第二十一編
二人或は多人の致命女の総奉事
晩課
「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第四調。
聖なる童女等は天性の法に縁りて結合せられ、造成主を愛する愛に縁りて強く堅固にせられて、信を以て肉体の結びを解かれ、不能なる敵を雄雄しく己の足下に踏みて、勝利の尊栄にて光明に飾られ、無形なる婚筵(こんえん)の宮に入りて喜び給ふ。
至尊なる者等は信の眼を以て新郎(はなむこ)の最(いと)美(うるは)しきを仰ぎて、火と、多種の苦しみと、死とを忍び、種種の傷に飾られて、彼に合せられたり。故に仁愛なるイイスス、我等の霊の救主は多くの恩賜を彼等に冠らせ給へり。
美善なる童女等よ、爾等は不朽の童貞、尊き童貞をハリストスに献げて、十字架の力と雄雄しき心とを以て無神の驕りと迷ひとを破り給へり。故にハリストスの諸教会は爾等の光明にして至栄なる記憶を祭る。
光栄、今も、生神女讃詞。
至浄なる少女よ、我爾を主に眠らざる祈祷を捧ぐる者として祷る、我が不当なる霊の諸害を眠らせ、激浪(あらなみ)を鎮め、我が憂ふる心を慰め、我の智慧に恩寵を降し給へ、我が宜しきに合(かな)ひて爾を讃栄せん為なり。
十字架生神女讃詞
爾を生みし牝羊は爾羔(こひつじ)及び牧者が木の上に在るを見し時、哭きて母として爾に謂へり、至愛なる子、恒忍(ごうにん)なる主よ、如何ぞ爾は十字架に懸けられたる、言よ、如何ぞ爾の手と足とは不法の者より釘せられたる、主宰よ、如何ぞ爾の血を流したる。
もし之あらば、自調。光栄、第八調。
凡の舌は動きて至栄なる致命女を讃美すべし、凡の族(ぞく)と年齢(よはひ)、衆少者と処女はハリストスの大致命女に讃歌(ほめうた)を捧ぐべし、蓋彼等は法に遵ひて戦ひ、女の柔弱を退けて、迫害者なる敵を斃(たお)し、受難の労苦の為に天の神妙なる栄冠に飾られて、其新郎(はなむこ)及び神に祈りて、我等に大いなる憐みを賜はんことを求め給ふ。
今も、生神女讃詞
女宰よ、爾の諸僕の祈祷(いのり)を納(い)れて、我等を諸々の災禍(わざはひ)と憂愁(うれひ)より救ひ給へ。
十字架生神女讃詞
言よ、至浄なる者は爾が身にて十字架に懸れるを見て、心裂かれて泣きて呼べり、至愛なる主イイスス吾が子よ、何処(いづこ)にか隠るる、ハリストスよ、我爾を生みし者を獨として遺す毋れ。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。
天の王は人を愛するに因りて地に現れ、人と偕に在(いま)せり、蓋浄き童貞女より身を取り、人の性を有ちて生れし者は、二つの性にて一つの位(くらい)ある獨一子なり、故に我等彼が実に全き神及び全き人なるを伝へて、ハリストス吾が神を承け認(みと)む、夫を識らざる母よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祈り給へ。
聖入。本日の提綱(ポロキメン)。致命者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。
挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第四調。
天使の品位は爾等の心の励みと、神聖なる愛と、受難とに大いに驚きたり、如何にして爾等は勇ましく戦ひ、見えざる敵を斃して、生(いのち)を施す手より宜しきに合ひて厳かに勝利の栄冠を受けたる。
句 神よ、爾は爾の聖所に於て厳かなり。
恩寵に聖にせられし受難女よ、爾等は燃える心を以て空しき焔(ほのほ)を滅(け)して、ハリストスの為に死し、霊の燈(ともしび)を滅さるるなく守りて、天の宮にハリストスの許に入り給へり。故に我等皆敬虔に爾等の記憶を歌頌す。
句 イズライリの源より出づる者よ、教会に於て主神を崇め讃めよ。
讃美たる受難女よ、爾等は多くの苦しみを忍びて後に、病なき所に移りて、隠れざる光に入り、光明なる歓喜(よろこび)と永遠の神聖なる楽しみとを得たり。故に我等は爾等を讃美して、今日爾等の聖なる慶賀を行ふ。
