第九編
 
二人或は多人の使徒の総奉事


第九編
 二人或は多人の使徒の総奉事

 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第四調。

至福なる門徒よ、爾等は人体を取りし言の実見者及び証者として讃揚せらる、蓋爾等は光る電(いなづま)の如く世界に現れ、神霊の山の如く
甘味(かんみ)を滴(したた)らし、常に流るる楽園の河の如く分れて、神聖なる水を以て異邦の諸教会に飲ます。

至福なる聖にせられし奥密者よ、爾等は属神゜の光照を耀かす光線として全世界に遣はされて多くの奇跡異能を顕し、ハリストスの機密の役
者(えきしゃ)と為り、神の録(しる)したる恩寵の石板にして、神より教へられたる法を載(の)する者と為りたり。

漁者(ぎょしゃ)は智者の驕慢と弁論者の雄弁とを辱かしめて、神の智慧の教へ、救の真理、恩寵の機密を宣ぶる福音者と為りて、人人を永遠
の福楽、諸天使と偕にする歓喜(よろこび)、神の光栄に與(あづか)る者と為せり。

  光栄、今も、生神女讃詞。

暮れざる日を耀かしし者よ、慶べ、神聖なる悟(さとり)を啓きし智慧よ、慶べ、地の四極を照しし光線よ、慶べ、実に諸善諸徳に満てらるる者よ
、慶べ、永遠の光の燈台よ、慶べ。

 十字架生神女讃詞

至浄なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脅(わき)の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を
知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我
爾が甘じて受くる釘殺を奇とす。

  もし之あらば、自調。光栄、第八調。

救世主の門徒よ、爾等は全地を周(めぐ)りて之を照し、爾等の教へを以て偶像の迷ひを稈(わら)の如く焚(や)き、異邦民を無智の深所(ふか
み)より出(いだ)して、神を識る智識に携へて救へり。今ハリストスに祈りて、審判の日に於て我等に慈憐を垂れんことを求め給へ。

  今も、生神女讃詞

至浄なる生神童貞女よ、爾に祈る者の声を容(い)れて、我等に諸罪の赦を賜はんことを絶えず主に祈り給へ。

  十字架生神女讃詞

主よ、日は爾義の日が木の上に懸けられしを見て光線を隠し、月は光を暗(やみ)に変じ、爾の至りて無玷(むてん)なる母は心刺されたり。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞第八調を誦すべし。

天の王は人を愛するに因りて地に現れ、人と偕に在(いま)せり、蓋浄き童貞女より身を取り、人の性を有ちて生れし者は、二つの性にて一つの
位(くらい)ある獨一子なり、故に我等彼が実に全き神及び全き人なるを伝へて、ハリストス吾が神を承け認(みと)む、夫を識らざる母よ、我が霊
の憐れみを蒙らんことを彼に祈り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。使徒の喩言(パリミヤ)、巻末に載す。

  挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第六調。

神学者及び見神者たる門徒よ、爾等は神の大いなる秘密の役者(えきしゃ)と為り、醫治(いやし)の恩寵を受けて、衆人の諸病を醫(いや)し
給ふ。

句 其声は全地に伝はり、其言は地の極(はて)に至る。

見神者たる主の使徒よ、爾等は我等の霊の為に大いなる避所(かくれが)と帲幪(おほひ)なり、悪神゜を遠ざくる者なり、故に我等常に爾等を
尊む。

句 諸天は神の光栄を伝へ、穹蒼(おほぞら)は其手の作為(しわざ)を誥(つ)ぐ。

至聖至福なる使徒よ、信を以て爾等を讃め揚ぐる者を凡の禍(わざはひ)と罪、悪鬼の毒害と服役より救ひ給へ。

  光栄、第四調。

使徒よ、爾等は神の定制に因りて恩寵の器と為り、異方言の恩賜を受けて、言と行ひとを以て諸民をハリストスを識る智識に導き、衆を照して、
イイススの真(まこと)の神にして我等の霊の救主なるを讃揚せしめ給へり。

