第十編
 一人の成聖者の総奉事



 晩課

 「主よ爾に籲(よ)ぶ」に讃頌(スティヒラ)、第六調。

捧神者よ、爾は聖神゜の聖なる傅膏(ふこう)を受けて、全く聖にせられ、至栄なる真(まこと)の成聖者として、常に欣(よろこ)ばしく至聖所に入り、神元(しんげん)の光照に照されて、聖機密の恩寵に與り、毅然として我等の霊の為に祈り給ふ。

常に記憶せらるる至福なる成聖者(某)よ、爾の度生は諸徳の光に輝きて、爾は信者を照し、迷ひの闇を散じたり、真(まこと)の光明なる日と現れたればなり、今爾は暮れざる光の輝く所に入り、聖神゜の恩寵に因りて晝(ひる)の子と為り給へり、故に我等爾の神聖にして光明なる記憶を敬虔に行ひて、愛を以て尊む。

至栄にして神智なる成聖者(某)、愛を以て爾の記憶を尊む者の祈祷者よ、爾の霊は常に神に進み、信に飾られて、光明なる者と現れたり、睿智なる神゜父、輝く燈(ともしび)よ、爾は朽壊と死とに属する身に在りて不朽を獲んことを務めて、無形者の光照を得、諸慾に與らざる者と為りて、無慾に飾られたり。

  光栄、今も、生神女讃詞。

律法の成就よ、慶べ、聖なる三者の宮、不朽なる聘女(よめ)よ、慶べ、萬有の王の神聖なる乗輿(のりもの)よ、慶べ、無形の火の熾炭(やけずみ)を鉗(はさみ)の如く爾の手にて執りし者、新たなる楽園、鎖(とざ)されし園、神聖にして至りて光明なる筵(えん)、無垢(むてん)の雌鴿(めばと)、至上者の宝座、神の無形なる榻(とこ)、聖神゜の臨みたる少女よ、慶べ。

 十字架生神女讃詞

昔無垢なる牝羊及び無玷(むてん)なる女宰は己の羔(こひつじ)が十字架に挙げらるるを見し時、母として哭き、驚きて呼べり、甘愛なる子よ、斯の新たにして神妙なる顕見(あらはれ)は何ぞ、如何ぞ恩を知らざる民は爾萬衆の生命をピラトの裁判に付(わた)して、死に定むる、言よ、我爾の言ひ難き寛容を歌ふ。

  もし之あらば、自調。光栄、第八調。

克肖なる神゜父よ、爾の諸徳の果は信者の心を楽しませたり、蓋孰(たれ)か爾の至極(しごく)の謙遜、爾の忍耐、貧者に対する厚情、艱難(かんなん)に遭ふ者に対する慈憐を聞きて驚かざらん、成聖者(某)よ、爾は衆人を宜しきに合(かな)ひて教へたり。今爾は凋(しぼ)まざる栄冠を冠れり、我等の霊の為に祈り給へ。

  今も、生神女讃詞

生神童貞女よ、爾の庇廕(おほひ)は属神゜の醫治(いやし)なり、我等之に趨り附きて、霊の諸病より救はるればなり。

  十字架生神女讃詞

子よ、我は爾萬衆に警醒を與ふる者が木の上に寝(い)ねたるを見るに忍びず、然れども此れ昔犯罪の果に因りて淪亡(ほろび)の眠(ねむり)に寝(い)ねたる者に神聖なる救ひの警醒を賜はん為なりと、童貞女は哭きて言へり、我等彼を讃め揚ぐ。

  もし多燭詞(ポリエレイ)を以て祭を行はば、復活の生神女讃詞第八調を誦すべし。

天の王は人を愛するに因りて地に現れ、人と偕に在(いま)せり、蓋浄き童貞女より身を取り、人の性を有ちて生れし者は、二つの性にて一つの位(くらい)ある獨一子なり、故に我等彼が実に全き神及び全き人なるを伝へて、ハリストス吾が神を承け認(みと)む、夫を識らざる母よ、我が霊の憐れみを蒙らんことを彼に祈り給へ。

