第八編
一人の使徒の総奉事
第八編
一人の使徒の総奉事
晩課
「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第八調。
使徒よ、我等何を以て爾を称へんか、天とせんか、爾神の光栄を顕したればなり、川とせんか、奥密に造物に飲ますればなり、星とせんか、教会
を照せばなり、爵(しゃく)とせんか、聖なる飲料(のみもの)を流せばなり。ハリストスの至りて親しき友、無形の者の同住者よ、我等の霊の救ひの
為に祈り給へ。
光栄なる使徒、神の実見者よ、爾の足、能(よ)く伝教の道を履(ふ)み、神聖なる睿智の廣きを以て諸敵の途(みち)を狭(せば)むる者は美(
うるは)し。福たる者よ、肉体に現れし言は爾を門徒と選びて、至栄の者と為せり、彼に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。
実に神の言を宣べたる使徒よ、爾は諸敵に傷をつけて、傷つけられし霊に醫治(いやし)を与ふる光れる矢としてハリストスより遣(つかは)されたり
。故に我等職として爾を讃揚して、今日爾の聖なる慶賀を行ふ、我等の霊の救はれんことを祈り給へ。
光栄、今も、生神女讃詞。
至浄なる者よ、我は幾千度(いくちたび)我が諸罪の為に痛悔を為すを約したれども、我が耽りたる諸悪の風習(ならはし)は我を離れず、故に
我は爾に呼び、俯伏して祈る、女宰よ、爾我を此くの如き悪逆より脱れしめて、救ひを得しむる善事に我を導き給へ。
十字架生神女讃詞
爾羔(こひつじ)及び牧者を生みし牝羊は爾が木の上に在るを見て哭き母として爾に呼べり、至愛なる子よ、奈何(いかん)ぞ爾は十字架の木に
懸けられたる、恒忍(ごうにん)なる言よ、奈何ぞ爾の手爾の足は不法者より釘せられたる、主宰よ、奈何ぞ爾の血を流したる。
もし之あらば、自調。光栄、第六調。
光栄なる使徒(某)よ、恩寵は爾の口より流れて、爾はハリストスの教会の燈(ともしび)と為りて、霊智なる羊に一体の三者、惟一の神性を信
ずることを教へ給へり。
今も、生神女讃詞
至浄なる生神童貞女よ、爾に趨り附く者は一(いつ)も恥を蒙りて出づるなし、乃ち恩寵を求めて、有益なる願ひに應(かな)ふ恩賜を受く。
十字架生神女讃詞
純潔なる者は爾が十字架に懸けられしを見て、母として哭きて呼べり、吾が子及び吾が神、吾が甘愛なる産よ、如何ぞ爾は恥づべき苦しみを忍
ぶ。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞第六調を誦すべし。
至聖なる童貞女よ、誰か爾を讃美せざらん、誰か爾の至りて浄(きよ)き産を歌はざらん、世の無き先に父より光る獨生の子は爾浄き者より言ひ
難く身を取りて出で、本性の神は我等の為に本性の人と為れり、其位(くらい)一つにして相分れず、其性二つにして相失はず、浄くして至りて
福(さいはひ)なる者よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祷り給へ。
聖入。本日の提綱(ポロキメン)。使徒の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。
挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第四調。
光栄なる使徒よ、爾はハリストスの名に因りて悪鬼の上に勝たれぬ権及び力を受けて、其暗黒(あんこく)の首領を逐ひ、地を周(めぐ)りて、日
の如く之を照し、諸方に教へて、先(ま)づハリストスの救ひを施す降臨を伝へ給へり。
句 其声は全地に伝はり、其言は地の極(はて)に至る。
(某)よ、爾は度生を神の律法に應(かな)はしめて、善なる人と為り、本性と恩寵とに因りて、神の子と称(とな)へられ、良善なる風習と潔浄な