  今も、復活の生神女讃詞。

至りて玷(きず)なき者よ、爾の諸僕の祈祷を顧みて、堪へ難き攻撃を我等より退け、諸々の愁苦(うれひ)を我等より遠ざけ給へ、我等は爾を
一つの堅固なる恃むべき錨(いかり)として有ち、爾の轉達を得たればなり。女宰よ、願はくは我等爾を呼ぶ者は恥を蒙らざらん、遄(すみやか)に
我が切なる祈りを應(かな)へ給へ。蓋我等中心より爾に籲(よ)ぶ、女宰、衆人の佑助(たすけ)と、歓喜(よろこび)と、庇護(おほひ)と、我等の
霊の拯救(すくひ)なる者よ、慶べ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

生神女よ、我等爾を倚頼(たのみ)及び轉達と有ちて、諸敵の悪謀を懼れざらん、爾我が霊を救ひ給へばなり。

  十字架生神女讃詞

至聖なる女宰よ、爾言ひ難く爾より輝き出でし言が不法者より定罪せられし者として十字架に挙げられ、手と足とに釘うたれ、酢と膽(い)とを飲
ませられ、脅(わき)を刺されたるを見し時、シメオンの言ひし如く、剣(つるぎ)は爾の心を貫きて、爾哭き號(さけ)びて、母として呼べり、甘愛なる
子よ、此れ何の新たなる秘密ぞや。

  讃詞(トロパリ)、第三調。

聖なる使徒等よ、仁慈なる神に祈りて、我等の霊に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞、讃詞(トロパリ)の調に据る。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

聖神゜を受けし使徒の会は至上なる神より奥密に世界に遣されて、罪悪の奴隷に苦しむ者を解き、三位にして一性なる神を伝へ、エムマヌイル
が神妙に人体を取りしことを智慧を以て録(しる)せり。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

童貞女よ、我等爾をモイセイが見たる焚(や)かれぬ棘(いばら)、神の山、聖なる雲、潔き幕、神に悦(よろこ)ばるる筵(えん)、高き王の宮、光
明なる過(とほ)られぬ門として歌ふ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

主の使徒、天の秘密者よ、爾等は輝く光線たる神聖の伝道の教へを以て星の如く地の四極を照し給ふ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等信者は爾生神女を苦難に遭ふ者の確かなる保護、我等を助けて神の前に轉達する者、我等を朽壊より救ふ者として讃め揚ぐ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

ハリストスの聖なる使徒等、己の教へを以て全世界を照し、四極を率いてハリストスに就かしめし者よ、我等爾を讃揚す。

  抜粋聖詠

「諸天は神の光栄を伝へ、穹蒼は其手の作為を誥ぐ。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第三調。

撫恤者(ぶじゅつしゃ)の神聖なる角(らっぱ)よ、救ひの言の氣(いき)を嘘(ふ)きて、世界に唱へ、迷ひの幽暗(くらやみ)の中に眠る者を起して
、神を知る智識に導き給へ、神聖なる光の使徒等よ、我等の霊の救はれんことをハリストス神に祈り給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

神の性に離れずして、爾の腹の中に肉体と為り、神たるを変(へん)ぜずして人と為りし惟一の主は、生れし後にも爾母童貞女を生るる前の如く
純潔なる者として護り給へり、熱切に彼に大いなる憐れみを我等に賜はんことを祈り給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)

其声は全地に伝はり、其言は地の極(はて)に至る。

句 諸天は神の光栄を伝へ、穹蒼(おほぞら)は其手の作為(しわざ)を誥(つ)ぐ。

  「凡そ呼吸ある者。」 次に福音経、一人の使徒と同じ、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

ハリストスの教会に使徒の最(いと)尊き祭、我等衆の救ひを助くる者は至れり、故に我等祝ひて彼等に呼ぶ、幽暗(くらやみ)に在る者に神゜霊
の日の光線を施しし燈(ともしび)よ、慶べ、神聖なる教への動きなき基(もとい)たる使徒等、ハリストスの友、貴き器よ、慶べ、見えずして我等の
中に来りて、歌を以て爾等の祭を讃め揚ぐる者に無形の賜(たまもの)を施し給へ。

