第十五編
二人或は多人の致命者の総奉事
晩 課
「主や爾によぶ」に讃頌(スティヒラ)、第四調
讃美たる者よ、爾等は聖神に照らされて、世君(せくん)と戦はん為に己を備へ、神の助けに因りて進みて、勇ましくその悪計に勝ちたり。故に我等今日爾等の至りて光明なる記憶を行ひて、職として讃美を以て爾等の苦しみを尊む。
聖なる者よ、爾等は傷と諸々の苦しみとに己を付(わた)して、霊 動き無く留まり、灯の如く属神°の熱に燃えて、恩寵を以て信者の心を照し給へり。故に凡の族(ぞく)、凡の齢(よわい)は爾等の聖なる記憶を祭りて、歌を以て主を讃栄す。
救世主の勇敢なる致命者よ、爾等は己の奇跡の光にて衆造物を照し、信を以て爾等に趨り附きて爾等の保護を求むる者より種々の苦難と憂愁との暗(やみ)を逐ひ給う。故に受難者よ、我等は信を以て爾等の聖にして光明なる慶賀を行う。
光栄、今も、生神女讃詞
女宰よ、我悪鬼の攻撃に因りて滅びの穴に墜されし者を起して、諸徳の石の上に堅め、敵の悪謀を破りて、我に爾の子我等の神の命(めい)を行ふを得しめ給へ、我が審判の日に於いて赦罪を得ん為なり。
十字架生神女讃詞
至浄なる者は人を愛する主ハリストスの十字架に釘せられ、戈(ほこ)にて脇の刺さるるを見て、哭きて呼べり、吾が子よ、此れ何ぞ、恩を知らざる民は爾が彼等に為しし善に易へて何をか爾に報いたる、至愛なる者よ、胡為(なんす)れぞ我を子なき者として遺(のこ)す、慈憐なる主よ、我爾が甘んじて受くる釘殺(ていさつ)を奇とす。
もし之あらば自調。光栄、第三調
ハリストス神よ、爾の致命者の互いの兄弟の愛は如何に善、如何に美なる、蓋し肉体の生産(うまれ)に因りて兄弟たらざりし者に唯一の信は兄弟の愛を含めて、血を流すに至るまで之を守ることを教へたり。ハリストス神よ、彼等の祈祷に因りて、我等の霊を救い給へ。
今も、生神女讃詞
生神女、爾に祈る衆人の転達者よ、我等爾に因りて勇みを得、爾を以て誇りと為す、我が悉くの恃みは爾に在り、爾より生れし者に爾の不当なる諸僕の為に祈り給へ。
十字架生神女讃詞
純潔なる童貞女よ、爾より生まれし者が木の上に懸けられしを見て、爾呼びて云へり、吾が至愛なる子よ、爾人類を飾り給ひし者の光明なる華麗は何処(いづこ)にか隠れたる。
もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭りを行はば、今も、復活の生神女讃詞「至尊き者よ、我等如何で爾が神人を生みしに驚かざらん。」
聖入。本日の提綱(ポロキメン)。致命者の喩言(パリミヤ)三編、巻末に載す。
挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第四調
光栄にして讃美たる受難者よ、爾等は最(いと)明らかなる星の如く神聖なる光を以て、地の四極を照らし、悪鬼の昧(くらみ)と害を為す諸欲と、患難とを退く。故に我等今日集まりて、爾等の光明にして光を施す、聖なる慶賀を讃め揚ぐ。
(句)義人は呼ぶに、主は之を聴き、彼らを悉くの憂いより免れしむ。
神妙にして睿智なる受難者は聖にせられし歌を以て尊まるべし、蓋し彼らは勇ましく諸敵の前に造られざる三者を伝へ、血の流れにて多神の迷いを滅(け)して、凋(しぼ)まざる光栄を獲たり。
(句)義人には憂い多し、然れども主は之を悉く免れしめん。
至福にして大名(たいめい)なる致命者は不法なる王の霊なき諸神に伏拝して尊敬を帰すべき不法の命(めい)を睿智を以て辱めて、法の為に苦しみを忍耐し、勝利の栄冠を冠りて、世界の為に祈り給う。
光栄、第六調。