る智慧とに由りてハリストスの親しき門徒と為りたり。
句 諸天は神の光栄を伝へ、穹蒼(おほぞら)は其手の作為(しわざ)を誥(つ)ぐ。
使徒(某)よ、爾は神の定制に因りて恩寵の器(うつは)と為り、異方言の恩賜を受けて、言と行ひとを以て諸民をハリストスを識る知識に導き、
衆を照して、イイススの真(まこと)の神にして我等の霊の救主なるを讃揚せしめ給へり。
光栄、第二調。
使徒(某)よ、爾は地上の事を遺(す)てて、ハリストスに従ひ、聖神゜に印證せられて、彼より亡ぶる異邦民の中(うち)に人人を神を識る光に導
かん為に遣され、神聖なる爾の勤労を終へ、種種の苦難を経たる後に爾の霊をハリストスに付(わた)せり。至福なる者よ、我等に大いなる憐れ
みを賜はんことを彼に祈り給へ。
今も、復活の生神女讃詞。
嗚呼新(あらた)なる奇蹟、古(いにしへ)の悉くの奇蹟に勝る者や、誰(たれ)か夫なき母が萬物を有つ主を生みて、其手に抱(いだ)くを知りた
る、此の産は神の旨なり、至りて潔き者よ、爾が嬰兒(をさなご)として己の手に抱きし主の前に母の勇(いさみ)を以て、我等爾を尊む者の霊を
憐みて救はんことを常に祈り給へ。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。
童貞女は善き果を結ぶ橄欖(かんらん)の樹として、爾生命の果を生ぜり、世界の為に大にして豊かなる慈憐の果を結ばん為なり。
十字架生神女讃詞
イイススよ、婚姻に與らざる者は爾が十字架の木に釘せられしを見て、哭きて云へり、甘愛なる子よ、何為(なんす)れぞ我爾を生みし者を獨遺
したる、無原なる父の近づき難き光なる者よ、亟(すみやか)に光栄を獲よ、爾の神聖なる苦(くるしみ)を讃栄する者が神聖なる光栄を獲ん為
なり。
讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第三調。
聖なる使徒(某)よ、仁慈なる神に祈りて、我等の霊に諸罪の赦を賜はんことを求め給へ。
光栄、今も、生神女讃詞、讃詞(トロパリ)の調に据る。
早課
「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。
第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第二調。
ハリストス神よ、光栄なる使徒は諸民を漁(ぎょ)して、地の四極に爾と父と聖神゜とに伏拝するを教へたり、獨仁慈にして人を愛する主よ、彼に
由りて爾の教会を堅めて、信者に爾の祝福を降し給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
生神女永貞童女よ、我等は爾に依りて神の性に與(あづか)る者と為れり、蓋爾は我等の為に身を取りし神を生み給へり、故に我等皆職として
敬虔に爾を讃め揚ぐ。
第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
光栄なる使徒(某)よ、義の日ハリストスは爾を光線として出(いだ)して、全地を照せり、凡そ信を以て爾の聖なる記憶を行ふ者を爾は己の神
聖なる祈祷にて輝かし、神聖なる暮れざる光にて照し給ふ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
爾を頼む者の恥を得ざる倚頼(たのみ)、獨性に超えて身にてハリストス我等の神を生みし者よ、聖使徒と偕に彼に祈りて、世界に諸罪の潔浄
(きよめ)、我等衆に終りの先に度生の更新(あらため)を賜はんことを求め給へ。
附唱
聖なる使徒(某)よ、我等爾を讃揚して、爾がハリストスの福音の為に受けし苦難勤労を尊む。
抜粋聖詠
「諸天は神の光栄を伝へ。」
多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。
