第二十七編
ハリストスの為の佯狂者
王城のアンドレイ、ロストウのイシドル、モスクワのマクシム及びワシリイ、其他の総奉事
晩課
「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第八調。
福たる(某)、奇異なる神智者よ、爾の潔き霊は醇正なる智識に光り、尊栄なる徳に輝きて、信者の会を照し、悪鬼の暗(やみ)を逐ふ。故に我等衆敬虔に爾を暮れざる恩寵に與る者として讃揚す。
奇異なる(某)よ、爾は慈憐なる霊と、潔き思ひと、勇ましき心、動かざる信と実に弐心(ふたごころ)なき愛とを有ちて、地より天に移りて、義人等の会と偕に居り給ふ。故に我等衆聖にせられし歌を以て爾を尊み、敬虔に讃栄す。
(某)よ、爾は神の教へに堅められ、霊より肉慾を逐ひて、聖三者の為に至りて浄き居処(すまひ)と為れり、故に神聖なる生命(いのち)に移りしに、神は今も爾の福たる体(たい)を朽つるなく護りて、神聖なる議定を以て、自ら知るが如く、顕に爾を栄し給ふ。
光栄、第一調。
克肖なる(某)よ、我等如何ぞ爾の度生を奇とせざらん、或は如何ぞ爾の天使と侔(ひと)しき生命(いのち)、貞潔なる思念(おもひ)、温柔と、謙遜と、竭(つ)きざる慈恵とを讃めざらん、福たる者よ、爾は萬徳に飾られたり、故に言ひ難き歓喜(よろこび)と天の国とは爾の為に備へられたり。
今も、生神女讃詞。
罪なる者の祈祷を納(い)れ、憂ふる者の歎息を斥けざる至聖なる童貞女よ、爾の至浄なる胎より生れし爾の子に我等の救はれんことを祷り給へ。
十字架生神女讃詞
潔き母よ、爾は昔爾の子及び主宰が十字架に手を舒(の)べて、戈(ほこ)にて脇の刺さるるを見し時、哭きて呼べり、嗚呼仁愛なる主、人人の苦しみを除く者よ、如何ぞ苦しみを忍ぶ。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。
人より生れて主宰を生みし全世界の光栄と天の門なる童貞女マリヤ、諸天使の歌、諸信者の飾りなる者を讃め歌ふべし。彼は天と均しく、神の宮と均しき者として顕れたり、彼は仇(あだ)の隔てを破りて和睦を締(むす)び、国を開けり。我等は彼を信の固めと為し、彼より生れし主を扞(ふせ)ぎ衛(まも)る者と為す。勇めよ、神の民よ、勇めよ、主は敵に勝たん、全能者なればなり。
聖入。本日の提綱(ポロキメン)。克肖者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。
挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第二調。
睿智なる(某)よ、爾は至聖なる神゜の殿及び居処(すまひ)と為り給へり、故に我等爾の聖なる記憶を尊む者をも彼の殿と為し給へ。
句 義人は主の為に楽しみて、彼を恃まん。
爾の度生は奇跡を発して、日の如く信者の心を照せり、故に我等爾の至尊なる記憶を尊む者をも暮れざる光にて輝かし給へ。
句 義人は繁ること棕櫚の如く、高くなることリワンの柏香木の如し。
(某)よ、爾の親しき諸僕、爾が己の属神゜の度生を以て照しし者の為に絶えず祷り給へ、我等衆が楽しみて爾の尊貴なる祭を尊まん為なり。
光栄、第四調。
至福にして奇異なる(某)よ、爾は地上の天使及び天上の人、傷感の泉、慈恵の川、奇跡の淵、醫治(いやし)の流れと現れ、神の実(み)の繁き橄欖樹(かんらんじゅ)、爾の勤労の油を以て熱心に爾を讃め揚ぐる人人を照す者と現れたり。仁愛なる主に愛を以て爾の至尊なる記憶を尊む者を諸難より救はんことを祷り給へ。
今も、生神女讃詞。
ハリストス神の母、萬有の造成主を生みし者よ、我等を我が危難より救ひ給へ、我等衆が爾に呼ばん為なり、我が霊の惟一の転達よ、慶べ。
十字架生神女讃詞
至浄なる女宰はハリストスの十字架に釘せられて、詭譎(きけつ)の者を殺すを見て、己より出でし子を慈憐なる主宰として歌ひ、彼の恒忍(ごうにん)を奇として、哭きて呼べり、吾が至愛なる子よ、爾の婢(しもめ)を忘るる毋れ、仁愛なる主よ、速やかに我を慰め給へ。