致命者を愛する人々よ、来たりて、神より栄冠を受けたる致命者の隊、ハリストスの為に屠られし無玷(むてん)の犠牲(いけにえ)たる聖にせられし選ばれたる軍の至りて尊き記憶を行ひて、彼等に呼ばん、無神の諸敵の残忍を破りて、爾等の祈祷を以て敬虔の民を凡の患難より救い給へ。
今も 生神女讃詞
生神童貞女よ、我等は爾より身を取りし者の神なるを悟れり、彼に我等の霊の救ひの為に祈り給へ。
十字架生神女讃詞
無玷(むてん)なる神の聘女(よめ)は彼より生まれし者の定罪せられて十字架に釘せらるるを見て呼べり、吾が子よ、光栄は爾の恒忍(ごうにん)及び爾の慈憐に帰す。
讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第一調。
人を愛する主よ、祈る、爾の為に苦しみを受けし諸聖人の受難に由りて、我等の悉くの病を醫し給へ。
光栄、今も、生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。
早 課
「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。
第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
神聖なる致命者、ハリストスの軍士よ、爾等は最(いと)大いなる星として、常に尊き教会の穹蒼(おおぞら)を照して、信者を輝かし給ふ。二次。
光栄、今も、生神女讃詞。
至浄なる童貞女よ、我等爾の帲幪(おおい)の下に趨り附く者の祈祷を納れて、人を愛する主に爾の諸僕を救はんことを絶えず祈り給へ。
第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
奇異なる受難者よ、爾等は勇敢なる心を以て苦しみを忍び、火と水とを過(とお)りて、救いの広きに至りて、天の国を嗣ぎたり、睿智なる大致命者よ、その中に在りて我等のために神聖なる祈祷を捧げ給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
女宰生神女よ、我等感謝の心を抱きて爾を歌ひ、熱切に爾の慈憐を求めて、呼びて云ふ、至聖なる童貞女よ、急ぎて爾の諸僕を見ゆると見えざる敵及び凡の苦難より救い給へ、爾は我等の保護者なればなり。
「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。
聖なる致命者よ、我等爾を讃揚して、爾等がハリストスの為に忍びし尊貴なる苦しみを尊ぶ。
抜粋聖詠
「神は我等の避所なり、能力なり。」
多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。
福たる聖受難者よ、爾等は敵に縛られ、曳かれて獄(ひとや)に閉ざされ、長くその中に在りて、信に守られて害を受けざりき、剣に由りて肉体より解かれて、神聖なる愛を以てハリストスにつながれたり、故に光体の如く世界に輝きて、聖神の恩寵を以て衆を照し給う。愛を以て爾等の聖なる記憶を祭る者に諸罪の赦しを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。二次
光栄、今も、生神女讃詞。
我等万族は爾童貞女、女の中に独種なく身にて神を生みし者を讃揚す、蓋神聖の火は爾の内に入り、爾は造成者及び主を幼児(おさなご)として乳(ち)にて養ひ給へり、故に天軍及び我等人類は宜しきに合ひて爾の至聖なる産を讃栄して、同心に爾に呼ぶ、ハリストス神に祈りて、信を以て爾の至聖なる産に伏拝する者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。