  聖入。本日の提綱(ポロキメン)。成聖者の喩言(パリミヤ)三篇、巻末に載す。

  挿句(くづけ)に讃頌(スティヒラ)、第八調。

成聖者(某)よ、爾は神霊の光の光線、教会の燈(ともしび)、成聖者の装飾、修道士の修斎(しゅさい)の度生の真(まこと)なる模範、我等の保護者と現れて、我等の霊を残害者(ざんがいしゃ)なる敵より解き給ふ。

句 聖人の死は主の目の前に貴し。

成聖者(某)よ、爾は神より大いなる権を受けて、爾の祈祷に因りて、凡そ信を以て爾に趨り附く者より悪鬼の大数を逐ひ、其害を退け給ふ。

句 我何を以て主の我に施しし悉くの恩に報いん。

我等如何(いか)に宜しきに合(かな)ひて大いなる成聖者(某)を歌はん、彼は尊き智慧、神を顕す光、我等を照す者、神聖なる智識を與ふる者、深き奥密を教ふる者なり、我等皆同心に言はん、諸神゜父の神゜父(某)よ、慶べ。

  光栄、第八調。

成聖者(某)よ、爾は善き牧者、熱切なる教師なり、我等常に爾を讃め揚げて呼ぶ、神は爾を以て己の教会を飾り、爾の肉体 多年地の中(うち)に隠れたる者をも不朽の者として己の民に顕せり。故に爾を讃め揚げて、爾の記憶を尊む者の為に絶えず祈りて、我等の霊の為に諸罪の赦しと救ひとを求め給へ。

  今も、復活の生神女讃詞。

聘女(よめ)ならぬ童貞女、言ひ難く身にて神を孕みし者、至上なる神の母よ、爾の諸僕の祈祷を受け給へ、衆に諸罪の潔浄(きよめ)を予(あた)ふる純潔なる者よ、今我等の冀願(きがん)を納れて、我等皆救はれんことを祈り給へ。

  もし多燭詞を以て祭らずば、左の生神女讃詞を誦せよ。

女宰よ、爾の諸僕の祈祷(いのり)を納れて、我等を諸々の災禍(わざはひ)と憂愁(うれひ)より救ひ給へ。

  十字架生神女讃詞

主宰イイススよ、童貞女爾の母は爾が甘じて十字架に釘せられ、苦しみを受くるを見て呼べり、哀しい哉甘愛なる子よ、爾の慈憐を以て爾は人類の不能を醫(いや)す醫師、朽壊より救ふ者にして、如何ぞ非義に傷つけらるるを忍ぶ。

  讃詞(トロパリ)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の讃詞(トロパリ)を誦せよ。第四調。

事実は爾を牧群の為に信仰の則(のり)、温柔の模(かた)、節制の教師と顕せり、故に爾は卑きを以て高きを得、貧しきを以て富を得たり、成聖者神父(某)よ、ハリストス神に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

  早課

  「主は神なり」に讃詞(トロパリ)同上。

  第一の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第一調。

成聖者よ、爾は萬有の主宰ハリストスの役者(えきしゃ)と為りて、人人を教へ、聖洗を以て彼等を照し、神の誡めを行ふに導き給へり、我等皆爾を真実の伝道師、成聖者、及びハリストスの役者(えきしゃ)と称ふ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

聘女(よめ)ならぬ潔き生神童貞女、信者の獨の轉達及び帲幪(おほひ)よ、我等衆倚頼(たのみ)を爾に負はしむる者を災害(わざはひ)と憂愁(うれひ)と甚しき誘惑(いざなひ)より脱れしめ、少女よ、爾の神聖なる祈祷を以て我等の霊を救ひ給へ。

