第十九編
二人或は多人の克肖致命者の総奉事
第十九編
二人或は多人の克肖致命者の総奉事
晩課
「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第八調。
克肖者よ、爾等は大いに励みて、勇ましく迫害者の攻撃を忍び、愛に縁りて剣(つるぎ)の下(もと)に生命(いのち)を付(わた)して、致命の栄冠を冠り、宜しきに合(かな)ひて諸天使と偕に歓ぶ。爾等の忍耐は大いにして、恩賜は更に大いなり。我等の霊の為に祷り給へ。
聖にして勇敢なる者よ、爾等は敬虔に生(いのち)を送りて、致命者の功労を立てたり、蓋勇ましく苦しみを厭はずして、斎を以て体を聖にし、愛を以て血を流せり、此の二つに由りて爾等の困苦の栄冠を冠らん為なり。我等の霊の救はれんことを祷り給へ。
ハリストスの克肖なる致命者よ、爾等は善く戦ひ、暫時の生命(いのち)を重んぜずして、甘んじて勇ましく肉体の念(おもい)を踏みたり、斯くハリストスの為に生命を終へて、宜しきに合(かな)ひて諸天使と共に住ひ給ふ。我等は爾等の記憶を尊みて祈る、我が霊が憐れみを蒙らんことを主に祷り給へ。
光栄、今も、生神女讃詞。
不当なる霊よ、爾は聊(いささか)も痛悔に傾かず、悪者を待つ火を懼れずして、誰にか似る者と為りたる、起きて獨(ひとり)速やかに助くる者を呼びて祷れ、童貞女母よ、我を詭譎(きけつ)の者の網より脱れしめんことを爾の子我等の神に祷り給へ。
十字架生神女讃詞
牝羊は羔(こひつじ)が甘んじて十字架の木の上に舒(の)べられしを見て、母として哀しみ、哭きて呼べり、吾が子よ、此の驚くべき顕見(あらはれ)は何ぞ、恒忍(ごうにん)なる者よ、萬衆に生命を施し、地上の者に復活を賜ふ主にして、如何ぞ殺さるる、吾が神よ、我爾の大いなる寛容を讃栄す。
もし之あらば、自調。光栄、第八調。
克肖なる諸神゜父よ、爾等は天使と等しき生(いのち)を送りて、修斎(しゅさい)と節制とを以て体を制し、之を神゜に服せしめて、主の戒めを行ふ者と為れり、斯く始めの像の華美を守りて、斎の勤労を修め、苦しみの勲功を立てて、二倍の栄冠にて飾られたり。我等の救はれんことを熱切に救世主に祷り給へ。
今も、生神女讃詞。
生神童貞女よ、爾の庇廕(おほい)は属神゜の醫治(いやし)なり、我等之に趨り附きて、霊の諸病より救はるればなり。
十字架生神女讃詞
主よ、種なく爾を生みし者は爾の十字架の前に立ちて、母として哭きて云へり、哀しい哉吾が子、神霊の日、目を照す光線よ、如何ぞ吾が目より隠れたる、全能者よ、起きて、凡そ爾を真の神及び人と承け認(と)むる者に爾の光を輝かし給へ。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞を誦すべし。
天の王は人を愛するに因りて地に現れ、人と偕に在(いま)せり、蓋浄き童貞女より身を取り、人の性を有ちて生れし者は、二つの性にて一つの位(くらい)ある獨一子なり、故に我等彼が実に全き神及び全き人なるを伝へて、ハリストス吾が神を承け認(みと)む、夫を識らざる母よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祈り給へ。
聖入。本日の提綱(ポロキメン)。克肖者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。
挿句(くづけ)の讃頌(スティヒラ)、第八調。
主よ、爾の克肖なる致命者は無形者に似る者と為りて、祈祷と節制とを以て肉体の諸慾を逐ひ、奇跡を以て輝き、衆人の心を照せり。彼等の祈祷に由りて爾の民に大いなる憐れみを與へ給へ。
句 聖人の死は主の目の前に貴し。
克肖なる致命者は誠実なる熱心を顕して、アリイ及びネストリイの異端を全く滅ぼし、正教の者の保護者と為りて、衆人より光栄を受けたり。ハリストスよ、彼等の祈祷に因りて爾の民に大いなる憐れみを與へ給へ。
句 神を畏れ、其誡めを極めて愛する人は福(さいはひ)なり。
克肖なる致命者よ、爾等は節制の動かざる星と顕れて、修道者の霊を照し、悪鬼の幽暗(くらやみ)を逐ひ給へり。故に逝世の後に讃美せられて、凡そ爾の聖なる記憶を行ふ者の救はれんことを祷り給ふ。
