なごや聖歌だより | |
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聖王ダヴィード 聖詠作者 |
2008年4月号 |
奉神礼(礼拝)と聖書
聖詠(詩編)に親しむ
67聖詠(68詩編)1-3
神は興き、其の仇は散るべし、
彼を悪む者は其の顔より逃ぐべし。
煙の散るが如く、爾彼等を散らし給え、
蝋の火に因りて融くるが如く、
斯く悪人等は神の顔に因りて亡ぶべし。
聖大土曜日の深夜、聖堂で夜半課の静かな祈りを終えると、十字架や凱旋旗を持って聖堂の外に出て「ハリストス救世主や」を歌いながら行進します。聖堂の門の前にもどると、司祭に続いて全員がパスハのトロパリ「ハリストス死より復活し」が3回歌われ、主の復活が高らかに宣言されます、司祭は続いて第67聖詠第1句「神は興き」を歌い、会衆は「ハリストス死より」を繰り返します。
行進して聖堂の門の前で聖詠とトロパリを歌うのは千五百年以上も前のビザンティン時代から続く伝統です。ソロの聖歌者(プロトプサルト)にリードされた会衆はこの勝利の聖詠とともにパスハのトロパリを歌いました。
ところでこの聖詠は、旧約聖書でモイセイ(モーセ)に率いられたイスラエルの民が約束の地に向かう行進が下敷きになっています。「主よ、立ち上がってください。あなたの敵は散らされ、あなたを憎む者は御前から逃げ去りますように。(民数記10:35)」イスラエルの民が約束の地へ向かう行進は、ハリストスの救いによって異邦の民の神の国への行進となりました。第67聖詠に記された救いの約束はハリストスによって成就しまいsた。ハリストスが死から「起き」、「敵」すなわち「死」はハリストスの「死を以て」ほろぼされたのです。神の国の開始が宣言されます。
同じ聖詠は「パスハのスティヒラ」でも歌われます。この華やかなスティヒラを歌うときパスハの祝いは最高潮に達し、金口イオアンの説教が読まれます。ちなみに「パスハのスティヒラ」は一般のスティヒラ5調のメロディと異なり、ズナメヌイのスティヒラ5調のメロディが基調になっています。復活祭という大祭に古いメロディが残りました。
トロパリとスティヒラの違い−−聖詠との組み合わせ方
トロパリもスティヒラも、4−5行の短い歌です。パスハのトロパリとスティヒラ、どちらも67聖詠の句とともに歌われます。トロパリはパスハのテーマソングとして、街の教会で会衆が歌う簡単なリフレインでした。スティヒラは7-8世紀に修道院で聖歌が歌われるようになって盛んに作られ編まれたもので、聖書の場面や復活のテーマをさまざまな角度から歌った歌が次々と挿入されます。
パスハのトロパリ(5調)
ソロ:「ハリストス死より復活し、死を以て死を滅ぼし、墓に在るものに生命を賜えり」3回
会衆:「ハリストス死より・・・」3回
ソロ:第1句「神は興き、其の仇は散るべし、彼を悪む者は其の顔より逃ぐべし」
会衆:「ハリストス死より・・・」
ソロ:第2句「煙の散るが如く、爾彼等を散らし給え」
会衆:「ハリストス死より・・・」
ソロ:第3句「蝋の火に因りて融くるが如く、斯く悪人等は神の顔に因りて亡ぶべし」
会衆:「ハリストス死より・・・」
ソロ:第4句「主はこの日を作れり、我等これを以て歓び楽しまん」
会衆:「ハリストス死より・・・」
ソロ:「光栄は父と子と聖神に帰す、今も何時も世々にアミン」
会衆:「ハリストス死より・・・」
ソロ:「ハリストス死より復活し、死を以て死を滅ぼし」
会衆:「墓に在るものに生命を賜えり」
パスハのスティヒラ(5調)
第1句「神は興き、其の仇は散るべし」
スティヒラ「聖なるパスハは、今我等に現れたり、新たなるパスハ、秘密のパスハ、至と尊きパスハ・・・」
第2句「彼を悪む者は其の顔より逃ぐべし」
スティヒラ「福音を伝える婦女たち。来たりて見たることをシオンに告ぐげし、ハリストスの復活の喜ばしき福音を我等より受けよ・・・」
第3句「「煙の散るが如く、爾彼等を散らし給え」
スティヒラ「香料を携ふる婦女たち、朝早く生命を賜う物の墓に来たりて、石に坐せる天使に遇えり・・・」
第4句「「主はこの日を作れり、我等これを以て歓び楽しまん」
スティヒラ「楽しき、パスハ、パスハは主のパスハ、至と尊ときパスハは我等に輝けり・・・」
「光栄は父と子と聖神に帰す、今も何時も世々にアミン」
スティヒラ「復活の日、我等祝慶に照らされて、互いに相抱くべし、我等を嫉むものにも言うべし、兄弟よ・・・」