  規程(カノン)、第四調。

  第一歌頌

イルモス 古(いにしえ)のイズライリは足を濡らさずして海の紅(くれない)の淵を渡り、野にてモイセイの十字形の手にてアマリクの力に勝てり。

ハリストスよ、使徒の会を歌はんことを望む我に、彼等の祈祷に因りて、神として至聖神゜の光線と爾の睿智の光とを與へ給へ。

ハリストスよ、見神者たる爾の尊き使徒等は爾の力と恩寵とに堅められて、諸敵の力を破れり。

主宰よ、光栄なる使徒等は爾の名に因りて醫治(いやし)を施して、異邦人の群(むれ)を爾の智識を以て執(とら)へ、爾の光を以て照せり。

至栄なるハリストスの使徒等は天の睿智に教へられて、熱心の伝道を以て不虔なる智者の多弁を愚(ぐ)と為したり。

  生神女讃詞

至浄なる童貞女母よ、爾は至聖なる三者の一位を生めり、彼は父の善旨(ぜんし)と至聖神゜の行動とに因りて、爾より我等に肖(に)たる身を
取りて現れ給へり。

  第三歌頌

イルモス ハリストスよ、爾の教会は爾の為に楽しみて呼ぶ、主よ、爾は我が能力(ちから)と避所(かくれが)と堡障(かため)なり。

ハリストスの伝道師よ、爾等は地上に天の尊き教へを福音し、火の舌を以て之を証(しょう)して伝へ給へり。

主宰よ、爾は己の門徒を四極の為に爾の光栄を伝ふる霊智なる天と為し給へり。

睿智者よ、爾等は天に録され、ハリストスの同住者と現れて、今愛を以て爾等を尊む者を護り給へ。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、最(いと)高きに在(いま)す主は我等の中に居りたり、蓋爾より種なく身を受けて現れ給へり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

光栄なる使徒よ、爾等は神の言の網を以て霊智なる魚(うを)を取りて、之を初物として我等の神に献げ、ハリストスの創(きず)を衣(き)んと欲
して、彼の苦しみに效(なら)ふ者と為れり。故に我等集まりて、職として至りて欣(よろこ)ばしき爾等の記憶を尊みて、同心に爾等に呼ぶ、愛を
以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦を賜はんことをハリストス神に祈り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等萬族は爾童貞女、女の中に獨種なく身にて神を生みし者を讃揚す、蓋神性の火は爾の内に入り、爾は造成者及び主を幼児(をさなご)
として乳(ち)にて養ひ給へり、故に天軍及び我等人類は宜しきに合(かな)ひて爾の聖なる産を讃栄して、同心に爾に呼ぶ、ハリストス神に祈り
て、信を以て爾の至聖なる産に伏拝する者に諸罪の赦を賜はんことを求め給へ。

  十字架生神女讃詞

牝羊は羔(こひつじ)及び牧者并(ならび)に贖罪主を十字架の上に見て、泣き號(さけ)びて、悲しく呼びて曰へり、恒忍(ごうにん)なる主よ、世
界は爾に由りて贖罪を獲て喜び、我は爾が大仁慈に由りて釘せらるるを忍ぶを見て、心燬(や)くが如し、慈憐の淵及び尽ききざる泉よ、慈憐を
垂れて、信を以て爾の神聖なる苦しみを歌ふ者に諸罪の赦しを與へ給へ。

  第四歌頌

イルモス 教会は爾義の日が十字架に挙げられしを見て、竝(なら)び立ちて正しく呼べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。