光栄、第四調。
讃美たる者よ、爾等は下(しも)に引く度生の逸楽と栄華とを暫時の者として遺(す)て、ハリストスの華麗に熱して、苦しみを以て彼に著(つ)き、芳ばしき花の如く栄え、不朽の国の栄冠にて美(うるは)しく飾られたり。
今も、生神女讃詞。
滅(け)されぬ燈(ともしび)、義なる王の宝座たる至浄なる女宰よ、我等の霊の救はれんことを祷り給へ。
十字架生神女讃詞
至浄なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脅(わき)の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺す、慈憐なる主よ、我爾が甘じて受くる釘殺を奇とす。
讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第一調。
霊智なる牝羊、奇異なる者よ、爾等は馳すべき程(みち)を尽し、信を守りて、受難に因りて羔(こひつじ)及び牧者たるハリストスに携へられたり、故に我等今日欣ばしき霊を以て爾等の聖なる記憶を行ひて、ハリストスを崇め讃む。
光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。
早課
「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。
第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。
常に記憶せらるる福たる受難女よ、爾等は神聖なる愛の火に燃えて、聊(いささか)も物質の火の触(ふ)るるに由りて悩まされず、迷ひを焚(や)き尽して、残酷に曳かれて終りを受け、光栄を得給へり。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
婚姻に與らざる祝福せられしマリヤ、失望せし人人の避所(かくれが)、神の居処(すまひ)よ、我等常に悪なる無道(ぶだう)に迷ひて、至仁なる主を怒らしむる者を痛悔の道に向はしめ給へ。
第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
生(いのち)を施す主の新婦(はなよめ)たる童貞女、信の為に戦ひし者よ、天上の軍の無形の品位は爾等の大いなる忍耐に驚きたり、蓋爾等は他人の身に於けるが如く苦しみを受け、脛(はぎ)と節(ふし)とを壊(やぶ)られ、苦しき死を忍びて、婦女(をんな)の柔弱を以て反離者(はんりしゃ)たる蛇を破り給へり。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
生神女よ、爾の聘定者及び保護者たるイオシフは性に超える爾の種なき胎孕(はらみ)に驚きて、念(おもひ)を羊の毛に降りし雨、火に焚かれざる棘(いばら)、芽を出だしたるアアロンの杖に注ぎて、司祭等に向ひて證して呼べり、童貞女は生む、生みて後復(また)童貞女に止まる。
「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。
ハリストスの致命女よ、我等は爾等を讃揚して、爾等がハリストスの為に忍びし尊貴なる苦しみを尊む。
抜萃聖詠
「神は我等の避所なり、能力なり。」
多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。
致命女童女等よ、爾等は神に適ふが如く主の新婦(はなよめ)と為りて、礼物として彼に血と屠殺(ほふり)とを捧げ、宜しきに合(かな)ひて神聖なる婚筵の宮に入るを得て、常に言ひ難き光照に満てらる。故に我等敬虔に爾等の聖なる尊き記憶を行ひ、救世主を讃栄して熱信に呼ぶ、愛を以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祷り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