光栄なる使徒よ、爾は神の言の網を以て霊智なる魚(うを)を取りて、之を初物として我等の神に献げ、ハリストスの創(きず)を衣(き)んと欲し
て、彼の苦(くるしみ)に效(なら)ふ者と為れり。故に我等集まりて、職として至りて欣(よろこ)ばしき爾の記憶を尊みて、同心に爾に呼ぶ、愛を
以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
我等は天の門と約匱、至聖なる山、光れる雲、焚(や)かれぬ棘(いばら)、霊智なる楽園、エワの赦たる者を歌はん、彼は全世界の大いなる器
にして、其中に世界の為に救ひと古(いにしへ)の諸罪の赦とは行はれたり。故に我等彼に呼ぶ、敬虔に爾の至聖なる産に伏拝する者に罪過の
赦を賜はんことをハリストス神に祈り給へ。
品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。
提綱(ポロキメン)
其声は全地に伝はり、其言は地の極(はて)に至る。
句 諸天は神の光栄を伝へ、穹蒼(おほぞら)は其手の作為(しわざ)を誥(つ)ぐ。
「凡そ呼吸ある者。」 次に福音経、巻末に載す。
第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。
聖神゜の恩寵を蒙りて聖にせられたる使徒の会の共與者と為りし(某)よ、爾は昔天より迅(はげ)しき風の中に降(くだ)りたる火の舌を受けて、
異邦民の棘(いばら)たる無神を焚(や)き給へり。伝道師よ、ハリストス神に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。
規程(カノン)、第八調。
第一歌頌
イルモス 人人よ、イズライリを奴隷より釈(と)きたる我が奇異なる神に讃詠を献(たてまつ)りて、凱歌(かちうた)を歌ひて呼ばん、我等爾惟一の
主宰を歌頌せん。
爾を栄して己の門徒と為しし主宰の前に最(いと)高きに立てる(某)、奇異なる使徒よ、吾が霊を照して、爾の神聖なる記憶を歌はしめ給へ。
使徒よ、ハリストス獨義なる主は、其義なる定制を以て爾に豊かなる恩賜を與へて、爾を己の至りて光明なる門徒と為し給へり。
使徒よ、爾は天より爾に降(くだ)りし聖神゜の光線を受けて、火の如き言を有つ者と為りて、凡の多神の迷ひを焚(や)き給へり。
生神女讃詞
救世主よ、爾は婚姻に與らざる至聖至潔なる童貞女の腹に入り、人の性を衣(き)て、死と朽壊とに属する我を不死不朽の者と為し給へり。
第三歌頌
イルモス 主の如く聖なるはなく、神の如く義なるはなし、萬物彼を歌ひて云ふ、主よ、爾の外に義なる者なし。
聖なる使徒(某)よ、爾は直(ただち)に救世主より天上の光照を受けて、人体を取ることの神聖なる奥密を明(あきらか)に識り給へり。
奇異なる使徒よ、無原にして実在なる言は爾己の役者(えきしゃ)を豊かに神性の恩寵の輝ける光にて照し給へり。
至栄至福なる使徒よ、爾は聖神゜の光照と行動とに燃やされて、耀ける矢の射らるるが如く、ハリストスより遣はされて、爾の教を以て世界を照し
給へり。
生神女讃詞
生神女よ、預言者は爾を豫象して純金の燈台と為せり、蓋爾は暮れざる光たるハリストス我等の神、神性の光線にて世界を照す主を己の手
に載せ給へり。
坐誦讃詞(セダレン)、第三調。
使徒(某)よ、爾は救ひを施す命(めい)を受けて、聖神゜の光照を以て多神の幽暗(くらやみ)を払ひ、信者の心を照し給へり。睿智者よ、ハリス
トス神に我等に大いなる憐れみを賜はんことを祈り給へ。
光栄、今も、生神女讃詞。
人は救ひを得(う)る所に義に合(かな)ひて趨り附く、生神女よ、爾の如き避所(かくれが)、我等の霊を蔽(おほ)ふ者は亦(また)何所(いづこ)
にかあらん。
十字架生神女讃詞
