊き手を十字架に舒べ給へり、我を殘忍なる猛獸より出して、我に始の衣を衣せん爲なり。

今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。聯及び發放詞。前院に於て常例の「リティヤ」、其中に光榮、今も、福音の讚頌を歌ふ。并に敎訓を誦讀す。

 

第一時課及び最後の發放詞。

           ~~~~~~

聖體禮儀に眞福詞は八調經の、六句に、又三歌經の第六歌頌四句に。使徒の提綱は本調に依る。使徒はコリンフ書百三十五端。「アリルイヤ」は本調の。福音經はルカ七十九端。領聖詞は「天より主を讃め揚げよ」。

           ~~~~~~

【注意】 知るべし、斷肉の週間には「アリルイヤ」を歌はず、又早課の「カフィズマ」の中一を措きて、之を晩課に誦す、預言者の歌頌を誦せず。中時課及び晩堂課に歌ふ所の至

--------------------[蕩子の主日 早課 28]---------------------

聖生神女の規程を歌はず。晩堂課に小課を歌ふ。乾酪の週間にも斯くの如く行ふ、水曜日と火曜日との外、但し此の事の規定は後に見ゆ。此の週間内の某日の早課に聖マカリイの四旬齋及び五旬祭の事の講説を讀む、其始は「吾が小子よ、我が心は爾等の爲に喜ぶ」。

又知るべし、斷肉の「スボタ」及び主日に當る所の聖人の奉事は、若し大聖人にあらずば、前日の晩堂課に歌ふ。斷酪の「スボタ」及び主日に於ても是くの如し、或は聖務長の定むる所に随ふ。

                      ~~~~~~

 

 


 斷肉の「スボタ」


 

斯の「スボタ」に於て古世より寢りし悉くの正敎の「ハリスティアニン」、我が父祖及び兄弟の記憶を行ふ。

金曜日の晩課に、首誦聖詠及び常例の聖詠誦讀の後、「主よ爾にぶ」に六句を立て

---------------------[斷肉の「スボタ」 金曜日の晩課 29]---------------------

て歌ふ、八調經の致命者の讃頌、順序の調の三章、又三歌經の三章。

 

   第八調

信者よ、我等は今日古世よりの悉くの死者、信と敬虔とを抱きて生を送りし者の名の記憶を行ひて、救世主及び主を讃め歌ひ、熱切に祈りて、彼等が審判の時に於て、我が神全地を審判する主に善き答を爲し、其右に歡喜の中に立ち、義者の分、聖者の光明なる所得を受け、天國に勝ふる者と爲ることを求めん。

爾の血を以て人人の罪を贖ひ、爾の死を以て我等を苦しき死より救ひ、爾の復活を以て我等に永遠の生命を賜ふ主救世主よ、敬虔を抱きて或は野に、或は邑に、或は海に、或は陸に何の處に於ても寢りし者、諸王、諸司祭、司祭長、修道士、及び俗人、何の年齢、何の民族に於ても寢りし者を悉く安ぜしめて、彼等に爾の天の國を獲しめ給へ。

ハリストスよ、爾が死より起くるに因りて、死は已に敬虔にして死せし者に主たらず。故に我等熱切に祈る、神よ、爾の諸僕、アダムより今日に至るまで潔く爾に事へし者、我が諸父及び兄弟、朋友及び親族、悉くの人、存命の時忠信に奉事して、多様多に爾に移りし者を爾の庭に、アウラアムの懐に安ぜしめて、彼等に爾

---------------------[斷肉の「スボタ」 金曜日の晩課 30]---------------------

の天の國を獲しめ給へ。

光榮、第八調、我死を思ひて泣く、神に像りて造られし我が美麗の醜しく、面目なく、姿を失ひて、柩に臥すを見て涙に勝へず。鳴呼奇蹟や、此の我等に成りたる秘密は何ぞや、我等如何ぞ朽壊に從ひし、如何ぞ死に合せられし、眞に神の命に依りてなり、録されしが如し、彼は世を逝りし者に安息を賜ふ神なり。

   今も、本調の第一の生神女讃詞。「穏なる光」。

提綱に代へて「アリルイヤ」を歌ふ、第八調。句、主よ、爾が選び近づけし者は福なり、彼等の記憶は世世に在らん。

句、彼等の靈は福に居らん。

 

挿句に當調の致命者讃詞、又死者讃詞二章、ダマスクのイオアンの作。

句は右に記す所を合せ歌ふ、主よ、爾が選び近づけし者は福なり、彼等の記憶は世世に在らん。又、彼等の靈は福に居らん。

光榮、第六調、爾の造成の命は我が爲に原始及び合成の縁由と爲れり。蓋爾は見ゆると見えざる性より我生ける者を合せんと欲して、我の體を土より造り、生命を施す神妙なる爾の嘘にて我に靈を與へ給へり。故に救世主よ、爾の諸僕を生ける者の地に、義人等の住所に安ぜしめ給へ。

---------------------[斷肉の「スボタ」 金曜日の晩課 31]---------------------

今も、生神女讃詞、同調、ハリストスよ、爾を生みし者と、爾の致命者、使徒、預言者、成聖者、克肖者、義者、及び衆聖人の祈に由りて、寢りし爾の諸僕を安息せしめ給へ。

 

「主宰よ、今爾の言に循ひて、爾の僕を釋し」。

讃詞、第八調、惟一の造成主、深き智慧と仁慈とを以て萬事を治め、衆人に益ある事を賜ふ主よ、爾の諸僕の靈を安ぜしめ給へ、蓋彼等は爾造物主と造成主と我が神に恃頼を負はせたればなり。

光榮、今も、生神女讃詞、同調、生神女、聘女ならぬ聘女、信者の救よ、我等は爾を垣墻と港、及び爾が生みし神の前に善く納れらるる祈者として有つ。

   聯及び發放詞。

 

晩課の發放詞の後、前院に於て寢りし者の爲に「パニヒダ」を行ふ、其中に順序の調の死者の規程を歌ふ。

            ~~~~~~

 

---------------------[斷肉の「スボタ」 金曜日の晩課 32]---------------------

 

 

 斷肉の「スボタ」の早課

 

六段の聖詠の後、に「アリルイヤ」、第八調。

讃詞、「惟一の造成主、深き智慧と」、二次。光榮、今も、生神女讃詞、「生神女、聘女ならぬ聘女、信者の救よ」。常例の聖詠誦讀。又、コリンフ前書中の死者の事の誦讀あり。「ネポロチニ」を二段に分ちて歌ふ、附唱と共に、「主よ、爾は崇め讃めらる」。第五調に依る。

   續きて死者の諸讃詞、第五調。

附唱、主よ、爾は崇め讃めらる、爾の誡を我に訓へ給へ。

聖人の群は生命の泉と天堂の門とを得たり、願はくは我も痛悔を以て道を得んことを。我は亡びし羊なり、救世主よ、我を呼び返して救ひ給へ。

「主よ、爾は崇め讃めらる」。

神の羔を傳へ、己も羔の如く屠られて、老いざる永久の生命に移りし聖なる致命者よ、我等に罪債の赦を賜はんことを切に祈り給へ。

「主よ、爾は崇め讃めらる」。

狭く苦しき路を過りて、生ける中十字架を衡の如く負ひ、信じて我に從ひし衆人

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 33]---------------------

よ來りて、爾等の爲に備へたる褒賞と天の榮冠とを樂しめよ。

「主よ、爾は崇め讃めらる」。

我は罪惡の創を負へども、爾が言ひ難き光榮の像なり。主宰よ、爾の造りし者に憐を垂れ、爾の惠にて浄め、切に望める生國を我に與へて、我を復樂園に住む者と爲し給へ。

「主よ、爾は崇め讃めらる」。

昔我を無より造りて、爾が神たる像にて飾り、戒を犯すに因りて復我を我が出でし地に歸しし主よ、我を神の肖に適ふ位に升せ、古の華麗を以て我を改め給へ。

「主よ、爾は崇め讃めらる」。

神よ、爾の諸僕を安ぜしめて、聖人の群と義人が日の如く光れる樂園に入れ給へ。爾の眠りし諸僕を安ぜしめて、其悉くの過を思ふ勿れ。

光榮、一の神性の三の光りを敬み歌ひて呼ぶ、無原の父と、同無原の子と、聖神よ、爾は聖なり。我等信を以て爾に勤むる者を照して、永遠の火を免れしめ給へ。』

今も、衆人の救の爲に身にて神を生みし潔き者よ慶べ、人の族は爾に因りて救を得たり。潔くして讃美たる生神女よ、願はくは我等爾に因りて樂園を得んことを。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 34]---------------------

「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、「アリルイヤ」、神よ光榮は爾に歸す。三次。

 

次に寢りし者の爲の聯「我等復又」。

司祭祝文、「諸の靈神と諸の肉體との神」。詠隊、主憐めよ。四十次。

 

   高聲の後に坐誦讃詞、第五調。

我が救世主よ、爾の諸僕を義人等と偕に安ぜしめて、録しし如く、之を爾の庭に居らしめ給へ。爾の仁慈なるに因りて、其自由と自由ならざる、其凡そ知ると知らざる罪を恕し給へ、爾は人を愛する主なればなり。

光榮、今も、生神女讃詞、童貞女より世界に輝き、彼を以て光の諸子を顯ししハリストス神よ、我等を憐み給へ。

「主に歌はん」を誦句す。

規程は本堂の六句に、及び三歌齋經の八句に。第二歌頌をも歌ふ、誦句を用いず。又預言者の歌頌。

規程はフェオドルストゥディトの作。第八調。

 

   第一歌頌

イルモス、「人人よイズライリを奴隷より釋きたる」。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 35]---------------------

我等皆今日古世よりの死者の記憶を行ひて、ハリストスに祈らん、願はくは主は彼等、信と永生の望とを抱きて寢りし者に永遠の火を免れしめん。

ハリストスよ、爾は深き定を以て睿智にして各人の生命の終と、境と、とを預定し給へり。故に至りて洪恩なる主よ、凡の地に於て墓に掩はれたる者を審判の時に救ひ給へ。

我等の生命の涯を定めし主よ、度生の夜より眠りし正敎の諸司祭、諸王、及び爾の悉くの民を暮れざる日の諸子と顯し給へ。

仁慈なる主よ、水の掩ひ、戰の刈り、地震の斃し、兇殺者の殺し、火の焚きたる諸信者を義人等の居處に入れ給へ。

我が救世主よ、我等の肉體の罪債を顧みずして、萬族の人人を何の齢に論なく、爾の審判座の前に、爾造成主に答を爲して、定罪せられざる者として立たしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、我惟一の性の實在の三位、生れざる父、生れし子、及び聖神、無原なる國、權柄、惟一の神性を歌ふ。

生神女讃詞、聘女ならぬ童貞女よ、爾は實に地上に於て上天より大なる天と現れたり、蓋爾より世界に日として、義を以て司る主は出でて輝けり。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 36]---------------------

共頌、人人よ、イズライリを奴隷より釋きたる我が奇異なる神に讃詠を獻りて、凱歌を歌ひて呼ばん、我等爾惟一の主宰を歌頌せん。

 

   第二歌頌

イルモス、見よ、見よ、我は爾等の神、世世の先に父より生れ、人を愛するに因りて、末の時に夫なき童貞女に孕まれ、原祖アダムの罪を滅しし者なり。

見よ、見よ、我は爾等の神、義なる定を以て生命の境界を立て、凡そ永遠の復活の望を抱きて寢りし者を朽壞より不朽に受くる者なり。

信を以て寢りし者を地の四極より受くる主よ、海に、或は陸に、或は川に、泉に、或は池に、或は井に死して、禽獸と昆蟲との食と爲りし者を悉く安ぜしめ給へ。

主よ、爾の定に由りて四の元行に解かれし者は悉く爾の手に在り。爾の降臨の時に彼等を合せて復活せしめ、彼等の知ると知らずして犯しし諸罪を悉く赦し給へ。

主よ、畏るべき哉爾の第二の降臨や、蓋爾は電の如く地に降りて、爾の悉くの造物を審判する爲に起さん。其時信を以て生を送りて、爾を迎へし者に爾と偕に居るを得しめ給へ。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 37]---------------------

光榮、聖三者讃詞、至りて完全にして神聖なる惟一者、三位なる者、生れざる父及び獨生の子、父より出でて子に由りて現るる聖神、惟一の實在なる神性、全能なる主神よ、我等衆人を救ひ給へ。

生神女讃詞、母童貞女よ、爾の産の奇跡は言ひ難し、蓋如何ぞ爾は生みて、潔く止まる、如何ぞ子を生みて、聊も夫の誘を知らざる。我より性に超えて神妙に生れし神の言の知るが如し。

共頌、「見よ、見よ、我は爾等の神」。

 

   第三歌頌

イルモス、「爾の手を以て天を堅めし」。

神よ、生命の馳すべき程を盡しし者に天の光榮の中に義の榮冠を冠りて、永遠の福を樂しまんことを得しめ給へ。

遽に移され、電に焚かれ、嚴寒に斃され、凡の創傷に殺されし者を、神よ、火を以て萬事を試みる時に安ぜしめ給へ。

ハリストスよ、正敎の信に導かれて、常に荒れたる生命の海を渡りし者に爾の天上の穏なる港に到るを得しめ給へ。

ハリストス神よ、爾の定に由りて、凡そ海の水族、天の鳥類の食と爲りし者を末

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 38]---------------------

の日に於て光榮の中に復活せしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、我意思の中に神の單一の性を三位に分ちて、之を截られざる者として復一に合す、蓋急なる電の一閃して三光に見らるるが如し。

生神女讃詞、潔き者よ、爾の奇跡は悟り難し、蓋爾は夫なくして生み、生みて後爾の童貞を守り給ふ。故に天使の大數及び人の族は爾を世世に歌ふ。

共頌、爾の手を以て天を堅めし神の言よ、爾を識る眞の知識の光照にて我等爾を頼む者の心を堅め給へ。

   坐誦讃詞、第五調。

我等の爲に十字架と死とを忍び、地獄を殺し、死者を己と偕に復活せしめし救世主、生命を賜ふ主よ、人を愛する神として、我等より移りし者を安ぜんしめて、爾の畏れ戰くべき降臨の時に、爾の大仁慈に因りて、彼等に爾の國を得しめ給へ。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

潔き者よ爾の速なる帲幪と、佑助と、矜憐とを爾の諸僕の上に顯し給へ。生神女よ、我が空しき想の浪を鎭めて、我が陷りし靈を起し給へ、蓋我知る、童貞女よ、爾は欲する所能せざるなし。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 39]---------------------

 

   第四歌頌

イルモス、「言よ、預言者は樹蔭繁き山」。

我が救世主よ、凡の父、祖父、曾祖、高祖、始の者より終の者に至るまで、能く法に遵ひ信を守りて寢りし者を悉く記憶し給へ。

ハリストスよ、山の中に、途の間に、野の處に於て信を抱きて生命に離れし修士及び俗人、少者及び翁を諸聖人と偕に住まはせ給へ。

我が救世主よ、悲或は喜より俄に移りし者、信を以て直に生を轉ぜし者、平和の時或は喪亂の時に苦を受けし者を悉く安ぜしめ給へ。

ハリストス我が救世主よ、劍に殺され、馬に斃され、霰に、雪に、洪水に滅され、石に碎かれ、土崩に壓せられし者を安ぜしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、奇異なる事なり、神の性は惟一にして三位なり、三位にして分れざる一なり、蓋父、子、及び聖神は惟一の神として拜まる。

生神女讃詞、童貞女、主の母よ、爾の祈を以て我等罪の浪に荒らさるる者を導き、諸の禍より脱れしめて、救の港に到らしめ給へ。

共頌、言よ、預言者は樹蔭繁き山たる惟一の生神女より爾が身を取らんと欲するを神妙に見て、畏を以て爾の力を讃榮せり。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 40]---------------------

 

   第五歌頌

イルモス、「神よ、我が神は爾に朝のを奉る」。

我等は古世より敬虔にして死せし各人の記憶を今日行ひて、熱切に爾に呼ぶ、悉く彼等を諸聖人と偕に安ぜしめ給へ。

洪恩なる主よ、凡の族凡の民の中より受けし正敎の諸王、諸矦、或は修士を永遠の苦より脱れしめ給へ。

悉くの造りし者の爲に益あることを知る主我が神よ、俄に仆れて死するを許しし者を凡の苦より脱れしめ給へ。

我が救世主よ、信を以て死せし衆人を永遠の火、外の幽闇、絶えず苦しむる蟲、切歯、及び凡の苦より脱れしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、同座にして無原なる三位の惟一者、位にて分るれども惟一の性を有つ者よ、我等を爾の誡の惟一の望の中に合せ給へ。

生神女讃詞、潔き者よ、爾は火ののセラフィムより最尊き者と顯れたり、彼等の近づき難きイイスス救世主を生みたればなり。彼は人體を取りて、地に生るる者の合性を神成し給へり。

共頌、神よ、我が神は爾に朝のを奉る、蓋爾が來りて賜ひし誡は光なり。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 41]---------------------

主宰よ、此等を以て我が智慧を照して、生命の途に向はしめ給へ。

 

   第六歌頌

イルモス、「人を愛する主よ、我多くの罪に圍まれて」。

苦を受けて死の苦を解きたる生命の司、我が神よ、古世より寢りし爾の諸僕を安ぜしめ給へ。

主よ、姦計に陷り、毒を飲ませられ、縊りて殺されたる者を爾の言ひ難き定を以て諸聖人と偕に安ぜしめ給へ。

洪恩なる神よ、衆人が爾の面の前に裸體にして立ち、爾が之を審判する時、其時忠信に爾に事へし者を宥め給へ。

ハリストスよ、爾の天使首が末の時の角を吹きて、衆人を生命に起す時、其時爾の諸僕を安ぜしめ給へ。

神よ、古世より爾の受けし人類の中の忠信なる者に世世爾に奉事する者と偕に爾を讃榮するを得しめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、三聖にして一座なる神元、父、子、聖神よ、爾は我の神、爾の全能を以て萬有を有つ者なり。

生神女讃詞、祖父イェッセイよ、樂しめ、爾の根たる潔き童貞女より生命の花た

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 42]---------------------

るハリストス神、世界を救ふ主は輝き出でたり。

共頌、人を愛する主よ、我多くの罪に圍まれて、爾の洪恩に趨り附く者を受けて、預言者の如く我を救ひ給へ。

   小讃詞、第八調。

ハリストスよ、爾が諸僕の靈を諸聖人と偕に、疾も悲も歎もなくして、終なき生命のある處に安ぜしめ給へ。

   同讃詞

人を造りし主よ、爾は獨死せざる者なり、我等地の者は、土より造られて、復土に逝かん、爾我を造りし主の命じて我に言ひしが如し、爾土にして土に歸らんと。我等人人皆彼處に往き、墓の上に哭きて歌ひて云はん、「アリルイヤ」。

 

   第七歌頌

イルモス、「太初に地を基づけ」。

我等は古世より敬虔を抱きて移りし者の記憶を行ひて呼ばん、主我が先祖の神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

神よ敬虔を抱きて遽に死せし者、高處より墜ち、木、或は鐵、或は石に由りて命を失ひし信者を安ぜしめ給へ。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 43]---------------------

洪恩なるハリストスよ、存命の時忠信に爾に奉事して爾に移りし者を、爾の畏るべき降臨の時に右なる羊として立たしめ給へ。

ハリストスよ、爾の諸僕を爾の選ばれたる者と共に納れて、爾に呼ばしめ給へ、主我が先祖の神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

地の塵を取りて體を造り、靈を以て之を生かしし神、洪恩なる救世主よ、爾が受けし者を老いざる生命の中に安ぜしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、三日にして一光あるが如く、父、子、聖神、一性にして位の三なる神は歌はるべし。

生神女讃詞、童貞女よ、我等はダワィドの如く心を合せて爾に歌を奉りて爾を神の山と稱ふ、言は身にて其内に入りて、我等を己の内に屬神に神成し給へり。』

共頌、太初に地を基づけ、天を言にて固めし主、我が先祖の神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「聖なる山に光榮を顯し」。

太初に死の蔭を掃ひて、日の如く墓より輝き出でたる光榮の主よ、凡そ信を以て死せし者を世世に爾の復活の諸子と爲し給へ。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 44]---------------------

隠れたる事及び微なる事を知る主よ、暗昧の行と我が心の意思とを啓かん時、其時凡そ信を以て寢りし者に言を促す勿れ。

ハリストスよ、寶座に坐して、角を以て地の四極より集められし者に審判の前に立つを命ぜん時、其時仁慈なる主として衆人を宥め給へ。

光榮の主よ、種種の事に依り、諸の禍に遭ひて、信を抱きて俄に寢りし者を世世に安ぜしめ給へ。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

父、子、及び至聖なる神よ、我爾を神性の惟一なる者として歌ひ、爾を位の三なる者として尊み、爾の國の無原なる權柄を世世に讃榮す。

生神女讃詞、生神童貞女よ、爾は生活の流の封ぜられたる泉と現れたり、蓋夫なく主を生みて、世世に信者に不死の水を飲ませ給ふ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、聖なる山に光榮を顯し、棘の中に火を以てモイセイに永貞童女の奥密を示しし主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「山に於て立法者に火及び棘」。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 45]---------------------

主よ凡そ古世より信と望とを抱きて寢りし者に爾の諸聖人の樂しむ處に喜ぶを得しめ給へ。

ハリストスよ、神の恐嚇に由りて死し、天より發する雷に依り、地の裂くるに依り、海の荒るるに依りて死せし衆信者を安ぜしめ給へ。

神よ、凡の齢の者、老翁と少者、童子と幼児と哺乳児、男性と女性の信者、爾が受けし者を安ぜしめ給へ。

主よ、毒蛇に囓まれ、大蛇に呑まれ、馬に踏まれ、近者に害せられて死せし在世中信を以て爾に事へし者を安ぜしめ給へ。

言よ、古世より萬族の中に信を抱きて死せし各人に、爾の降臨の時に定罪なく爾の前に立つを得しめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、三位にして惟一なる神よ、光榮は絶えず爾に歸す、父、子、及び聖神は三光なる特質に於て各神なりと雖、性に於ては惟一なる神なり。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾の産は智慧に超ゆ、蓋爾は先に在る者を生み、糧を世界に與ふる者を言ひ難く乳にて養ひ、萬有を保つ者ハリストス惟一なる吾が贖罪主を抱き給ふ。

共頌、山に於て立法者に火及び棘の中に預象せられたる、我等信者の救を爲す

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 46]---------------------

永貞童女の産を、黙さざる歌を以て崇め讃む、

   差遣詞

神として生ける者と死せし者とを司る救世主よ、爾の諸僕を選ばれたる者の居處に安ぜしめ給へ、蓋彼等は罪を行ひたれども、爾より離れざりき。

   光榮、又、

主よ、爾の諸僕を生ける者の地に、疾病と悲哀と歎息との遠かりたる處に安ぜしめて、人を愛する主として、彼等が在世中に犯しし罪を潔め給へ、蓋爾生死者の主宰は獨罪なく且仁慈なる主なり。

生神女讃詞、マリヤ、神の聘女よ、神の言を述べし預言者と致命者の會、成聖者と克肖者、及び衆義人と偕に常にハリストスに我等爾の諸僕の爲に祈りて、天の國の嗣と爲るを得しめ給へ。

 

「凡そ呼吸ある者」に讚頌、四句を立つ。第八調。

兄弟よ、終の前に皆來りて、我等の土なることに目を注ぎて、我が性の弱きと、肉體の器の卑しきと、其終とを見、人の塵なること、蟲の食と朽壞なること、我が枯れたる骨の全く呼吸なきことを見ん。柩に意を注がん、何れにか榮、何れにか容貌の美しき、何れにか辯論の舌、何れにか眉、或は何れにか目、皆塵なり、影なり。

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 47]---------------------

故に救世主よ、我等衆を憐み給へ。

何爲れぞ人は迷ひて誇る、自ら僅にして泥と爲らん者は何爲れぞ空しく心擾るる。土は何ぞ己の塵なること、濘なること、腐敗と朽壞との芥蔕なることを謀らざる。若し我等人人塵ならば、何ぞ地に着く、若し我等ハリストスの親族ならば、何ぞ彼に趨り附かず、暫時にして流れ盡くる生命を顧みずして、不朽の生命に從はざる、斯の生命は乃ハリストス、我が靈の光なる者なり。