ハリストスよ、爾の無形なる軍、爾の前駆、使徒、預言者、致命者と衆聖人、及び夫に與らざる至善なる爾の母生神女の祈祷に由りて慈憐を垂れて、我等に爾の光の中を行かしめ、爾の大いなる仁慈に由りて爾の国に入るを得しめ給へ。
品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。
提綱(ポロキメン)
神よ、爾は爾の聖所に於て厳かなり。
句 イズライリの源より出づる者よ、教会に於て主神を崇め讃めよ。
「凡そ呼吸ある者。」
致命女の福音経、巻末に載す。
第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第四調。「讃美たる者よ、爾等は下に引く度生」挿句の光栄に載す。
讃美たる者よ、爾等は下(しも)に引く度生の逸楽と栄華とを暫時の者として遺(す)て、ハリストスの華麗に熱して、苦しみを以て彼に著(つ)き、芳ばしき花の如く栄え、不朽の国の栄冠にて美(うるは)しく飾られたり。
規程(カノン)、第四調。
第一歌頌
イルモス 我が口を開きて、聖神゜に満てられ、言を女王(にょわう)母に奉り、楽しみ祝い、喜びて其奇跡を歌はん。
致命女よ、爾等先には斎を以て、後には血を流す受難を以て強く悪敵と戦ひ給へり、故に我等信を以て爾等の記憶を尊む。
克肖なる致命女よ、爾等は我等の為に十字架と死とを忍びし主を愛する愛に刺されて、身の柔弱を忘れて、彼の後に従ひ給へり。
至尊なる致命女よ、爾等は受難の武器を以てエルリンの祭壇と悪鬼の軍とを斃(たお)して、活ける全燔として天上の教会に献げられたり。
生神女讃詞
純潔なる者よ、童貞女等は爾の胎内より輝き出でたる主の恩寵に堅められて、残酷なる苦しみに己を付(わた)して後、喜びて爾に従ひて主の前に携へられたり。
第三歌頌
イルモス 強き者の弓は弱み、弱れる者は力を帯びたり、故に我が心は主の中に堅められたり。
爾等は神より強き力に堅められて、戦ふ敵の力を踏みたり、故に勝たれぬ勝利者として光栄を獲給へり。
ハリストスの神聖なる力に因りて猛獣の口は無能と為り、神智なる者は害なく救はれて、光栄を神に帰せり。
救世主の受難者よ、爾等は睿智と恩寵とを以て霊を照し、神の力に堅められて、迫害者の激しき怒りを畏れざりき。
生神女讃詞
我等は真正に悟りて、爾純潔なる者を真の神の母と伝ふ、蓋爾に縁りて造成主は我等と合せられたり。
坐誦讃詞(セダレン)、第一調。
讃美たる致命女よ、我等は爾等を奇跡の泉として獲て、饒(ゆたか)に壮健を汲みて、爾等の苦しみと、神聖なる熱心と、勇ましく受けたる創痍(きず)と、功労とを歌ひ、爾の奇異なる記憶を行ひて、我等の神を讃栄す。
光栄、今も、生神女讃詞。
生神女よ、爾の諸僕の祈祷を納(い)れて、我等を諸々の患難より救ひ給へ、爾はハリストス救世主、我等の霊の贖罪主を生みたればなり。
十字架生神女讃詞
至浄なる者よ、我等衆爾の轉達を有ちて、爾の祈祷に因りて諸難より救はれ、爾の子の十字架を以て諸方に護られて、職として敬虔に爾を崇め讃む。
第四歌頌
イルモス 光栄の中に神性の宝座に坐するイイスス神は、軽き雲に乗るが如く、朽ちざる手に抱かれ来りて、ハリストスよ、光栄は爾の力に帰すと呼ぶ者を救ひ給へり。
奇異なる者よ、爾等は多種の苦しみ、肉体の創痍(きず)、百体の壊(やぶ)らるること、火に焼かるることを忍びしに因りて、天の居処(すまひ)を嗣ぎて、生命の樹の果(み)を楽しみ給ふ。
天の軍は福たる致命女の功労を奇とせり、如何にして女の性を以て童貞女より輝きし主の力に堅められて、敵に勝ちたる。
ハリストスの堅忍なる新婦(はなよめ)よ、爾等は世の虚しきを悉く棄てて、霊を全うして獨神に己を捧げたり、故に斎の勤労と受難とを忍び給へり。
生神女讃詞