神聖なる使徒の宣伝の言は火の如く全地を過(とほ)りて、多種の迷ひを焚(や)き、恩寵を以て敬虔者の会を照せり。

神を顕す光体たる主の門徒は恩寵の光線と伝道の光照とを以て昧(くら)みたる無神の世界を照せり。

至りて讃美たる者よ、爾等は神霊の日の聖なる光線に照され、日の如く世界の中に輝きて、神聖なる光を以て迷ひの黒暗(くらやみ)を払ふ。

言よ、爾の実見者は爾の十字架を能力の杖と有ちて、生命の塩海(しほうみ)を切りて、馬の如く多神の水を乱(みだ)す。

  生神女讃詞

ハリストスよ、爾諸王の王を載する活ける天たる至浄なる童貞女、諸徳にて輝ける者は今生神女として讃美せらる。

  第五歌頌

イルモス 我が主よ、爾は光、信じて爾を崇め歌ふ者を闇(くら)き無智より引き出だす聖なる光にして、世界に来り給へり。

主よ、爾は神聖にして睿智なる爾の役者(えきしゃ)を世界の中に光と為して、爾暮れざる光を衆に知らしめ給へり。

使徒よ、爾等は明(あきらか)に凡の徳を修めて、悪鬼の諸々の悪計の網を破り給へり。

使徒よ、爾等は火の舌を以て伝へて、神性の惟一に於て我等の為に三位の煇煌(かがやき)を顕し給へり。

  生神女讃詞

神の聘女よ、我等は爾を敵に対して勝たれぬ武器と有ち、爾を堅固(かため)及び我等の救ひの倚頼(たのみ)として獲たり。

  第六歌頌

イルモス 憐に由りて爾の脅(わき)より流れし血にて悪魔の祭の血より浄められし教会は爾に呼ぶ、主よ、讃揚(ほめあげ)の声を以て爾を祭らん


救世主よ、爾は睿智と異能とを以て己の門徒を固め、彼等をエルリンの空弁(くうべん)より最(いと)強き者と為して、其迷ひを為す教へを破り給
へり。

救ひの泉より豊かに流るる睿智の神聖なる河は教会の悉くの谷を救ひの水にて満てたり。

至りて讃美たる者よ、爾等は活ける星と現れて、光る光線を以て凡の昏(くら)き迷ひを散じて、神を知る智識の光照を輝かせり。

  生神女讃詞

嗚呼、神の母よ、諸王の王は爾が純善完美なる鴿(はと)の如く、最(いと)麗しき谷の百合花(ゆり)の如きを見て、爾の内に入り給へり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第四調。
 
主の睿智なる使徒よ、爾等はハリストスの葡萄の枝と現れ、諸徳の房を生じて、我等の為に救ひの酒を流す、我等之を飲み、楽しみに盈(み)
てられて、爾等の尊き記憶を祭る、求む、今我等の為に大いなる恵みと諸罪の赦しとの賜はらんことを祈り給へ。

  同讃詞(イコス)

見神者たる主の使徒よ、爾等は萬有の主宰の門徒として、爾等の祈祷の網を以て我が卑微(ひび)なる霊、悪鬼の謀(はかりごと)の網に執(と
ら)はれたる者を諸罪の深所(ふかみ)より引き出(いだ)し給へ、我吾が生命の餘日を潔く過ぎて、愛を以て爾等を歌ひ、爾等が昧(くら)まされ
たる者を照して、敬虔に聖三者を尊まんことを教へて、地上に送りし無玷(むてん)なる度生を讃栄せん為なり。

  第七歌頌

イルモス アウラアムの少者はペルシヤの爐(いろり)に在りて、焔(ほのほ)よりも強く敬虔の愛に爇(や)かれて呼べり、主よ、爾が光栄の宮に於て
爾は崇め讃めらる。

至仁なる主よ、爾は本性の神にして、己の門徒を子と為し、愛を以て父の嗣業を嗣ぐ者と為して、爾神及び主宰と偕に常に居るを得しめ給へり


言よ、爾は己の神聖なる門徒に智慧の富、心の廣き、舌の爽やかなるを賜ひて、彼等を四極に天国の福音を伝へん為に遣し給へり。

使徒よ、爾等は神の光の雲と現れて、衆の為に生活の水を降らして呼ぶ、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、爾は神の光栄に飾られて、古世より獨神の言を孕みたる母童貞女と現れ給へり、純潔なる女宰よ、爾は女の中に祝福せられた
り。

