なごや「聖歌」だより 8 2002年11月号
目で見る聖歌
「降誕祭 コンダク」
今、処女は永在の主を生む
地は載せがたき者に洞を献ず、
天の使い、牧者と共に讃め歌う、
博士は星に従って旅する、
蓋、我等のために永久の神、嬰児として生まれたり。
(楽譜の歌詞から。祭日経の祈祷文は若干異なる)
聖歌の「今処女は」は、歌で、主の降誕を語りますが、イコンは絵で物語ります。
ここには神の子を生んだばかりの処女マリア、家畜小屋の洞穴の、飼い葉桶の中の主イイスス、それを祝う天使と羊飼い、星に導かれてやってきた博士たちの姿も見えます。
コンダクの歌詞とぴったり一致します。
イコンに向かって祈るときは、聖歌のことばを思い出し、聖歌を歌うときはイコンに描かれたイメージを心に浮かべながら歌うことができます。
イコンも聖歌も、聖堂の祈りの中で、主の降誕のイメージを描き出し、はっきりと像を結ぶように共に働いています。
イコンは目で見る聖歌、聖歌は、耳で聞くイコンです。
コンダク もともとこんな歌だった・・・
前号でお話ししたとおり、昔コンダクはもっと長い歌でした。今歌われている部分はその序曲の部分だけで、後に24番まで続く長い詩がありました。今でも、1番だけは同讚詞(イコス)として祈祷書に残っています。
概略をお話ししますと、1番では主の降誕によって、旧約の成就としてベツレヘムに神の園が再び開かれたことが語られます。
2番からは処女なのに子を産んだマリアが「いったいどういう訳なんですか」と幼子のイイススに語りかけます。10番からは占星術の三博士とマリアの会話です。イオシフがいることに気づいた博士が、どうしてですか、と問いかけると、マリアはイオシフが天使のお告げを夢で見たことを話します。博士たちは続いて、彼らが東のハルデヤやバビロンから来たこと、救い主の赤子を殺そうと躍起になっているヘロデをあざむいてやってきたことを説明し、贈物を捧げます。
22から24では再びマリアが、我が子である救世主に私の願いを聞いて下さいと祈ります。「すべてのものを和解させてください。あなたは私からうまれたのだから。」「世を救って下さい。そのために来られたのだから。」「すべての業を修復して下さい。そのために現れ、光を放っておられるのだから。」最後に、これからエジプトへ逃げなければならないことが告げられます。
各節の最後には「永久の神、嬰児として生まれたり」が繰り返しとして歌われます。
大部分はソロ歌手が会話形式で歌い、繰り返し部分を参祷者全員で歌っただろうと言われ、正教会の神学的な理解をも含めて降誕の物語がドラマティックにしかも全員参加で歌われていました。
参考書:家入敏光訳「ローマノス・メロードスの賛歌」創文社、聖ロマンが書いたと言われるコンダクが全文載っています。降誕に関するものだけで4編あります。