10月21日/11月4日
至聖なる我が女宰生神女のカザンの
顕蹟聖像の祭日
晩課
第一「カフィズマ」の第一段。
「主よ、爾によぶ」に八句を立てて讃頌を歌ふ、第四調。
生神女女宰よ、爾は言の美しき宮及び光を放つ寶座として、父の同座の言を爾の胎に入れ、暮れざる光を生みて、我等の昏味を照し、蛇の迷を拂ひ、朽壊を滅せり。爾の産にて世界に永遠の生命を與へ、楽園の門を啓き、人性に萬福を賜へり。女君よ、今も爾の祈祷を以て爾の諸僕を諸の禍より脱れしめ給へ。
爾は大なる女王、至高き軍の王の母として、天には爾の至浄なる手を舒べて、祈祷して我等の為に轉達し、地には権能なる扶助者として、爾の神妙なる聖像及び神゜にて爾の諸僕と偕に居り、敬虔に爾を生神女と承け認むる者を悦びて救ひ、凡の患難より脱れしめ給ふ。
女王生神女よ、我等爾を承け認めて光明なる楽園、神に照さるる美しき處、聖神゜にて蔭はるる聖なる樹、暮れざる光の在る處と為す。爾は隠れざる神妙の光線たる爾の赤子を以て明に萬物を照す。彼に祈りて皇帝及び爾に趨り附く民を諸の禍より救ひ給へ。
生神女よ、神の教会は王の紫袞衣の如く、爾及び爾の子の聖像に飾られて、奇蹟を以て輝く。今日其顕現は衆を祭に聚めて、日の光線よりも盛に聖神゜の恩寵を以て光り、病める者恙ある者に醫治の泉を流し、衆人に豊なる憐を賜ふ。
又讃頌、第八調。
父及び聖神゜と偕に寶座に坐する高くして測るべからざる王、婚姻に與らざる童貞女より地に生るるを嘉せしイイスス、言ひ難き美徳を以て爾の造物たる人性を富まし給ふ主よ、爾の母の我等の為に爾に奉る祷を納れて、我等の不法を念ふ毋れ、乃慈憐なるに因りて、我等の霊を憐みて救ひ給へ。二次
潔き童貞女よ、光榮の王は、罪に縁りて全く朽ちたるアダムを新にせん為に、天を傾けて降りて、爾の内に入り、童貞の鑰を損はずして生れ、天使首の王たるに、謙卑なる赤子として爾の手に抱かれたり。生神女よ、今も彼は爾の子及び神として、爾の祈祷を受け、爾の一切の冀願を行ふ、彼に其慈憐なるに因りて我等の霊を救はんことを切に祈り給へ。
生神女よ、神は聖神゜を以て爾を天の模式に循ひて造られしモイセイの幕より更に大に聖にし、全うして爾の内に入りて、全き人を活かし給へり。故に爾の聖像もアアロンの約匱より更に大に神の恩寵に満てられて、霊及び體に成聖を流す。讃美たる扶助者よ、我等愛を以て之に伏拝して、爾に大なる憐を求む、爾が我等の霊を救はん為なり。
光榮、今も、第八調。
来りて、我が族の有能の守護者たる女王生神女の為に喜ばん。来りて、彼の柔和美妙にして、諸天使に尊まるる尊貴なる姿に伏拝せん。蓋生神女は其聖像の盡きざる泉より乏しからぬ恩寵を流して、信者に豊なる醫治の恩賜を賜ひ、我等敬虔に神の悦ぶ所に適ひて、神の母の光明にして霊妙なる聖像を讃榮尊敬する者を、誘惑の暗よりわざわい及び諸の罪より脱れしめ給ふ。故に我等歌ひて原像なる者に呼ばん、世界の愛すべき扶助、我等の霊の拯救なる者よ、慶べ。
聖入。本日の提綱。喩言三篇、(生神女就寝祭に載す、第776頁を看よ)。
「リティヤ」に讃頌、第二調。
生神女よ、今爾の聖像は實に古の約匱、ダワィドが會を聚めて祝ひし者より最尊し。司祭長の會、天使の品位と偕に諸王諸侯、及びハリストスの名を蒙れる無数の人々は此の前に立ちて、宜しきに合ひて爾神の母を讃美し、忠信に讃榮尊敬して伏拝し、神の亞に爾に祈りて、爾惟一の祝福せられし者が世界を平安にし、正教を堅固にし、諸王の権柄を堅め、爾の諸僕を諸の禍より救はんことを求む。