爾の手を以てアダムを造り、不朽と死と恩寵に於ける生命との境を立て、朽壞を變じて始の生命に囘しし救世主よ、爾親ら、主宰よ、我等より受けし爾の諸僕を義人と偕に、選ばれたる會の中に安ぜしめ給へ。彼等の名を生命の書に録し、天使首の聲と角の響とを以て復活せしめて、彼等に爾の天の國を獲しめ給へ。

ハリストス復活して、始に造られしアダムの縲絏を解き、地獄の固を壞れり。死せし者皆勇めよ、死は死され、是と偕に地獄も擒にせられ、十字架に釘せられて復活せしハリストスは王と爲れり。彼は我等に肉體の不朽を與へ、彼は我等を興して、我等に復活を賜ひ、撓まざる信を以て篤く彼を信ぜし衆に彼處の光榮と歡樂とを得しめ給ふ、

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 48]---------------------

   光榮、第二調。

死者讃詞、ハリストス神よ、花の萎むが如く、影の過ぎ去るが如く、凡の人は壞らる。然れども角の響く時、衆死者は震動よりするが如く爾を迎ふる爲に起きん。其時主宰よ、我等より移しし爾の諸僕を爾の諸聖人の居處に納れ給へ。』

今も、生神女讃詞、慶べよ、生神女マリヤよ、毀たれぬ殿、更に言へば聖なる殿や、預言者の呼ぶが如し、爾の聖なる殿は義に於て奇異なり。

 

挿句に八調經の當調の讃頌、フェオファンの作。

   光榮、第六調。ダマスクのイオアンの作。

昔アダムはエデムに於て木の果を食ふに因りて病を得たり、蛇が毒を吐きたればなり、是に依りて人を噉ふ死は萬族に入りたり。然れども主宰來りて、蛇を斃して、我等に安息を賜へり。我等彼に呼ばん、救世主よ、受けし者を憐みて、爾の選ばれたる者と偕に安ぜしめ給へ。

今も、生神女讃詞、同調、ハリストスよ、爾は我等の神、睿智を以て萬事を行ひ且成就する主なり。爾の降臨を預言せん爲に爾は預言者を遣し、爾の至大なる行爲を傳へん爲に使徒を遣し給へり。彼等は爾の降臨を預言し、此等は洗を以て異邦人を照せり、致命者は苦を受けて、望みし所を得たり。彼の衆の會は爾を生みし

---------------------[斷肉の「スボタ」 早課 49]---------------------

者と偕に爾に祈る、神よ爾の受けし靈を安ぜしめ給へ。我定罪せられし者の爲に十字架を忍びし我が贖罪主及び神よ、我等にも爾の國を獲しめ給へ。

 

「至上者よ、主を讃榮し」。聖三祝文。讃詞、「惟一の造成主、深き智慧と」。光榮、今も、「生神女、聘女ならぬ聘女、信者の救よ」。第一時課。發放詞。

           ~~~~~~

 

聖體禮儀には代式、又三歌經の規程の第三及び第六歌頌。使徒の提綱、第六調、

彼等の靈は福に居らん。句、「主よ、爾に我が靈を擧ぐ」。使徒はコリンフ書百四十六端、又死者の安息の爲にフェサロニカ書二百七十端。「アリルイヤ」、第六調、「主よ、爾が選び近づけし者は福なり。句、彼等の記憶は世世に在らん。福音經はルカ百五端、又寢りし者の爲に、イオアン十六端。領聖詞、主よ、爾が選び近づけし者は福なり、彼等の記憶は世世に在らん。

知るべし、此の奉事は本式の如く聖五旬祭前の「スボタ」にも行ふ。

 

            ~~~~~~

 

---------------------[斷肉の「スボタ」 聖體禮儀 50]---------------------

 


  斷肉の主日


 

「スボタ」の晩課に首誦聖詠の後に常例の聖詠誦讀。

「主よ、爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の主日の三、アナトリイの三、及び三歌經の本日の四。第六調。

至りて義なる審判者よ、爾が來りて、爾の光榮の寶座に坐して、義なる審判を行はん時、驚くべき火の河は衆を爾の審判座の前に引き、天の軍は爾の前に立ち、人人は畏れて各其行に應ひて審判を受けん。ハリストスよ、其時我等を憐みて、仁慈なる主として、我等に救はるる者の分を得しめ給へ、熱信を以て爾に祈る。

記録は披かれ、人人の行は堪へ難き審判座の前に現れん。其時谷は哭く者の畏るべき切歯に響きて、罪を行ひし者が皆義なる審判を以て永遠の苦に付されて、空しく哭けるを見ん。故に洪恩なる主よ、我等爾に祈る、獨大仁慈なる者よ、我等爾を歌ふ者を憐み給へ。

角は響き、墓は空しくなり、全人類は戰きて復活せん。善を爲しし者は褒賞を受けんことを望みて大に悦び、罪を行ひし者は選ばれし者より分たれ、苦に遣

---------------------[斷肉の主日 「スボタ」の晩課 51]---------------------

されて、戰きて痛く哭かん。光榮の主よ、仁慈なる者として、我等を憐み、爾を愛する者の分を獲しめ給へ。

永遠の火、外の幽暗、地獄、烈しき蟲、息めざる切歯を我が思念の中に入るる時、我泣きて涙に勝へず。無量の苦は、罪を犯し、惡しき風習を以て爾至仁なる主を怒らせし者を待つ、我不當の者は此等の中に在り、且我第一なり。求む、審判者よ、慈憐なるに因りて、爾の仁慈を以て我を救ひ給へ。

光榮、第八調、寶座は立てられ、記録は披かれ、神は審判座に坐し、諸天使は畏れて其前に立ち、火の河は流るる時、嗚呼其時如何なる恐懼かあらん。我等多くの罪なる人人は其時何をか爲さん。彼が父に祝福せられし者を國に呼び、罪人等を苦に遣すを聞く時、誰か其畏るべき言に堪へん。求む、獨人を愛する救世主、世世の王よ、終の未至らざる先に痛悔を以て我を改めて、憐み給へ。

今も、本調の第一の生神女讃詞。聖入。「穏なる光」。提綱、「主は王たり」。其他。

 

   「リティヤ」に、光榮、第七調。

我等主の誡を知りて、斯く行はん、飢うる者に食はせ、渇く者に飮ませ、裸なる者に衣せ、旅する者を宿らせ、病める者と獄に在る者とを顧みん、全地を審判せん者が我等にも謂はん爲なり、我が父に祝福せられし者よ、來りて、爾等の爲に、備へ

---------------------[斷肉の主日 「スボタ」の晩課 52]---------------------

られたる國を嗣げ。

今も、女宰よ、我等地に生るる者は皆爾の帲幪の下に趨り附きて、爾に呼ぶ、生神女、我等の恃頼よ、我等を無量の諸罪より援けて、我等の靈を救ひ給へ。

   挿句に八調經の又讃頌

光榮、第八調、哀しい哉我が昧みたる靈よ、何時までか爾は惡事に離れざる、何時までか怠慢に耽る、何ぞ死の畏るべき時を思はざる、何ぞ救世主の畏るべき審判に戰かざる。其時爾何をか答へん、或は何をか拒まん、爾の行は前に立ちて爾を責め、行爲は訴へて罪せん。鳴呼靈よ、時至れり、急ぎ、趨り、信を以て呼べ、主よ、我罪を犯し、爾の前に罪を犯せり、然れども人を愛する主よ、我爾の慈憐を知る、善なる牧者よ、願はくは爾の大なる憐に因りて、我を爾の右に立つ者より離さざらん。

今も、生神女讃詞、「聘女ならぬ童貞女、言ひ難く身にて神を孕みし者」。發放の讃詞、「生神童貞女よ、慶べよ」。三次。其他の晩課式。并に使徒行實の講義の誦讀。

 

          ~~~~~~

 

 

---------------------[斷肉の主日 「スボタ」の晩課 53]---------------------

 

  斷肉の主日の早課

 

「主は神なり」、八調經の讃詞の調に依る。主日の讃詞及び生神女讃詞。常例の聖詠誦讀。神學者の慈惠の事の講説を三分して誦讀す。多燭詞。本調の品第詞。提綱及び早課の順序の福音經。第五十聖詠。光榮、第八調、「生命を賜ふ主よ、我に痛悔の門を啓けよ」。今も、生神女讃詞、「生神女よ、我を救の道に導けよ」。次に第六調、

「神よ、爾の大なる憐に因りて」。「我不當の者は多くの犯しし罪を念ひて」。(第三頁を看よ)。規程は復活及び生神女の六句に、又三歌經の八句に。

 

   規程、フェオドルストゥディト師の作。第六調。

   第一歌頌

イルモス、佑け護る者顯れて、我が救と爲れり、彼は吾が神なり、我彼を讃め揚げん、彼は我が父の神なり、我彼を尊み頌はん、彼嚴に光榮を顯したればなり。』

我が神全能者よ、我言ひ難き爾の降臨の畏るべき日を思ひて畏れ、爾が坐して生ける者と死せし者とを審判せん日を預見て戰く。

神ハリストスよ、爾が天使の軍の萬萬に繞られて來らん時、我不當の者にも爾を雲の上に迎ふるを得しめ給へ。

---------------------[斷肉の主日 早課 54]---------------------

吾が靈よ、來りて、神が嚴に臨まん日を念に入れ、歎き泣きて、詰問の時に潔き者と見れんことを祈れ。

「ゲエンナ」の滅えざる火、苦しき蟲、切歯は我を驚かして畏れしむ。求むハリストスよ、我を赦し、我を宥めて、爾の選ばれたる者と偕に立つを得しめ給へ。』

最慕はしき爾の聲、諸聖人を歡喜の爲に呼ぶ者を、願はくは我不當の者も聞きて、天の國の言ひ難き樂を得ん。

全能の主よ、我が行を顯し、言を詰り、意を糺して、我と訟を爲す毋れ、爾の慈憐に因りて我が諸罪を顧みずして、我を救ひ給へ。

光榮、聖三者讃詞、三位なる惟一者、萬有の造成主、萬衆の主宰たる父、子、及び至聖神よ、親ら我等を救ひ給へ。

生神女讃詞、誰か父の法に因りて播かれざる子を生みたる。父は之を母なくして生む。至榮なる奇跡や、蓋潔き者よ爾は神及び人を生み給へり。

共頌、「佑け護る者顯れて」。

 

   第三歌頌

イルモス、主よ、爾の誡の石に我が動ける心を固め給へ、爾獨聖にして主なればなり。

---------------------[斷肉の主日 早課 55]---------------------

主は來り給ふ、誰か彼の恐嚇に堪へん、誰か彼の顔の前に現れん。鳴呼靈よ、彼を迎へん爲に己を備へよ。

我等疾く來り、泣きて、終の至らざる先に神と和睦するを得ん。蓋審判は畏るべし、衆人裸體にして其前に立たん。

主よ、我爾に呼ぶ爾の諸天使と偕に來りて、衆人に其行に應ひて報いん時、憐み給へ、我を憐み給へ。

主よ、我爾の命に背きし者は如何ぞ爾の審判の堪へ難き怒を忍ばん。求む、審判の時に宥め給へ、我を宥め給へ。

不當なる靈よ、生命の筵の未終らざる前、主が婚筵の宮の門を閉さざる先に、轉じて歎息せよ。

主よ、我罪を犯せり、悉くの人に超えて罪を犯せり。人を愛する者よ、審判の前に我に慈憐を垂れ給へ。

光榮、聖三者讃詞、單一なる三者、造られざる、無原なる性、三位に於て歌はるる神よ、我等信を以て爾の權柄に伏拜する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、至浄なる者よ、爾は種なき産を以て變易せざる生活の言、爾の胎内に身を取りし者を生み給へり。神の母よ光榮は爾の産に歸す。

--------------------[斷肉の主日 早課 56]---------------------

共頌、「主よ爾の誡の石に」、

   坐誦讃詞、第六調。

我畏るべき日を思ひて、我が惡しき行の爲に歎く。如何に不死の王に答を爲さん、我放蕩の者は如何に勇みて審判者を見ん。慈憐なる父、獨生の子、聖なる神よ、我を憐み給へ。

光榮、仁慈なる主よ、悲哀の谷に、爾が定めし處に坐して、義なる審判を行はん時に、我が隠なる事を顯す勿れ、諸天使の前に我を辱かしむる勿れ。求む、神よ我を憐みて宥め給へ。

今も、生神女讃詞、世界の恃頼、仁慈なる生神童貞女よ、我獨爾の威厳なる轉達を求む、爾の前に立つ民を憐み給へ。獨祝福せられし者よ、仁慈なる神に我等の靈の凡の恐嚇より救はれんことを祈り給へ。

 

   第四歌頌

イルモス、主よ、預言者は爾が降臨の事を聞き、爾が童貞女より生れ、人人に顯れんと欲するを懼れて曰へり、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、光榮は爾の力に歸す。

日は至り、審判は既に門の側に在り。靈よ警醒せよ、諸王と諸矦、富める者と

---------------------[斷肉の主日 早課 57]---------------------

貧しき者は共に集まりて、各其行に應ふことを受けん。

修士と成聖者、老翁と少者、僕と主は各其位置に於て詰られ、寡婦と處女は糺されん、其時責なき度生を顯さざりし衆は憐なる哉。

爾の審判は偏頗なく、爾の審判座の前には私なる事なし、其時辯論家の術を要せず、證者の證明を須いず、蓋衆人の隠れたる事は爾神の前に明に立つ。』

我がハリストス言よ、願はくは我歎息の地に來らず、暗昧の處を見ざらん。我至りて不當なる者は不朽の衣を汚したれども、願はくは手足を縛られて、爾の宮の外に投げらるることなからん。

世界を審判する仁愛の主よ、罪人を義人より分つ時、我を山羊より分ちて、爾の綿羊に加へ給へ、我も彼の爾の祝福する聲を聞かん爲なり。

嗚呼不當なる靈よ、詰問は始められ、行の記録は披かるる時、爾何をか爲さん。

ハリストス爾の造成主に捧げん爲に義の果を有たずして、審判座の前に何をか答へん。

我不當の者は苦のの中に富める者の歎息の言を聞き、同じき定罪を畏れて、歎き泣きて祈る、世界の救主よ、審判の時に我を憐み給へ。

光榮、聖三者讃詞、我日よりする光及び光線の如く、父よりする子及び聖神を

---------------------[斷肉の主日 早課 58]---------------------

讚榮す、彼は生れ、此は出づ、父、子、聖神、共に同無原なる聖三者、萬物に伏拜せらるる惟一の神なり。

生神女讃詞、子を生みて潔浄を守りし潔き童貞女よ、爾は神及び人、二性にして一位なる主を生みし者と現れたり。童貞女母よ、爾の奇跡は凡の聞及び思を驚さざるなし。

共頌、「主よ、預言者は爾が降臨の事を聞き」。

 

   第五歌頌

イルモス、人を愛する主よ、祈る、夜より寤むる者を照し、我をも爾の誡に導き、救世主よ、我に爾の旨を行ふを訓へ給へ。

彼處には言ひ難き戰慄及び畏懼あり、蓋主は來りて、各人の行も彼と偕にせん、然らば誰か己の爲に泣かざらん。

火の河は我を擾し、淵の黒暗は我を嚇し、切齒は我を懼れしむ、如何にか、或は何を行ひてか神の憐を起さん。

主よ、爾の僕を宥め、宥め給へ。求む、我を畏るべき暴虐者、殘忍なる惡鬼に付す毋れ、彼等の中に彼處には安息を得ることなからん。

彼處には牧伯と嚮導者、富める者と貧しき者、大なる者と小き者は均しく糺され

---------------------[斷肉の主日 早課 59]---------------------

ん、備を爲さざりし各人は憐なる哉。

主よ、我が爾の前に犯しし諸罪を宥め、釋き、赦して、我を彼處に諸天使の前に火と終なき恥辱とに定罪せられたる者と爲す毋れ

主よ、爾の造物を宥め、宥め給へ、我罪を犯せり、我を赦し給へ。蓋爾は惟獨性の潔き者にして、爾の外には一も汚なき者なし。

光榮、聖三者讃詞、聖三者よ、我は爾性の惟一、無原なる、悟られぬ、至上、全能にして、至りて完全なる純一の神、光、生命たる、世界の造成主を歌頌す。

生神女讃詞、潔き者よ、性に超ゆる爾の産に於て明に天性の法は解かれたり、蓋爾は父より生れし永久の神を種なく生み給ふ。

共頌、「人を愛する主よ祈る、夜より寤むる者を照し」。

 

   第六歌頌

イルモス、我心を盡して仁慈なる神にべり、彼は我が最深き地獄より呼ぶを聆き、我が生命を淪滅より援け給へり。

ハリストスよ、爾の畏るべき降臨に於て、爾が天より現れ、寶座の立てられ、記録の披かれん時、其時救世主よ、爾の造物を宥め、宥め給へ。

鳴呼吾が靈よ、彼處には神が審判者たるに、勞力も、策略も、光榮も、懇親も、

---------------------[斷肉の主日 早課 60]---------------------

一も助くる能はず、唯行に由る爾の力のみ。

彼處には牧伯と嚮導者、富める者と貧しき者共に在り。靈よ、父も、母も、兄弟も援けて、定罪より救ふ能はず。

靈よ、審判者の畏るべき詰問を思ひて、今より慎みて言を備へよ、永遠の縲絏に定められざらん爲なり。

主よ、願はくは我は爾より遠ざけられて、詛はれたる者の火に我を遣す聲を聞かずして、義者に向ふ爾の最慕はしき聲を聞かん。

主よ、我を地獄の門、畏るべき淵、外の幽暗、滅えざる火、及び其他の永遠の苦より脱れしめ給へ。

光榮、聖三者讃詞、我は三位なる惟一の神性、父、子、聖神、三質に分るる獨一の神元の權柄を歌ふ。

生神女讃詞、潔き者よ、爾は門なり、獨入りて出でたる者は之を過りて、童貞の鑰を解かざりき、是れアダムを造りしイイスス爾の子なり。

共頌、「我心を盡して仁慈なる神にべり」。

   小讃詞、第一調。

神よ、爾が光榮を以て地に來りて、萬有が戰き、火の河が審判座の前に引き、記録

---------------------[斷肉の主日 早課 61]---------------------

が披かれ、隠なる事が顯れん時、其時、至りて義なる審判者よ、我を滅えざる火より脱れしめて、我に爾の右に立つを得しめ給へ。

   同讃詞

至仁なる主よ、我が爾の畏るべき審判座と審判の日とを思ふ時、我が良心に責められて恐れ慄く。爾が己の寶座に坐して詰問を爲す時、其時誰も己の罪を辭する能はず、眞實は責め、畏懼は圍まん、其時「ゲエンナ」の火は大に響き、罪人等は切歯せん。故に到りて義なる審判者よ、終の先に我を憐みて、我を宥め給へ。

 

   第七歌頌

イルモス、列祖の神よ我等罪を犯し、不法を行ひ、不義を爾の前に爲し、爾が我等に誡めしことを守らざりき、行はざりき、然れども終に至るまで我等を棄つる毋れ。

信者よ、其時天は滅び、星は隕ち、全地は震ひ動かん、我等は彼の審判の前に俯伏して哭かん、先祖の神の慈憐を蒙らん爲なり。

彼處には偏頗なき詰問、畏るべき審判あり、彼處には審判者の前に隠れたる事なく、人より禮物を受くることなし。主宰よ、其時我を宥めて、爾の畏るべき怒を免れし

---------------------[斷肉の主日 早課 62]---------------------

め給へ。

主は審判を行はん爲に來る、誰か彼を見るに勝へん。不當なる靈よ、慄け、慄きて爾の行を露すに備へよ、先祖の崇め讃めらるる神の仁慈慈憐を蒙らん爲なり。

滅えざる火は我を嚇し、至りて苦しく囓む蟲、靈を亡す地獄は我を懼れしむ、我聊も心を安ずるを得ず。唯祈る、主よ、主よ、終の先に爾を畏るる畏を以て我を堅め給へ。

主宰よ、我爾の前に俯伏して、涙の如く我が言を捧ぐ、我は淫婦に超えて罪を犯し、地上の衆人に超えて不法を行へり。然れども爾の造物を宥めて、我を召し給へ。

靈よ、轉じて痛悔して、知らざる所なき神に爾の隠れたる事を露して言へ、惟一の救世主よ、爾我の私なる事を知る、然れども自ら我を、ダワィドの歌ふ如く、爾の憐に因りて憐み給へ。

光榮、聖三者讃詞、我は性の惟一なる三者、又位の三なる惟一者、父、子、聖神、惟一の能力と意思と行動とを歌ふ。三聖の神は獨一にして、其國と權柄とは惟一なり。

---------------------[斷肉の主日 早課 63]---------------------

生神女讃詞、聘女ならぬ聘女よ、爾の胎の殿より最美しき神は、王の如く爾の至浄なる血より奥密にして神妙に織られし緋袞衣を衣たる者として、出でて地を宰る。

共頌、「列祖の神よ、我等罪を犯し」。

 

   第八歌頌

イルモス、凡そ呼吸ある者と造物は、天軍の讃榮し、ヘルワィムとセラフィムの戰く者を歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

主よ、我は畏るべき爾の第二の降臨に遇はんことを思ひて、爾の威嚴に戰き、爾の怒を懼れて呼ぶ、其時より我を世世に救ひ給へ。

爾神が萬衆を審判せんに、地に生れて慾に染みたる者は誰か能く堪へん、蓋其時滅えざる火と苦しく囓む蟲とは定罪せられし者を世世の爲に受けん。』

ハリストスよ、爾が凡そ呼吸ある者を呼び集めて審判せん時、大なる畏懼と大なる危難とは及ばん、唯善行は世世に助けん。

萬衆の審判者、我が神及び主よ、願はくは我其時爾の最慕はしき聲を聞かん、願はくは爾の大なる光と爾の光明なる居所とを見ん、願はくは爾の光榮を見て、世世に喜ばん。

---------------------[斷肉の主日 早課 64]---------------------

義なる審判者救世主よ、我を憐みて、審判の時に永遠の火より脱れしめ給へ。

我義に應ひて之に當ると雖、終の先に我に善行と痛悔とを與へて、我を救ひ給へ。

慈憐なるハリストスよ、爾が審判者として坐して、爾の畏るべき光榮を顯さん時、嗚呼其時如何なる畏かあらん、火は燃えて、衆人は爾の耐え難き審判座の前に戰かん。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

我性に於て惟一の神を尊み、位に於て三位を歌ふ、之を分てども分離せず、蓋三位の中には惟一の神性、父と子と聖神、惟一の神なり。

生神女讃詞、潔き者よ、宮より新郎の出づるが如く、爾の至りて光明なる胎よりハリストスは出でて、黒暗に居る者の爲に大なる光を輝せり、蓋義の日は出でて、世界を照し給へり。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

共頌、「凡そ呼吸ある者と造物は」。

 

   第九歌頌

イルモス、種なき胎の産は言ひ難し、夫を知らざる母の果は朽ちず、神を生む産は

---------------------[斷肉の主日 早課 65]---------------------

天性を改むればなり。故に我等萬族爾を神の聘女なる母として、正しく崇め讃む。

主は來りて、罪人を罰に付し、義人を救はん。我等は歎き泣きて、彼の日を感想せん、主は其時知られざる事と隠なる事とを露して、各人に至當なる事に應ひて報いん。

モイセイは爾の背を視て畏れ慄けり、我不當の者は爾が天より來らん時、爾の顔を視て如何ぞ立つを得ん。然れども洪恩なる主よ、爾の慈憐なる慮を以て我を宥め給へ。

ダニイルは詰問の時を畏れたり、我不當の者は畏るべき日の詰問に由りて如何にか苦しまん。然れども我に終の先に爾に奉事し、爾を悦ばしめて、爾の國を受くるを得しめ給へ。

火は蓄へられ、蟲は設けられ、又樂と、光榮と、安息、暮れざる光と、義者の喜は備へらる、誰か先の苦を逃れて、後の福を嗣ぐことを望まざらん。

主よ、爾の憤を以て我を爾の顔より退くる勿れ。願はくは我は火に遣す詛の聲を聞かざらん、願はくは我も其時爾の諸聖人と偕に爾の不朽なる宮の歡喜に入らん。

---------------------[斷肉の主日 早課 66]---------------------

智慧は弱り、肉體は衰へ、神は疾み、言は力を失ひ、生命は盡き、終は門の側にあり。故に我が不當なる靈よ、審判者が來りて爾を糺さん時、爾何をか爲さん。

光榮、聖三者讃詞、獨一生の子の惟一なる父、獨一の光の惟一なる輝、獨一の神の惟一なる聖神、主よりの主、實に永在の者、鳴呼聖なる三者、惟一者よ、我爾を讃榮する者を救ひ給へ。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾の産の奇跡は我を驚かす、言へ、如何ぞ爾は種なくして限られぬ者を孕む、如何ぞ母として生みて童貞女に止まる。性に超ゆる事を信を以て受けて、生れし者に伏拜せよ、蓋彼は欲する所を行ふ。

