なごや「聖歌」だより 10 2003年1月号
目で見る聖歌
イコンは目で見る聖歌、聖歌は、耳で聞くイコンです。
お祈りの中で、聖歌もイコンも、ほかの様々な要素と協力して、神のイメージを実現しています。
歌のことばはイコンを説明し、イコンは歌のことばの内容を目に見える形で顕しています。音楽はことばを助けます。 詩の内容を理解して、心において、宝の玉をのせるように、一つ一つ、ことばをていねいに音にのせて歌います。心の入らない歌は何も伝えることができません。祈りのない歌は、神にも人にも届きません。
神現祭トロパリ 一調
主よ、爾がイオルダンに洗を受くる時、
聖三者の敬拝は顕(あらわ)れたり、
蓋 父の声 爾を證して至愛の子と名づけ、
聖神も鴿(はと)の形に顕れて言の確なるを示せり。
現れて 世界を照ししハリストス神よ、
光栄は爾に帰す。
口語訳
主よ、あなたがヨルダン川で洗礼を受けられたとき、至聖三者を敬拝することが宣言されました。
なぜなら、神・父の声はあなたのことを「愛する子」と呼び、聖神は鳩の形で現れて、そのことばの確かなことを示しました。
現れて、世界を照らすハリストス神よ、光栄はあなたに。
イイススは授洗イオアンから洗礼を受け、救い主としての生涯を始められます。
その時、神・父の声が聞こえ、聖神がハトの形で現れ、私たちの信ずる神が至聖三者の神であることが宣言されます。
その様子は4つすべての福音書に書かれています。お手持ちの聖書を繰ってみてください。
・・・・マタイ(マトフェイ)3章、マルコ1章、ルカ3章、ヨハネ(イオアン)3章・・・
カノン と イルモス
晩祷で行われる早課の後半にカノン(規程)という長い祈りが挿入されています。先日の降誕祭では「ハリストス生まる、崇め讃めよ」と歌いましたね。
カノンは9つの歌頌に区分けされていて、さらにその中に短い詩(トロパリ)が3つか4つ含まれます。
ややこしいので、図で、たとえてお話しします。9両編成の電車があって、各車両に1番から座席があると思ってください。1番の座席がイルモスと呼ばれ、2番以降にトロパリが並びます。(この場合トロパリは短い詩のことで、祭のメインテーマの、いわゆるトロパリとは別です。)
各歌頌には旧約聖書に基づいたテーマが決まっており、たとえば第1歌頌は、モーゼ(モイセイ)の出エジプトの話、第6歌頌ではヨナ(イオナ)が大魚に飲み込まれた話が歌われます。第9歌頌は生神女をテーマにしています。
イルモスはもともと「つなぎ」の意味で、
新約と旧約の「つなぎ」、また各歌頌を「つなぐ」役割も果たします。ロシアや日本ではイルモスだけ歌われ、トロパリは読まれますが、ギリシアでは全部歌われます。また復活祭では、全部歌われています。
第2歌頌は通常省かれて、大斎の平日の祈祷にだけ見られます。
祭日や主日が重なって、複数のカノンが組み合わされて、次々と行われることもあります。