  第二の「カフィズマ」の後に坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

成聖者(某)よ、爾は少(わか)き時より爾の十字架を任(にな)ひて、敬虔にハリストスに従ひ、節制を以て肉の念(おもひ)を枯らせり、此に因りて成聖者の座に坐して、主宰及び其至浄なる母の光栄を顕せり、故に神福なる者よ、主宰は種種の恩賜を以て爾の柩を飾り給へり。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

永在の神を生みし純潔なる童貞女、獨衆に歌はるる者よ、成聖者と共に常に神に祈りて、我等信と愛とを以て職として爾を歌ふ者に未(いま)だ終らざる先に諸罪の赦免(ゆるし)と生命の改新(あらため)とを賜はんことを求め給へ。

  「主の名を讃め揚げよ」の後に附唱。

成聖者神゜父(某)よ、我等爾等を讃揚して、爾の聖なる記憶を尊む、爾は我等の為にハリストス我が神に祈り給へばなり。

  抜粋聖詠

「萬民之を聴け、全地に居る者皆之に耳を傾けよ。」

  多燭詞(ポリエレイ)の後に坐誦讃詞(セダレン)、第八調。

克肖なる成聖者(某)よ、爾は肉慾を制して、神に肖(に)たる成聖者と現れ、爾の牧群を神妙に治めて、洗礼を以て之を照し、惟一の神を三位の讃栄することを教へたり、故に信を以て神の正教会及び爾の不朽体の柩に来たる者に逝世の後にも醫治(いやし)を流し給ふ。ハリストス神に祈りて、愛を以て爾の聖なる記憶を尊む者に罪過の赦しを賜はんことを、求め給へ。二次

  光栄、今も、生神女讃詞。

我等は天の門と約匱、至聖なる山、光れる雲、焚(や)かれぬ棘(いばら)、霊智なる楽園、エワの赦したる者を歌はん、彼は全世界の大いなる器にして、其中に世界の為に救ひと古(いにしへ)の諸罪の赦しとは行はれたり。故に我等彼に呼ぶ、敬虔に爾の至聖なる産に伏拝する者に罪過の赦しを賜はんことをハリストス神に祈り給へ。

  品第詞(ステペンナ)、第四調の第一倡和詞(アンティフォン)。

  提綱(ポロキメン)、第四調。

我が口は睿智を出(いだ)し、我が心の思ひは智識を出ださん。

句 義人の口は睿智を言ひ、其舌は義を語る。 

  「凡そ呼吸ある者。」 成聖者の福音経、巻末に載す。

  第五十聖詠の後に讃頌(スティヒラ)、第六調。

神の嗣(よつぎ)、ハリストスの友、主の役者(えきしゃ)たる聖(某)よ、爾の度生は爾の名に適(かな)へり、蓋白髪(はくはつ)と偕に智慧は光り、爾が面(おもて)の麗(うるは)しきは霊の順良を證し、言の慎(つつま)やかなるは温柔を顕せり。爾の生命は光栄なり、寝りも聖者と偕に在り、我等の霊の為に祈り給へ。