光栄、第六調。
ハリストス我が神の克肖なる致命者よ、爾等福(さいはひ)なり、爾等は克肖なり、義を愛して恩寵を承けしに因る、致命者なり、剣(つるぎ)は爾等をハリストスの愛より離さざりしに因る、故に爾等は喜ぶ、天には爾等の報賞(むくい)多ければなり。
今も、生神女讃詞。
至浄なる生神童貞女よ、爾に趨り附く者は一人も恥を得て爾より出づるなし、即ち恩寵を求めて、益ある求めに適ふ賜(たまもの)を受く。
十字架生神女讃詞
ハリストスよ、爾を生みし者は爾の釘せらるるを見て呼べり、吾が子よ、我が見る所の奥密は何ぞ驚くべき、生命を賜ふ主よ、如何ぞ身にて懸けられて、木の上に死する。
讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。
我が先祖の神、常に爾の寛容に由りて我等に行ふ主よ、爾の仁慈を我等より離さずして、彼等の祈祷に因りて、我が生命を平安に治め給へ。
光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。
早課
「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。
第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
爾等は地上の過ぎ易き逸楽を顧みず、世の華麗と暫時の楽しみとを忌みて、野に居ることを愛せり、此に由りて致命者及び修斎者(しゅさいしゃ)の会に加へらるるを得たり、爾等の諸僕を救はんことを彼等と偕に祈り給へ。 二次
光栄、今も、生神女讃詞。
女宰よ、ヘルワィムの座に坐し、父の懐(ふところ)に居る主は聖なる宝座に於けるが如く爾の懐に坐し給ふ、蓋神は人体を取りて、実に萬民の上に王と為り給へり。我等今思ひを全うして彼を歌ふ、爾の諸僕の救はれんことを彼に祈り給へ。
第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。
福たる(某)よ、爾等は斎を以て授洗イオアンの風習(ならはし)及びフェスワのイリヤの徳に效(なら)ひて、無形の者の如く度生し、諸天使と偕に聖三者を讃栄して、勇ましく悪鬼の攻撃に勝てり、故に又(また)神妙に受難の功を立てて、盛んにハリストス神の光栄を輝かし給へり。彼に祈りて、愛を以て爾等の聖なる記憶を祭る者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
我等萬族は爾童貞女、女の中に獨(ひとり)種なく身にて神を生みし者を讃揚す、蓋神性の火は爾の内に入り、爾は造成者及び主を幼児(をさなご)として乳(ち)にて養ひ給へり、故に天軍及び我等人類は宜しきに合(かな)ひて爾の至聖なる産を讃栄して、同心に爾に呼ぶ、ハリストス神に祈りて、熱切に爾の光栄を歌ふ者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。
「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。
克肖なる諸致命者、修道士の教師、天使等の対話者よ、我等爾等を讃美して爾等の聖なる記憶を尊む。
抜粋聖詠
「我切に主を恃みしに、彼我に傾きて。」
多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。
光明なる諸神゜父よ、爾等は明(あきらか)に三者の光に輝かされて、逸楽の深き暗(やみ)を棄て、神聖なる行ひを以て信者の心を照す燈(ともしび)と為り、斎と苦しみとを以て福たる者と現れたり。故に我等は今日爾等の光を施す尊貴なる記憶を尊みて、同心に呼ぶ、神を伝へし至栄なる者よ、愛を以て爾等の聖なる記憶を尊む者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祷り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