共頌、「種なき胎の産は言ひ難し」。

   差遣詞、八調經の。

   次に三歌經の、左の如し。

主よ、我審判と爾の言ひ難き光榮との畏るべき日を思ひて、大く戰き、畏れて呼ぶ、主宰ハリストス神よ、光榮を以て地に來りて、衆人を審判する時、我を凡の苦より脱れしめて、爾の右に立つを得しめ給へ。

   

---------------------[斷肉の主日 早課 67]---------------------

視よ、主全能者の日は至る、誰か其畏るべき降臨に堪へん、蓋是れ怒及び燃ゆる爐の日なり、其日に審判者は坐して、各人に其行に應ひて報いん。

生神女讃詞、我仁愛なる主宰の畏るべき降臨と詰問との時を思ひて、全身戰きて、歎息して爾に呼ぶ、我が至りて義なる審判者及び獨大仁慈なる主よ、生神女の祈に因りて我痛悔する者を納れ給へ。

 

「凡そ呼吸ある者」に讃頌は八調經の主日の四章、アナトリイの一、及び三歌經の自調の四。第六調。

句、凡そ呼吸ある者は主を讃め揚げよ。

我彼の日及び時を思ふ、我等皆裸體にして定罪せられし者の如く偏頗なき審判者の前に立たん時なり。其時角は大に鳴り、地の基は動き、死者は墓より復活し、皆同じき年齢と爲り、衆人の隠なる事は顯れて、審判者の前に立たん。

何時も痛悔せざりし者は哀しみ哭きて、外の火に赴き、義者の會は喜び樂しみて、天の宮に入らん。

句、「主よ、我心を盡して爾を讃め揚げ」。

審判者が威嚴なる寶座に坐せん時、鳴呼其時其日は如何にか畏るべき。記録は披かれ、行は糺され、幽暗の中に隠れたる事は顯れ、天使等は繞りて萬民を聚む。

---------------------[斷肉の主日 早課 68]---------------------

諸王と諸矦、奴隷と自由なる者、罪者と義者、富める者と貧しき者よ、來りて聞け、全地を審判せんとする審判者は臨み給ふ。天使等が前に立ちて、行と、思と、志と、夜に晝にありし事を訟へん時、誰か彼の顔を見るに堪へん、鳴呼斯れ如何なる時ぞ。然れども終の未至らざる先に、靈よ、切に呼べ、神よ我を返して救ひ給へ、爾獨慈憐の主なればなり。

第八調、句、「至上者よ、我爾の爲に慶び祝ひ」。

愛せらるる者と爲りし預言者ダニイルは神の威嚴なる權柄を見て、斯く呼べり、審判者は坐し、記録は披かれたりと。吾が靈よ愼め、齋するか、爾の近者を輕蔑する勿れ、自ら食を禁ずるか、爾の兄弟を議する勿れ、恐らくは火に遣されて、蝋の如く焼かれん。願はくは碍なくしてハリストスは爾を己の國に入れん。

第一調、句、「主我が神よ、起きて、爾の手を擧げよ」。

兄弟よ、我等は諸徳の女王を以て預己を潔めん。蓋視よ彼來りて、我等に福の富を予へ、諸慾の興起を鎮め、罪を犯しし者を主宰と和睦せしむ。故に樂を以て之よ受けて、ハリストス神に呼ばん、死より復活せし主よ、我等爾獨罪なき主を讃榮する者を定罪なく護り給へ。

---------------------[斷肉の主日 早課 69]---------------------

   光榮、同上。

今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。聯。發放詞。次ぎて前院に於て常例の「リティヤ」、其中に光榮、今も、福音の讃頌を歌ふ。克肖なる神父フェオドルストゥデトの敎訓の誦讀。并に第一時課。

 

                 ~~~~~~

 

聖體禮儀には代式、及び本調の眞福詞六句に、又三歌經の規程の第六歌頌四句に。提綱、第三調、「吾が主は大なり」。句、「主を讃め揚げよ、蓋我等の神に歌ふは善なり」。使徒はコリンフ書百四十端。「アリルイヤ、」第八調、來りて主に歌ひ、神我が救の防固に呼ばん。句、讃揚を以て其顔の前に進み、歌を以て彼に呼ばん。福音經はマトフェイ百六端。領聖詞は「天より主を讃め揚げよ」。「義人よ。主の爲に喜べ」。

 

          ~~~~~~

 

 

---------------------[斷肉の主日 聖體禮儀 70]---------------------

 

 斷肉の主日の晩課

 

「主よ、爾にぶ」に、常例の如く讃頌を歌ふ、八調經の三、及び月課經の當日の聖人の三。光榮、今も、生神女讃詞。

 

挿句には八調經を用いずして、本日の自調を歌ふ、兩詠隊共に。第八調。

我等逸樂に勝たれ、味官を慰めて、始めて己の裸體なるを知りて、神より逐はれたり。今起きて痛悔を爲し、感覺を潔めん、齋の門は啓けて戰を援く。我等は恩寵を頼みて心を堅めん、食を以てするにあらず、徳を建てし者の爲に食は益を爲さざりき。然らば聖にせられし光明なる復活の夜に於て、神の羔は我等に食はれん、我等の爲に宰られし者、機密の晩餐に於て門徒に與へられし者、彼の復活の光にて無知の幽暗を散ずる者なり。

句、天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む。視よ、僕の目主人の手を望み、婢の目主婦の手を望むが如く、我等の目は主我が神を望みて、其我等を憐むを俟つ。

   又同上の自調、「我等逸樂に勝たれ」。

句、主よ我等を憐み、我等を憐み給へ、蓋我等は侮にき足れり。我等の靈は驕る者の辱と誇る者の侮とにき足れり。

---------------------[斷肉の主日 晩課 71]---------------------

   致命者讃詞を歌ふ、同調。

主の致命者よ、爾等は凡の處を聖にし、凡の病を醫す、爾等に求む、今も我等の靈を敵の網より脱れしめんことを祈り給へ。

   光榮、今も、生神女讃詞、同調。

恩寵を蒙れる者、聘女ならぬ母よ、天の者は爾を歌ひ、我等も爾の究め難き産を崇め讃む。生神女よ、我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

 

 

         ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の月曜日の早課

 

「主は神なり」に聖人の讃詞、二次。光榮、今も、生神女讃詞、本調に依る。第一の聖詠誦讀の後に八調經の坐誦讃詞。大ワシリイの講説を讀む、「己を愼め」。第二の聖詠誦讀の後に三歌斎經の左の坐誦讃詞、第一調。

神聖なる痛悔の前門は啓かれたり。我等熱切に來り就きて、肉體を潔め、食を節し、

---------------------[乾酪週間月曜日 早課 72]---------------------

諸慾を制せん、世界を天の國に呼び給ひしハリストスの從者に適ふが如し、一年の十分の一を萬有の王に捧げん、愛を以て彼の復活をも見ん爲なり。

   光榮、復同上。

今も、生神女讃詞、至聖なる童貞女よ、爾が人體を取りし神造成主を抱きたる爾の神聖なる手を伸べて、我等が誘惑と、諸慾と、諸難より救はれんことを祈り給へ。我等愛を以て爾を讃め揚げて、爾に呼ぶ、光榮は爾の内に入りし主に歸し、光榮は爾より出でし主に歸し、光榮は爾の産を以て我等を釋き給ひし主に歸す。

 

規程は常例の如く八調經のを歌ひ、又月課經の聖人のを歌ふ。三歌頌を挿入する歌頌には、若し二「イルモス」のならば、八調經の兩規程を用いずして、月課經の規程を「イルモス」と共に六句に、三歌經のを八句に歌ふ。

   月課經の規程。又左の三歌頌、

   イオシフ師の作。第一調。

   第一歌頌

イルモス、「我等皆凱歌を以て」。

---------------------[乾酪週間月曜日 早課 73]---------------------

今日は節制の欣ばしき祭前期、齋の光明なる前途なり。故に兄弟よ、冀望と大なる熱心とを抱きて趨り集まらん。

我不當の者は犯罪を以て原祖アダムに效ひて、福樂より逐ひ出されたり。故に痛悔と涕泣とを以て爾の前に俯伏す、主よ、我を救ひ給へ。

傷感と痛悔との始は諸惡に離れ、諸慾を制するに在り。故に我等務めて惡しき行を斷たん。

生神女讃詞、我諸罪の夜に昧まされたる者は爾幽暗に居る者の爲に義の日ハリストスを生みし童貞女に今熱心に趨り附く、女宰よ、我を救ひ給へ。

 

   又三歌頌。イルモス同上。

神を愛する者よ、視よ痛悔の前門は啓けたり、故に來りて、務めて之に入らん、然らずばハリストスは我等を不當の者と見て、之を我等の爲に閉ぢん。

春を知らする斯の最尊き七日、我等を豫潔めて聖なる齋に備へ、衆の靈體を照す者は今近づけり。

光榮、聖三者讃詞、混淆せられざる、造られざる、聖なる三者、至仁なる惟一者、父、子、聖神よ、信を以て爾に伏拜する者を常に救ひ給へ。

生神女讚詞、至尊至潔なる童貞女よ、爾の中に天性の境は勝たれたり、蓋爾は

---------------------[乾酪週間月曜日 早課 74]---------------------

夫なく神を生みて、生む前の如く損はれずして止まる。

次にイルモス、我等皆凱歌を以て、高き手にて神妙なる奇蹟を行ひて、イズライリを救ひし神に歌はん、彼光榮を顯したればなり。

 

   第三歌頌の後に坐誦讃詞。光榮、今も、生神女讃詞。

   第六歌頌の後に聖人の小讃詞及び同讃詞。

   第八歌頌

イルモス、諸天使と悉くの軍とが造物者及び主として畏るる者を、司祭よ、歌頌し、少者よ、讃榮し、人人よ、崇めて萬世に讃め揚げよ。

我生命を放蕩に費して、殘忍兇惡なる住民に服從せり。ハリストスよ、今爾の洪恩に轉ぜんことを望む我を退くる勿れ。

人を愛する救世主よ、我が生命のは恥づべくして汚らはし、然れども爾の慈憐は無量なり、我求むる者及び愛を以て爾を歌ふ者に痛悔の時を與へ給へ。

恩主よ、我不當なるカインの度生に效ひ、實に智慧の尊きを殺して、爾の審判に戰く、求む、我を彼と偕に世世に定罪する勿れ。

生神女讃詞、讃美たる童貞女、獨神の前に信者の堅固なる佑助よ、我を幽暗より

---------------------[乾酪週間月曜日 早課 75]---------------------

出して、惡を行ふ者の爲に備へられたる苦より脱れしめ給へ。

又、イルモス、「少者が爐に於ける如く」。

斯の時は痛悔の時なり、故に兄弟よ、善智を以て之を始めて呼ばん、主の造物は主を崇め讃めよ。

今食を辭して、務めて實行を以て宜しきに合ひて諸罪を痛悔せん。主の造物は主を崇め讃めよ。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

聖三者讃詞、見えざる聖なる三者、惟一の神性に於て伏拜せらるる者よ、光榮は爾に歸す。我等熱心に爾を讃榮して祈る、爾の諸僕を凡の害より救ひ給へ。』

生神女讃詞、至福至浄なる童貞女よ、慶べ、主の婢及び母よ慶べ。世界の帲幪たる祝讃せらるる生神女、至りて光明なるマリヤよ、慶べ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、少者が爐に於ける如く、我等は無形の者の歌を爾に奉り、歌ひて言ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

 

   第九歌頌

イルモス、光を放つ雲、萬有の主が雨の天より羊の毛に降るが如く降り、始なき

---------------------[乾酪週間月曜日 早課 76]---------------------

者が身を取りて我等の爲に人と爲りし所以の者を、我等皆我が神の潔き母として崇め讃む。

我等信者は平安の思、潔き愛を以て聖なる齋の聖にせられし時に入りて、各人の犯しし諸罪の赦を求めん、彼處の歡喜を獲ん爲なり。

視よ、痛悔の時、齋の前期の入門なり。吾が靈よ、起きて、熱心に恩主及び神と和睦せよ、夫の實に畏るべき義なる審判を逃れん爲なり。

我等皆不節制と沈湎とを以て齋の前門を汚さずして、思の潔きを以て熱切に之に入らん、宜しきに合ひて不朽の榮冠と勤労の果とを獲ん爲なり。

生神女讃詞、生神女、地に生るる者の恃頼よ、獨我等の不能を知る仁慈なる主に絶えず我等の爲に祈りて、爾を尊む城邑が饑饉、疫病、地震、及び凡の患難より救はれんことを求め給へ。

又、イルモス、「預言者イエゼキイリの見たる門」。

吾が靈よ、痛悔の時至れり、怠る勿れ、飢うる者に糧を與へ、毎日、毎夜、毎時主に祈りて、爾を救はんことを求めよ。

我等は肉及び他の食を辭せし如く、斯く又近者に於ける凡の仇讐、邪淫、虚偽、及び諸の惡より逃れん。

--------------------[乾酪週間月曜日 早課 77]---------------------

光榮、聖三者讃詞、我は性に於て惟一にして無原なる神性に伏拜し、位に於て三者の中に單一にして分れざる同寶座の惟一の神を讚榮す。

生神女讃詞、童貞女よ、爾は信者の譽、恃頼、及び轉達なり。生神女マリヤよ、我等歌を以て常に爾を讃榮す、爾の諸僕を救ひ給へ。

イルモス、預言者イエゼキイリの見たる門、獨神の外に誰も過られぬ者たる生神童貞女よ、我等歌を以て爾を尊む。

光耀歌は八調經の。光榮、聖人の。若し之なくば、光榮、今も、生神女讃詞。

 

   挿句に自調の讃頌、第三調。

齋は之を望み之を行ふ者の爲に何の時にも益あり。蓋惡鬼の誘惑は齋する者に勝たず、我が生命の守護者たる天使等は。熱切にして齋を以て潔められたる我等と偕に居るなり。

句、主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ、然せば我等生涯歡び樂しまん。

爾我等を撲ちし日、我等が禍に遭ひし年に代へて、我等を樂しましめ給へ。願はくは爾の工作は爾の諸僕に著れ、爾の光榮は其諸子に著れん。

   復同讃頌を歌ふ。

句、願はくは主吾が神の惠は我等に在らん、願はくは我が手の工作を我等に

--------------------[乾酪週間月曜日 早課 78]---------------------

助け給へ、我が手の工作を助け給へ。

致命者讃詞、衆民來りて、聖なる受難者の記憶を尊まん。蓋彼等は天使等及び人人の爲に觀玩と爲りて、ハリストスより勝利の榮冠を受けて、我等の靈の爲に祈り給ふ。

   光榮、今も、生神女讃詞、同調

爾は種なく聖神に由りて孕み給へり。故に我等爾を讃榮して歌ふ、至聖なる童貞女よ、慶べ。

 

       ~~~~~~


 乾酪週 

  乾酪週間の月曜日の晩課

 

   「主よ爾にぶ」に讃頌常例の如し。

   挿句に自調の讃頌二次。第八調。

我等は務めて齋を以て諸罪の汚より潔められ、貧者に於ける憐と惠とを以て我等に大なる憐を賜ふ新娶者ハリストスの宮に入らん。

--------------------[乾酪週間月曜日 晩課 79]---------------------

   常例の句を誦す、前日の如し。

 

致命者讃詞、主の致命者よ、祈る、我が神にりて、我等の靈の爲に大なる慈憐と多くの罪の潔浄とを賜はんことを求め給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、我等は敬虔の心を抱きて、至榮至浄なる生神女を神の眞の母として歌ひて、天使の如く之に慶べよと曰はん、人體を取りし神の子の聖なる母よ、慶べ、聖神の居處、常に我等の爲に吾が靈の救はれんことを祈る者よ、慶べ。

 

   其他の常式。

           ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の火曜日の早課

 

   第二の聖詠誦讀の後に坐誦讃詞、第八調。

至善なる言、父及び聖神と偕に爾の言ひ難き睿智を以て見ゆると見えざるとの萬物を造りし慈憐の主よ、我等に深き平安を以て光明なる齋の時を送らしめて、

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 80]---------------------

滅を致す罪の惑を解き、傷感と、治療の涙と、諸罪の赦とを與へ給へ、

我等が堅固なる靈、熱切なる心を以て齋して、天使等と偕に爾の權能を歌はん爲なり。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

爾の胎内に睿智及び言を言ひ難く孕みし神の母よ、爾は世界の爲に世界を保つ者を生み、萬物を圍みて萬衆を養ふ造成者及び主を爾の手に抱き給へり。讃美たる童貞女よ、故に我熱心に爾を讃榮して、爾に祈る、女宰、潔き童貞女よ、我が造物主の顔の前に立たん時、其時爾の助を我に予へて、我を諸罪より救ひ給へ、蓋爾は、至りて無なる者よ、欲する所能せざるなし。

 

大ワシリイの感謝の事の講説を讃む。次に第五十聖詠。規程は八調經及び月課經のを歌ふ、月曜日に示す如し、第七十三頁を看よ。其他同じく其記す所に循ふ。

 

   又三歌頌、イオシフ師の作。第三調。

   第二歌頌

イルモス、微雨の嫩草の上に、細雨の青草の上に降るが如く、我が言は地に降るべし。

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 81]---------------------

痛悔の光線、節制の前門は光明なる朝の如く我等の爲に輝けり。

ハリストスよ、爾の慈憐の多きを以て我を外の幽暗より脱れしめ給へ、爾獨仁慈なる主なればなり。

救世主よ、我熱切なる痛悔に潔められたる者を火及び眠らざる蟲より援け給へ。

生神女讃詞、讃美たる童貞女よ、爾我等の爲に痛悔の途、救の門に至らしむる者と爲り給へ。

又。イルモス、第二調、「我が民よ、我の法に意を注げ」。

痛悔の時至れり、ハリストスを愛する人人よ、我等は務めて己を悉くの罪より潔めて、福たる者として主宰の前に顯れん。

我等今務めて浄くして罪なき齋を絶えず守らん、諸罪の赦を得ん爲なり。』

至善なるハリストスよ、爾は大仁慈にして、常に衆人の痛悔を受け給ふ。故に我等皆常に爾を讃榮す。

光榮、聖三者讃詞、我等は惟一者に於て性の截られず、混淆せず、分離せざる三者、位の分れたる神を讃榮す。

生神女讃詞、潔き童貞女母よ、爾が人及び神として生みし主に祈りて、爾の諸僕

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 82]---------------------

を諸の禍より救はんことを求め給へ。

イルモス、我が民よ、我の法に意を注げ、我が口の言に爾等の耳を傾けよ、主よ、我爾の名を呼びたればなり。

 

   第八歌頌

イルモス、「無原なる父より世世の前に生れし神」。

悔改の時なり、吾が靈よ、務めて痛悔に合ふ果を神に示せ、起ちて、齋と祈とを以て熱切に呼べ、ハリストスを崇め歌ひて、世世に讃め揚げよ。

兄弟よ、我等は靈の感覺を豫潔めて、今傷感の情を以て主に就き、潔く痛悔して切に呼ばん、ハリストスを崇め歌ひて、世世に讃め揚げよ。

敵は逸樂の思と暫時の樂の慾情とを以て吾が心を燃して、我等を執ふ。我等務めて熱切なる祈を以て彼を殺して、ハリストスを崇め歌ひて、世世に讃め揚げん。

生神女讃詞、我等の地上の合成を天の物と爲しし少女よ、爾の洪恩の雨を以て吾が靈の荒れて枯れたる畝を濕し、之を諸徳の果を結ぶ者と爲して、呼びてハリストスを世世に讃め揚ぐる者と顯し給へ。

又。イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中に」。

信者よ、我等今糧のみを以てするにあらずして、行を以ても豫己を潔めて、熱切

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 83]---------------------

なる思を備へん、造物主の前に世世に潔き者と顯れん爲なり。

我等は仇讐と紛争、嫉妬と憤怒、高慢と隠なる虚偽を懐きて齋すべからず、乃ハリストスの如く謙遜を懐きて齋すべし。

貧者に惠を施す者は睿智にして救世主に借すなりと言へるあり。鳴呼比類なき歡喜や、蓋彼は萬世に於て豊に諸善に報を賜ふ。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

聖三者讃詞、光榮は父と子と聖神に歸す、蓋惟一の神は三位なり。至聖なる三者よ、我等人人は諸天使と偕に絶えず爾を萬世に崇め讃む。

生神女讃詞、潔き童貞女、生神女マリヤよ、慶べ。世界の潔浄、正敎者の角なる者よ、我等萬世に爾を讃榮する者が滅えざる火より救はれんことを祈り給へ。』

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに童貞女の奇跡を預示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

   第九歌頌

イルモス、「我等は爾焚かれぬ棘」。

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 84]--------------------

人人に救の爲に痛悔を賜ひし獨一大仁慈なる救世主よ、爾の至浄なる心の慈憐を我等の爲に啓き給へ。

鳴呼我や、夫の偏頗なき審判は如何に畏るべき、我等は其前に於て存命の中に行ひし惡の爲に裸體にして對を爲さん。

恩主よ、我等に眞の痛悔を與へて、我等の爲に慈憐の滴を垂らして、我が悉くの汚を沈め給へ。

我等皆共に熱心を以て聖なる齋の前門に欣ばしく入りて、感謝の歌をハリストスに奉らん。

生神女讃詞、我等は敬虔にして爾有能なる轉達者、及び堅固なる倚頼を歌ひて祈る、童貞女よ、爾の子に我等の救はれんことを祈り給へ。

又。イルモス、「無なる生神女よ、我等は神聖なる火」。

 

我等今齋と、涙と、大なる悔改とを以て豫己を潔めん、大なる憐を獲ん爲なり。』

ハリストスを愛する者よ、我等今智き處女に效ひて、務めて明なる燈を以てハリストスを迎へん。

我等今兇惡なるイエザワェリより逃れて齋せしイリヤに效はん、斯くの如く地より升らん爲なり。

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 85]--------------------

光榮、聖三者讃詞、聖なる哉、聖なる哉、聖なる哉、全能の父、同一性の子、及び聖神、三聖なる惟一の神や。

生神女讃詞、至浄至尊なる永貞童女よ、我等爾を以て誇り、爾に趨り附く、我等衆を苦より救ひ給へ。

イルモス、なる生神女よ、我等は神聖なる火に焚かれざりし爾の童貞を崇め讃む。

   挿句に自調の讃頌、第三調。

人人よ、欣ばしく齋を迎へん、蓋屬神の戰の始は至れり。我等は肉體の逸樂を棄て、靈の恩賜を増し、ハリストスの諸僕として彼と共に苦しまん、神の諸子として彼と偕に榮せられ、聖神が我等の中に入りて、吾が靈を照さん爲なり。』

句、「主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ」。

   復同上の讃頌。

句、「願わくは主吾が神の惠は我等に在らん」。

致命者讚詞、ハリストスの軍士は諸王と苛虐者とを畏るる畏を退けて、勇敢を以て勇ましくハリストスを萬有の主神、及び我等の王として承け認めたり、今は我等の靈の爲に祈り給ふ。

---------------------[乾酪週間火曜日 早課 86]--------------------

光榮、今も、生神女讃詞、生神女、爾に祈る衆人の轉達者よ、我等爾に因りて勇を得、爾を以て誇と爲す、我が悉くの倚頼は爾に在り。爾より生れし者に爾の不當なる諸僕の爲に祈り給へ。

 

          ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の火曜日の晩課、

 

此の晩課より大拜を始む。「主よ、爾にぶ」に讃頌常例の如し。

 