  規程(カノン)、第六調。

  第一歌頌

イルモス イズライリは陸(くが)の如く淵を踏み渡り、追ひ詰めしファラオンの溺るるを見て呼べり、凱歌(かちうた)を神に奉らん。

成聖者よ、爾神の役者(えきしゃ)として、天上の品位と偕に神の前に立ちて、熱切に我等の為に祈り給へ、我等が爾の祈祷に因りて永遠の福を受けん為なり。

福たる神゜父(某)よ、爾は主より尊き福音に勤めん為に選ばれて、心を尽くして睿智なる教へを以て人人を養ひ給へり。

神の睿智なる成聖者、神福なる(某)よ、爾は神の睿智に富まされ、心より活ける言を流して、諸慾に因りて荒れたる人人の霊を濕(うるほ)し給へり。

  生神女讃詞

潔き者よ、預言者の聖にせられし会は遠くより爾を神の真(まこと)の母とならんとする者にして、ヘルワィム及び一切の造物より高き者なりと示したり。

  第三歌頌

イルモス 爾が信者の角(つの)を高うし、我等を爾が承認(うけとめ)の石に堅めし仁慈の主、吾が神よ、爾と均(ひと)しく聖なるはなし。

福たる神゜父よ、爾は神聖なる甘味を爾の口より滴(したた)らし、無神の苦き滴(したたり)を涸らして、神智の飲料(のみもの)を以て敬虔者に飲ませ給へり。

成聖者神゜父(某)よ、爾は神の定めにて預定せられて、我等の為に祭として己を捧げし神に無血の祭を献ずる成聖者と為り給へり。

至栄至尊なる成聖者(某)よ、爾の尊き体(たい)の置かるる柩は神の楽園の如く芳ばしき香(か)を放ちて、信者を馨(かを)らす。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、爾の産の言ひ難き深所(ふかみ)を人の智慧は測る能(あた)はず、蓋神は仁慈に因りて己を卑(ひく)くして、爾の胎内に於て全く我を新たにし給へり。

  坐誦讃詞(セダレン)、第四調。

福たる克肖者よ、爾は醇正にハリストスの教会を牧し、諸異端の稗(ひえ)を斥けて、今最(いと)高き所に居り給ふ。

  光栄、今も、生神女讃詞。

生神童貞女、獨潔く獨祝福せられし者よ、我等は爾より身を取りし者を父の言、ハリストス我等の神なりと知れり、故に絶えず爾を歌ひて讃め揚ぐ。

  十字架生神女讃詞

至浄なる者よ、爾は己の子が木の上に挙げられしを見て、母の心裂かれて、泣きて呼べり、哀しい哉吾が永久の光よ、如何ぞ隠れたる。

  第四歌頌

イルモス 尊き教会は浄(きよ)き心より主の為に祝ひ、神に適ひて呼び歌ふ、ハリストスは吾が力と神と主なり。

聖にせられし神゜父(某)よ、爾は聖神゜の盈(み)てられて、人人より悪神゜を遠ざけ、爾の属神゜の教へを以て彼等を篤信(とくしん)の者と為し給へり。

爾は造られざる惟一者が三位に分るれども、分離なく混淆(こんかう)なきを教へて、爾の聖にせられし神学を以て敬虔者を照し給へり。

爾は先づ節制と勤労とを以て肉の念(おもひ)を殺して、神聖なる成聖者及び三者の前に至りて聖にせられし轉達者と為り給へり。

  生神女讃詞

至浄なる神の母よ、爾に因りて原母(げんぼ)の詛(のろひ)は解かれたり、爾我等の為に成聖の泉、永在の生命を生みたればなり。

  第五歌頌

イルモス 至仁なる神の言よ、切に祈る、爾に朝の祈祷を奉る者の霊を爾が神の光にて照して、爾罪の暗(やみ)より呼び出だす真(まこと)の神を知しめ給へ。

爾は神の至りて聖にせられし成聖者として、慎みて神の事を行ひ、最(いと)潔き思を以て潔き事に觸れて、神の無玷(むてん)なる役者(えきしゃ)と現れたり。

偶像の役者(えきしゃ)たりし者は爾の尊き教に由りて神の役者(えきしゃ)と為れり、爾彼等を不当なる事より救ひて、神全能者の当然なる役者(えきしゃ)と現れたり。

克肖者よ、爾は恩寵に召されて、爾の言の力を以て拝偶像の無神を破り、神の恩寵を以て荒れたる人人の心を豊かに実を結ぶ者と為し給へり。

  生神女讃詞

夫に與らざる神の聘女(よめ)マリヤよ、爾は奇異なる爾の産の後にも前(さき)の如く童貞女に止まれり、蓋生れし者は神にして、己の旨を以て一切を変化する主なり。

  第六歌頌

イルモス 誘惑(いざなひ)の猛風(あらし)にて浪の立ち揚がる世の海を観て、爾の穏(おだやか)なる港に著(つ)きて呼ぶ、憐深き主よ、我が生命を淪亡(ほろび)より救ひ給へ。