讃美たる者よ、爾は造物主の純潔なる聘女(よめ)とし、贖罪主の夫に與らざる母とし、撫恤者を承くる器として、我自ら知りて不法の汚はしき居所(すまひ)及び悪鬼の玩弄(がんろう)と為りし者を速やかに其悪計より脱れしめて、諸徳の光明なる居所(すまひ)と為し給へ。光を施す不朽なる童貞女よ、我が慾の雲を散じて、爾の祈祷を以て我を上の晩(く)れざる光に與らしめ給へ。
品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。
提綱(ポロキメン)
聖人の死は主の目の前に貴し。句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。
「凡そ呼吸ある者。」
克肖致命者の福音経、巻末に載す。
第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第四調。
克肖なる致命者よ、爾等は輝ける光線にて己の霊を照し、ハリストスを己の心に有ちて、諸徳を以て地上を装飾し、晩(く)れざる日の如く異邦民を照して、致命者の華美を以て我等を飾り給ふ。
規程(カノン)、第四調。
第一歌頌
イルモス 古(いにしえ)のイズライリは足を濡らさずして海の紅(くれない)の淵を渡り、野にてモイセイの十字形の手にてアマリクの力に勝てり。
至福なる者よ、爾等は斎に由りて光明なる者と為り、爾等の血を流すに由りて神の光栄を輝かす燈(ともしび)と現れたり、故にハリストスの修斎者(しゅさいしゃ)及び致命者と偕に喜び給ふ。
睿智者よ、爾等は先に己の涙の海に無形のファラオンを溺らし、後に血の流れの中に之を沈めて、淪亡(ほろび)に付(わた)し給へり。
克肖なる諸神゜父よ、爾等は修斎者(しゅさいしゃ)の生命(いのち)を送りて、ハリストスの為に屠られたり、我等は致命者を讃め揚げて、贖罪主我が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。
生神女讃詞
生神童貞女よ、本性にて萬有の内に容れられぬ主は爾の内に入り、慈憐に由りて地上の者と為り給へり、其言ひ難き仁慈に縁りて地上の者を救はん為なり。
第三歌頌
イルモス ハリストスよ、我等は智慧と能力(ちから)と富裕(とみ)とを以て誇るにあらず、乃ち爾、父と一性なる智慧を以て誇る、人を愛する主よ、爾の外(ほか)に聖なる者なければなり。
福たる者よ、爾等は謙卑の心を以て神の悦びを得、剣(つるぎ)にて斬られ仆されて、敵の高慢(たかぶり)を仆し給へり。
睿智にして克肖なる致命者よ、爾等は未来の永生を仰ぎて、下(しも)に引く所の暫時なる朽つべき諸事を棄てたり、故に讃美せらる。
救世主よ、捧神者は爾の権能を誇りと為して、勇ましく悪敵の軍に勝ち、爾の為に命を致して、二倍の功労を顕しし者として栄冠を冠れり。
生神女讃詞
至聖なる神の言を生みし至浄なる者よ、我等爾無玷(むてん)なる童貞女を讃美する者の霊と体とを聖にし給へ。
坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
克肖なる者よ、爾等は地上に旅客及び寄寓者と顕れて、野に幕を張り、熱切に勤労して、諸徳の衣にて裸体を飾り、ハリストスの苦しみに效(なら)ふ者と為りて、屠殺(ほふり)を忍び給へり。
光栄、今も、生神女讃詞。
我等罪なる賤しき者は今熱心にして生神女に趨り附き、伏し拝み、痛悔して心の底より籲(よ)ばん、女宰よ、我等を憐みて助けよ、我等多くの罪の為に亡ぶるに因りて速やかに至り給へ、爾の諸僕を空しく返す勿(なか)れ、我等獨爾を頼みとすればなり。
十字架生神女讃詞
童貞女及び牝羊は己より種なく生れし羔(こひつじ)が十字架の上に戈(ほこ)にて刺されたるを見て、哀しみの矢に刺され、痛く哭きて呼べリ、此の新たなる奥密は何ぞ、獨生命の主にして如何ぞ死する、求む、復活して、陥りし原祖を起し給へ。
第四歌頌
イルモス 教会は爾義の日が十字架に挙げられしを見て、竝(なら)び立ちて正しく呼べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。