至りて無玷(むてん)なる者よ、昔預言者の言ひし事に應ひて、雨が羊の毛に降(くだ)りし如く、主は爾の胎内に降(くだ)りしに、爾は彼を二性の者として生み給へり、我等彼に呼ぶ、ハリストスよ、光栄は爾の力に帰す。
第五歌頌
イルモス ハリストスよ、不虔の者は爾の光栄を見ざらん、惟我等は夜(よ)より寤(さ)めて、爾神の獨生子、父の光栄の煇煌(かがやき)、人を愛する主を崇め歌ふ。
爾等は無玷(むてん)なる牝羊の如く、欣ばしき祭の如く、完全なる礼物、嘉(よ)く納(い)れらるる全燔としてハリストス真の牧者に捧げられたり。
致命女よ、爾等は十字架と、死と、自由なる苦しみとを忍びて、死の力を滅しし主に效(なら)ふ者と為りて、体にて殺され、霊にて活ける者と為り給へり。
神智なる者よ、爾等は多くの身体(からだ)の中に惟一の智慧を有ちて、鐵搭(くまで)にて裂かれ、火に焚かれて、萬衆の惟一の主イイススを承(う)け認(と)めたり。
生神女讃詞
獨(ひとり)至りて無玷(むてん)なる童貞女、神主宰、恩寵を以て先に離れたる者を合せし主を生みし者よ、諸慾の穴に陥りたる我を起して、我を治め給へ。
第六歌頌
イルモス 憐みに由りて爾の脅(わき)より流れし血にて悪魔の祭の血より浄められし教会は爾に呼ぶ、主よ、讃揚(ほめあげ)の声を以て爾を祭らん。
原母は先に誘惑(いざなひ)を以て彼を楽園より逐ひ出しし蛇の壊(やぶ)られて、女の足に踏まるるを見て、熱切に悦ぶ。
爾等は法に遵(したが)ふ苦しみに斎を加へ、不朽に霊の新郎(はなむこ)に合せられて、今楽しき霊を以て天の宮に居り給ふ。
高く揚げらるる苦しみの波は致命者の舟を沈むる能はざりき、蓋此等は強き手に導かれて、神聖なる港に到れり。
生神女讃詞
神の母よ、我等は爾の言の應へるを見て、更に多く爾及び爾を大いなる者とせし主を崇め讃む、蓋実に今萬族は爾を讃揚す。
小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
我等ハリストスの受難女の記憶を祭りて、信を以て助けを求め、衆を凡の憂ひより救はんことを祷りて呼ぶ、己の旨に合ひて彼等を栄せし我等の神は我等と偕にす。
同讃詞(イコス)
ハリストスの致命女よ、我等は爾等を奇跡の泉として獲て、饒(ゆたか)に壮健を汲みて、爾等の苦しみと、神聖なる熱心と、勇ましく受けたる創痍(きず)と、功労とを尊み、爾等の奇異なる記憶を行ひて呼ぶ、己の旨に合(かな)ひて彼等を栄せし我等の神は我等と偕にす。
第七歌頌
イルモス 火の中に爾がアウラアムの少者を救ひ、義の審判を被れるハルディヤ人を滅ぼしし讃美たる主、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
ハリストスの牝羊よ、爾等は心の眼を救ひを賜ふ神及び王に注ぎて、悪敵の軍に遇ひ、雄雄しく之に勝ちて呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。
致命女よ、爾等は全き望みを獨主宰に属し、世界の栄華を夢の如く見て呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。
我等は倦むべからず、視よ、婚筵の宮は啓かれたり、彌(いよいよ)勇みて立たん、蓋ハリストスは手を伸べて栄冠を賜ふ、我等の身を惜しむべからずと、勇敢なる致命女は裁判所に在りて呼べり。
生神女讃詞
恩寵を蒙れる潔き者よ、爾の祝福せられたる腹の果は祝讃せらる、天の軍と人人の会とは彼を祝讃す、我等を始めの詛(のろひ)より解きたればなり。
第八歌頌
イルモス 生神女の産は敬虔の少者を爐(いろり)の中に守れり、其時に預(あらかじ)め徴され、今已(すで)に應ひし此の産は全世界に勧めて爾に歌はしむ、造物は主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。
爾等は受難の血を流すを以て、罪に由りて朽ちたる人を実に脱ぎて、光明なる衣を衣(き)て歌へり、造物は主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。