   挿句に自調の讃頌、第一調。

信者よ、神に感ぜられたる齋の宣言を欣ばしく受けん、昔ニネワィヤ人の受けし如く、又娼妓と税吏とがイオアンより悔改の傳道を受けしが如し。我等は節制を以て己を主がシオンに於て行ひし聖務に與ることに備へ、涙を以て預己を潔めて、彼處に行ひし洗滌に備へん。祈りて、此に預象の「パスハ」の成就及び眞の「パスハ」の顯見を見ることを求めん。己をハリストス神の十字架と復活とに伏拜する爲に傭へて、彼に呼ばん、人を愛する主よ、我が望に於て我等を辱しむる勿れ。

---------------------[乾酪週間火曜日 晩課 87]--------------------

句、「天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む」。

   復同讃頌

句、「主よ、我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、嗚呼聖なる者よ、爾等の貿易は善なる哉、蓋血を與へて、天を嗣ぎ、暫時苦しみて、永遠に悦ぶ。實に爾等の貿易は善なり、朽壞の者を棄てて、不朽の者を受けたればなり。今諸天使と偕に祝ひて、絶えず一體の聖三者を歌ふ。』

光榮、今も、十字架生神女讃詞、なる童貞女は種なき腹より生みし者が木に在るを覩て、心の刺さるるに忍びず、痛く歎きて云へり、萬物を手に持つ者は如何にして十字架に擧げられたる、人類を救はんと欲する者は如何ぞ定罪せられたる。

 

「主宰よ、今爾の言に循ひて」聖三祝文の後に讃詞、「生神童貞女よ、慶べよ。」大拜一次。光榮、「ハリストスの授洗者よ」。大拜一次。今も、「聖使徒と諸聖人よ、我等の爲に祈りて」。大拜一次。「生神女よ、我等爾が慈憐の下に趨り附く」。拜なし。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭、「永在の主ハリストス我等の神は」。誦經誦す、「天の王よ」。司祭聖エフレムの祝文を誦す、

---------------------[乾酪週間火曜日 晩課 88]--------------------

「主吾が生命の主宰よ」、大拜三次と共に。又小拜十二次。後再上の祝文、「主吾が生命の主宰よ」、及び大拜一次。聖三祝文。「天に在す」の後に主憐めよ、十二次。光榮、今も、主憐めよ、三次。福を降せ。司祭發放詞を誦す。

晩堂大課を歌ふ、大小拜と共に。「常に福にして」の後に本日及び本堂の讃詞。小發放詞。金曜日の前晩にも行ふこと是くの如し。

 

         ~~~~~~

 

 

  乾酪週間の水曜日

 

夜半課、大拜と共に。

   早課

「アリルイヤ」を八調經の本調に依りて、又本調の聖三の讃歌を歌ふ。常例の「カフィズマ」二篇を誦す。

【注意】

乾酪週間の水曜日又金曜日にも「アリルイヤ」を歌ひ、晩早課に大拜を爲す、上述の如し。讃詞ある聖人に遇ふとも、規に遵ひて齋を行ふ。中時課を歌はず。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 89]---------------------

若し主の迎接祭、或は本堂の聖人の祭期に遇はば讃詞を歌ふ。又毎次三大拜の外に拜を爲さず。

   第一の聖詠誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞。

   第二の聖詠誦文の後に三歌經の坐誦讃詞、第二調。

ハリストス神よ、爾の言ひ難き仁愛を以て我等卑微なる者に平安にして齋の前の潔浄を行はしめ給へ。獨心中の事を識る者よ、敵の惡謀を滅して、爾の十字架を以て衆を救ひ給へ。

   光榮、同上。今も、十字架生神女讃詞。

ハリストスよ、種なく爾を生みし者は爾の十字架の側に立ち、非義に苦を受くるを見るに忍びずして、欷歔して爾に呼べり、至りて甘愛なる子、性に於て苦に與からざる者よ、如何ぞ苦を受くる。我爾の至大なる仁慈を歌ふ。

 

是に於て大ワシリイの齋の事の講説を讀む、其始は「慰めよ、慰めよ」。次に第五十聖詠。規程は八調經の十字架の、「イルモス」と共に六句に、月課經の聖人の四句に、及び三歌經の四句に。三歌頌を挿入する所の歌頌に三歌經の規程を歌ふこと「イルモス」と共に六句に、及び三歌頌を八句に、後に三歌頌の「イルモス」を歌ふ。此くの如き歌頌には八調經及び月課經の規程を用いず。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 90]---------------------

   三歌經の規程。クリトのアンドレイ師の作。第四調。

   第一歌頌

イルモス、主我が神よ、我爾に歌はん、蓋爾は民をエギペトの奴隷より引き出し、ファラオンの兵車と軍とを沈め給へり。

主は我等の模範の爲に人の如く齋して、試みる者に勝ち、吾が性を示して、我等の爲に畛域を定め給へり。

神聖なるモイセイはシナイに於て節制に因りて神と面を合せて語るを得たり。信者よ、彼に效はん。

主よ、爾の民を潔め給へ、神として慈憐なる眼を以て顧みて、爾の仁慈の多きを衆に垂れ給へ。

生神女讃詞、生神女よ、我等皆爾を堅固なる扶助者として爾に趨り附き、我等の爲に祈りて、爾の群を凡の患難より救はんことを求む。

 

   第三歌頌

イルモス、我が心は主我が神の中に堅められたり、此に縁りて弱れる者は力を帯びたり。

奇異なるエノフは節制に因りて地より移れり、我等は彼に效ひて朽壞より生命に移

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 91]---------------------

らん。

我等祈と齋とを以て救世主の惠を迎へん、蓋造成主は己の造物の痛悔を悦び給ふ。

鳴呼靈よ、自ら備へ、ハリストスの受難の前に預己を潔めよ、屬神に彼と偕に復活を祝はん爲なり。

生神女讃詞、生神女よ、神を生みし者として、絶えず我等の爲に祈り給へ、我等罪なる者は爾に趨り附けばなり。

 

次に三歌頌、イオシフの作。第二調。

   第三歌頌

イルモス、「爾我を信の石に堅く立て」。

仁愛なるイイスス、我等の神よ、爾は十字架に手を伸べて、爾の死を以て詛を殺し、爾の苦を以て人人を活かし給へり。故に我等爾の神聖なる十字架の死を歌ふ。

恩主、大仁慈なる主宰よ、我等は木の實を食ふに縁りて殺されて、爾の十字架の木に縁りて生かされたり。故に之を祈の中に爾に捧ぐ、恩寵と仁慈とを我等に降し給へ。

 

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 92]---------------------

齋の前門は啓かれ節制の途は近づけり。我等熱切に起ちて、諸罪の熱を銷す恩賜、神より賜ふ者を受けん。

齋の福たる時、痛悔の光線を出す者は輝けり。我等皆敬虔を抱き、樂を以て就きて、怠惰の最深き暗を掃はん

我等は親愛を以て齋を聖にし、諸慾の節制を傳へ、泣きて主宰に呼ばん、大仁慈なる主よ、我等に恩寵を予へて、爾の旨を行はしめ給へ。

齋の賜を受けて、之を我が救の爲に賜ひし者を讃榮し、且勤労して之を行はん、我が諸罪の赦を造成主の手より受けん爲なり。

生神女讃詞、至聖なる女宰、母童貞女よ、爾の中保と轉達とを以て我が諸慾の紛擾を治め、吾が靈の傷を醫し、我を失望の寢より起し給へ。

 

   又。同調。

イルモス、「諸善を耕作し、諸徳を培養する神よ」。

救世主よ、爾が甘じて十字架に擧げられしに、地上の造物は皆動き、殿の幔は裂けたり。

我がイイスス、至善なる主よ、爾は我の爲に十字架に傷つけられ、脅を刺されたり。故に我熱信に爾の神聖なる權能に伏拜す。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 93]---------------------

光榮、聖三者讃詞、我地に膝を屈めて父に伏拜し、子を讃美し、聖神を歌頌して、惟一の三位なる神を讃榮す。

生神女讃詞、至浄なるマリヤよ、爾の産の秘密は悟り難し、蓋爾は夫に與らずして神を生み、生みて後不朽の者として止まり給ふ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

ハリストスよ、爾の力を以て齋の時を聖にして、我等衆爾に伏拜する者を敵の網より救ひ給へ。

イルモス、諸善を耕作し、諸徳を培養する神よ、爾の慈憐に因りて、實を結ばざる我が智慧を實を結ぶ者と顯し給へ。

坐誦讃詞は月課經の聖人の。光榮、今も、十字架生神女讃詞。

 

    第四歌頌

イルモス、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、爾の作爲を悟りて驚けり。

アウラアムは諸徳と懇に遠人を待ふ事とに因りて天使として來りし聖三者を接けたり。

節制の恩賜は奪はれざる富なり、之に富める者は神の愛に富まん。

光榮、來りて、共に哭きて、信を以て呼ばん、神よ、我等多く罪を犯しし者を潔め

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 94]---------------------

給へ。

生神女讃詞、なる母、祝讃せらるる潔き童貞女よ、爾の子我等の神に世界の爲に祈り給へ。

 

   第五歌頌

イルモス、光を輝かして朝を啓き、晝を顯ししイイスス、神の子よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

昔齋して、モイセイはシナイ山に於て見神者と現れ、イリヤは火の車にて擧げられたり。

昔齋に依りて睿智なるイサイヤは、夫のセラフィムが鉗を以て取りたる炭の其口に觸るるを得たり。

光榮、曩に共に齋せしダニイル及び三人の少者は獅子の口を塞ぎ、燃ゆるを蹈みたり

生神女讃詞、潔き神の母、爾の胎内に不朽に神を宿しし者よ、爾の群を覆ひて、害なく護り給へ。

   第六歌頌

イルモス、ハリストス神、獨人を愛する主よ、預言者イオナを鯨より救ひし如く、

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 95]---------------------

我をも諸惡の深處より引き上げて救ひ給へ。

昔尊き齋はイオナを鯨の内に救へり、我等は中心より齋して、夫の「ゲエンナ」の苦痛を免れん。

ニネワィヤ人は熱心なる痛悔と愛とを以て神の怒を和らげたり。我等衆今熱切に彼等に效はん。

光榮、今の齋は我等を痛悔に招く、故に熱心に趨り附きて、節制の恩賜の何たるを悟らん。

生神女讃詞、世界の爲に救主ハリストス我が神を言ひ難く生みし者よ、彼に爾を歌頌する衆人を救はんことを絶えず祈り給へ。

小讃詞は聖人の。若し聖人の小讃詞なくば、本調の致命者讃詞を誦す、是も亦坐誦讃詞なり。

 

   第七歌頌

イルモス、我が先祖の神よ、我等を辱かしむる勿れ、我等に勇を以て爾に呼ばしめ給へ、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

我等も彼のダニイルの如く齋せん、彼は昔齋を以て洞穴の中に吼ゆる獅子を制したり。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 96]---------------------

我等は畏を以て三人の少者に效はん、彼等がワワィロンの爐より脱れし如く、我等も「ゲエンナ」の火を脱れん爲なり。

光榮、我等も潔き心を以て齋して、體を潔め、靈を全うして神に奉らん。

生神女讃詞、童貞女、潔き母よ、爾より身を取りし永遠の言に我等の靈の救はれんことを絶えず祈り給へ。

 

   第八歌頌

イルモス、俘にせられし少者は爐の中にハリストス王を讃美して、大なる聲を以て言へり、悉くの造物は主を讃め歌へ。

昔齋せしイオシフは不法の婦に於ける交を脱れて國を得たり。我等も齋を以て敵なるワェリアルの火箭を滅すを得ん。

ダワィドは齋を以て異邦人に勝ちて國を得たり。我等も節制を以て敵に對する勝利を得て、主より榮冠を受けん。

我等も彼等の諸徳、イオフの勇毅、イアコフの温柔、アウラアムの信、イオシフの貞潔、ダワィドの勇敢を守らん。

生神女讃詞、童貞女マリヤよ、爾は我等の爲にハリストス王を生み、生みし後にも潔き童貞女に止まれり。主の悉くの造物は主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 97]---------------------

 

   次に三歌頌。

イルモス、「火の爐の中にエウレイの少者に降りて」。

モイセイは山に於て手を十字形に擧げて、敵に勝てり。救世主よ、爾は十字架に於て手を伸べて、滅を爲す地獄の強暴を殺せり。

ハリストス我が救主よ、爾は釘にて十字架に打ち附けられ、脅を刺されて、地に生るる者を詛より救ひて、終なき歡喜に與る者と爲し給へり。故に我等爾の仁愛を崇め讃む。

輝きたる節制の時は無形に靈の感覺を照して、諸慾の暗昧を拂ふ。故に我等熱心に之を迎へて、ハリストスを世世に崇め讃めん。

齋は靈の害を爲す慾、體の死を致す逸樂を殺して、實に心の傾向と行動とを直くす。故に我等信を以て熱切に之を受けん。

我等信者は潔き思を以て今の聖なる日を齋の始にあらず、齋に入る前門として尊まん。

至りて美しき聖なる齋は神を愛する靈を前途に於て懇に受けて、預備の潔浄の階梯を以て登す、今の日は其一段なり。

 

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 98]---------------------

生神女讃詞、人人の速なる轉達者、何の事にも堅固なる扶助者、危難に遇ふ者の確なる保護者たる童貞女よ、我等叩きて爾の慈憐を呼ぶ者の爲に門を啓き給へ。

 

又。イルモス、「昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに」。

 

十字架に上りし萬衆の主宰、ハリストス救世主よ、爾はアダムをエワと偕に復喚び起し、萬世に爾を讃め歌ふ者を樂園に入れ給へり。

ハリストスよ、爾甘じて十字架に擧げられしに、日は畏に由りて其光線を隠して晦みたり。故に盗賊は爾を神と承け認めて、萬世に崇め讃む。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

聖三者讃詞、我等は子及び聖神が父と同等なるを承け認めて、聖三者を惟一の神性なりと信じ、忠信に之に伏拜して、常にアリイの敎を蹂む。

生神女讃詞、生神童貞女よ、我今汚はしき罪に昧まされたる者は如何ぞ宜しきに合ひて爾を歌はん。唯祈る、至聖なる者よ、我が卑微なる歌詠の勇敢を許し給へ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

十字架、信者の恃頼、諸王の武器、司祭等の光榮、修士等の堅固なる者よ、爾の力

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 99]---------------------

を以て凡そ爾を讃榮する者を世世に救ひ給へ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、昔シナイ山に於て棘の中にモイセイに童貞女の奇跡を預め示しし者を尊み歌ひ、崇め讃めて、萬世に讃め揚げよ。

 

「ヘルワィムより尊く」、句と共に歌ふ。

 

   第九歌頌

イルモス、ハリストス我が救世主、爾の諸僕の光榮、信者の榮冠、爾を生みし者の記憶を輝かしし主よ、我等皆爾の仁愛を崇め讃む。

モイセイは齋を以てエギペトに於て奇跡を行ひ、海を分ち、民を渡らせ、之を過られぬ野に養へり。

イイススナワィンは先に節制を以て民を聖にして、イオルダンを渡り、許約の地を繼ぎたり。

彼のゲデオンは節制と祈とに依りて唯三百人、燈を執りし者と共に異邦人に勝てり。我等も熱心にして彼に效はん。

生神女讃詞、慶べよ、至尊至潔なるマリヤ、童貞の光榮、諸天使の譽、人人の援助、世界の喜悦、我が神の母及び婢や。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 100]---------------------

 

   次に三歌頌、

イルモス、「食に縁りて甚しく朽壞に陷りしアダムを」。

贖罪主よ、爾は十字架に神聖なる手を伸べて、先に散らされし者を合せ、定罪せられたる人の性を爾の中保にて禮物として父に獻じ給へり。故に我等爾の至浄なる十字架の死を歌ふ。

信者よ、聖なる齋の恩寵は輝きて、其光線を以て我等の動ける思を豫潔め、飽食の暗を掃ふ。故に我等熱切に之を受けん。

光明なる齋は今日我等の爲に神聖なる恩賜の爵を斟みて、衆に侑む。我等靈の益の爲に之に與らんと欲する者は萬衆の主宰に之を助くるを祈らん。』

洪恩なる主よ、爾は己の神聖なる手の釘を以て我が罪を十字架に打ち附け、爾の脅の戈を以て我が諸罪と甚しき堕落との書券を裂き給へり。故に我等爾の至浄なる十字架の死を歌ふ。

諸徳の最美しき途、神聖なる齋の馳場は開かれて、衆の爲に飾らる。法に遵ひて戰はんと欲する者は上より我等に平安の時を賜はんことをハリストスに求めよ。

生神女讃詞、至浄なる女宰よ、爾の速なる祈、堅固なる帲幪、有力なる扶助を

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 101]---------------------

以て今爾の忠信なる諸僕を凡の敵の攻撃より護りて、諸慾と、諸罪と、諸難より救ひ給へ。

 

又。イルモス、「我等信者は、父より永遠に光れる言を」。

ハリストスよ、爾は甘じて十字架の木に釘せられて、我等衆を法の詛より解き給へり。故に我等職として爾を崇め讃む。

救世主よ、我等皆爾の苦に伏拜す、爾甘じて之を受け給へり、人類を敵の奴隷より解かん爲なり。

聖三者讃詞、父は永遠に子を生み、聖神も父及び子と一性なり、聖三者は分れざる神なり。

生神女讃詞、至りて祝讃せらるるマリヤよ、爾より身を取りし救世主に我等罪なる者に諸罪の赦を賜はんことを祈り給へ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

十字架よ、爾に接吻する者に爾の力を以て齋の時を平安に送らしめて、敵の奴隷より脱れしめよ。

イルモス、我等信者は、父より永遠に光れる言を身にて、測り難く孕みし者、息めざる歌を以て崇め讃む。

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 102]---------------------

 

   光耀歌は八調經の本調の聖三の讃歌の、三次。

   挿句に本日の自調の讃頌、第一調。

吾が靈よ、食を齋して、諸慾より潔められずば、爾は食はざるを以て徒に喜ぶ。蓋若し此れ爾の爲に矯正の縁由と爲らずば、爾は偽る者として神に惡まれ、何時も食はざる惡鬼に似たる者とならん。故に罪を犯して、齋を無益の者と爲す勿れ。不當なる意志に傾かざる者と止まりて、己を十字架に釘せられし救世主の前に立つ者と思ひ、更に又己を爾の爲に釘せられし主と偕に釘せられたる者と思ひて、彼に呼べ、主よ、爾の國に來らん時我を憶ひ給へ。二次之を誦す。

 

次に致命者讃詞、至りて讃美たる致命者よ、憂患も、困苦も、飢渇も、窘逐も、創痍も、猛獸の猛きも、刀劍も、烈しき火も爾等を神より離すこと能はざりき。爾等は更に彼を愛する愛を燃して、他人の身に在るが如く闘ひて、性を忘れ、死を顧みざりき。故に宜しきに合ひて、爾等の苦の報を受け、天國の嗣と爲れり。我等の靈の爲に祈り給へ。

   光榮、今も、十字架生神女讃詞。

なる童貞女は羔が十字架に擧げられしを見て、哭きて呼べり、我が至りて

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 103]---------------------

甘愛なる子よ、斯の新にして至榮なる顯見は何ぞや、如何ぞ手に萬有を有つ者は身にて木に釘せられたる。

 

次に「至上者よ、主を讃榮し」。聖三祝文。「天に在す」の後に讃詞、「生神女、天の門よ、我等爾が光榮の堂に」。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭、永在の主ハリストス我等の神は恒に崇め讃めらる、今も何時も世世に、「アミン」。次に「天の王よ、我等の皇帝を佑け」。聖エフレムの祝文、「主吾が生命の主宰よ」、及び三大拜。後又十二小拜、毎次黙誦して曰く、神よ、我罪人を浄め給へ。畢りて後復上の祝文「主吾が生命の主宰よ」を連誦して後大拜一次。ストゥディトの敎訓の誦讀あり。第一時課を誦す。其内に讃詞「吾が王吾が神よ」を歌ふことなくして誦す。「我が足を爾の言に固め給へ」。「主よ、願はくは我が口は」。聖三祝文の後に讃詞、「ハリストス吾が神よ、疾く先んじて」。主憐めよ、四十次。祝文、「何の日何の時にも、天にも地にも」。主憐めよ、三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」。神父よ、主の名を以て福を降せ。常例の大小拜。聖三祝文。主憐めよ、十二次。「眞の光なるハリストス」。并に發放詞。前院に出でて死者の爲に「リティヤ」を歌ふ。

 

此の乾酪の水曜日には第三時課及び第六時課に大小拜あり、齋の讃詞と共に。

          ~~~~~~

---------------------[乾酪週間水曜日 早課 104]---------------------

   第六時課に

   預言の讃詞、第三調。

聖なる王、全能者、萬物の恐れ慄く者よ、我等を救ひ給へ、蓋爾は罪を赦すを能す、仁慈なる主なればなり。

   光榮、今も、同上。

提綱、第六調、主よ、爾の民を救ひ、爾の業に福を降し給へ。句、主よ、我爾に呼ぶ、我の防固よ、我が爲に黙す毋れ。

 

   イオイリの預言書の讀。第二章。

主是くの如く言ふ、爾等心を全くして、齋と悲哀と哭聲とを以て、我に轉ぜよ。爾等の衣に非ずして爾等の心を裂きて、主爾等の神に轉ぜよ、蓋彼は洪恩にして慈憐、寛忍にして至仁、且禍の爲に悔ゆ。誰か知らん、彼の或は轉じて悔いて、己の後に祝福と主爾等の神に獻ぐる禮物と灌奠とを遺さざるを。爾等シオンに於て角を吹き、齋を定め、公會を召び集へ、民を聚め、會を聖にし、老翁を招き、幼童と乳哺兒とを集めよ、新娶者は其堂より、新婦は其室より出づべし。主の役者たる

---------------------[乾酪週間水曜日 第六時課 105]---------------------

司祭等は門と祭壇との間に泣きて云ふべし、主よ、爾の民を恕せ、爾の嗣業を辱に付して異邦民に之を嘲らしむる毋れ、何ぞ異邦民の間に、彼等の神は何に在ると云はんと。時主は己の地の爲に熱中し、己の民を宥めん。主は應へて其民に謂はん、視よ、我爾等に穀物と酒と油とを遣さん、爾等之に飽かん、我亦爾等を異邦民に與へて辱を得しめざらん。我北より來れる者を爾等より遠ざけ、之を乾き且荒れたる地に逐ひ、其前軍を東の海に、其後軍を西の海に滅さん、其臭氣は起ち、其惡しき臭は騰らん、彼大なる惡事を爲しし故なり。地よ、懼るる毋れ、喜びて樂しめよ、蓋主は大にして、之を行ふことを能す。牧の獸よ、懼るる毋れ、蓋野の牧場は草を生じ、樹は其實を結び、無花果樹葡萄樹は其力を顯さん。シオンの諸子よ、爾等も主爾等の神の爲に喜びて樂しめよ、蓋彼は爾等に宜しきに合ひて雨を賜ひ、前の如く、爾等に早き雨と晩き雨とを降さん。禾塲には穀物盈ち、甕には葡萄汁と油とは溢れん。我が爾等に遣しし我が大軍たる蝗、毛蟲、蜣蜋、螟蛉の蝕ひ盡しし年の爲に、我爾等に賠はん。爾等飽くまで食ひてき足り、主爾等の神、奇妙なる事を爾等に行ひし者の名を讃め揚げん、我が民は世世に羞を得ざらん。

 

提綱、第七調。主は其民に力を賜ひ、主は其民に平安の福を降さん。句、神の諸子

---------------------[乾酪週間水曜日 第六時課 106]---------------------

よ、主に獻ぜよ、光榮と尊貴とを主に獻ぜよ。

 

次ぎて「主よ、願はくは爾の慈憐は速に我等を迎へん」。聖三祝文。其他齋期の常例の如し。并に祝文、「神、天軍の主、萬物の造成者」併せて第九時課を誦す、并に祝文、「主宰イイススハリストス吾が神よ、我等の罪を寛忍して」。其後聖體禮儀代式を誦し、及び眞福詞「主よ、爾の國に於て」を歌ふことなくして誦す。光榮、今も、「主よ、爾の國に來らん時」、并に三拜。「天軍爾を歌ひて曰ふ」、其他。「天に在す」の後に小讃詞は本堂及び聖人の。光榮、小讃詞、「ハリストスよ、爾が諸僕の靈を」。今も、小讃詞、「ハリスティアニン」等の辱を得ざる轉達。主憐めよ、四十次。光榮、今も、「へルワィムより尊く」。三大拜并に十二小拜。