至福なる者よ、爾等は肉体の慾に服従せずして、敵を服従せしめ、剣(つるぎ)にて殺されて、共に喜びて不死の生命(いのち)に移されたり。
己の旨に由りて節制を以て死の先に己を殺しし克肖者よ、爾等は死の後にも生きんことを信じて、不法者より強ひて剣を以て残酷に殺されたり。
諸神゜父よ、爾等は不法者より剣を以て殺されて、此の生命より離れたれども、出づる前に甚しき困苦を忍びて、已(すで)に世の為に死者と為り給へり。
生神女讃詞
永遠の神は童貞女より人体を取り、新たなる嬰児(をさなご)と現れて、人類を新たにし給ふ、我等彼に呼ばん、主よ、光栄は爾の力に帰す。
第五歌頌
イルモス 我が主よ、爾は光、信じて爾を崇め歌ふ者を闇(くら)き無智より引き出す聖なる光にして、世界に来り給へり。
爾等は美(うるは)しき楽園と現れて、生命の樹たる主を爾等の中に有てり、彼は爾等の血を潔き祭として受け給へり。
捧神者よ、爾等は血の滴(したたり)を涙に交へて、其流れの中に凶悪なる蛇を沈め給へり。
福たる者よ、爾等は神の華麗を見るを得て、勤労及び困苦に易へて永遠の楽しみを受け給へり。
生神女讃詞
潔き神の聘女(よめ)よ、爾は言と智慧とに超えて神を生み、生みて後にも生む前の如く童貞女に止まり給へり。
第六歌頌
イルモス 憐れみに由りて爾の脅(わき)より流れし血にて悪魔の祭の血より浄められし教会は爾に呼ぶ、主よ、讃揚(ほめあげ)の声を以て爾を祭らん。
爾等は斎を以て世情より解かれ、受難の死を以て肉体より解かれて、主宰の過ぎ去らぬ華麗に召されたり。
爾等は高尚なる度生を以て山の如く現れて、諸山と凡の造物とを滅ぼさんと欲する者をハリストスの力に由りて己の足下に仆(たお)し給へり。
勇敢なる聖神゜父等よ、爾等は節制と勤労とを以て肉体を制し、血を流してハリストスに捧ぐる祭と為して、法に合ひて栄冠を受けたり。
生神女讃詞
童貞女よ、爾に祷る、爾の眠らざる祈祷を以て我が諸慾の息まざる暴風(あらし)を眠らせ、我に罪の重き眠りを以て寝(いぬ)るを許す勿れ。
小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
神智なる克肖致命者よ、爾等は足を濡らさずして多くの波を度(わた)り、爾等の涙の流れの中に無形の諸敵を深く沈めて、奇跡の恩賜を受けたり。我等衆の為に絶えず祷り給へ。
同讃詞(イコス)
克肖なる致命者よ、爾等は生(いのち)を施す死の状を以てハリストス神の苦しみに效(なら)ひて、先には善なる斎に於て、後には受難に於て地上に肉体を殺せり、故にハリストスは致命者及び克肖者と同族なる爾等に二倍の栄冠を冠らせ、爾等の為に天の居所(すまひ)、爾等が今喜びて楽しむ永遠の所を備へたり。求む、我等衆の為に絶えず祷り給へ。
第七歌頌
イルモス アウラアムの少者はペルシヤの爐(いろり)に在りて、焔よりも強く敬虔の愛に爇(や)かれて呼べり、主よ、爾が光栄の宮に於て爾は崇め讃めらる。
爾等は諸徳の光線を以て光り、聖にせられし受難を以て輝きて、暮れざる光に移り、晝(ひる)の子と為り給へり。
聖なる者よ、爾等は甘んじて世俗の逸楽を離れ、肉体を以て神妙に人人に現れし主に属する者と為りて、未来の不朽なる福楽を獲給へり。
捧神なる諸神゜父に受難者の程(みち)を終へしめて、彼等を爾の天の国に與る者と現しし神よ、爾は崇め讃めらる。
生神女讃詞
昔「マンナ」を納(い)るる壺は爾己(おのれ)の腹に生(いのち)を施す「マンナ」を納れし者を実に明(あきらか)に預象せり、至りて無玷(むてん)なる女宰よ、爾は女の中に祝福せられたり。
第八歌頌
イルモス ダニイルは獅子穴に在りて手を伸べて、獅子の口を閉ざし、敬虔の篤き少者は徳を帯び、火の力を消して呼べり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
修斎(しゅさい)の徳に飾られたる克肖なる致命者の大いなる会は今日衆を以て讃め揚ぐる会と為し、且彼等と偕にハリストスを歌はしむ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