品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。
提綱(ポロキメン)
義人は呼ぶに主は之を聴く。(句)義人には憂い多し、然れども主は之を悉く免れしめん。
「凡そ呼吸ある者。」致命者の福音経。
第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第二調。
嗚呼、祭を愛する者よ、来たりて、受難者の記憶に於て主の前に喜ばん、来たりて熱切に歌いて、ハリストスの受難者、偶像の迷ひを亡ぼして、裁判所の中に勇ましくハリストスを伝へし者を讃め揚げん。嗚呼至福なる大受難者よ、我等の霊の為に絶えず祈り給へ。
もし四十人の致命者ならば、左の提綱(ポロキメン)を誦せよ。
我等は火と水との中に入りしに、爾我等を引き出して、安息に入れ給へり。
(句)銀を練るが如く、爾我等を練り給へり。
讃頌(スティヒラ)、第二調。
ダワィドは聖詠の中に預言者として呼べり、我等は火と水との中に入りしに、爾我等を引き出(いだ)して安息に入れ給へりと、ハリストスの致命者よ、爾等は実体に言を行ひて、火と水とを過(とお)りて、天の国に入り給へり。故に四十人の受難者よ、我等の大いなる憐れみを賜はんことを祈り給へ。
規程(カノン)、第五調。
第一歌頌
イルモス 我等は、民に足を濡らさずして海を渡らしめ、ファラオンを其全軍と偕に溺れしめし救世主 神、獨彼に歌はん、彼光栄を顕したればなり。
信者よ、我等敬みてハリストスの軍士及び受難者を迷ひを滅ぼしし光明なる勝利者として歌ひて、凱歌(かちうた)を神に奉らん、彼光栄を顕したればなり。
受難者よ、爾等は地上に勇ましく勤労して、苦しみを忍び、天上に栄冠を受けて、同心に凱歌(かちうた)を主に奉る、彼光栄を顕したればなり。
爾等は信を以て霊を一(いつ)に合せて、迷ひを退け、栄冠を冠る勝利者と現れて、同心に凱歌(かちうた)を主に奉る、彼光栄を顕したればなり。
生神女讃詞
至浄なる神の母よ、父の懐(ふところ)を離れずして爾より身を取りし神に、其造りし物を凡の患難より救はんことを絶えず祈り給へ。
第三歌頌
イルモス ハリストスよ、爾の十字架の力にて我が思慮(おもひ)を堅め給へ、我が爾の救ひを施す升天を歌ひ讃めん為なり。
軍士よ、爾等はハリストスの智慧に飾られて、爾の血の流れの中に不虔なる敵を溺らし給へり。
讃美たる致命者よ、爾等は己の肉体を残酷なる甚だしき苦しみに付(わた)して、信を以て神聖なる嗣業を受け給へり。
受難者よ、爾等は苦しむる者の命(めい)に因りて石を投ぐるを以て砕かれて、堅く敬虔の教へを守り給へり。
生神女讃詞
純潔無玷(むてん)なる者よ、胎内より出でし主に諸致命者と偕に常に祈りて、爾を歌ふ者を悪魔の誘惑(いざなひ)より救はんことを求め給へ。
坐誦讃詞(セダレン)、第四調。
ハリストスの勇敢なる軍士は善き戦ひを戦ひて、血の流れの中に凶悪なる敵を全く溺らせり。彼等は石にて砕かれ、剣にて斬られ、火にて焚かれ、水の中に投げられて、厳かに戴冠者と為れり、故に尊まれて、熱心に讃栄せらる。
光栄、今も、生神女讃詞。
女宰生神童貞女よ、我等爾の諸僕は感謝の心を抱きて、常に黙(もだ)さずして爾の慈憐を歌ひ、呼びて云ふ、至聖なる童貞女よ、急ぎて我等を見ゆると見えざる敵及び凡の患難と困苦より脱れしめ給へ、爾は我等の保護者なればなり。
十字架生神女讃詞