もし祭を行はば定理歌(ドグマティク)を誦せよ。
至りて玷(きず)なき者よ、爾の諸僕の祈祷を顧みて、堪へ難き攻撃を我等より退け、諸々の愁苦(うれひ)を我等より遠ざけ給へ、我等は爾を一つの堅固なる恃むべき錨(いかり)として有ち、爾の転達を得たればなり。女宰よ、願はくは我等爾を呼ぶ者は恥を蒙らざらん、速やかに我が切なる祈りを應へ給へ、蓋我等中心より爾に籲(よ)ぶ、女宰、衆人の佑助(たすけ)と、歓喜(よろこび)と、庇護(おおい)と、我等の霊の拯救(すくひ)なる者よ、慶べ。
讃詞(トロパリ)、第一調。
ハリストス神よ、爾の僕(某)は爾の使徒パウェルの声の、我等はハリストスの為に愚(ぐ)なりと言ふを聞きて、地上に爾の為に愚(ぐ)と為れり、故に我等は彼の記憶を尊みて、爾に祷る、主よ、我等の霊を救ひ給へ。
光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。
早課
「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。
第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第五調。
我等は堅牢なる金剛石(アダマント)、敵の攻撃に動かされぬ柱たる捧神なる(某)を歌を以て尊まん、蓋彼は実に忍耐を以て戦ふ敵を辱かしめて、之を力なき者と為せり、今は我等の霊の救ひの為に祷り給ふ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
潔き永貞童女よ、爾の懐孕(はらみ)の奇跡は驚くべく、産の状(さま)は言ひ難くして、我が智慧は訝(いぶか)り、思念(おもひ)は奇とす。生神女よ、爾の光栄は萬衆に現れたり、我等の霊の救ひの為なり。
第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
至福なる(某)よ、爾は斎と、節制と、地上に臥すとを以て肉体の慾を枯らし、霊を照して、天に於てハリストスより大いなる報賞(むくい)を受け給へり、故に神の悦びを獲たる者として、逝世の後にも爾の聖躯の柩に趨り附く者の為に奇跡の尊き器と現れたり。ハリストス神に愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことを祷り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
至りて讃美たる潔き童貞女よ、爾は神聖なる産を以て地に生まるる者の死に属する性、慾に由りて朽ちたる者を新たにして、衆を死より不朽の生命(いのち)に起し給へり。故に我等皆職として爾を讃揚す、爾の預言せしが如し。
「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。
聖にして義なる(某)よ、我等爾を讃美して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。
抜粋聖詠
「神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福なり。」
多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
至福なる(某)よ、爾は忍耐に於て奇異なる者と現れて、一切を以てハリストスの悦びを獲たり、睿智なる意念を以て爾の霊を堅め、肉体の思ひを神゜に服せしめ、神の為に労することを善なりとして之を択びて、勇ましく言へり、寒威(さむさ)は辛(から)しと雖(いへども)、楽園は甘し、労は苦(くる)しと雖(いへども)、報いは楽しと。求む、至福なる者よ、ハリストス神に我等の霊を救はんことを祷り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
生神女よ、我等爾を崇め讃めて呼ぶ、爾は獨祝福せられし者なり、蓋爾よりハリストス我等の神は言ひ難く生れ給へり。