 

晩課を始む、「來れ、我等の王神に」、三次、及び聖詠、「我が靈よ、主を讃め揚げよ」。并に其他。

 

          ~~~~~~

 

 

---------------------[乾酪週間水曜日 第六時課 107]---------------------

 乾酪週間の水曜日の晩課

 

「主よ爾にぶ」に讃頌、常例の如し。

   光榮、今も、生神女讃詞。

提綱、第五調、神よ、爾の名を以て我を救ひ、爾の力を以て我を判き給へ。句、神よ、我がを聴き、我が口の言を聆き納れ給へ。

 

   イオイリの預言書の讀。第三章。

主是くの如く言ふ、諸民起きてイオサファトの谷に至るべし、蓋我彼處に坐して四方の衆民を審判せん。鎌を入れよ、蓋穫るべき者は實れり、來りて踏め、蓋酒醡は盈ち、甕は溢る、彼等の惡大なればなり。群衆、群衆、審判の谷に在り、蓋主の日は審判の谷に近し。日と月とは暗くなり、星は其光を失はん。主はシオンより轟き、イエルサリムより其聲を發たん、天と地とは震はん、然れども主は其民の爲に避所と爲り、イズライリの諸子の爲に保障と爲らん。其時爾等、我の主爾等の神、我が聖山なるシオンに居る者たるを知らん、イエルサリムは聖と成りて、異民復其中を通はざらん。當日山は酒を滴らせ、邱は乳を流し、イウデヤの河は悉く水を盈たし、主の家より泉出でてシッティムの谷に灌がん。エギペトは荒地と爲り、エドムは荒野

---------------------[乾酪週間水曜日 晩課 108]---------------------

と爲らん、彼等イウダの諸子を虐げ、辜なき血を其地に流ししに因る、然れどもイウダは永遠に存し、イエルサリムは代代に存せん。我は未だ滌はざりし彼等の血を滌はん、主はシオンに居らん。』

 

提綱、第六調、願はくはイズライリは主を恃みて今より世世に迄らん。句、主よ、我が心驕らず、我が目高ぶらざりき。

次に、「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

   挿句に本日の自調の讃頌、第三調。

齋の春、痛悔の花は輝けり、故に兄弟よ、我等は凡の汚より己を潔めて、光を賜ふ者に歌ひて言はん、獨人を愛しむ主よ、光榮は爾に歸す。

句、「天に居る者よ、我目を擧げて」。

   同上の讃頌を誦ず。

句、「主よ我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、主よ爾の致命者は信にて堅められ、望にて強くせられ、爾の十字架を愛する愛にて靈を合せられて、諸敵の強暴に勝てり。故に榮冠を享けて、無形の者と共に我等の靈の爲に祈り給ふ。

   光榮、今も、生神女讃詞

---------------------[乾酪週間水曜日 晩課 109]---------------------

至聖至潔なる女宰、天の品位の榮譽、諸使徒の歌詠、諸預言者の成就なる者よ、我等の祈を納れ給へ。

 

「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文の後に聖人の讃詞。光榮、今も、其生神女讃詞。若し之なくば、本日の讃詞。光榮、今も、生神女讃詞、讃詞の調に依る。聯「神よ、爾の大なる憐に因りて」。三大拜。「願はくは主の名は崇め讃められ」、「我何の時にも主を讃め揚げん」、「常に福にして」。并に發放詞。前院に出でて、寢りし者の爲に常例の「リティヤ」を行ふ。

 

【注意】

聖體禮儀は乾酪週間の水曜日及び金曜日に行はず。

此の兩日にも晩課の後に乾酪及び鶏卵を食するを得。

【注意】

水曜日の晩には晩堂小課を誦す。規程は月課經の順序の「スボタ」に記憶する所の聖人の規程を歌ふ。

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---------------------[乾酪週間水曜日 晩課 110]---------------------

 

 乾酪週間の木曜日の早課

 

   第一の聖詠誦文の後に八調經の使徒の坐誦讃詞。

   第二の聖詠誦文の後に三歌經の坐誦讃詞、第五調。

衆使徒は今日四旬齋并に預備の潔浄を飾り、ハリストス贖罪主に依りて齋の時を聖にし、衆人に豫主の復活を報じて、彼に我等の靈を憐まんことを祈る。

   光榮、同上。今も、生神女讃詞。

潔き童貞女、確なる恃頼を爾に負はしむる者の爲に帲幪たる者よ、彼等を諸の誘惑と、危難と、患難より脱れしめて、爾の子に其使徒等と偕に祈りて、凡そ爾を歌ふ者を救ひ給へ。

第五十聖詠。規程は、八調經及び月課經の。三歌頌を挿入する所の歌頌には八調經の歌頌を用いず。

 

   三歌頌。イオシフ師の作。第四調

   第四歌頌

イルモス、「神よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり」。

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 111]---------------------

主よ、爾の門徒は世界に神を知る智識の光線を輝かして、幽暗を散じ、誘惑の迷を斥けたり。洪恩なる主よ、彼等の祈に依りて爾を歌ふ者を救ひ給へ。』

功勞の善果に飾られたる齋の前門は奥密なる歌頌と詩賦とを以て勇ましく趨り附く者を受く。信者よ、我等皆熱切に趨り集まらん。

我不當の者は死の衣を受けて、不節制の強暴を衣たり。求む、神の子よ、爾我に重生の光れる衣を衣せ給へ。

我僞と凡の汚とを以て我が生命を送れり。然れども爾至りて洪恩なる主に趨り附く、ハリストス神よ、爾の仁慈を以て亟に我を救ひ給へ。

生神女讃詞、神の母よ、爾は言に超えて孕み、性に踰えて造物を司る者を生み給へり。絶えず彼に祈りて、我等爾を讃美する者が凡の怒より救はれんことを求め給へ。

 

   又。第二調。

イルモス、「童貞女に藉りて來りし者は使者に非ず」。

讃美たる諸使徒よ、爾等は己の敎の光を以て不節制の幽暗を散じて、節制を以て凡の罪人と義人とを照し給へり。

諸使徒よ、爾等は言の透明なる珍珠として、節制を以て四極を飾り、實に今吾が靈

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 112]---------------------

の善種を顯し給へり。

諸使徒よ、爾等は齋の露を以て諸慾の爐を滅して、衆人に彼の奪はれざる城邑及び成聖の居處を獲んことを敎へ給へり。

 

光榮、我不當の者は衆人に超えて罪を犯して、罪を犯ししマナッシヤの如く痛悔することをせざりき。主よ、死の我を釋かざる先に痛悔の情を我に與へ給へ。

 

生神女讃詞、生神女女宰よ、我等衆信者は爾を救の港及び壞られぬ墻として識る、爾は己の祈を以て我等の靈を諸難より救ひ給へばなり。

 

次にイルモス、童貞女に藉りて來りし者は使者に非ず、天使に非ず、主親ら人體を取りて、我全き人を救ひ給へり。故に我爾に呼ぶ、主よ光榮は爾の力に歸す。

 

   第八歌頌

イルモス、「主宰よ爾は智慧を以て萬有を合成し」。

主よ、全地は爾の讃美に満ちたり、蓋爾の聖なる門徒の神聖なる言は全地を周りて、之を無智の深處より智識に向はせて歌はしむ、主の造物は主を崇め讃めよ。

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 113]---------------------

痛悔の神聖なる恩寵は顯れ、之を樂しむ者の爲に勤勞と戰との馳場を開きて、救を獲しむ。故に吾が靈よ、爾の主宰に趨り附きて、爾の多くの罪の赦を得んことを力めよ。

神の賜ひたる節制の途は開かれたり、我等憐を求むる者は欣ばしく之に向はん。蓋慈憐なる主は我等の救を望み、熱切に彼を尋ねて、愛を以て勤むる者に赦を賜ふを待つ。

靈よ、齋と平安の思とを以て己を制して、慈惠を以て主を飽かせ、諸徳の食を馨しき祭として彼に獻じて呼べ、造物は絶えず主を崇め讃めよ。

 

生神女讃詞、萬衆の女宰、爾の諸僕のを受くる聖なる生神女よ、爾の轉達と神聖なる祈とを以て我が惡の多きを潔めて、我を暗昧と滅えざる火より救ひ給へ。

 

又。イルモス、「大く燃されたる烈しき火は」。

諸使徒よ、ハリストスは爾等を光として全地の四極に與へて曰へり、往きて、萬民を敎へよ、我が人の肉體に節制に由りて居り、敵の悉くの力を踐み、人人に直き途を示すを見ん爲なり。

ハリストスよ、爾は人人に諸罪を潔め、諸慾を斷たん爲に守るべき節制を示し給へ

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 114]---------------------

り。此を以て爾の諸使徒は爾の悦を獲、地上に光明なる燈と顯れ、三位一體の主神を傳へて、衆に之を歌はしむ。

鳴呼、門徒よ、爾等は夫子ハリストスより傳道師として萬民に遣されたり、神聖なる敎を以て彼等の思を照し、諸慾と逸樂とを斷ちて、節制を養はんことを敎へ、主が萬物の造成主及び恩主たるを知らしめん爲なり。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

ハリストスよ、我は昔の殺害者カインの如く、不潔の思に圍まれて、我が靈の無の祭を獻ぜざりき。至仁なる救世主よ、我が齋して爾に來るを忌む勿れ、吾が神よ、齋の時に愛を以て爾に捧ぐる禮物を斥くる勿れ。

生神女讃詞、神の母よ、福たる哉爾の腹、蓋言は斯の中に肉體と合せられて、人の形を受けたり、斯く爾は至上の主神が居らんことを悦びし神の邑と爲り給へり。故に我等爾に呼ぶ、恩寵を蒙れる潔き生神女よ、慶べ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

 

イルモス、大く燃されたる烈しき火は敬虔なる少者の靈に合ふなき體に懼れて退けり、盛なるの衰へし時、息めざる歌は歌はれたり、悉くの造物は主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 115]---------------------

「ヘルワィムより尊く」、句と共に歌ふ。

 

   第九歌頌

イルモス、「權能者は我に大なる事を成せり」。

爾等は,迷はさざる火として世界に遣されて、之を罪の深處より脱れしむ。故に我等は己の使徒として爾等を堅めし主を喜びて歌ふ。

睿智者よ、ハリストスは昔爾等を無智と爲りし世界に鹽として遣して、之を神を識る智識に復さしめたり。故に我等忠信に爾等を崇め讃む。

ハリストスよ、多くの罪が我を圍むに由りて、我涙を以て爾の前に俯伏し、此等を赦して、善く齋の時を送らしめんことを求む。

救世主よ、我諸慾の解き難き縲絏に縛られしに因りて、歎息して爾に呼ぶ、我を解き給へ、我が最欣ばしく爾の慈憐を歌はん爲なり。

生神女讃詞、潔き童貞女よ、神が爾を人類の爲に援助として現ししに因りて、我等信者の爲に絶えず、熱切に祈り給へ。

又。イルモス、「容れ難き神を腹に容れて」。

使徒の會は神聖なる光を以て全地に輝きて、世界を照す齋を示せり。

イイスス、人を愛する主よ、爾の門徒の會は異邦の諸族に節制の富を蓄へんことを

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 116]---------------------

敎へたり。

十二絃の聲たる爾の門徒の會は人人に節制の富と救の泉とを賜ふ。

光榮、主よ、我蕩子の聲を以て爾に呼ぶ、父よ、我罪を犯せり、洪恩なる主よ救ひ給へ、願はくは我を爾の光榮より離さざらん。

生神女讃詞、爾の胎内に神を人の如く宿して、世界に生命を流しし至聖なる童貞女よ、我等爾を讃め歌ふ。

イルモス、容れ難き神を腹に容れて、世界に歡喜を生みし生神童貞女よ、我等爾を讃め歌ふ。

 

   光耀歌、本調の。

   挿句に本日の自調の讃頌を歌ふ、第三調。

節制は美しく輝きて、惡鬼の暗昧を逐ひ、齋の力は來りて、靈の諸慾を醫す。此を以て昔ダニイル及びワワィロンの少者は護られて、彼は獅子の口を塞ぎ、此等は爐のを滅せり。ハリストス神よ、此を以て彼等と偕に我等をも救ひ給へ、爾は人を愛する主なればなり。

句、「主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ。」

   復同上の讃頌

---------------------[乾酪週間木曜日 早課 117]---------------------

句、「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん」。

致命者讃詞、聖なる致命者よ、爾等は善き戰を戰ひしに由りて、死の後にも世界の中に光體の如く輝く。勇敢を有ちてハリストスに我等の靈を憐まんことを祈り給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、女の中に聖なる生神女、聘女ならぬ母よ、爾が生みし王及び神に、其仁愛の主なるに因りて、我等を救はんことを祈り給へ。

次に「至上者よ、主を讃榮し」。其他。第一時課を併せ誦すること常例の如し、并に發放詞。

 

         ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の木曜日の晩課

 

大小拜及び總ての奉事は上に記しし乾酪の火曜日の如し。

「主よ爾にぶ」に讃頌常例の如し。

光榮、今も、生神女讃詞。「穏なる光」。本日の提綱。

---------------------[乾酪週間木曜日 晩課 118]---------------------

   挿句に本日の自調の讃頌、第二調。

主の十字架は忠信に之に伏拜する者の爲には凡の逸樂の勒及び節制の法なり、蓋常に之に釘せられし主を仰ぐ者は肉體を其情及び慾と共に十字架に釘す。我等も務めて彼等の中に居りて、潔き齋を以て大なる憐を有つ主に己を屬せしめん、蓋彼は仁愛に由りて苦を以て己を我等に屬せしめて、我等を其無欲の性に與る者と爲し給へり。

句、「天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む」。

   復同讃頌

句、「主よ、我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、受難者よ、爾等は地上の樂を愛せずして、天上の福樂を獲、諸天使の同住者と爲れり。主よ、彼等の祈に由りて我等を憐みて救ひ給へ。

光榮、今も、十字架生神女讃詞、潔き者よ、爾は善く實りたる葡萄の房、爾の耕作せられずして胎内に宿しし者が木の上に懸れるを見し時、痛く哭きて呼べり、吾が子、恩主よ、我爾を生みし者の祈に因りて、甘味を滴らせ、此を以て凡の慾の醉を醒まし給へ、爾は慈憐の主なればなり。

「主宰よ、今爾の言に循ひて」、「生神童貞女よ、慶べよ」。其他、并に大小拜を爲す。次に發放詞。

---------------------[乾酪週間木曜日 晩課 119]---------------------

晩堂大課を歌ふ、拜と共に、火曜日に記す所の如し、第八十九頁を看よ。

 

          ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の金曜日の早課

 

六段の聖詠の後に「アリルイヤ」を歌ふ、聖三の讃歌の調に依る。

   第一の聖詠誦文の後に八調經の十字架の坐誦讃詞。

   第二の誦文に三歌經の坐誦讃詞、第七調。

尊き十字架よ、爾の力を以て諸敎會の角を高うし、諸異端の傲慢を仆して、正敎の會衆を樂しましめよ。祝福せられたる木よ、我等衆に先導して、ハリストスの足たる爾に伏拜するを得しめよ、我等爾を以て誇とすればなり。

 

   光榮、同上。

   今も、十字架生神女讃詞。

祝讃せらるる生神女よ、我等の謙卑に對して憐を有つ者として、地上の人人の迷はされ易きを見て、慈憐を垂れて常に祈り給へ、我等の滅びざらん爲なり。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 120]---------------------

至潔至聖なる童貞女よ、寛容なる神に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

次に大ワシリイの齋の事の講説を讀む、其始は「角を新月に吹け」。

第五十聖詠。規程は八調經の、月課經の、及び三歌經の。三歌頌を挿入する所の歌頌には八調經及び月課經の是の歌頌を用いず、蓋三歌頌は二「イルモス」を有す。

   三歌經の規程イオシフ師の作。第八調。

 

   第一歌頌

イルモス、「イズライリは乾ける地の如く」。

節制の神聖なる時は衆の爲に痛悔の光を輝かして、諸罪の暗昧を掃ふ。我等熱心を以て之を受けん。

視よ、痛悔の美しきは齋を守るを以て靈を新にす。信者よ、我等勇ましく之に入りて、諸罪の釋かるるを受けん。

光榮、首領、權柄、ヘルワィム、及び衆天軍よ、我等が齋の時を痛悔と凡の潔浄とを以て送らんことを祈り給へ。

生神女讃詞、聖なる童貞女、獨信者の保護なる者よ、爾の善く助くる祈を齋の時に我等衆爾を潔き生神女と識る者の爲に捧げ給へ。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 121]---------------------

イルモス、イズライリは乾ける地の如く水を過り、エギペトの禍を免れてべり、我が救主及び神に歌はん。

 

   第三歌頌

イルモス、「主、天の穹蒼の至上なる造成者」。

我等先に諸罪を以て慈憐なる神を悲しませし者は、齋に入るを以て大く靈を害する慾より脱れて、傷感の果を顯さん。

我等衆今熱切に勤めて、善行の油を以て燈を燃さん、智なる處女と偕に喜びて光明なる婚筵の宮に入らん爲なり。

神の言を述べし預言者、神を見し致命者、救世主の神聖なる門徒よ、我衆爾等に祈る、我等が善く齋の途を始めて、主の悦に合ひて之を終へんことを主に求め給へ。

生神女讃詞、女宰よ、我等皆爾を萬福の縁由として、熱切に祈る、爾の轉達を以て、我等に善く齋の勤労に入りて、救を致す終に至るを得しめ給へ。

イルモス、主、天の穹蒼の至上なる造成者、敎會の建立者、冀望の極、信者の固、獨人を愛する者よ、我を爾の愛に堅め給へ。

   次に月課經の坐誦讃詞及び十字架生神女讃詞。

 

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 122]---------------------

   第四歌頌

イルモス、「主よ、我爾が攝理の秘密を聆き」。

今齋の恩寵は朝の如く臨みて、我等に罪債の暗昧を掃ふ痛悔の時を進む。』

我等は貧者を養ひて、憐に依りて憐を受け、齋の神聖なる水を以て靈の汚を洗はん。

 

光榮、天の軍よ、萬善を與ふる主に無量の慈憐を以て我等の熱切なる痛悔を受けんことを祈り給へ。

生神女讃詞、罪を犯す者の潔浄たる潔き女宰よ爾の轉達を以て我が諸罪の書券を破り給へ。

イルモス、主よ我爾が攝理の秘密を聆き、爾の作爲を悟り、爾の神聖を讃榮せり。

 

   第五歌頌

イルモス、隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし、外の闇は憐なる我を掩へり、祈る、我を返して、我が途を爾の誡の光に向はしめ給へ。

信者よ、我等は今の日に潔浄なる度生の始を爲し、熱切に己を功労の爲に備へて、體の勤勞と靈の善果とを萬有の主宰に捧げん。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 123]---------------------

齋はモイセイを神を見る神聖なる福に與る者と爲せり。吾が靈よ、之に效ひて、齋を受けて、神聖なる進歩を爲せ、神の光明を見るを得ん爲なり。

洪恩なるイイススよ、祈る、聖にせられし使徒及び光明なる致命者の祈に由りて、我等に齋の時を痛悔と凡の罪の斷絶とを以て送るを得しめ給へ。』

生神女讃詞、女宰よ、我等齋の門に入らんと欲する者は爾神の門たる者に祈る、爾の諸僕に之に入りて、凡の思と志とを弘めて、救を致す望を行ふを得しめ給へ。

 

   次に三歌頌。イオシフ師の作。第六調。

 

   第五歌頌

イルモス、「至仁なる神の言よ、切に祈る」。

人を愛する主よ、爾は十字架に手を釘せられ、戈にて脅を刺されて、陷りしアダムの罪の書券を破り給へり。故に生命を施す主よ、我等歌を以て爾を讃榮す。

兇惡なる蛇は詭譎を以て我に靈の慾を入れて、樂園より遠ざけたり。救世主よ、爾は手を十字架に釘せられて、我を不朽の高きに升せ給へり。

齋の神聖なる時、靈の慾を潔め、其傷を醫す者は今至れり。信者よ趨り集まり

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 124]---------------------

て、親を以て之を受けん。

善なる時は現れて、靈の神聖なる樂を進む。我等來りて、欣ばしく之を受けて、齋と祈とを以て豫己を潔めん。

我等は齋、涙、祈、謙卑の心を我等の爲に己を謙卑の者と爲しし主に捧げん、節制の日に於て彼が我等に諸罪の赦を賜はん爲なり。

生神女讃詞、世界の至善なる女宰よ、爾の輝ける光線にて吾が靈の暗昧、我が罪の夜を掃ひ給へ、我が熱切に歌ひて、爾を讃美せん爲なり。

 

又。第八調、「隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし」。

人を愛する主よ、我爾の十字架に伏拜す、爾は此を以て我を救ひ給へり。主宰よ、我爾の救を施す神聖なる苦を歌ふ、我は之に由りて我が甚しき苦みより脱れて、苦惱なき生命に移れり。

我等は十字架を頼みて、諸敵の誘惑を防ぎ、此に堅められて、神に忠信なる者と知られ、新に生れし選ばれたる羔の如く、永生の爲に養ふ乳を飲む。

光榮、三者讃詞、我等皆明かなる智識を得て、父と、言と、聖神とを惟一なる神性に於て讃榮し、三位に伏拜して、位を分てども、之を混淆せず、變易せず、分離せざる者と承け認む。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 125]---------------------

生神女讃詞、四極の恃頼、爾の諸僕の歡喜たる潔き童貞女よ、愛を以て爾の聖像を尊む者を護り、至りて慈憐なる者として、爾の祈を以て我等衆に諸害を免れしめ給へ。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

主よ、愛を以て爾を尊む諸僕を爾の直き途に導き、齋の馳場を堅めて、我等に善く戰ふを助けて、爾の聖なる國を獲しめ給へ。

イルモス、「隠れざる光よ、何ぞ我を爾の顔より退けし」。

 

   第六歌頌

イルモス、「救世主よ、我を浄め給へ。」

贖罪主は齋して、我等の爲に靈の汚を潔むる今の時を定め給へり。我等信者は熱心を以て來り就かん、赦を受けん爲なり。

税吏の歎息及び淫婦の靈より捧ぐる涕泣を受けしハリストスよ、人を愛する主として、我等のを受けて、我等に潔浄を與へ給へ。

光榮、ハリストスよ、傳道師と預言者、致命者と爾の使徒、克肖者と成聖者、及び爾の悉くの義人の祈に由りて、我等の靈に諸罪の潔浄を降し給へ。

生神女讃詞、爾の神聖なる産を以て人性の弱きを堅めし獨潔き者よ、我齋の

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 126]---------------------

神聖なる途に入る者の爲に扶助者と爲り給へ。

イルモス、救世主よ、我を浄め給へ、我が不法多ければなり、祈る、我を惡の淵より引き上げ給へ、我爾に呼びたればなり、吾が救の神よ、我に聽き給へ。

 

小讃詞は聖人の。若し聖人の小讃詞あらずば、本調の致命者讃詞を誦す。

   第七歌頌

イルモス、「エウレイの少者は爐に在りて」。

昔イリヤは齋に照されて、火の車にて擧げられたり。鳴呼靈よ、彼に效ひて、節制を以て肉體の慾を殺せ。

靈よ、視よ、節制の時は爾に救の光を顯す。神の恒忍を輕ずる勿れ、乃熱切に呼べ、至仁なる主よ、我を憐み給へ。

光榮、齋は少者を堅めて、火に焚かれざる者として護れり。イイススよ、彼等の祈に由りて、爾の多くの慈憐を以て我を永遠の火より救ひ給へ。

生神女讃詞、人人の獨の扶助者よ、我等爾の諸僕の爲に節制の時に扶助と爲り給へ、我等が痛悔を以て神の悦を得て、天の國を受けん爲なり。

イルモス、エウレイの少者は爐に在りて勇ましくを踐み、火を露に變じてべり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 127]---------------------

 

   第八歌頌

イルモス、ハルデヤの窘迫者は怒に堪へずして、敬虔の者の爲に爐を七倍熱くしたれども、上の力にて其救はれしを見て、造物主と救世主に呼べり、少者よ、崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

我等務めて痛悔の爐を燃して、此の中に悉くの肉體の逸樂を焚き、慈憐の豊なる主に我等を將來の火の苦より脱れしめんことを求めて呼ばん、司祭よ讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。