生神女よ、我等は爾の子の十字架を能力の杖として得て、此を以て諸敵の驕りを破り、愛を以て絶えず爾を讃め揚ぐ。
第四歌頌
イルモス 言よ、預言者は樹蔭(こかげ)繁き山たる惟一の生神女より爾が身を取らんと欲するを神妙に見て、畏れを以て爾の能力(ちから)を讃
栄せり。
福音の恩賜の宝蔵にして、恩寵に満てられたる至福なる(某)よ、爾は世界の光、全地の塩と為り給へり。
奇異なる者よ、爾は世俗の諸事を捨てて、無形の光を観るを得、其役者(えきしゃ)と為りて、之を人類の中に耀かし給へり。
生(いのち)を施す主の門徒と為りし者よ、爾が豊かに受けたる永久の生命の力を以て我等の内に棲む罪を殺し給へ。
生神女讃詞
至浄なる童貞女より我等の身を受けし主宰よ、爾は本性に由りて父と均(ひと)しき者にして、人性に由りて人人と均しき者と為り給へり。
第五歌頌
イルモス 無知の夜(よ)より神を知る知識にて四極を照しし主よ、爾の仁愛の朝にて我を照し給へ。
神の実見者よ、爾の舌は爾が樓(たかどの)に在りて愛を以て受けたる聖神゜の火と合せられたり。
(某)よ、爾は最(いと)高き居所(すまひ)に居(を)る高き主に合(かな)へる高くして大いなる教を我等に伝へたり。
爾は潔き智慧と潔浄なる心とを神の前に有ちて、智識にて悟られぬ神を身を取りし主として見るを得たり。
生神女讃詞
童貞女よ、爾の産に由りて古(いにしへ)の律法は熄(や)み、恩寵は栄え、義は耀けり。
第六歌頌
イルモス 光を衣の如く衣(き)る慈憐の深きハリストス我が神よ、我に光明の衣を予(あた)へ給へ。
光栄なる使徒よ、爾はハリストスの門徒及び友として、熱切に主神全能者の為に勤労し給へり。
救世主は己の仁慈の行動を以て爾に権を與へて、爾を神聖なる奇跡を行ふ者と為し給へり。
ハリストスの讃美たる使徒(某)よ、爾は伝教の神聖なる恩寵に飾られて、萬有の上にある神より賜ふ一般の救ひを世界に福音し給へり。
生神女讃詞
純潔なる者よ、爾を生神女と承け認(と)めざる不虔者の口は塞がり、其面(おもて)は恥に蔽(おほ)はるべし。
小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第四調。
使徒(某)よ、教会は爾を至りて光明なる星として得て、爾の賜ふ多くの奇跡にて照さる。故に我等ハリストスに呼ぶ、大仁慈なる主よ、信を以
て爾の使徒の記憶を尊む者を救ひ給へ。
同讃詞(イコス)
水の性を造りし主よ、我に言の流れを與へ給へ、爾の言にて地を固めし慈憐なる主よ、吾が心を固め給へ、光を衣の如く衣(き)る大仁慈なる
主よ、吾が思ひを照し給へ、我が爾の使徒の尊貴に合(かな)ふことを宣べて歌はん為なり。
第七歌頌
イルモス エウレイの少者は爐(いろり)に在りて勇ましく燄(ほのほ)を踏み、火を露に変じて籲(よ)べり、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。
神の伝道師、大いなる熱心を有(たも)ちし(某)よ、爾は今主宰の宝座の前に立ち、ハリストスの役者として栄冠を冠りて呼ぶ、主神よ、爾は世
世に崇め讃めらる。
言の対談者たりし者よ、爾は彼と共に祝ひ、至上の国に與(あづか)る者と為りて呼ぶ、主神よ、爾は世世に崇め讃めらる。
神の言を宣べたる聖なる使徒よ、爾は智慧に満てられ、恩寵に照され、和平の美(うるは)しきに飾られて呼ぶ、主神よ、爾は世世に崇め讃めら
る。
生神女讃詞
昔蛇は詐(いつはり)を以て原祖を楽園より逐ひ出(いだ)せり、爾は、神の母よ、彼等を喚(よ)び還(かへ)せり、至浄なる者よ、爾の腹の果は
祝福せられたり。
第八歌頌
イルモス 楽器は鳴らされ、無数の人はデイラの像に伏拝するに、三人(みたり)の少者は順(したが)はずして、主を歌ひて、萬世に讃栄せり。