品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。
提綱(ポロキメン)
義人は主の為に楽しみて、彼を恃まん。句 神よ、我が祷りの時我が声を聴き給へ。
「凡そ呼吸ある者。」
福音経は巻末に載す。
第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第八調。
神の人、奇異なる(某)よ、爾は諸徳の梯(かけはし)に上がり、此れに縁りて上なるイエルサリムに登りて、彼処に慕へるハリストスを見たり、爾は彼の為に己の肉体を疲らせ、死に属する身を不死の生命(いのち)に易へ給へり。我等の為にも絶えず祷りて、我が霊に平安と大いなる憐みとを賜はんことを求め給へ。
規程(カノン)、第四調。
第一歌頌
イルモス 古(いにしえ)のイズライリは足を濡らさずして海の紅(くれない)の淵を渡り、野にてモイセイの十字形の手にてアマリクの力に勝てり。
克肖にして福たる神゜父(某)よ、爾は神に與(あづか)るを以て光と為り、至極の愛に由りて彼に合せられて己の善なる望みの應ふを得たり。
光栄なる神゜父(某)よ、爾は神を愛する愛に燃えて、世を捨て、ハリストスを同伴者として獲て、喜びて彼と偕に救ひの道を行き給へり。
睿智者よ、爾は敢へて竭(つ)くべき富を望まずして、暫時の栄華と、過ぎ易き楽しみと、世の産業とを断じて退け給へり。
生神女讃詞
純潔なる生神女よ、神の子は爾を華麗尊貴にして選ばれたる者と知りて、爾の子と為りて、爾を尊む者を恩寵の子と為し給へり。
第三歌頌
イルモス ハリストスよ、爾の教会は爾の為に楽しみて呼ぶ、主よ、爾は我が能力(ちから)と避所(かくれが)と堡障(かため)なり。
爾は勇敢に己を神聖なる行ひに備へて、聖神゜の助けを以て敵の隊に勝ち給へり。
克肖なる神゜父(某)よ、爾は勤労と、祈祷と、節制とを以て世俗の慾を殺し給へり。
主宰イイススよ、爾の福たる(某)は、生命(いのち)を施す爾の死を慕ひて、敵を殺し給へり。
生神女讃詞
純潔無玷(むてん)なる童貞女よ、爾は人人を不順に由る甚だしき堕落より救ひ給ふ主を生み給へり。
坐誦讃詞(セダレン)、第五調。
克肖にして至福なる神゜父(某)よ、爾は聖神゜の恩寵に導かれて、神の光に照さるる途(みち)を行き、暗黒(あんこく)なる敵の攻撃を退けて、光及び晝(ひる)の子と為り給へり。
光栄、今も、生神女讃詞。
至浄なる神の母、「ハリスティアニン」等の垣よ、熱切に爾を籲(よ)ぶ爾の民を傲慢なる無形の敵より防ぎて、諸難を免れしめ給へ、我等が爾に呼ばん為なり、祝讃せらるる者よ、慶べ。
十字架生神女讃詞
神の恩寵を蒙れる者よ、爾の子の十字架にて偶像の迷ひは悉く虚しくなり、悪鬼の力は踏まれたり、故に我等信者は職として常に爾を歌ひて崇め讃め、実に生神女と承け認(と)めて爾を讃栄す。
第四歌頌
イルモス 教会は爾義の日が十字架に挙げられしを見て、竝(なら)び立ちて正しく呼べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。
克肖なる(某)よ、爾は義の路(みち)を履(ふ)みて、神の城邑(まち)に入り、救ひの光に輝かされたり。
克肖なる(某)よ、爾は節制と祈祷とに由りて全く諸慾を脱して、無慾の潔きを衣(き)給へり。
神゜父(某)よ、聖神゜の恩寵は爾の心を潔められたる碑版(ひはん)として獲て、其上に全き無慾と、堅き信と、熱切の愛とを書(しる)せり。
生神女讃詞
マリヤ神の聘女(よめ)よ、最(いと)高きヘルワィムの宝座に坐する讃栄せらるる我等の神は爾を宝座として、爾の手の上に息(いこ)ひ給へり。
第五歌頌
イルモス 我が主よ、爾は光、信じて爾を崇め歌ふ者を闇(くら)き無智より引き出す聖なる光にして、世界に来たり給へり。
奇異なる(某)よ、爾は神の光を受けて、日の如く現れて、悪鬼の幽暗(くらやみ)を逐ひ給へり。
ハリストスよ、克肖なる(某)は爾を愛する愛の焔(ほのお)を以て肉慾を草芥(あくた)の如く焚(や)き給へり。
神智なる神゜父(某)よ、爾は神の力にて霊を堅めて、世に居り、諸慾を野に放ち給へり。