至りて聖にせられし神゜父よ、爾の舌は聖神゜に鋭(するど)くせられて、神の指麾(しき)に由りて、迅書者(じんしょしゃ)の筆の如く敬虔の者の心に恩寵の言を書(しる)し給へり。

聖にせられし神゜父、至りて完全なる(某)よ、爾は神霊の至聖所に入るが如く神聖なることを学びて、聖神゜に由りて三者の光を以て信者を完全ならしめ給ふ。

至尊なる成聖者よ、爾は己の教への流れにて不虔者の教の濁りたる流れを塞ぎ、和平の川と為りて、信者の会に敬虔を飲ましめ給へり。

  生神女讃詞

神の恩寵を蒙れる純潔なる少女よ、言は種なく爾の腹に入りて、完全なる人と為り、神に適(かな)ひて獨(ひとり)自ら知るが如く、人性を新たにし給へり。

  小讃詞(コンダク)は奉事例に据る。もし奉事例になくば、左の小讃詞(コンダク)を誦せよ。第二調。
 
神聖なる雷(いかづち)、属神の角(らっぱ)、信の扶植者、異端の断絶者、三者の役者(えきしゃ)、大いなる成聖者(某)よ、常に諸天使と偕に神の前に立ちて、絶えず我等衆の為に祈り給へ。

  同讃詞(イコス)

我不当の者は怠惰(おこたり)に由りて堕落し、死の寝(ねむり)に寝(い)ねたり、求む、神゜父(某)よ、善き牧者として我を起して、甚しく我を苦しむる吾が諸慾を眠らせ給へ、我が起きて爾の光明なる慶賀を歌はん為なり、蓋全地の主宰は宜しきに合(かな)ひて爾を至りて忠信なる僕(ぼく)及び睿智なる教師とし、友及び奥密者とし、其伝(でん)の家宰(つかさ)及び傅膏を汚(けがれ)なく守りし者として栄し給へり。睿智なる者よ、絶えず我等衆の為に祈り給へ。

  第七歌頌

イルモス 神の使(つかひ)は潔き少者の為に爐(いろり)に露を出(いだ)さしめ、ハルデヤ人を焼く神の詔(みことのり)は苦しむる者に呼ばしめたり、吾が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

睿智者よ、爾は神の指麾(しき)に由りて属神゜の恩寵に照され、導く星と為りて、人人を照して歌はしむ、吾が先祖の神は崇め讃めらる。

聖にせられし者よ、爾は徳行に耀きて、至聖なる殿と為り、造られざる三者を爾の内に居らしめて呼ぶ、吾が先祖の神は崇め讃めらる。

爾は神聖なる警醒を以て目より眠りを払ひて、光明なる天使より神の光照を受けて、信者の為に柱及び扶助(たすけ)と為り、真(まこと)の成聖者と為り給へり。

  生神女讃詞

至浄なる者よ、像(かたど)られぬ者として父の懐(ふところ)に坐する主は、アダムの救の為に爾より身を取りて、像らるる者として爾の懐に坐し給ふ。

  第八歌頌

イルモス ハリストスよ、爾は潔き者の為に焔(ほのほ)より露を注ぎ、義人の祭の為に水より火を出せり、爾は一つの望みにて萬事を行ひ給へばなり、我等爾を世世に讃め揚ぐ。

