なごや「聖歌」だより 16
2003年8月号
7月13日(日)聖歌の会から
私たちにとって
‘伝統’って何?
正教会は伝統を守る教会だと言われますが、その意味をもう一度皆さんと考えてみました。
正教会の伝統には、聖書や奉神礼(お祈り)、信経や教えなど教会が命がけで伝えてきた「聖伝」と、それにまつわるしきたりや慣習があります。
「聖伝」は、これを変えてしまったら、正教会でなくなってしまいますから変えることはできません。
しきたりや慣習は聖伝を生かすために工夫され付け加えられてきたもので、時代や場所によって変化してきたし、将来も変わる可能性があります。
ところで、伝統を用いて、正教会が伝えようとし続けているのは何でしょうか。ハリストスを「主」として生きること、ハリストスの「救い」です。伝統はそれを受け渡す入れ物です。ですから聖歌も聖堂も先人たちが工夫し続けてきた素晴らしい入れ物の一つで、しきたりや習慣も何らかの意味があって私たちに与えられているはずです。
ただ「昔からやってきたカタチを守っていればいい」ではなく、「これにはどんな意味があるのだろう」と深い意味をまず考えてみます。
伝統を守るにしても、あまりに不都合で何か工夫を加えるにしても「これは神の旨にかなうだろうか」と祈り、たずねる姿勢が大切ではないでしょうか。私たち一人一人が知恵を出し合い、耳を傾けあい、祈り合っていけば、必ず聖神が導いてくださるでしょう。
先人から渡されたものに「息」をふきこみ、主の救いを運ぶものとするのは私たち、私たちの教会です。伝統はハリストスのいのちを運ぶものであって、人を窒息させるものであってはなりません。