生神女讃詞
朽壊は防ぎ止められたり、蓋童貞女は不朽に神言(かみことば)を生みて、性と言とに超えて童貞女に止まり給ふ。
第六歌頌
イルモス 憐れみに由りて爾の脅(わき)より流れし血にて悪魔の祭の血より浄められし教会は爾に呼ぶ、主よ、讃揚(ほめあげ)の声を以て爾を祭らん。
(某)よ、爾は不断の祈祷を以て全心を神に託して、肉体の愛を惜しまざりき。
福たる者よ、爾は世の中に居りて、汚(けがれ)をも玷(きず)をも受けざりき、猶(なお)己の尊き祈祷を以て爾に趨り附く者を霊の汚(けがれ)より潔め給ふ。
(某)よ、爾は己の思ひを肉体の思ひより上なる者と為して、裸体にして女の中に在りて瑕瑾(きず)を受けざりき、無慾の衣を衣(き)せられたればなり。
生神女讃詞
至聖なる生神女よ、我等口と思ひと心とを以て爾を伝ふ、蓋我等は先に原祖の犯罪に因りて神より離れたる者にして、爾に縁りて彼と和睦するを得たり。
小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第八調。
福たる(某)よ、爾は上なる華美を望みて、下(しも)なる肉体の逸楽を棄て、空しき世に心を奪はれず、天使等と侔(ひと)しき生命(いのち)を送りて終り給へり。彼等と偕にハリストス神に絶えず我等衆の為に祷り給へ。
同讃詞(イコス)
我罪人にして霊体共に汚(けが)れたる者は如何ぞ爾が肉体に於ける天使と侔(ひと)しき度生と至栄なる奇跡とを書(しる)すを得ん、衆(おお)くの智者も爾の大いなる忍耐と、謙遜と、ハリストスに於ける熱愛とを讃美するに勝(た)へず。然れども爾の純良を頼みて、嗚呼福たる者よ、我斯く爾に呼ぶ、至りて光明なる星、諸徳の東より輝き出でて、奇跡にて全地を照しし者よ、慶べ、両親の愛に束縛せられずして、全心を以て獨ハリストス萬有の上に在る主を愛して、返らざる望みを以て彼に従ひし者よ、慶べ、使徒の言ふ所の無智及び愚かなるが如き度生を択びし者よ、慶べ、朽つべく過ぎ易き諸事を来世の福の望みに易へたる者よ、慶べ、忍耐を以て昔のイオフに似たりし者よ、慶べ、ハリストスの勝たれぬ受難者、常に爾の謙遜を以て悪魔に勝ちたる者よ、慶べ、夫(か)の昔の貧しきラザリの如く今アウラアムの懐(ふところ)に息(いこ)ふ者よ、慶べ、世を逝(さ)りて後に災禍(わざはひ)と誘惑(いざなひ)に遇ふ者の為に備へられたる転達者及び保護者よ、慶べ、諸方に於て爾を呼ぶ者に速やかに助くる者よ、慶べ、神智なる(某)よ、慶べ。
第七歌頌
イルモス アウラアムの少者はペルシヤの爐(いろり)に在りて、焔よりも強く敬虔の愛に爇(や)かれて呼べり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。
神゜父(某)よ、爾はハリストスの如き神聖なる愛を有ちて、他人を救ひて、歓びて呼べり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。
福たる神゜父(某)よ、爾は豊かに天より恩寵を受けて、此れを以て、心より服して爾の教へを聴き、下(しも)に引く罪を棄つる者を天の為に養ひ給へり。
睿智なる神゜父(某)よ、爾は聖神゜父等の伝に従ひて、信者に異端者の滅びを致す不虔の教へを斥くるを命じて呼ばしめたり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。
生神女讃詞
至上者の聖にせられたる神妙の居処(すまひ)よ、慶べ、蓋生神女よ、爾に縁りて欣喜(よろこび)は斯く呼ぶ者に賜はりたり、至りて無玷(むてん)なる女宰よ、爾は女の中に祝福せられたり。
第八歌頌
イルモス ダニイルは獅子穴に在りて手を伸べて、獅子の口を閉ざし、敬虔の篤き少者は徳を帯び、火の力を消して呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
爾は至りて光明なる星と為りて、諸慾の幽暗(くらやみ)に在る者を生命(いのち)に導き、不潔の婦(おんな)を反省せしめて潔浄の者と為し、且甚だしき諸病を逐ひて呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃よ。
克肖なる(某)よ、爾は睿智を以て爾に賜はりし奇異なる恩賜を現して、衆(おお)くの者を導きて主に就かしめ、且世の人より辱めを受けて、至浄なる霊を以て呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
福たる神゜父よ、己に属する者を宜しきに合(かな)ひて栄する主は爾が寝(ねむ)りて墓に送らるる時に、天使の顕現(あらはれ)を以て爾の光栄を示して、人人に呼ばしめたり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
生神女讃詞
潔き童貞女よ、爾より光り出でたる主は我等の贖罪主なり、女宰よ、彼に祈りて、爾を歌ふ我等を照して、誘惑(いざなひ)より救はんことを求め給へ、蓋我等呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
第九歌頌
イルモス 童貞女よ、手にて斫(き)られざる隅石ハリストスは、爾斫られざる山より斫り分けられて、離れたる性を合せ給へり、故に我等楽しみて、爾生神女を崇め歌ふ。
(某)よ、爾は心を全うして己を熱切に三者に捧げて、彼より光照を受け、光明なる者と為りて、諸天使と偕に喜び給ふ。
神福なる(某)よ、爾は節制に由りて潔められ、祈祷に由りて照され、神聖なる愛を以て神に体合せられて、永遠の福に與る者と為り給へり。
至福なる(某)よ、爾は勤行(きんぎょう)と労苦とを以て終わりなき福楽を獲たり、之を楽しみて、常に我等をも憶(おも)ひ給へ。
生神女讃詞
衆人の贖罪主及び恩主を生みし者よ、我を救ひ給へ、光の雲たる聖なる女宰よ、我が霊の黒雲(くろくも)を散じ、我と戦ふ諸慾に勝たん為に我を強き者と為し給へ。
光耀歌
神智なる(某)よ、爾は世の諸事を避けて、無玷(むてん)の度生を以てハリストス萬有の上なる我等の神の悦びを得たり、彼に今我等信を以て爾の至尊なる記憶を祭る爾の諸僕の為に祷り給へ。
生神女讃詞
実在の睿智、永在の言、及び衆人の医師を生みし童貞女よ、吾が霊の多くの甚しき傷を醫(いや)し、吾が心の慾の思ひを消し給へ。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。
至仁なる主よ、爾は義にして奇異なる(某)、言及び行ひの諸徳に輝き、潔浄と柔和とに飾られたる者を忍耐及び勇敢の模範として与へ給へり。故に全能なるイイスス、吾が霊の救主よ、我等は爾の言ひ難き摂理を讃栄す。二次
福たる(某)よ、爾は義にして純良なる者、真実にして無玷(むてん)及び正直(せいちょく)なる者、凡の悪事を避くる者と現れ、諸徳を以て輝き、敬虔を以て光り給へり。故に神智者よ、我等爾を讃美して、今日喜びて爾の聖なる尊き寝(ねむり)を祭る。
(某)よ、爾は貞潔及び篤信(とくしん)を最(いと)尊き紫袞衣(しこんい)の如く衣(き)、正義及び温柔を神聖なる栄冠の如く冠りて、ハリストスの為に苦しみを受くる者と偕に王たらんことを望めり。今は爾萬軍の王たる至仁なるイイスス、我等の霊の救主の前に立ち給ふ。
光栄、第八調。
神智なる(某)よ、爾の諸徳の光潔は信者の心を照せり、蓋孰(たれ)か爾の無量なる謙遜と忍耐、衆に於ける柔和と純良、憂ふる者に於ける矜恤(きょうじゅつ)を聞きて奇とせざらん、爾は患難に遇ふ者に速やかなる助け、航海する者には穏やかなる港、旅行する者には善き嚮導(みちびき)、衆人の希求(もとめ)には疾(と)く應ずる者なり。今は、奇異なる者よ、全能者神の手は凋(しぼ)まざる栄冠以て爾を飾り給へり、彼に我等の霊の救はれんことを祷り給へ。
今も、生神女讃詞。
女宰よ、爾の諸僕の祈祷(いのり)を納(い)れて、我等を諸の災禍(わざはひ)と憂愁(うれひ)より救ひ給へ。
或は十字架生神女讃詞。
聖体礼儀(リトゥルギヤ)には克肖者の奉事。
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