  第八歌頌

イルモス ダニイルは獅子穴に在りて手を伸べて、獅子の口を閉ざし、敬虔の篤き少者は徳を帯び、火の力を消して呼べり、主の悉くの造物は主
を崇め讃めよ。

ハリストスの神聖にして睿智なる使徒の会は聖神゜の火を以て悪鬼の多種の拝まるる所を稗(ひえ)の如くに燬(や)き、信者の心を照して呼べり
、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。

我等同心にハリストスの神聖なる門徒、我等の為に神の命(めい)を轟かしし使徒、信者の港なる者、人類の一般の恩者、救世主の役者(え
きしゃ)を尊まん。

我等は最(いと)尊くして大いなる諸徳の器、人類の初物、伝道の角(らっぱ)、不朽の生命の流れ、神の発せし電(いなづま)、醫治(いやし)の
泉、福音者の美(うるは)しき足を尊まん。

  生神女讃詞

円満なる者は我等の為に卑微(ひび)なる者と為れり、我等が其円満に與らん為なり、蓋神の聘女(よめ)マリヤよ、囲まれぬ者は父の懐(ふとこ
ろ)を離れずして、爾の至浄なる胎に入りて、身を取り給へり、故に我等皆爾を崇め讃む。

  第九歌頌

イルモス 童貞女よ、手にて斫られざる隅石ハリストスは、爾斫られざる山より斫り分けられて、離れたる性を合せ給へり、故に我等楽しみて、爾
生神女を崇め歌ふ。

主宰より諸罪の縲絏(なはめ)を解く権を受けし見神者よ、慈憐を以て爾等を歌ふ者の諸罪を潔めて、之に救を得しめ給へ。

光栄なる使徒よ、爾等は樓(たかどの)に在りて実体に爾等に現れし聖神゜の光照を受けて、高き教を伝ふる力に満てられたり、故に今宜しき合
(かな)ひて讃美せらる。

ハリストスは爾等逝世(せいせい)せし己の友に凋(しぼ)まざる栄冠を與へ、神の光栄を見るを賜ふ、彼に今悉くの教会を救はんことを祈り給へ


生神女讃詞

母童貞女よ、言にて萬有を飾りたる主は肉体を以て来らんと欲して、獨爾を衆人より至聖なる者と見て、爾の内に入りて、爾を真(まこと)の生
神女と為し給へり。

  光耀歌

人人よ、来りて、神聖なる歌を以てハリストスの使徒、教への宣伝者を歌はん、彼等はハリストスに我等の霊の為に祈り給へばなり。

  生神女讃詞

至聖至潔なる女宰、獨婚姻に與らざる童貞女、我等の恃頼(たのみ)と拯救(すくひ)なる者よ、爾より生れし我等の神に世界を誘惑(いざなひ
)と、災禍(わざはひ)と、憂愁(うれひ)より救はんことを祈り給へ。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

主よ、爾は撫恤者の光照を以て爾の使徒を照して、之を燈(ともしび)と為し、爾の睿智の無形の光を以て教へを堅むる者と為し給へり、故に主
宰よ、我等爾の言ひ難き仁愛に伏拜す。二次

主よ、使徒の祈祷に因りて、爾の牧群を守りて、諸敵の誘惑(いざなひ)に悩まされぬ者と為し給へ、蓋爾は仁慈仁愛の主として、尊き血を以て
之を悪敵の奴隷より救ひ給へり。

神聖なる使徒、聖三者の前に立つ者、我等の霊の為に祈祷する者よ、爾等は尊き石として、教会の基に置かれて、神を識る確なる智識を以
て全地を照し給へり。

  光栄、第四調。

至りて讃美たる者よ、爾等は翼ある鷲として全地を巡りて、恩寵に由りて尊き教を播き、迷ひの稗(ひえ)を抜きて、豊かなる実を生ぜり、無形の
倉は之を受けて、世世に不死なる耕作者の為に護る。

  今も、生神女讃詞。

生神女よ、我等爾を倚頼(たのみ)及び轉達と有ちて、諸敵の悪謀を懼れざらん、爾我が霊を救ひ給へばなり。

  十字架生神女讃詞

至淨なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脅(わき)の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を
知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我
爾が甘じて受くる釘殺を奇とす。




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