童貞女及び牝羊は彼より種なく生れし羔(こひつじ)が十字架に在りて、戈(ほこ)にて刺さるるを見て、哀しみの矢に刺されて、傷(いた)ましく呼べり、此の新たなる奥密は何ぞ、如何ぞ爾は生命(いのち)の惟一の主として死する、然らば陥りし原祖を起して、復活し給へ。
第四歌頌
イルモス 我十字架の力の風声(ふうせい)、天堂が是れにて啓かれしを聞きて籲(よ)べり、主よ、光栄は爾の力に帰す。
受難者の会は神を愛する心を守り、救世主の恩寵に堅められて、神に逆ふ敵に勝ちたり。
ハリストスの受難者の神の召したる隊は神に逆ふ不虔なる敵の大数に勝ちて歌へり、主よ、光栄は爾の力に帰す。
受難者は獄(ひとや)に在りて近づき難き光を観、神の力に堅められて、多神の偶像の迷ひの幽暗(くらやみ)を散じたり。
生神女讃詞
童貞女よ、至上者の能(ちから)は爾を蔭(おお)ひて、爾を楽園と為せり、生命(いのち)の樹たる中保者及び主は其中に在(いま)す。
第五歌頌
イルモス 主よ、我等夙に興(お)きて爾に籲(よ)ぶ、我等を救ひ給へ、爾は我等の神なればなり、爾の外(ほか)他の神を知らず。
致命者は聖神゜の言に養はれて、言なき偶像を虚しくせり。
受難者よ、爾等は光を施す星、又香気(こうき)を放つ信の華なり。
讃美たる聖致命者よ、爾等は至上者の田(た)の穂(ほ)にして、苦しみの鎌にて刈らるる者なり。
生神女讃詞
生神女よ、爾が生みし主に絶えず祈りて、熱切に爾を歌ふ我等の霊の救はんことを求め給へ。
第六歌頌
イルモス 主よ、淵は我を囲み、鯨は我の為に柩となれり、惟(ただ)我爾人を愛する者に籲(よ)びしに、爾の右の手は我を拯(すく)ひ給へり。
致命者は楽しみて呼べり、仁愛なる主宰よ、爾の手に我等の霊を受けて、之を安息せしめ給へ、我等獨爾大仁慈なる主を愛すればなり。
人を愛する主よ、爾の致命者の会は馳すべき程(みち)を尽くして、諸天使の同住者と為りて、今我等の霊の救はれんことを祈る。
致命者の光栄、致命者の華麗、致命者の神に選ばれたる会よ、爾等に趨り附く我等衆の救はれんことを熱切に祈り給へ。
生神女讃詞
無玷(むてん)なる童貞女よ、爾の種なき胎孕(はらごもり)の奇跡は、何の言か述ぶるを得(う)る、蓋爾は慈憐に由りて我等に来たりし神を孕み給へり。
小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
神聖なる致命者よ、爾等は輝ける光体と現れて、奇跡の光を以て衆造物を照し、諸病を解き、深き暗(やみ)を常に払ひて、ハリストス神に絶えず我等衆の為に祈り給ふ。
同讃詞(イコス)
神福なる致命者、美(うるは)しき会、光明にして神聖なる光体よ、爾等は常に大いなる光の前に立ちて、彼所(かしこ)より発する神性の暮れざる光照に照され、且 神成せられて、信を以て爾等の聖なる記憶を行ふ者を照し、諸慾の幽暗(くらやみ)と、患難と、凡の悪より脱れしめて、絶えず我等衆の為に祈り給へ。
第七歌頌
イルモス 火の爐(いろり)の中に歌へる少者を救ひ給ひし我が先祖の神は崇め讃めらる。
ハリストスよ、爾の受難者は爐(いろり)に在りて呼べり、我が先祖の神は崇め讃めらる。
受難者は三者の光に照され、楽しみて己の霊を付(わた)して歌へり、我が先祖の神は崇め讃めらる。
栄冠を冠れる受難者よ、楽しみを以て神の前に立ちて、我等の為に彼に祈り給へ。
生神女讃詞
生神女よ、我等は爾を我が救ひとして祈る、爾より身を取りし主に我等の為に祈り給へ。
第八歌頌
イルモス 世世の前(さき)に父より生れし子及び神、末(すえ)の時に童貞女母より身を取りし者を、司祭等は歌へ、人人は萬世に崇め讃めよ。