爾等は羔(こひつじ)の如く立ちて、苛虐者(くるしめびと)の剣(つるぎ)にて斬られ、屠られし言に完全なる祭として献げられ、冢子(ちょうし)の居所(すまひ)に現れて歌ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
克肖者よ、爾等は体と霊とを主に奉りて、節制と修斎(しゅさい)との功労を立て、血の流れを以て迫害者の悪の海を涸らして歌ふ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
生神女讃詞
神の恩寵を蒙れる潔き者よ、爾に縁りて始の楽園は復(また)開かれ、始めに定罪せられたる人は其中に入れられ、実に神成(しんせい)せられて呼ぶ、主の悉くの造物は主を崇め讃めよ。
第九歌頌
イルモス 童貞女よ、手にて斫(き)られざる隅石ハリストスは、爾斫られざる山より斫り分けられて、離れたる性を合せ給へり、故に我等楽しみて、爾生神女を崇め歌ふ。
皆来りて、聖にせられし克肖なる諸神゜父、敬虔を以て野に及び洞(ほら)に居り、勇敢を以て苦しみを受けし者を大声(たいせい)に讃め揚げん。
修斎者(しゅさいしゃ)受難者よ、爾等の勤労は讃美たる哉、爾等の戦ひ、此を以て詭譎者(きけつしゃ)を斃(たふ)しし者は奇妙なる哉、爾等の苦しみ、法に遵(したが)ひて之を受けて、此に因りて、栄冠を冠りし者は奇異なる哉。
爾等の聖なる記憶は爾等がハリストスの為に尽くしし勤労の光線にて輝き、全能なる聖神゜の恩寵に因りて衆人の心を照す。
生神女讃詞
至浄なる女宰よ、ヘルワィム等は言ひ難く彼等の上に坐し給ふ言、萬物より上なる主が幼児(をさなご)として爾の母たる手に抱かるるを見て驚く。
光耀歌
諸神父の誉れ、致命者の光栄たる奇異なる克肖致命者の大数の神゜父等よ、爾等は節制の勤労を以て悪の魁(かしら)たる蛇を全く殺し、終りに至りて致命の栄冠を受け給へり。
生神女讃詞
童貞女よ、爾の産の智慧に超ゆる至栄なる奇跡は凡の天使と人人の智慧とを驚かす、爾は童貞女にして生み、生みて後前(さき)の如く童貞女に止まり給へり、嗚呼神妙なる奥密、嗚呼奇異にして至栄なる産や。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第四調。
我等は欣ばしく睿智なる致命者、克肖なる諸神゜父を歌はん、蓋彼等はハリストスの命(めい)に従ひて、凡の汚らはしき奉事を廃し、聖を以て敬虔を以て神に役事し、勇敢にして迫害者の面前に惟一の神及び主を承け認(と)めて、上より栄冠を受けたり。
讃美たる者よ、爾等は下(しも)に引く度生の逸楽と栄華とを暫時の者として遺て、ハリストスの華麗に熱して彼に著(つ)き、芳ばしき花の如く栄え、不朽の国の栄冠にて美(うるは)しく飾られたり。
偶像の汚らはしき迷ひを勇ましく棄てて、迫害者の無智を辱かしめし者よ、爾等は世を厭ひて、世より上なる者と現れ、冢子(ちょうし)の教会に合せられて、神の前に立ちて、諸天使と偕に絶えざる歌を歌ふ。
光栄、第六調。
福たる克肖致命者よ、爾等は潔浄の衣にて飾られ、神聖なる祈祷にて照され、童貞女より生れしハリストスの己の内に居るを有ちて、此の世の愛に心を奪はれず、肉慾の逸楽に己を委ねざりき、乃ち勇ましく火の中に入りて、神聖なる火を以て暫時の苦しむる火を滅(け)し給へり。求む、我等も地獄の永遠の火を免れん為に祈り給へ。
今も、生神女讃詞。
生神童貞女よ、我等は爾より身を取りし者の神なるを悟れり、彼に我等の霊の救ひの為に祈り給へ。
十字架生神女讃詞
救世主よ、潔き童貞女爾の母が至りて不法なる人人の非義に爾を木に釘するを見る時、シメオンが預言せし如く、其霊は剣にて刺されたり。
もし挿句に光栄あらば、晩課の、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞を誦せよ。
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