齋に入る時は我等の爲に凡の罪の斷絶の縁由となるべし、我等は首を垂れ、或は望を抱かずして趨るべからず。願はくは我等は短くして少き日の内に我等の惟一の神を歌ひて心の傷感を以て多くの汚を滌はん。

人を愛する至仁なる主よ、天使の品位、致命者の群、神聖なる使徒の會、克肖者、成聖者、及び預言者の會衆は爾に祈る、今始まる所の節制の時に於て爾の諸僕に眞の痛悔を與へ給へ。

 

生神女讃詞、純潔なる神の母よ、爾に趨り附く。爾の慈憐なる祈を以て我等を護りて、今始まる所の齋の時に於て我等衆の爲に爾の子及び主を寛容の者と爲し給へ、爾を萬世に歌頌する信者の救の爲なり。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 128]---------------------

 

   三歌頌、第六調。

イルモス、「福たる少者はワワィロンに於て」。

我等は先祖の嗣業を守らずして、罪の法に服役せり。然れども爾は、主よ、神聖なる十字架に爾の手を伸べて、衆に自由を賜へり。我等は之に由りて聖なる日に於て熱信に爾に求む、仁慈なる主よ、我等萬世に爾を崇め讃むる者を憐み給へ。

爾の十字架を以て二の者を一と爲し、隔の牆を毀ち、四極に於て和平を望む者に豊なる和平を賜ひしハリストスよ、我等に將來の齋を和平の中に送りて、常に主を歌ひて、萬世に崇め讃むるを得しめ給へ。

今日齋の恩寵は日の光線を衆に放ちて、豫罪の暗を掃ふ。我等諸の慾に圍まるる者は喜を以て來り、愛を以て恩賜を受けて呼ばん、主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ

始めて造られし者は昔樂園に於て無智にして戒められたる食を取るによりて退けられ、定罪せられて樂園より逐はれたり。然れども爾は、主よ、木の上に釘せられて、彼の罪の書券を釘し給へり。故に我等爾の多くの慈憐を萬世に讃め歌ふ。

 

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 129]---------------------

我等は齋の法を棄てて、罪の淵に陷りたるに因りて、今入る所の齋を要する者と爲れり。洪恩なる主よ、之を送る我等に天より恩寵と豊なる和平とを遣し給へ。造物は主を歌ひて、萬世に崇め讃めよ。

生神女讃詞、墜つる者の提起、罪なる者の轉達者、旅する者の安息、憂ふる者の慰藉たる至聖至潔なる童貞女よ、我が靈の憂を掃ひて、神より我に慰を賜はんことを祈り給へ、蓋我熱心に歌ひて、爾を萬世に崇め讃む。

 

又。イルモス、「諸天使諸天よ」。

洪恩なる主よ造物は爾が身にて十字架に釘せられしを見て、性を易へたり、日の光は晦冥と爲り、地は動きて皆震へり。

救世主よ、爾は人の性を己と偕に十字架の高きに擧げ、信を以て爾の至浄なる苦に伏拜する者の爲に爾の神聖なる脅より救の富を流し給へり。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

三者讃詞、惟一の神は三者なり、父も子の本質に移らず、子も聖神の如く出づるを致さず、三位は各其本質を變易なくして守る。故に我等は聖三者を惟一なる神として世世に讃榮す。

生神女讃詞、如何に爾が父より無原に輝き、聖神と偕に歌頌せらるる主を生みたる

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 130]---------------------

を云へ、或は獨爾より生るるを喜びし者の知るが如し。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

主よ、本性の至善なる者として、我等の痛悔を受けて、我等を敵の網より脱れしめ給へ、我等が今信と愛とを以て爾の權柄を歌はん爲なり。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

イルモス、諸天使諸天よ光榮の寶座に坐し、神として絶えず讃榮せらるる主を崇め讃め、彼を歌ひて、世世に讃め揚げよ。

「ヘルワィムより尊く」、句と共に歌ふ。

 

   第九歌頌

イルモス、天は懼れ、地の極は驚けり、神は身にて人人に現れ、爾の腹は天より廣き者と爲りたればなり、故に天使と人人の群は爾生神女を崇め讃む。

視よ、光明なる時は至り、聖なる日は輝けり。鳴呼靈よ、爾の暗き慾を逃れて、爾を光に導く光線を受け、傷感を酒の如く飲みて樂しみ、逸樂の醉を惡め。

ハリストスよ、齋の時は實に至りて善なり、爾之を衆信者に諸罪に勝たん爲、又救の潔浄と諸恩賜とを受けん爲に賜へり。我等此の時に於て爾に祈る、救世主よ、我衆を爾の諸善に與る者と爲し給へ。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 131]---------------------

常に爾の豊なる仁慈を我等に注ぐ洪恩なる主よ、我等に汚を潔むる涙及び爾を愛する者の思、潔き信と愛、眞の痛悔と全く爾獨大仁慈なる主に屬することとを與へ給へ。

神聖なる諸天使の大數及び諸聖人の讃美たる會よ、熱切に至善なる主に祈りて、我等を今の齋の神聖なる馳場を躓なく趨らん爲に堅めて、勝利者と爲さんことを求め給へ。

生神女讃詞、至善なる救世主を生みし善を愛する童貞女、女宰よ、我等衆無量の慾と惡念とに殘はれ、諸罪の負ひ難き任に壓せらるる者を援けて、善なる者と爲し給へ、我等が職として爾を生神女と崇め讃めん爲なり。

 

第二調、イルモス、「生神女よ、爾の位に合ひて能く爾を讃美する舌なし」。

恩主よ、諸天使及び人人の性は爾の慈憐に合ひて能く感謝するなし。蓋爾は身にて貧しくなり、木に釘せられて、我等の爲に詛と爲り給へり、人類の始の詛を除かん爲なり。

節制の明なる日は至れり。吾が靈よ、來りて、明なる面を以て主宰を迎へて、上より我等に恩寵と多罪の赦とを降すを求めん、彼處に於て最畏るべき「ゲエンナ」の苦を受けざらん爲なり。

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 132]---------------------

諸罪の暗昧の中に圍まるる者の爲に今痛悔の聖にせられし入門は啓かれて、衆人の靈を照す。故に吾が靈よ、務めて諸慾の飽食の昧を逃れよ、彼處に於て永遠の甘味を樂しまん爲なり。

生命を賜ふ主よ、爾は甘じて木の上に手を伸べて、散らされし者を集め給へり。恒忍なる主よ、戈に依りて爾の脅を啓きて、爾は肋骨より造られし者の堕落を改め給へり。故に我等感謝して爾の慈憐を歌ふ。

生神女讃詞、凡そ爾を頼む者の轉達、患難に遇ふ者の有力の扶助者たる生神女よ、我等を永久の「ゲエンナ」及び將來の甚しき苦より脱れしめ給へ、我等が宜しきに合ひて爾の偉大なるを歌はん爲なり。

 

又。イルモス、「母には童貞は適はず」。

生命を賜ふ主よ、我等爾の傷に伏拜す、此等に由りて我等は罪の苦より脱れ、爾の尊き十字架に印せられて、凡の敵の攻撃より護られて救はる。

甘じて衆人の救の爲に十字架に釘せられし慈憐なる主よ、爾の十字架の輝煌を以て爾の苦を歌ふ者の靈を照し、我等の生命を直き途に向はしめ給へ。』

救世主よ、我等は爾の誡に背きて罪を犯せり。人を愛する主よ、我等は怠惰に由りて爾の示しし神聖なる途より遠く離れたり。求む、洪恩なる主よ、我等の靈を迷

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 133]---------------------

より喚び還し給へ。

光榮、三者讃詞、讃美と尊貴とは聖三者に合ひ、光榮と伏拜とは惟一の權柄、惟一の國、混淆なく、分離なき惟一の神性に屬す。我等は絶えず三位一體の神を崇め讃む。

生神女讃詞、至りて洪恩なる主、萬有の光榮の王よ、爾の諸僕を審判する爲に來らん時、爾の至尊なる母の祈に由りて、仁慈なる主として我等に慈憐を垂れ給へ、我等皆爾を信じ、爾を神として識ればなり。

我等の神よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

今至る所の光明なる齋は功勞の筵を進む、故に我等衆信者は警醒して之に就き、潔浄を爲す涙の尊き爵を受けん、彼處に於て益なき涙を流さざらん爲なり。

 

共頌、母には童貞は適はず、童貞女には生産は合はず、生神女よ、爾に於ては兩ながら行はれたり、故に我等地上の萬族は常に爾を崇め讃む。

 

   光耀歌は本調の聖三の讃歌の、三次。其他。

   挿句に本日の自調の讃頌を歌ふ、第六調。

救を施す十字架の先には罪は王となり、不敬虔は權柄を執りしに、人人の體の

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 134]---------------------

糧は重んぜられ、肉體の望を輕ぜし者は少かりき。十字架の奥義は行はれ、神を識る智識に由りて惡鬼の暴虐の滅えし時より、天上の徳は地に棲む。故に齋は尊まれ、節制は輝き、祈は盛に行はる。之を證する者は十字架に釘せられしハリストス神より吾が靈の救の爲に我等に賜はりし今の時なり。

句、「主よ、夙に爾の憐を以て我等に飽かしめよ。」

 

   復同上の讃頌。

句、「願はくは主吾が神の惠は我等に在らん」。

致命者讃詞、主よ、爾の聖者の記憶に於て悉くの造物は祭る、天は天使等と偕に喜び、地は人人と偕に樂しむ。彼等の祈に由りて我等を憐み給へ。

光榮、今も、十字架生神女讃詞、純潔なる者は爾が十字架に懸れるを見し時、母として哭きて呼べり、吾が子及び我が神、我が甘愛なる産よ、如何ぞ爾は恥づべき苦を忍ぶ。

次に「至上者よ主を讃榮し」。聖三祝文。讃詞、「生神女、天の門よ」。主憐めよ、四十次。

司祭、永在の主ハリストス我等の神は恒に崇め讃めらる、今も何時も世世に、「アミン」。

「天の王よ、我等の皇帝を佑け」。克肖なる我が神父シリヤのエフレムの祝文、

---------------------[乾酪週間金曜日 早課 135]---------------------

「主吾が生命の主宰よ」を誦して三大拜を爲す、及び其他の拜。

第一時課を併せ誦す。常例の拜の後に克肖なる神父フェオドルストゥディトの敎訓を讀む。次に發放詞。

 

           ~~~~~~

 

   乾酪の金曜日に

   時課を歌ふ、大拜と共に、水曜日に記ししが如し。

   第六時課に預言の讃詞、第八調。

主よ、我等に哀の中に援を與へ給へ。童貞女より生れし仁慈なる者よ、我等を救ひ給へ。

 

   光榮、今も、同上。

提綱、第一調、主よ、我等爾を頼むが如く、爾の憐を我等に垂れ給へ。句、義人よ、主の爲に喜べ、讃榮するは義者に適ふ。

 

   ザハリヤの預言書の讀。第八章。

主サワオフ是くの如く言ふ、視よ、我我が民を日の出づる地より、及び日の入る地よ

---------------------[乾酪週間金曜日 第六時課 136]---------------------

り救ひ、彼等を攜へ來りて、イエルサリムに居らしめん、彼等は我の民と爲り、我は彼等の神と爲らん、眞實に於てし、公義に於てせん。主サワオフ是くの如く言ふ、爾等、主サワオフの家の基礎を置えたる日に在りし諸預言者の口の言を今日聞く者よ、殿を造らん爲に爾等の手を強くせよ。蓋彼の日の先には、人は勞の値を得ず、牲畜も勞の値を得ず、出づる者も、入る者も、仇の故に平安を得ざりき、我人人に互に相攻むるを許せり。然れども今此の民の遺れる者の爲には、我曩の日の如くならずと、主サワオフ言ふ。蓋種播くことは平安に行はれん、葡萄の樹は其果を結び、地は其産物を出し、天は其露を與へん、我悉く之を斯の民の遺れる者に嗣がしめん。イウダの家及びイズライリの家よ、爾等諸民の中に呪詛と爲りし如く、斯くの如く我爾等を救ひて、祝福と爲らしめん、懼るる毋れ、爾等の手を強くせよ。蓋主サワオフ是くの如く言ふ、爾等の先祖が我を怒らせし時、我爾等を罰せんことを定めて悔いざりき、主サワオフ之を言ふ、是くの如く我亦斯の日に於てイエルサリム及びイウダの家に恩を施さんことを定めたり、懼るる毋れ。爾等の行ふべき事是なり、各其隣に眞實を言へ、眞實と和平とを以て爾等の門の旁に鞫せよ、各其隣に對して己の心に惡を謀る毋れ、僞の誓を好む毋れ、蓋此れ皆我が惡む所なり、主之を言ふ。

 

---------------------[乾酪週間金曜日 第六時課 137]---------------------

提綱、第三調。我が神に歌ひ歌へよ、我が王に歌ひ歌へよ。句、萬民よ、手を拍ち、歡の聲を以て神に呼べ。

 

   其他皆乾酪の水曜日に記す所の如し。

知るべし、乾酪の「スボタ」及び主日には月課經を用いず、當る所の聖人の式は晩堂課に、或は聖務長の欲する時に於て歌はる。

 

 

          ~~~~~~

 

 

 

 乾酪週間の金曜日の晩課

 

乾酪の「スボタ」には功勞を以て輝きし悉くの克肖捧神なる神父の記憶を行ふ。

金曜日の晩課に首誦聖詠の後に常例の誦文、「我が憂の中に主に呼びしに」

「主よ、爾にぶ」に六句を立てて左の讃頌を歌ふ、各二次。第八調。

衆信者よ來りて、克肖なる神父の會を歌ひ、首長なるアントニイ、光明なる

---------------------[乾酪週間金曜日 晩課 138]---------------------

エウフィミイ、其他各人を并に共衆を歌はん。又彼等の住ひし地を他の樂園の如く思念の中に巡りて、喜びて呼ばん、斯くの如き樹は吾が神之を植え給へり、

此等は不朽なる生命の果を生じ、ハリストスに捧げて、我等の靈を養ふ。我等は彼等に呼ばん、福たる捧神者よ、我等の救はれんことを祈り給へ。

信なるエギペトよ慶べ、克肖なるリワィヤよ、慶べ、選ばれたるフィワイダよ、慶べ。

天の國の住民を養ひ、節制と勤勞とに於て彼等を生長せしめて、神に愛せらるる完全なる人人と顯しし凡の處と、邑と、地よ、慶べ。彼等は我等の靈の爲に明星と現れ、自ら奇跡の光線と行事の休徴とを以て無形にして四極に輝けり。我等は彼等に呼ばん、至りて福たる神父等よ我等の救はれんことを祈り給へ。

全世界の神父等よ、地に生るる者の中誰か能く爾等の奇異なる度生を述べん。何れの舌か能く爾等の聖にせられし屬神の功勞と努力、徳の勤行、肉體の羸痩、諸慾に於ける戰、警醒、祈、涕泣を言ひ顯さん。爾等は世界に於て實に天使の如く現れ、惡鬼の力を盡く壞り、驚くべき奇跡休徴を行へり。故に至りて福たる者よ、我等が終なき喜を獲んことを我等と偕に祈り給へ。

光榮、第六調、至りて克肖なる諸神父よ、爾等は像に從ひて造られし者を殘なく

---------------------[乾酪週間金曜日 晩課 139]---------------------

守り、智慧を以て齋に由りて害ある諸慾を制する統御者と立てて、肖に從ひて造られしことに能する所に應ひて上れり。蓋勇敢に性を攻めて、務めて卑きを高きに從はしめ、肉體を神に服せしめたり。故に爾等野の住者は隠者の爲には嚮導師、馳場に競ふ者の爲には奨勵者と顯れ、徳の嚴正なる則と爲れり。今は爾等天に在りて鏡の除かれしに、明に面を合せて聖三者を仰ぎて、信と愛とを以て爾等を尊む者の爲に祈り給ふ。

   今も、八調經の本調の第一の生神女讃詞。「穏なる光」。

提綱、第七調、神よ、爾は我を護る者なり、爾の憐は我に先だたん。句、神よ、我を我が敵より援け、我を攻むる者より護り給へ。

 

   ザハリヤの預言書の讀。第八章。

主サワオフ是くの如く言ふ、四月の齋、五月の齋、七月の齋、十月の齋は、イウダの家の爲に喜悦と爲り、樂しき慶賀と爲らん、唯眞實と和平とを愛せよ。主サワオフ是くの如く言ふ、又多くの民及び多くの邑の居民は來らん、此の邑の居民は彼の邑の居民に往きて云はん、我等往きて主の前に祈り、主サワオフを尋ねんと、各我も往かんと云はん。乃多くの族及び強き諸民は來りて、主サワオフをイエルサリムに尋ね、主の前に祈らん。主サワオフ是くの如く言ふ、其日には、異なる言の諸民

---------------------[乾酪週間金曜日 晩課 140]---------------------

の十人イウデヤ人の裾を拉へ、之を拉へて云はん、我等爾と偕に往かん、蓋我等は神の爾等と偕に在るを聞けり。

 

提綱、第六調、願はくはイズライリは主を恃みて今より世世に迄らん。句、主よ我が心驕らず、我が目高ぶらざりき。

「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」。

   挿句に自調の讃頌、第二調。

兄弟よ、我等は己を凡の靈體の汚より潔めて、貧者を愛するを以て我等の靈の燈を燃し、讒言を以て相噬むことなからん、蓋新娶者が來りて、衆人に其行に應ひて報いん時至れり。我等智なる處女と同じくハリストスと偕に入りて、夫の盗賊の聲を以て彼に呼ばん、主よ爾の國に來らん時我等を憶ひ給へ。』

句、「天に居る者よ、我目を擧げて爾を望む」。

  復同讃頌

句、「主よ、我等を憐み、我等を憐み給へ」。

致命者讃詞、聖致命者の我等の爲に祈りてハリストスを歌ふに、凡の迷謬は熄み、人の族は信を以て救はる。

光榮、第八調、克肖なる諸神父よ、我等修士の大數は今爾等を嚮導師として尊む、

---------------------[乾酪週間金曜日 晩課 141]---------------------

蓋爾等に由りて實に直き途を行くを知れり。福たる哉爾等、ハリストスに役事して、敵の力を滅しし者や、爾等は諸天使の對話者、諸義人及び諸聖人の同住者なり。彼等と偕に主に我等の靈の憐を蒙らんことを祈り給へ。

   今も、生神女讃詞。

潔浄の寶よ、慶べ、無形なる光の潔き居處よ、慶べ。我等の救の始よ、慶べ、使徒の宣傳よ、慶べ。致命者の譽よ、慶べ、預言者の成就たる純潔なる者よ、慶べ。勤勞者と修士との飾及び信者の救よ、慶べ。

次に「主宰よ、今爾の言に循ひて」。

   聖三祝文の後に讃詞を誦す、第四調。

我が先祖の神、常に爾の温柔に從ひて我等に行ふ主よ、爾の仁慈を我等より取り上ぐること勿れ、彼等の祈に由りて我等の生命を平安に治め給へ。

光榮、今も、生神女讃詞、同調、「是れ古世より隠されて、天使等にも知られざる秘密なり」。

   右二章は又「主は神なり」に、及び早課の末に誦す。

「神よ爾の大なる憐に因りて」。二大拜。「願はくは主の名は崇め讃められ」、三次。「我何の時にも主を讃め揚げん」。「常に福にして」。發放詞。

---------------------[乾酪週間金曜日 晩課 142]---------------------

晩堂課に本調の順序の死者の規程を歌ふ。

 

          ~~~~~~

 

 

 

 乾酪週間の「スボタ」の早課

 

六段の聖詠及び第一の誦文の後に坐誦讃詞、第八調。

我等は諸神父の光線に輝かされて、今美しき樂園に入るが如く、甘味の流を樂しみ、彼等の功勞を驚き見て、其諸徳に效ひて、救世主に呼ばん、神よ、彼等の祈に由りて我等を爾の國に與る者と爲し給へ。

   光榮

我等皆同心に修道士等の首長たるパワェルを、睿智なるアントニイ及びエウフィミイと共に、又其他の諸神父を歌ひて、彼等に祈りて、常に我等、其神聖にして光明なる記憶を行ひて、歌頌の中に救世者及び主を讃榮する者の爲にハリストスに祈るを求めん。

   今も、生神女讃詞。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 143]---------------------

潔き永貞童女よ、我等爾に感謝して、崇め讃む。恩寵を蒙れる者よ、爾に伏拜し、爾の産を歌ひて常に呼ぶ、至りて仁慈慈憐なる童貞女よ、我等を救ひて、試の時に.惡鬼の畏るべき詰問より脱れしめ給へ、我等爾の諸僕が恥を得ざらん爲なり。

 

   第二の誦文の後に坐誦讃詞、第四調。

我等皆アントニイ共に又エウフィミイ、及び其他の悉くの捧神なる神父を歌を以て讃め揚げて、其記憶を祝はん、蓋彼等は主に全世界の爲に祈りて、我等に古の詛より解かれて、苦を免れしめんことを求む。

   光榮、又坐誦讃詞、第八調

我等は諸徳の花園にあるが如く、捧神なる修齋者を繞りて、馨しき香に満たさる。蓋彼等は誘惑の戰に堅められ、節制を以て肉體を全く神に服せしめて、地に在りて天使の度生を爲せり、故に光榮を獲たり。

   今も、生神女讃詞。

ハリストスよ、爾の無形軍と前驅と門徒、預言者と致命者、諸聖人と克肖者、及び爾の純潔至善なる母の祈を受けて、我等に爾の光の中を行かしめ、爾の仁慈慈憐に因りて我等に爾の國を獲しめ給へ。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 144]---------------------

聖エフレムの寢りし諸神父の事の講説を讀む。

 

第五十聖詠。規程は、本堂の聖人の六句に、及び聖神父等の八句に。又「主に歌はん」を誦句す。

 

   聖神父等の規程、第八調。

   第一歌頌

イルモス、「人人よ、イズライリを奴隷より釋きたる」。

我等皆屬神の歌頌の中に、功勞を以て輝きし我が神聖なる諸神父、エギペト、フィワイダ、及びリワィヤ、凡の處と、邑と、地の出しし者を同心に歌はん。

慶べ修道士等の第一の嚮導師たる至榮なるアントニイ、ニトリヤの光榮たる捧神者アンムン、嚴正なる静修者天使と侔しきアルセニイ、及び捧聖神者アムモンよ。

樂しめ誠に神の器なる靈の成聖せられしアガフォン、野の花たるアヒルラ及びアモイ、諸徳の光れる珍珠たるアヌフとアロニイ、アモナファとアンフィムよ。』

我等の爲に智識の燈なるアリス、及び大なるアポルロス、柔順の光なるアフレ及びアカキイ、彼等と偕に明星の如く輝けるアウワキルは今日歌はるべし。』

アウクセンティイは高尚なる度生の山と現れ、大なるアウラミイは潔浄の徳の

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 145]---------------------

功勞者、又彼等と偕にアフロティシイ及びアフィノドルは節制の柱と現れたり。

アムモニイ及び神聖なるアニンは修齋者の中に星の天に於けるが如く光り、彼等と共に大なるアンティオフ及び光明なるアガピトは輝く。他にも彼等と共に光る者あり。

聖にせられし歌を以て大なるアファナシイ、アフォン山の光明なる修齋者、全世界の大なる燈を崇め讃めん。我等皆彼の祈に因りて救はる。

睿智にして福たる諸神父よ、爾等皆神に感ぜらるる度生を以て實に敎會の樂園と現れたり。我等の爲に常に主にを捧げ給へ。

致命者を愛する信者よ、來りて、讃美の詩賦と歌頌とを以て致命者を尊みて、熱信にハリストス我が神に歌ひて呼ばん、我等爾惟一の主宰を歌頌せん。』

 

光榮、三者讃詞、我は歌を以て惟一自在なる神性の三位、生れざる父、生れし子、及び聖神、無原なる國と權能、惟一の神を崇め讃む。

 

生神女讃詞、慶べ至聖なる殿、神の露に霑されたる羊の毛、不死の流の封ぜられたる泉なる女宰よ、爾の城邑を諸敵の害より護り給へ。

 

イルモス、人人よ、イズライリを奴隷より釋きたる我が奇異なる神に讃詠を獻り

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 146]---------------------

て、凱歌を歌ひて呼ばん、我等爾惟一の主宰を歌頌せん。

第二歌頌に預言者の歌頌を誦せずして、左の附唱を歌ふ、克肖なる諸神父よ、我等の爲に神にり給へ。

 