我等信者の祈願は致命者に適ふべし、然らば我等は彼等の嗣業に與かる者と為りて、ハリストスを歌ひて、世世に彼を崇め讃めん。
恒忍(ごうにん)なる受難者の会は心の喜びを以てハリストスより美(うるは)しき栄冠を受けて、楽しく歌ひて、世世に彼を崇め讃む。
讃美たる者よ、爾等は己の血の流れに染みて、天に於て世世にハリストスと偕に王と為りて、敬虔に歌ひて、世世に彼を崇め讃む。
生神女讃詞
潔き生神女よ、爾はヘルワィムより上なる者と現れたり、彼等の上に坐する主を爾の腹に宿したればなり、我等地上の者は無形の者と偕に彼を讃栄して、世世に崇め讃む。
第九歌頌
イルモス 爾悟り難く解き難く神の母と為り、時の中に於て時に縁らざる主を言ひ難く生みし者を、我等信者は心を一(いつ)にして崇め讃む。
至栄なる致命者よ、爾等はハリストスの為に苦しみを忍び給へり、今彼の前に立ちて、衆人の救ひの為に祈り給へ。
勝たれぬ者よ、爾等は堅固なる力を以て迷ひの固めを破りて、今天の居所(すまひ)に諸天使と偕に居るを得たり。
至尊なる者よ、爾等は致命者の法に合(かな)ふ風習(ならはし)を以て傲慢なる苛虐者(くるしめびと)に勝ちて、義に合(かな)ふ栄冠を受け給へり。
生神女讃詞
生神女ハリストス神の母よ、慶べ、爾が生みし主に諸致命者と偕に祈りて、信を以て爾を歌ふ者に諸罪の赦しを賜はんことを求め給へ。
光耀歌
受難者よ、爾等は光明なる楽園の居所(すまい)に上げられて,多種の苦しみにて織られたる輝ける衣を衣(き)て、造物主の宝座の前に立ちて、衆人の為に熱切に祈り給ふ。
生神女讃詞
潔き童貞女よ、爾の権能の帲幪(おほひ)を以て我等爾の諸僕を常に敵の悪謀に悩まされぬ者として護り給へ、我等獨爾を患難の中に避所(かくれが)として獲たればなり。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第八調。
ハリストスの讃美たる致命者よ,爾等は窘逐者の強暴と苦しき死とを無きが如くなして、勇敢と智慧とを以て己を戦ひの為に備へ、勝利の光栄を蒙(こうむ)りて、衆義人に加へられたり、彼等と偕に我等常に爾等を讃美讃揚す。二次
ハリストスの至福なる致命者よ、爾等は甘んじて己を屠宰(ほふり)に付(わた)して、爾等の血を以て地を聖にし、逝世を以て空気を照して、今天に、暮れざる光の中に住ひて、常に我等の為に神に祈り給ふ。
ハリストスの勝たれぬ致命者よ、爾等は苦しみの炎を恩寵の神聖なる露に由りて難(なやみ)なく歴(へ)て、静かなる水の邉(ほとり)に居るを得て、勝利の栄冠を受け給へり。故に我等今日欣ばしく爾等の聖なる記憶を祭りて、ハリストスを讃栄す。
光栄、第八調。
爾等はハリストスの軍士と為りて、地上の美(うるは)しき諸事を棄て、十字架を肩に任ひ、多種の苦しみを以て彼に従ひて、諸王と多くの窘逐者との前に彼を諱(い)まざりき。天使等は勝利の冠にて爾等の首(こうべ)を飾り、爾等は勇ましき霊を以て楽しみて大いなる宮に入り給へり。故に衆人の救主の前に勇みを有ちて、我等の霊の為に祈り給へ。
今も、生神女讃詞。
我等は天使首ガウリイルの聲を以て言はん、神の母、世界の為に生命を賜ふハリストスを生みし者よ、慶べ。
十字架生神女讃詞。
主よ、日は爾義の日が木に懸けられしを見て、光線を隠し、月も光を幽暗(くらやみ)に変じ、純潔なる爾の母は心裂かれたり。
もし挿句に光栄あらば、之を誦せよ。今も、晩課の生神女讃詞、或は十字架生神女讃詞。
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