讃美たる致命女よ、爾等は無神の夜(よ)を過(とほ)りて、無形の日の至りて光明に輝く光の中に在りて、霊を一(いつ)にして歌ふ、造物は主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。
致命女よ、爾等は牝羊の如く、無垢なる牝牛の如く、神の牝鴿の如く、自由なる祭の如く、無玷(むてん)の礼物として造成主に献げられて、同心に歌ふ、造物は主を歌ひて、世世に彼を讃め揚げよ。
生神女讃詞
至浄なる神の聘女(よめ)、獨婚姻に與らざる者よ、受難者たる女等(をんなたち)は芳ばしき香料たる爾の獨生の子、爾の胎内より輝き出でし主を慕ひて、爾の後に趨りて、実に爾と偕に王となりて、ハリストスを世世に歌ひ讃む。
第九歌頌
イルモス エワは不順を病みて、詛(のろひ)を入れたり、爾は、童貞生神女よ、己の産にて世界の為に祝福の華を発(ひら)けり、故に我等皆爾を崇め讃む。
至栄なる致命女は泉よりするが如く、求むる者に醫治(いやし)の滴(したたり)を注ぎ、病の苦しみを鎮め、悪鬼の軍を逐ひ、神を愛する者の心を沾(うるほ)して、善行の果を繁く結ばしむ。
神の聘女(よめ)よ、爾等は挙げられて、敵に対して力を受け、諸天使に似たる者と為りて、楽園に礙(さはり)なく生命の樹の果を楽しみ、萬善の泉の傍(かたはら)に在りて、世界の為に祈り給ふ。
受難女よ、爾等の記憶は恩寵の神聖なる光に輝きて、爾等を讃め揚ぐる者の思ひを照す。
生神女讃詞
睿智の居処(すまひ)、活ける宝座及び門たる至りて潔き童貞女よ、爾の大いなるは智慧に超ゆ、故に女等(をんなたち)は爾を女王(にょわう)として愛し、童女等は爾の後に従ひて主の前に携へられたり。
光耀歌
捧神者よ、爾等は新郎(はなむこ)の華麗を見んことを望みて、悉くの妨害に勝ちて彼に至り、死に属する身に在りて不死を證し給へり、故に宜しきに合(かな)ひて讃美せらる。
生神女讃詞
ハリストスよ、爾光栄を以て世界を審判せん時、我を宥め給へ、爾を生みし者と、爾の尊き致命女との祈祷に由りて、我が諸慾の幽暗(くらやみ)を散じ給へ、爾は至善にして大仁慈なる主なればなり。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。
血の流れにて己を飾りたる童貞女、讃美たる致命女よ、爾等は華麗の最(いと)美(うるは)しきハリストス我等の神に不朽に合せられたり、彼は爾等の無玷(むてん)なる童貞を不朽なる婚筵の宮、天の居処(すまひ)、手にて造られざる殿に護り給ふ。二次
讃美たる致命女、三者の為に戦ひし者よ、爾等は柔弱なる身と健全なる智慧とを有ちて、神゜の力を以て悪の魁(かしら)たる昔の蛇に勝ちて、その力の弱きを顕したり、故に勝利の栄冠を受け給へり。
讃美たる受難者よ、爾等は百体寸断せられ、火に焚かれ、鐵搭(くまで)にて割(さ)かれ、木に懸けられ、剣(つるぎ)にて斬られて、ハリストスを諱(い)まざりき。故に大いなる致命女とし、三者の為に戦ひし者として勝利の栄冠を受け給へり。
光栄、第二調。
無玷(むてん)の度生を為しし神智なる致命女よ、爾等は神の光照を懐(いだ)き、神の力を衣(き)せられて、裁判所に立ちて、迫害者の命(めい)を拒み、弁者の空言を辱かしめ、無神の敵を殪(たお)して勝利を得給へり。
今も、生神女讃詞。
神の母よ、我が盡くの恃みを爾に負はしむ、我を爾の覆の下に守り給へ。
十字架生神女讃詞
無玷(むてん)なる牝羊は己の羔が人の如く甘じて屠宰(ほふり)に牽かるるを見て、哭きて云へり、ハリストスよ、爾は我爾を生みし者を今子なき者と為さんとす、萬衆の贖罪主よ、何ぞ之を為したる、然れども人を愛する主よ、我智慧と言とに超ゆる爾の至大なる仁慈を歌頌して讃栄す。
もし挿句に光栄あらば、晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。