   第二歌頌

イルモス、見よ、見よ、我は爾等の神、世世の先に父より生れ、人を愛するに因りて、末の時に夫なき童貞女に孕まれ、原祖アダムの罪を滅しし者なり。

我等は一の樂園に遊ぶが如く、今神に植えられたる修齋者の諸徳の馨しき香に満てらる。至りて克肖なる諸神父は種種に度生の果を神に奉りて、節制と涙とを以て斯の諸徳を生長せしめたり。

大なるワィサリオン、鳥の如く生活せし者、天使と侔しき者、又新なるイオフ、堅固なるワェニアミン、燈なるワィタリイ、淫婦を神に反正せしむる者、神聖なるワィティミイ、及び光榮なるワワィラは皆共に歌はるべし。

鳴呼、ワェネディクトよ、爾は度生の高きを以て天と爲れり。牧師ワシアンは智慧の室なり。或ワシリイは從順の榮冠を得たり、蓋生ながら墓に居りて、我等に從順の光明を示す。

ゲラシイには歌を捧ぐ、彼は諸慾を制する常に記憶せらるる王なり。ゲラシムには

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 147]---------------------

讃美を奉る、彼に猛獸は服役せり、善美なる徳の爲に彼に來りたればなり。光榮は神父ゲルマン、及びハリストスの睿智なる役者ガイに屬す。ダワィドはフェサロニカの尊榮及び美譽なり。神の悦を得たるダニイルは讃めらるべし。隠舎のダニイルは行爲と言語とを以て多くの奇跡を行へり。ディイ及びダルマト修道士の首長は信の保固なり

服從は神智なるドメティアン及びドメティイを星の光よりも大いに輝ける二の燈として我等示せり。彼等と偕に匿名者も亦盛に歌はるべし。

主の爲に苦を受けし者の柩は信者の盡され寶なり。我等信者は來りて、敬虔に之を歌ひて、信を以て靈體の醫治を受けん

 

光榮、三者讃詞、至りて善美なる惟一者、三位なる神、生れざる父、獨生の子、父より出でて子に依りて顯るる聖神、一性一體、獨一の權柄、獨一の能力よ、我等衆を救ひ給へ。

生神女讃詞、潔き者よ、爾は獨人類の中に奇異なる産を顯し、獨性の産苦を受けざりき、種なき至浄なる産を爲したればなり。故に我等信者は宜しきに合ひて爾を生神女としを讃榮す。

 

共頌、「見よ、見よ、我は爾等の神」。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課148]---------------------

 

   第三歌頌

イルモス、「主の如く聖なるはなく」。

我等は神聖なる神父等の諸徳の樂園に入りて、此の中に常に生活と奨励とを與ふる樂を嘗めて、熱信に彼等を崇め讃めん。

至りて光れる星たるエウフィミイ、明星なるニルラテイ、神に感ぜられたるエフレム、高名なるエウロギイと偕に功業と奇跡とを以て四極を照しし者は尊まるべし。

奇異なるゾシマ、。至りて尊貴なるザハリヤと、ジノンと、ゾイルは歌頌を以て歌はれん。大なるイサイヤと光榮なるイリヤとは彼等と偕に尊まるべし。』

我はフェルミの至榮なるフェオドルと讃美たるエンナトを歌ひ、彼等と偕にフェオドゥル及びフェオナを歌頌し、奇異にして大なるフェオドシイを尊む。

最善なる牧師フェオクティスト、高尚なるファラッシイ、シケオトと名づけられし大なるフェオドル、休徴奇跡を以て地上に現れし者は讃めらるべし。

他の星も現る、盛に光れる「コロフ」イオアンは階梯の中の三人の光明なる者、及び其他の多くの者と共に至榮に輝く。

祭を愛する者よ集まりて、歌頌と屬神の詩賦とを以て致命者の至尊なる記憶を尊ま

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 149]---------------------

ん、彼等常に我が族の爲にハリストスに祈ればなり。

光榮、三者讃詞、一性の三者、至りて神聖なる惟一者、位の分れて性の一なる神よ、我等を爾の誡を行ふ一の望に合せ給へ。

生神女讃詞、童貞女よ、モイセイは爾を預象して、神に造られセラフィム等に蔽はるる幕と爲し、爾の潔き産を前兆して、至聖所と爲せり。

イルモス、主の如く聖なるはなく、我が神の如く義なるはなし、萬物彼を歌ひて云ふ、主よ爾の外に義なる者なし。

 

   坐誦讃詞、第四調。

聖なる諸敎師よ義の日ハリストスは爾等を地を照す光線として遣し給へり。故に神福なる者よ、爾等の神聖なる祈に由りて、神智の聖なる光を以て惡に昧まされたる我が靈を照し給へ。

 

   又坐誦讃詞、第八調。

信者よ、歌を以てアントニイの温柔と潔浄、エウフィミイの尊大と奇妙、パワェル及びアルセニイの質朴と緘黙、フェオクティストの高名、其他凡の克肖者の品位を讃榮讃美し、彼等と偕に處女エウプラクシヤ、及び悉くの神智なる女を同心に歌ひて呼ばん、ハリストス神に祈りて、愛を以て爾等の聖なる記憶を祭る者に諸罪の

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 150]---------------------

赦を賜はんことを求め給へ。

   光榮

我が捧神なる諸神父よ、爾等は諸慾の縲絏を解きて、諸善の愛に著きて、ハリストスに於て天上の光榮を衣、己の勞を終へて安息を得、節制の勤勞に由りて上の生命を受けたり。故に宜しきに合ひて天上の軍と共に喜ぶ。愛を以て爾等の聖なる記憶を祭る者の爲に諸罪の赦を求め給へ。

   今も、生神女讃詞。

我罪の泥に陷りて立つ能はず、諸罪の暴風は我を溺らせり。女宰よ祈る、惟一の仁愛なる主言を生みし者として、我爾の僕を顧みて、我を罪と、靈を滅す諸慾と、惡敵の諸害より脱れしめ給へ、我が喜びて歌はん爲なり、ハリストス神に我に諸罪の赦を賜はんことを祈り給へ、我爾の僕は爾を恃頼とすればなり。

 

   第四歌頌

イルモス、「言よ、預言者は樹蔭繁き山」。

世界に現れし燈たる神聖なるイラリオン、智識の山たる大なるイウスティン、彼等と偕に至りて高名なるイエラクス、イワィスティオン、及びイオシフは尊まる

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 151]---------------------

べし。

イエレミヤも度生を以て光れり、イスヒリオンは大なる力と現れたり。彼等と偕にカリオン、コプリイ、カストル、カッシアン、共に至りて善なる者は輝く。』

我はカルリストの能言を奇とし、ラウレンティイの善行を賛し、ロンギンの美蹟を稱し、ロトの徳を尊む。

レオンティイの神學の深きを歌ひ、マクシムの敎の海を歌頌し、マルキアンの美善、及びマルコの柔順と聽從とを讃美す。

大なるマカリイは諸徳の模範、ポリティコスは敬虔の富なり。彼等と偕に高名なるマルコ、ダルマトイ、及び「エフィオプ」モイセイは傳へらる。

我はマルティニアン及びマルホの潔浄の爲の勤行を崇め、牧師長マルケルの徳行、及び死者を復活せしめしミルルを尊む。

ハリストスの致命者よ、造成主及び造物主に世界の和平の爲、又歌を以て爾等の記憶を尊む者の爲に息めざる祈を捧げ給へ。

 

光榮、三者讃詞、奇異なる哉一にして又三なり、一なる神性は分れずして三位なり、蓋父、子、及び聖神は惟一の神性に於て拜まる。

生神女讃詞、神の最廣き居處よ慶べ、新約の櫃よ慶べ、衆人に與へられたる天上

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 152]---------------------

の「マンナ」を納れし壼よ、慶べ。

 

共頌、言よ、預言者は樹蔭繁き山たる惟一の生神女より爾が身を取らんと欲するを神妙に見て、畏を以て爾の能力を讃榮せり。

 

   第五歌頌

イルモス、「ハリストスよ、祈る、我を深き夜よりするが如く」。

來りて、エデムの樂園の常に活くる花を見ん、是れ諸神父の勤勞、獨農夫たる主神に由りて生長せしめられし者なり。

凡そ智慧ある靈はニルの言の流に飲ませられ、ナウカラティイ、ニコンの度生に照され、ナファナイル及びニスフェノルは之を飾る。

クセノフォントは二子と偕に、大なるポルシシイ、更に又オヌフリイは諸徳に輝きて、我等を照す。地上の者の中誰かピメンを宜しきに合ひて讃めざらん。』

パムワォは行と言とを以て高尚なる者として宜しきに合ひて讃美せらるべし。惡鬼を禁ずる至榮なるププリイ、同じく光明なるピンヌフリイは讃榮せらるべし。

實に至りて光榮なるパフヌティイ、ピオル、パテルムフィイ、最質朴なるバワェル、及び諸父の敎導師、大なるピティルンは宜しきに合ひて尊まるべし。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 153]---------------------

星の中の星たるパホミイ、同戰者パラモンは、嚴に讃榮せらるべし。彼等と偕に神聖なるペトロニイ、及びパサリオンは屬神の詩賦を以て歌はるべし。』

光榮、三者讃詞、神は位にては三、性にては惟一、父、子、及び聖神なり、我等彼に於て洗を受け、及び彼を信ず。

生神女讃詞、至浄なる者よ、爾は言に由りて言に超えて言を生み給へり。祈る、絶えず彼に爾の牧群を常に諸難より救はんことを祈り給へ。

共頌、ハリストスよ、祈る、我を深き夜よりするが如く、諸慾の晦冥より脱れしめて、我が神に夙に興きて、爾が誡の光の日に居るを得しめ給へ。

 

   第六歌頌

イルモス、「人を愛する主よ、我多くの罪に圍まれて」。

我等の至尊なる諸神父、其神聖なる勤勞、其戰闘、其醫治は奇異なり、蓋誰か彼等より多く奇跡の力を現したる。

奇妙なるラワゥラ及びルフ、天使と侔しきシソイ、彼等と偕に神聖なるエリド及びシルアンは讃めらるべし。

地上に四の星の輝く天は現れたり、此れ同名なる四人のシメオン、其中三人は登塔者にして、一人は佯狂者なり。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 154]---------------------

修道士の中に其首たる聖にせられしサゥワは星の間にある日の如く光り、彼と偕にセラピオン及びシルワンは行實を以て輝く。

サルマトとティモフェイ、ティフォイはイペレヒイと偕に、ファルムフィイ、フォカ、ハリトン、ヘリモン、フソイ、及び睿智なるオルは歌はるべし。

聖にして光榮なる大數の諸神父、已に名の擧げられたる者及び匿名の者よ、愛を以て爾等の記憶を行ふ我等を諸難より救ひ給へ。

光榮、三者讃詞、無原なる三者、及び神聖なる惟一者よ、我等は爾三光と一光、三一の生命たる智慧と、言と、聖神、惟一の神を歌ふ。

生神女讃詞、先祖イエッセイよ樂しめ、爾の根より生命の花、世界を救ふ者は生じたり、此れ潔き童貞女より生れ給ひしハリストス神なり。

イルモス、人を愛する主よ、我多くの罪に圍まれて、爾の洪恩に趨り附く者を受けて、預言者の如く我を救ひ給へ。

 

   小讃詞、第八調。

主よ、爾は捧神者の會を敬虔の傳道師、不虔の控制者と現して、天下を照し給へり。彼等の祈に由りて、爾を讃榮讃美して、爾に「アリルイヤ」を歌ふ者を全き平安に護り給へ。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 155]---------------------

   同讚詞

我世上の美しきを見、度生の諸事を思ひ、其諸難を量りて、人の生命を儚き者と爲し、獨爾等を福なる者と爲せり。蓋爾等は善き分を擇べり、是れハリストスを愛し、彼と偕に居り、常に預言者ダワィドと共に「アリルイヤ」を歌ふなり。』

 

   第七歌頌

イルモス、「少者に爐の中に露を注ぎ」。

來りて、職として、天使と侔しく度生せし克肖なる女等に歌を奉りて呼ばん、神よ、彼等の祈に由りて我等衆を救ひ給へ。

ハリストスを常に心の中に奉ぜしウリエナは神聖なるフェウロニヤと偕に尊まるべし。フォマイダとイエリア、フラトニダとメラニヤは熱信に歌はるべし。

天使の如き智慧あるエウプラクシヤに二人のフェオドラと偕に讃美を捧げ、至福なるアナスタシヤ、奇妙に神に奉事せし者に常に歌頌と光榮とを奉らん。

エギペトのマリヤは世界に於て光なり。マリンと名づけられし者は全地の爲に星と現れたり。エウフロシナは諸徳を以て輝く日なり。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 156]---------------------

フェオドゥラは度生に於て火の如き者なり。フェオドティヤ及びイウリタは節制を以て輝き、至福なるイシドラは勤行を以て光る。

天上の心を有つマリナは大なるマトロナと偕に今尊まるべし。シンクリティカと、サルラと、イウスティナは、睿智なる者として、歌を以て讃めらるべし。

主の天使たるペラギヤ、痛悔の燈たるタイシヤ、其他節制に於て輝きし女は歌はるべし。

 

光榮、三者讃詞、我等は父と、子と、聖神に伏拜し、同心に讃榮して、熱切に呼ばん、聖三者惟一者、我が神よ光榮は爾に歸す。

生神女讃詞、生神童貞女、世界の救主及び主宰を生みし祝讃せらるる者よ、彼に我等の靈を憐まんことを常に祈り給へ。

 

共頌、少者に爐の中に露を注ぎ、爾を生みし者を産の後にも童貞女と護りし我が先祖の神よ爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「聖なる山に光榮を顯し」。

我等皆牧師と睿智なる敎師、ハリストスの敎會の成聖者を克肖者と偕に歌頌して主を歌ひて、萬世に讃め揚げん。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 157]---------------------

大なるワシリイ、彼と偕に實に多くの苦を受けしアファナシイ、及び神學に首長たるグリゴリイは衆に職として歌を以て歌頌せらるべし。

イオアンの金言の口を、二人のキリル神智なる柱と偕に讃榮し、同じく又他の神學師イシヒイを神の言を述べし神聖なるメレティイと偕に讃榮せん。』

ニッサのグリゴリイに二人の奇跡者なる神父と偕に光榮を歸すべし。睿智なる聖エピファニイは輝ける燈たるアンフィロヒイと偕に世世に歌はるべし。』

司祭等の光榮たるミトロファン、生活の燈たるネクタリイ、アッティク、ゲンナディイ、彼等と偕にアナトリイ、及び睿智なるエウセワィイとプロクルを歌はん。

我は聖にせられし傳道師ニコライと實に蜜を滴らす舌アルソフロニイ、エウラワィイとティアドフ、首長たる神父エウスタフィイとユワェナリイを歌ふ。

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

 

三者讃詞、父と子と至聖なる神よ、我爾が性にて惟一者たるを歌ひ、位にて三者たるを尊み、爾の國の無原なる權能を世世に讃榮す。

生神女讃詞、生神女よ爾は神の山と現れたり、ハリストスは其中に居りて、神聖なる諸殿を作りて歌はしむ、主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 158]---------------------

共頌、聖なる山に光榮を顯し、棘の中に火を以てモイセイに永貞童女の奥密を示しし主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

   「ヘルワィムより尊く」を句と共に歌ふ。

 

   第九歌頌

イルモス、「山に於て立法者に火及び棘の中に」。

誰か能くアムブロシイの勇敢を述べん。如何ぞ能くイエロフェイの睿智及び神智なる神父アレクサンドルの信の堅固なるを言ひ顯さん。

神聖なるフェディム、捧神なるスピリドンは、アンティパトル、パムワォ、パルラディイ、ノン、イエロニム、及び至尊なるゲルマンと偕に、神の燈として歌はるべし。

神聖なるディオニシイは天上の事の秘密者として崇められ、多く苦を受けしクリム、表信者たるフラワィアン及び大なるパワェルは尊まるべし。

シナドの、ミハイル、タラシイ、ニキフォル、高名なるフェオドル、又實に聖にせられしフェオファン、共にハリストスの聖像の擁護者たる者は歌はるべし。

實に捧神なるペトル及びイグナティイはハリストスの使徒及び神品致命者として、ハリストスの致命者ポリカルブ及びキプリアンと偕に歌はるべし。』

克肖なる諸神父と主の神品首長、致命者と聖なる女、己に名の擧げられたる者

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 159]---------------------

及び匿名の者よ共に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

光榮、三者讃詞、三位に於て惟一なる神よ、光榮はに爾に歸す。爾は三光の本質にては父と子と聖神、各神なりと雖、神性にては惟一の神なり。

生神女讃詞、童貞女よ、昔モイセイはシナイ山に於て燃ゆれども焚かれぬ棘の中に神を宿しし爾の腹、無形の火を受けし者を預見せり。

共頌、山に於て立法者に火及び棘の中に預象せられたる、我等信者の救を爲す永貞童女の産を、黙さざる歌を以て崇め讃む。

 

   差遣詞

世を捨てて十字架を任ひし大數の克肖なる神父、致命者の隊、成聖者の會、及び聖なる女の群よ、我等を樂しましめ給へ、宜しきに合ひて爾等の至りて光明なる記憶を歌はん爲なり。

   光榮、今も、

我等は節制を以て輝きし捧神なる諸神父と神品首長、克肖なる女と聖致命者の會を歌の中に欣ばしく讃め揚げん、我等が聖にせられて、彼等のと生神女の祈とに由りて轍く齋の途を履まん爲なり。

 

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ、第八調。

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課160]---------------------

兄弟よ、我等衆信者は歌の中に節制せし克肖なる神父の大數を崇め讃め、歌頌を以て同心にハリストスの成聖者を讃め揚げん。蓋彼等は節制と潔き齋との中に生命を送りて、我等の爲にハリストスの福音を明にせり。我等又捧神にして光明なる女等を歌頌し、靈の中に勵みて彼等の度生に效はん、彼處に於て諸罪の赦を得ん爲なり。

兄弟よ、節制を以て明に輝きて、神聖に度生せし諸神父を讃め揚げん。蓋彼等は善く現世の生命を終へて、永遠の生命の喜に、彼處の盡きざる至福なる安息に移れり。我等は宜しきに合ひて徳行を以て直き途を行きし者を尊まん、彼等の祈に由りて神より慈憐を蒙り、彼處の絶えざる苦を免れて、永遠の光榮と歡喜とを獲ん爲なり。

敬虔に生を送りし衆成聖者の會、大數の義人、修齋者、及び克肖なる女よ、恩寵に促されて惟一の仁慈慈憐なる主に我等にも憐を垂れんことを祈り給へ、

我等が爾等の祈に因りて彼處の定罪を免れ、世世に樂しみて、絶えず讃揚の歌を生命を賜ふ主に奉らん爲なり。

信者よ、我等は神に適ふ今日の祭を喜びて、克肖なる諸神父、成聖者、修齋者、致命者、及び聖なる女の記憶を讃め揚げん。蓋彼等は實に朽つべき暫時の諸事を

---------------------[乾酪週間「スボタ」 早課 161]---------------------

輕じて、蜘蛛の巣及び芥蔕と爲せり、ハリストスと其國、及び彼の目未だ見ず、耳未だ聞かざる事を獲ん爲なり。神よ、彼等の祈に由りて我等の靈を滅亡より救ひ給へ。

   光榮、自調の讃頌、第六調。

克肖なる諸神父よ、爾等の諸徳の聾聞は全地に傳はれり、爾等は此等に由りて天上に於て己の勤勞の褒賞を獲たり。爾等は惡鬼の隊を破りて、天使等の品位に至れり、其生命に潔く效ひたればなり。主の前に勇敢を有ちて、我等の靈の爲に平安を求め給へ。

   今も、生神女讃詞。

生神女よ、爾は實の葡萄の枝、我等の爲に生命の果を結びし者なり。女宰よ、爾に祈る、克肖者及び衆聖人と共に我が靈の憐を蒙らんことを祈り給へ。

   大詠頌。發放詞。

          ~~~~~~

 

聖體禮儀には代式。又規程の第三及び第六歌頌。使徒の提綱、第四調、諸聖人は光榮に在りて祝ひ、其榻に在りて歡ぶべし。句、「其口には神の讃榮あり」。使徒は本日の、ロマ書百十五端。又克肖者の、ガラティヤ書二百十三端。「アリルイヤ」、第

---------------------[乾酪週間「スボタ」 聖體禮儀 162]---------------------

二調、「彼等は主の宮に植えられて」。句、「義人よ主の爲に悦べ」。福音經はマトフェイ十六端。又克肖者の四十三端。領聖詞、「義人よ主の爲に喜べ」「アリルイヤ」、三次。

          ~~~~~~

 

 

 乾酪週間の主日

 

   アダムの放逐。常例の徹夜

   「スボタ」の晩課

首誦聖詠の後に第一の「カフィズマ」全分を誦す。

「主よ爾にぶ」に十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の主日の三、アナトリイの三、及び三歌經の四、第六調。

我が主造物主は我を塵として地より取り、生命を施す氣を嘘きて活かし、我を尊くして地上の悉くの見ゆる者の宰と爲し、諸天使の同住者と爲せり。然れども詭譎なるサタナは蛇を器と爲して、食を以て我を誘ひ、神の光榮より離し、死に付して地獄に墜せり。求む主宰及び慈憐なる主として、復我を喚び還し給へ。

---------------------[乾酪週間主日 「スボタ」の晩課 163]---------------------

主よ、我不當の者は敵の勸を以て爾の神聖なる誡に背きしに因りて、神の織りたる衣服を剥がれて、無花果樹の葉及び皮の衣を衣せられ、面に汗して苦勞を以て得たる食を食はんことに定罪せられたり、土が詛はれて、我の爲に荊と薊とを生ずるを定められたればなり。然れども末の時に童貞女より身を取りし主よ、我を喚び還して、復樂園に入れ給へ。

至りて尊き樂園、輝ける華麗、神の造りし居處、絶えざる樂と喜、義者の光榮、預言者の装飾、聖者の住所よ、爾の葉の聲を以て萬有の造成主にりて、我が犯罪を以て閉ぢたる門を我が爲に啓け、復我に生命の樹に與りて、先に爾の内に受けし樂を得しめんことを求めよ。

アダムは誡に背くに因りて樂園より逐ひ出され、女の言に誘はれて樂より遠ざけられ、裸體にして樂園に向ひて坐し、哀しみて泣く。故に我等皆愼みて齋の時を迎へて、福音の傳を聞かん、此に依りてハリストスの惠を蒙りて、復樂園の住居を獲ん爲なり。

   光榮、第六調。

アダムは樂園に向ひて坐し、己の裸體を歎きて泣けり。哀しい哉我、兇惡の誘惑に迷

---------------------[乾酪週間主日 「スボタ」の晩課 164]---------------------

はされて、掠められ、光榮に離れたり、哀しい哉我、信じ易きに因りて裸體と爲り、今は爲す所を知らず。鳴呼樂園よ、我已に爾の樂を受くるを得ず、既に主我が神及び造成主を見るを得ず、蓋我が取られし所の土に之かん。仁慈洪恩なる主よ、爾に呼ぶ、我陷りし者を憐み給へ。

 

   今も、本調の第一の生神女讃詞。「穏なる光」。聖入。

   提綱、「主は王たり」。

 

   「リティヤ」には常例の如く本堂の聖人の自調の讃頌。

 

   光榮、第六調。

樂園の閉されし時、日は光線を隠し、月は星と共に血に變じ、山は驚き、岡は震へり。アダムは出でて手を以て膺を拊ちて云へり、仁慈なる主よ、我陷りし者を憐み給へ。

   今も、生神女讃詞。

生神女マリヤよ、我等奥密に爾を歌頌す、蓋爾は大なる王の寶座、天よりも廣き至聖なる幕、ヘルワィムの輅、セラフィムより上なる者、光榮の殿と現れたり、爾より身を取りし萬有の神が出でたればなり。彼に我等の靈の救はれんことを祈り給へ。