福たる者よ、爾は己の卑(ひく)きを以て傲慢なる蛇を卑くし、己の潔き思ひを以て神に上げられたり、故に我等爾を尊みて、ハリストスを世世に讃め揚ぐ。

睿智なる神゜父(某)、捧神なる成聖者よ、爾は身を取りし言を伝へ、拝偶像の不虔を逐ひて、人人を奴隷の迷ひより救ひ給へり。

神゜父よ、爾は己の度生を爾の主宰の度生に似たる者と為し、言を度生に似たる者と為して、属神゜の日に満てられて、天上の安息の所に移り給へり。

  生神女讃詞

神の恩寵を蒙れる讃美たる少女よ、我等は爾の産に由りて始の詛(のろい)より救はれて、ガウリイルに效(なら)ひて爾に呼ぶ、衆人の救の縁由(ゆえん)なる者よ、慶べ。

  第九歌頌

イルモス 天使の品位すら見るを得ざる神は、人見る能(あた)はず、唯(ただ)爾至浄の者に依りて人体を取りし言は人人に現れ給へり、我等彼を崇めて、天軍と偕に爾を讃め揚ぐ。

成聖者よ、爾は温柔善良なる者にして、温柔の者の地に入り、諸徳に輝き、善行に光りて、天上の軍と偕に居り給ふ。

克肖者よ、爾は神の光栄を仰ぎ、諸天使の光照、太祖と致命者と使徒との華麗を見て、彼等と偕に仁愛なる主に祈りて、我等爾を讃め揚ぐる者に諸罪の赦しと生命の更新(あらため)とを賜はんことを求む。

爾は成聖者の宝座を飾り、諸天使に效(なら)ひて生命を送り、牧群に醇正の教へを授けて、之を敬虔に養ひ、完全なる人人を神に進めて、今天上の光栄を蒙りて、諸天使と偕に喜ぶ。

生神女讃詞

童貞女よ、天の滴(したたり)は雨の如く爾の胎内に降りて、迷ひの流れを涸らし、衆人に不朽を注げり、神の恩寵を蒙れる者よ、爾に頼(よ)りて贖罪は賜はりたり。

  光耀歌

今日光明なる慶賀は厳に行はる、神の顔(かんばせ)の前に光栄の光の中に立てる成聖者(某)よ、爾の記憶を讃め揚ぐる我等を憶ひ給へ。

  生神女讃詞

至淨なる者よ、我等爾より生れしハリストスと偕に釘せらるる者は神及び爾に恃頼(たのみ)を負はしむ、彼に奉る爾の祈祷を以て我等を終りに至るまで害せらるるなく護り給へ。

  「凡そ呼吸ある者」に讃頌(スティヒラ)、第八調。

克肖なる神父(某)よ、爾は神智の梯(かけはし)を登りて、神に近づき、子たる恩賜を得て、醫(いや)されぬ諸病を醫し、悪鬼を遠ざけ給ふ。故に我等爾の記憶を祭りて、歓びの心を以て己の役者(えきしゃ)を栄せしハリストスを讃栄す。二次

奇異なる神゜父(某)よ、爾は智慧の光に照されて、諸慾の激浪(あらなみ)の海を鎮め、無慾の淨き翼にて飛び、言ひ難く度(はか)り難き華麗(かれい)の所に至りて、常に爾を讃め揚ぐる我等の為に祈り給ふ。

神福なる(某)よ、爾は諸神゜父の神゜父、神品職の楷式(のり)、貞潔の規範、修道士等の模範、教会の固め、愛の燈(ともしび)、善德の宝座、奇跡の泉、火を噴く舌、甘味(あまみ)を流す口、聖神゜の器、霊智の楽園なり。

  光栄、第六調。

三重(みへ)に福たる克肖者、至聖なる神゜父、善き牧者、牧師長ハリストスの門徒、己の生命を羊の為に捐(す)てし讃美たる成聖者(某)よ、今も爾の祈祷を以て我等に大いなる憐れみを賜はんことを祈り給へ。

  今も、生神女讃詞。

生神童貞女よ、我等は爾より身を取りし者の神なるを悟れり、彼に我等の霊の救の為に祈り給へ。

  十字架生神女讃詞

童貞女母は十字架の側(かたはら)に立ち、己の子が甘じて苦しみを受くるを見て、彼を讃栄せり。



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