爾福音する者の足は美(うるは)し、爾ハリストスの光栄を唱ふる者の舌も美(うるは)しくして、呼ぶことを教へたり、主を歌ひて萬世に讃め揚げよ
。
爾は耀ける華美に飾られ、奇跡の光を放ちて、人人に祝讃せらるる救主を知らしめて、呼ぶことを教へたり、主を歌ひて萬世に讃め揚げよ。
聖なる門徒、実に天の奥密に教へられたる使徒よ、爾は世界を周(めぐ)りて、高声(こうせい)にハリストスの教への言を唱へ、言ひ難き恩寵を
伝へて呼べり、主を歌ひて萬世に讃め揚げよ。
生神女讃詞
神の母童貞女よ、智慧は爾の産を悟る能(あた)はず、言は之を言ひ出(いだ)す力なし、蓋爾は我等が萬世に讃め揚ぐる神を孕みて生み給へ
り。
第九歌頌
イルモス 潔き童貞女よ、我等爾に依りて救はれし者は爾を実に生神女と承(う)け認(と)めて、無形の軍と偕に爾を崇め讃む。
使徒(某)よ、爾は聖神゜の火を受け、神聖なる光に輝きて、四極に現れて、之を照し給へり、故に我等爾を崇め讃む。
神の実見者よ、爾は全く己を神に委ねて、彼と体合するを得たり、今信と愛とを以て爾を讃め揚ぐる我等の為に彼に祈り給へ。
至福至尊なる神の実見者よ、我等爾の記憶を祭りて常に祈る、ハリストスの使徒として有つ勇敢(いさみ)を以て爾の轉達にて我等を諸罪の暴
風(あらし)より救ひ給へ。
生神女讃詞
我等は爾人人に現れたる衆の救ひの轉達者、神妙なる潔浄の煇煌(かがやき)にて世界を照しし者を歌を以て崇め讃む。
光耀歌
使徒(某)よ、爾は己の美(うるは)しき足の途を天に向はしめ、彼所に登りて、喜びて三者の前に立ち、父の内に子及び聖神゜を仰ぎ見る、故
に我等信を以て爾の至りて神聖なる記憶を祭る。
生神女讃詞
我畏るべき詰問の時を思ひて、我が悪事の多きに因りて畏れて慄(おのの)く、祈る、至淨なる童貞女よ、爾の熱切なる祈祷を以て我を助けて、
我に救ひを與へ給へ、爾は欲する所能(よく)せざるなければなり。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。
至妙至福なる(某)よ、爾の夫子(ふうし)は一切に於て爾の智識を照して、彼の悟り難き神性を伝ふる尊き使徒と為せり、故に爾は彼の指麾(
しき)に従ひて、恩寵の網を以て人人を淪亡(ほろび)の深所(ふかみ)より引き出(いだ)し給へり。二次
神の奥義を宣ぶる至福なる(某)、ハリストスの実見者、使徒の飾なる者よ、聖神゜は火の状(さま)を以て爾に降(くだ)りて、爾を神聖なる光を
受くる者と為せり、故に爾は無神の幽暗(くらやみ)を払ひて、爾の至りて睿智なる言の光照にて世界を照し給へり。
実在の真実の光栄なる門徒、神の言を宣ぶる睿智者よ、爾は伝道の光照を以て無知の幽闇(くらやみ)に坐する者を照して、其信に由りて主
宰及び神の子となるを顕し、自ら夫子(ふうし)の苦しみと死とに效(なら)ひて、復(また)其光栄を嗣ぐ者と為れり。
光栄、第二調。
使徒(某)よ、爾は地上の事を遺(す)てて、ハリストスに従ひ、聖神゜に印證せられて、彼より亡ぶる異邦民の中(うち)に人人を神を識る光に導
かん為に遣され、神聖なる爾の勤労を終へ、種種の苦難を経(へ)たる後に爾の霊をハリストスに付(わた)せり。至福なる者よ、我等に大いなる
憐れみを賜はんことを彼に祈り給へ。
今も,生神女讃詞。
神の母よ、我が盡(ことごと)くの恃みを爾に負はしむ、我を爾の覆ひの下に守り給へ。
十字架生神女讃詞。
無玷(むてん)なる牝羊は己の羔(こひつじ)が人として甘じて屠殺(ほふり)に牽(ひ)かるるを見し時、哭きて言へり、仁愛なるハリストスよ、何爲
(なんす)れぞ爾を生みし我を今子なき者と為さんと欲する、然れども萬衆の贖罪主よ、我は智慧と言とに超ゆる爾の至大なる仁慈を歌頌して
讃栄す。
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