---------------------[乾酪週間主日 「スボタ」の晩課 165]---------------------

   挿句に八調經の讃頌

光榮、第六調、アダムは食の爲に樂園より逐ひ出されたり、故に之に向ひて坐し、歎き泣きて、傷感の聲を以て言へり、哀しい哉、我不當の者は何の禍に遇ひしか、主宰の一の誡に背きて、悉くの福を失へり。至聖なる樂園、我の爲に植えられ、エワの爲に閉されたる者よ、爾を設け、我を造りし主に我が爾の花に満てられんことを祈れと。故に救世主は彼に謂へり、我は我が造物の滅ぶるを欲せず、其救を得、及び眞實を知るに至らんことを欲す、蓋我に來る者は、我之を外に逐はざらん。

今も、生神女讃詞、同調、「至浄なる者よ、我の造成者及び贖罪者」。「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文の後に發放の讃詞、「生神童貞女よ、慶べよ」、三次。其他。順序の聖人の奉事を晩堂課に歌ふ。

 

          ~~~~~~

 

 

 

---------------------[乾酪週間主日 「スボタ」の晩課 166]---------------------

 

 乾酪の主日の早課

 

「主は神なり」に主日の讃詞二次、及び生神女讃詞。常例の聖詠誦文。多燭詞は、蕩子の主日に記ししが如し。「主よ、爾は崇め讃めらる」。金口の敎訓の誦讀。本調の品第詞。「凡そ呼吸ある者」、早課の福音經。「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。光榮、第八調、「生命を賜ふ主よ、我に痛悔の門を啓けよ」。今も、同調、「生神女よ、我を救の道に導けよ」。第六調、「神よ、爾の大なる憐に因りて我を憐み」。次に「我不當の者は多くの犯しし罪を念ひて」。(第三頁を看よ)。

規程は、八調經の復活の、十字架復活の、及び生神女の、共に八句に、又三歌經の六句に。ハリストフォル「プロトシンクリト」の作。第六調。

 

   第一歌頌

イルモス、「イズライリは陸の如く淵を踏み渡り」。

吾が慾に耽る靈よ來れ、今日爾の行の爲に泣きて、エデムに於ける始の裸體、爾が之に由りて福樂と絶えざる喜悦より逐はれたるを記念せよ。

萬物の造成主、萬有の主宰よ、爾は多くの仁慈慈憐に因りて、始めて我を塵より活かして、諸天使と偕に爾を歌はんことを敎へ給へり。

---------------------[乾酪週間主日 早課 167]---------------------

造成者及び主よ、爾は仁慈の豊なるに因りて、エデムに於て觀るに美しく食ふに善き樹を植えて、我に樂園の甘味を樂しまんことを命じ給へり。

光榮、哀しい哉、我が不當なる靈よ、爾はエデムに在る凡ての者を以て樂しむ權を神より受けて、唯智識の果を食ふ勿らんことを命ぜられたり、何ぞ神の法に背きたる。

今も、生神女讃詞、神を生みし童貞女よ、血族に由りてはアダムの女、恩寵に由りてはハリストス神の母として、エデムより逐はれたる我を今喚び還し給へ。

共頌に本規程の「イルモス」を歌ふ。

イズライリは陸の如く淵を踏み渡り、追ひ詰めしファラオンの溺るるを見て呼べり、凱歌を神に奉らん。

 

   第三歌頌

イルモス、「爾が信者の角を高うし」。

昔詭譎なる蛇は我が尊きを猜みて、エワの耳に譌を含め、彼より我は誘はれて、生命の面より逐はれたり、哀しい哉我や。

我は妄に手を舒べて、神が我に敢て食ふ勿らんことを命せし智識の木の果を

---------------------[乾酪週間主日 早課 168]---------------------

食へり、故に神聖なる光榮に遠ざかりたる難に遇へり。

 

光榮、哀しい哉吾が慾に耽る靈よ、如何ぞ爾は詭譎を悟らざりし、如何ぞ誘惑と敵の猜忌とを覺えざりし、智慧は昧まされて、爾の造成主の誡に背きたり。

生神女讃詞、我が恃頼と帲幪なる童貞女、獨爾の産を以て昔陷りしアダムの裸體を蔽ひたる潔き者よ、我に復不朽を衣せ給へ。

共頌、爾が信者の角を高うし、我等を爾が承認の石に竪めし仁慈の主、吾が神よ、爾と均しく聖なるはなし。

 

   坐誦讃詞、第四調。

アダムは不節制を以て主宰の誡を守らず、禁ぜられたる食に依りて樂園の樂より逐はれ、自ら取られし所の土を耕して、多くの汗を以て得たる食を食はんことに定罪せられたり。故に我等は節制を愛せん、彼の如く樂園の外に涕泣することなくして、其内に入らん爲なり。

 

   光榮、又、第四調。

今諸徳の時は現れたり、審判者は門の側に在り、憂ふる勿るべし。乃來りて齋を守り、涙と、傷感と、慈惠とを捧げて呼ばん、我等は海の砂よりも多く罪を行

---------------------[乾酪週間主日 早課 169]---------------------

へり、然れども衆人の贖罪主よ、我衆を赦し給へ、我等が不朽の榮冠を受けん爲なり。

   今も、生神女讃詞。

生神女よ、我等不當の者は常に黙さずして爾の權能を宣べん。蓋爾が主の前に立ちてらずば、孰か能く我等を諸の禍より助けん、孰か能く我等を自由の者として今に至るまで護らん。女宰よ、我等爾より離れざらん、爾は常に爾の諸僕を凡の苦難より救ひ給へばなり。

 

   第四歌頌

イルモス、「尊き敎會は浄き心より主の爲に祝ひ」。

我不當の者は爾主宰よりエデムの内に尊榮を得たりしに、哀しい哉、如何ぞ我は猜みたる惡魔に誘はれて、爾の顔より遠かりたる。

天使の品位よ、不幸にして誘はれたる我、美しき樂園及び彼處の植物の華麗を失ひて、神に遠かりたる者の爲に泣け。

福たる草場、神の植えたる園、美しき樂園よ、我無垢を剥がれて、神の光榮に疎くなりたる者の爲に、今目よりするが如く葉より涙を流せ。

光榮、最尊き樂園よ、我已に爾を見ず、爾の至りて樂しき神聖なる光明を悦ばず、

---------------------[乾酪週間主日 早課 170]---------------------

造成主の怒を蒙りて、裸體にして地の中に墜ちたるに因る。

生神女讃詞、聖なる女宰、昔アダムの犯罪を以て閉しし樂園の門を衆信者の爲に開きたる者よ、慈憐の門を我が爲に開き給へ。

 

共頌、尊き敎會は浄き心より主の爲に祝ひ、神に適ひて呼び歌ふ、ハリストスは吾が力と神と主なり。

 

   第五歌頌

イルモス、「至仁なる神の言よ、切に祈る」。

人を惡む敵は昔我が樂園に於ける福たる生命を猜みて、蛇の形にて我を躓かせ、我を永在の光榮に疏き者と爲せり。

我己を顧みて、犯罪に由りて我に成りし裸體の事を念ふ時、靈は歎きて泣き、目は涙を流して息まず。

光榮、我慾に耽る者は我が神の手にて土より造られ、又土に歸ることに定められしを聞けり。誰か我神より離れてエデムを地獄に代へたる者の爲に泣かざらん。

生神女讃詞、至りて無なる神の母よ、我等衆信者は爾を光榮の奥密の殿と傳ふ。故に、爾に祈る、潔き者よ、我陷りし者を樂園の殿に屬する者と爲し給へ。』

---------------------[乾酪週間主日 早課 171]---------------------

共頌、至仁なる神の言よ、切に祈る、爾に朝の祈を奉る者の靈を爾が神の光にて照して、爾罪の暗より呼び出す眞の神を知らしめ給へ。

 

   第六歌頌

イルモス、「誘惑の猛風にて浪の立ち揚がる」。

救世主よ、爾はエデムに於て、慈憐の主として、我に神の織りたる衣を衣せ給へり。然れども我不當の者は詭譎なる敵を信じ、爾の誡に背きて、裸體と爲れり、慾に耽りたる我が靈よ、爾は神より遠ざかり、不注意に因りて樂園の樂を失ひ、諸天使に離れ、朽壞に入りたり、鳴呼堕落や。

光榮、全能者神よ、爾の手の造物を憐みて宥め給へ。至仁なる主よ、祈る、我己を爾の天使を會より離したる者を棄つる勿れ。

生神女讃詞、神に召されたるマリヤ、萬有の女宰よ、萬衆の王、主及び贖罪者を生みし者として、我執はれて樂園の光榮より離れたる者を喚び還し給へ。』

共頌、誘惑の猛風にて浪の立ち揚がる世の海を觀て、爾の穏なる港に著きて呼ぶ、憐深き主よ我が生命を淪滅より救ひ給へ。

 

   小讃詞、第六調。

---------------------[乾酪週間主日 早課 172]---------------------

睿智を賜ひ、善智を與ふる主、無智の者の敎導師、貧しき者の、保護者たる主宰よ、我が心を堅めて悟らしめ給へ。父の言よ、爾我に言を與へ給へ、蓋視よ、我が口は黙さずして爾に呼ぶ、慈憐なる主よ、我陷りし者を憐み給へ。

 

   同讃詞

アダムは其時樂園に向ひて坐して泣き、手にて膺を拊ちて云へり、慈憐なる主よ、我陷りし者を憐み給へ。

アダムは彼を逐ひ出して、神聖なる園の門を閉ぢたる天使を見て、大に歎息して云へり、慈憐なる主よ我陷りし者を憐み給へ。

樂園よ、貧しくなりたる主と偕に悲しみて、爾の葉の聲を以て造成主に爾を閉さざらんことを祈れ、慈憐なる主よ、我陷りし者を憐み給へ。

至りて善、至りて聖にして、至りて富める樂園、アダムの爲に植えられ、エワの爲に閉されたる者よ、陷りし者の爲に神に祈れ、慈憐なる主よ、我陷りし者を憐み給へ。

 

   第七歌頌

イルモス、「天使は敬虔なる少者の爲に」。

萬世を宰り、爾の旨を以て我を造りし主よ、我昔猜みたる詭譎の蛇に由りて爾

---------------------[乾酪週間主日 早課 173]---------------------

を怒らせし者を棄つる勿れ。救世主神よ、祈る、我を喚び還し給へ。

哀しい哉、我光明なる衣に易へて、恥づべき衣服を衣せられて、我が滅亡の爲に泣く。至仁なる救世主よ、熱信に爾に呼ぶ、我を棄つる勿れ、祈る、神よ、我を喚び還し給へ。

光榮、至りて兇惡なる蛇は猜忌に由りて吾が靈に傷つけて、我を樂園より逐ひ出されたる者と爲せり。鳴呼慈憐なる救世主よ、我を棄つる勿れ、祈る、神として我を喚び還し給へ。

生神女讃詞、純潔なる者よ、爾の慈憐を以て我が熱切なるを受けて、我に諸罪の赦を與へ給へ。蓋我涕泣して切に爾に呼ぶ、至浄至仁なる者よ、我を棄つる勿れ、祈る、我を喚び還し給へ。

共頌、天使は敬虔なる少者の爲に爐に露を出さしめ、ハルデヤ人を焼く神の命は苦しむる者に呼ばしめたり、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

 

   第八歌頌

イルモス、「ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲に」。

獨仁愛なる主よ、爾は昔種種の恩賜を以て爾の手の造物を尊くし給へり。哀しい哉、詭譎なる蛇は其耳語にて我を誘ひて、眞の福を剥ぎたり。我が卑微なる靈

---------------------[乾酪週間主日 早課 174]---------------------

よ、何ぞ敵の勸に從ひて、神の命に背きし者となりたる。爾は常に諸天使と偕に神を讃榮せん爲に造られしに、哀しい哉爾神を褻せり。』

我等主なる父と子と聖神とを崇め讃めん。

慾に耽りたる我が靈よ、爾は昆蟲と獸との宰と爲りしに、如何ぞ靈を害する昆蟲と對話して、詭譎者を正直の者の如く共議者と爲したる、鳴呼爾の惑や。』

生神女讃詞、神の恩寵を蒙れるマリヤよ、我等爾を人體を取りし神の光明なる居處として讚め歌ふ。故に恃頼なき者の恃頼よ、我甚だしく諸慾に昧まされたる者を慈憐の光にて照し給へ。

我等主を讃め、崇め、伏し拜みて、世世に歌ひ讃めん。

共頌、ハリストスよ、爾は敬虔なる者の爲により露を注ぎ、義人の祭の爲に水より火を出せり、爾は一の望にて萬事を行ひ給へばなり、我等爾を萬世に讃め揚ぐ。

 

   第九歌頌

イルモス、「天使の品位すら見るを得ざる神は」。

智識の果はエデムに於て我が之を食ふ時に、味の甘き者たりしに、其末は苦き膽となりたり。哀しい哉我が慾に耽る靈よ、如何ぞ不節制は爾より樂園の食を奪ひた

---------------------[乾酪週間主日 早課 175]---------------------

る。

萬有の神、仁慈の主よ、憐を以て我が卑微を顧みて、我を神聖なるエデムより遠く遣す勿れ、我が出されし所の美しきを見て、涙を以て失ひし者を復得んことを務めん爲なり。

我はエデムの入門を守らん爲に命ぜられたるヘルワィムと焰の劍とを見て、悲しみ歎きて泣く。憐なる哉、斯の入門は悉くの犯罪者の爲に近づかれぬ者と爲れり、唯爾は、救世主よ、此を吾が爲に開くを能くす。

光榮、ハリストス救世主よ、我爾の慈憐の多きと爾の神聖なる脅の血とを恃と爲す。至仁の主よ、爾は此を以て人の性を聖にして、先にアダムの爲に閉されし樂園の門を爾に奉事する者の爲に開き給へり。

生神女讃詞、生神童貞女、聘女ならぬ聘女、生命の門、過られぬ者よ、爾の祈を以て先に我が爲に閉されし樂園の門を開き給へ、我が爾神に亜ぎて我の扶助者及び堅固なる避所たる者を讃榮せん爲なり。

共頌、天使の品位すら見るを得ざる神は、人見る能はず、唯爾至浄の者に藉りて人體を取りし言は人人に現れ給へり。我等彼を崇めて、天軍と偕に爾を讃め揚ぐ。

---------------------[乾酪週間主日 早課176 ]---------------------

 

   差遣詞は主日の。

   光榮、左の、

慈憐なる主よ、我不當の者は爾の誡に背きしに因りて、爾の光榮を剥がれて恥に満ち、樂園より逐ひ出されたり。哀しい哉我や、仁慈なる主よ、當然に爾の惠を失ひし者を憐み給へ、

   今も、又。

主よ、爾は先に木の果の食に縁りて樂園より逐ひ出されし者を爾の十字架と苦とを以て復其中に入れ給へり。救世主、我が神よ、十字架を以て我等を潔く齋を守らん爲に堅めて、神聖なる復活、救を得しむる「パスハ」に伏拜するを得しめ給へ、爾を生みし者の祈に因りてなり。

 

「凡そ呼吸ある者」に八調經の主日の讃頌四章、アナトリイの一、及び三歌經の左の自調の四。

 

第五調、アダムは泣きて呼べり、哀しい哉我や、蛇及び女は我より神聖なる勇敢を奪ひ、木の果の食は樂園の樂に疎き者と爲せり。哀しい哉、我辱を忍ぶ能はず、先には神の地上の悉くの造物の王たりしに、今は一の不義なる勸に由りて俘囚と爲れり、先には不死の光榮を衣たりしに、今は死に屬する者として殺されたる獸の皮

---------------------[乾酪週間主日 早課 177]---------------------

を衣と爲す。哀しい哉、我憂の中に誰をか恃まん、求む、爾我を土より造りし仁愛なる主、慈憐を衣たる者よ、敵の奴隷より我を解きて、救ひ給へ。

 

句、「主よ、我心を蓋して爾を讃め揚げ」。

諸徳の馳場は啓かれたり、勲功を立てんと欲する者は齋の勤勞を帯びて來れ、蓋法に遵ひて勤勞する者は正當に榮冠を冠らせらる。我等は十字架の武器を執りて敵と戰はん、信を以て壞られぬ牆と爲し、祈を以て盾と爲し、慈惠を以て兜と爲し、劍に易へて齋を執り、此を以て心より凡の惡を斷たん。斯く行ふ者は萬有の王ハリストスより審判の日に於て眞の榮冠を受けん。』

 

句、「至上者よ、我爾の爲に慶び祝ひ。」

第六調、アダムは食に縁りて戒を犯しし者として樂園より逐ひ出されたり、モイセイは齋にて靈の目を潔めて、神を見る者と爲れり。故に我等樂園の住者と爲らんと欲する者は益を爲さざる食を避け、神を見んことを望む者はモイセイの十日の四倍を齋し、祈冀願を以て潔く堪へ、靈の慾を鎭め、肉體の逸樂を遠ざけ、身を輕くし途を履みて、天上を目的とせん。彼處に天使の品位は言ひ盡されぬ主宰の華麗を仰ぎて、黙さざる聲を以て分れざる聖三者を歌頌す。彼處に於ては、神の子、

---------------------[乾酪週間主日 早課 178]---------------------

生命を施すハリストスよ、爾を頼む我等に天軍と共に喜ぶを得しめ給へ、爾を生みし母と、諸使徒、致命者、及び克肖者の祈に因りてなり。

 

句、「我が神よ、起きて爾の手を擧げよ」。

時は至れり、是れ屬神の勤勞の始、惡鬼に對する勝利、全備の武器たる節制、天使等の装飾、神の前の勇敢なり。蓋モイセイは此を以て造成主の對話者と爲りて、見えざる者の聲を耳に受けたり。主よ、此に因りて我等にも爾の苦及び聖なる復活に伏拜するを得しめ給へ、爾は人を愛しむ主なればなり。

   光榮、同上。

今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。前院に出でて常例の「リティヤ」、其中に光榮、今も、福音の讚頌を歌ふ、併せて第一時課を誦す。フェオドルストゥディトの敎訓の誦讀、并に發放詞。

          ~~~~~~

 

聖體禮儀には代式。本調の眞福詞六句に、又三歌經の規程の第六歌頌四句に。

提綱、第八調、主爾等の神に誓を作して償へよ。句、神はイウデヤに知られ、其名はイズライリに大なり。使徒はロマ書百十二端。「アリルイヤ」、第六調、至上者よ、

---------------------[乾酪週間主日 早課 179]---------------------

主を讃榮し、爾の名に歌ふは美なる哉。句、「爾の憐を朝に宣べ」。福音經はマトフェイ十七端。

   聖金口の聖體禮儀

   領聖詞、「天より主を讃め揚げよ」。

 

          ~~~~~~

 

 

 乾酪の主日の晩課

 

首誦聖詠の後に、「主よ爾にぶ」に、「我が靈を獄より引き出して」以下十句を立てて讃頌を歌ふ、八調經の順序の調の痛悔の四章、晩課の挿句に記す所のに、及び早課の挿句のに、(是より其他の主日にも聖齋の第五週間に至るまで此くの如し。「主よ、爾にぶ」には八調經の順序の調に依りて歌ふ。)又三歌經の三章、及び月課經の三章。

   讃頌、第二調。イオシフ師の作。

我等皆務めて節制を以て肉體を制し、潔き齋の神聖なる途を行きて、祈と涙

---------------------[乾酪週間主日 晩課 180]---------------------

とを以て我等を救ふ主を尋ね、惡を全く忘れて呼ばん、ハリストス王よ我等は爾の前に罪を犯せり、昔のニネワィヤ人の如く我等を救ひ給へ、慈憐の主よ、我等を天の國に與る者と爲し給へ。

主よ、我は凡の苦に當る吾が行を思ひて望を失ふ、蓋視よ我爾の尊き戒を棄てて、放蕩に我が生命を費せり。故に祈る、救世主よ痛悔の涙にて我を潔め、獨仁慈なる主として、齋と祈とを以て我を照し給へ、至仁なる衆人の恩主よ我を忌む勿れ。

   又、フェオドル師の作。同調。

我等は欣ばしく齋の時を始め、屬神の勤勞に己を委ねて靈を浄め、體を潔くし、食に於けるが如く凡の慾を齋して、屬神の諸徳を樂しまん、皆熱切に之に進みて、ハリストス神の至尊なる苦及び聖なる「パスハ」を神を以て喜びて見るを得ん爲なり。

 

次に月課經の聖人の讃頌三章、光榮は其自調の讃頌。若し之なくば、光榮、今も、生神女讃詞、月課經の同調に依る。香爐捧持の聖入、「穏なる光」。

大提綱、第八調、爾の顔を爾の僕に匿す勿れ、我哀しめばなり、速かに我に聽き給へ、我が靈に近づきて之を援けよ。第一句、神よ願はくは爾の助は我を起さ

---------------------[乾酪週間主日 晩課 181]---------------------

ん。第二句、苦しむ者は之を見て悦ばん。第三句、神を尋ぬる者よ、爾等の心は活きん。復大聲を以て「爾の顔を爾の僕に匿す毋れ」。

 

【注意】

知るべし、聖四旬齋の悉くの主日の晩課に聖入を行ふ、大提綱ある故なり。

   「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩」、三拜。聯

   挿句に自調の讃頌、第四調。

主よ、爾の恩寵は輝き、我等の靈の光照は輝けり。視よ、嘉く納るべき時、視よ、痛悔の時なり、我等は昏昧の行を除きて、光明の甲を衣ん、齋の大なる海を濟りて、我が救世主イイススハリストス、我等の靈を救ふ主の三日目の復活に至らん爲なり。

句、「天に居る者よ、我目を擧げて」。

   同上の讃頌

句、「主よ我等を憐み、我等を憐み給へ」、

致命者讃詞、爾の諸聖人の記憶に於て榮せらるるハリストス神よ、彼等の祈を納れて、我等に大なる憐を垂れ給へ。

光榮、若し之あらば、月課經の自調の讃頌、今も、生神女讃詞、月課經の調に依る。

若し之なくば、光榮、今も、生神女讃詞、同調。

---------------------[乾酪週間主日 晩課 182]---------------------

純潔なる神の母よ、天の品位は爾を讃榮す、蓋爾は父及び聖神と同永在にして、己の旨を以て天軍を無より造りし神を生み給へり。至りて無なる者よ爾を歌頌する正敎者の靈を壞滅より救ひて照さんことを彼に祈り給へ。』

「主宰よ、今爾の言に循ひて」。聖三祝文、三拜。「至聖三者よ」、「天に在す」。并に左の讃詞、第四調、「生神童貞女よ、慶べよ」、一拜を爲す。光榮、「ハリストスの授洗者よ」、一拜。今も、「聖使徒と諸聖人よ」、一拜。次に「生神女よ、我等爾が慈憐の下に」、拜なし。主憐めよ、四十次、温和平静の聲を以て誦す。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」、神父よ、主の名を以て祝讃せよ。司祭、永在の主ハリストス我等の神は恒に崇め讃めらる、今も何時も世世に。誦經、「アミン」。祝文、「天の王よ」。

次ぎて克肖なるシリヤのエフレムの祝文を誦し、并に三大拜を行ふ、主吾が生命の主宰よ、怠惰と、愁悶と、矜誇と、空談の情を我に與ふる勿れ。貞操と、謙遜と、忍耐と、愛の情を我爾の僕に與へ給へ。

鳴呼主王よ、我に我が罪を見、我が兄弟を議せざるを賜へ、蓋爾は世世に崇め讃めらる、「アミン」。

司祭、ハリストス神我等の恃よ、光榮は爾に歸す、光榮は爾に歸す。

司祭祝文を誦す、并に發放詞。

---------------------[乾酪週間主日 晩課 183]---------------------

晩堂課に小課を歌ふ、常例の如し、小拜及び齋時拜と共に。「至高には光榮神に歸し」に、三小拜。(徹夜ありしならば、生神女の規程を誦せず。)「常に福にして」。聖三祝文、三小拜、及び常例の讃詞。主憐めよ、四十次。「何の日何の時」。司祭、「神よ我等に恩を被らせ」。三大拜、聖エフレムの祝文、「主吾が生命の主宰よ」と共に、及び十二小拜。次に聖三祝文。「天に在す」の後に主憐めよ、十二次。祝文、「穢なく誘はるるなく」、及び「主宰よ、我等眠らんとする者に」、并に發放詞。

 

斯の週間の晩課及び晩堂課の奉事は已に録されし如く、斯く亦他の週間にも行ひて、聖四旬齋の第五の主日に至る、處處に挿入する所の異條は、各其處に於て之を示す。

 

         ~~~~~~

 

 

 

 

 

---------------------[乾酪週間主日 晩課 184]---------------------