女君生神女よ、司祭長の會、諸王諸侯及び衆民、修道士及び俗人は爾の聖像の前に爾に對ひて立ち、爾が實に有能にして勝たれぬ扶助者たるを知りて、霊を全うして祈祷を爾に奉り、且爾の佑助を求めて、神に祷らんことを慫む、爾が捧神の手を舒べて、其慈憐を世界に垂れしめん為なり。至浄なる女宰よ、耳を傾けて聴きて、我等の重くして甚しき罪が我等を滅さざる先に爾の諸僕に宥恕を與へ給へ、我等皆常に爾の助を要すればなり。
第八調
福音の奥密の傳道師は初めて爾の像を描き、爾女王に攜へて、爾が之を己に属せしめて、爾を尊む者を救ふに能ある者と為さんことを求めしに、爾は喜び、我等の救の慈憐なる實行者として、像の口及び聲なるが如く、神を孕める時の如くに歌を唱へたり、視よ、今より後萬世我を讃美せんと。又之を見て、権を以て言へり、我の恩恵及び能力は斯の像と共に在らん。女君よ、我等は爾が之を言ひ、又爾が斯の像を以て我等と偕に在るを誠に信ず。故に爾の諸僕は敬虔に爾の前に立ちて、爾に伏拝す、母たる爾の慈憐を以て我等を眷み給へ。
第七調
生神女よ、爾は大にして至榮なる山、シナイ山に超ゆる者なり、蓋此は形と影との中に神の光榮の降るに忍びずして、火を燃し、雷も電も彼處に在りき、爾は萬有を其権内に有つ神の言、全き神聖の火たる者を焚かるるなく己の腹に宿し、乳房の乳にて養ひ給へり。今彼の前に母の勇敢を有ちて、女宰よ、信を以て爾の尊き祭を祝ふ者に助を與へ、慈憐を以て彼等を眷みるを忘るる毋れ、爾はハリストスの名を被れる爾の軍たる爾の諸僕を治めて覆はん為に恩賜を神より受けたればなり。
光榮、今も、第六調。
女宰よ、人の萬族は讃美の禮物を爾に奉りて、爾女王神の母に祈る、預言者は智慧を以て爾を宣傳し、「レワィト」は祝福し、使徒及び致命者は讃榮し、諸王諸侯は伏拝し、司祭長は傳道し、修道士と俗人は恭敬し、富める者と貧しき者、孤と寡、凡の年齢、老翁と童子は皆信を以て爾の権能の庇護の下に趨り附く。女君よ、爾の祈祷を以て我等の霊を庇ひ護りて、諸難より救ひ給へ。
挿句に讃頌、第二調。
至浄なる光の潔き器たる生神女よ、我等諸僕は如何ぞ宜しきに合ひて爾を歌頌せん、蓋爾は至浄なる爾及び永久の赤子の聖像の顕現を以て衆を照し給ふ。
句、我爾の名を萬世に誌さしめん。
嗚呼神の恩寵を蒙れる無てんなる童貞女よ、我等何の時にか何を以て爾に宜しきに合ふ感謝を獻ぐるを得ん、蓋爾は福たる爾の産の遍く照す光線にて衆を不朽より生命に起し給へり。
句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。
嗚呼女君童貞女、造成主の母、天の品位の歓喜、人類の讃美たる扶助者よ、我等の霊の救の為に祈り給へ。
光榮、今も、第五調。
人々よ、我等欣ばしく童貞女、神の聘女、ハリストス王の母にダワィドの歌を詠はん、女王は金繍の衣を妝ひ、神聖なる美徳に飾られて、爾主宰の右に立てりと。蓋爾は此の女の中に選ばれたる美しき者を萬有よりも修飾して、大なる憐に因りて、彼より生るるを嘉し、且彼を扶助者として己の民に賜へり、爾の全能の神聖なる力を以て救ひて、患難より覆はん為なり。ハリストス神よ、彼の祈祷に因りて我等を憐み給へ。
讃頌、第四調。
熱心なる守護者、至浄なる主の母よ、爾は衆人の為に爾の子ハリストス我が神に祈りて、爾の機能の庇護の下に趨り附く衆に救を得しめ給ふ。嗚呼女君女王及び女宰よ、我等艱難、憂愁、疾病に在りて、諸罪を負へる衆を助け給へ、我等涙と共に爾の至浄なる聖像の前に立ち、感傷の霊、謙卑の心を以て爾に祈りて、爾に藉りて諸悪より救はるることの堅固なる望を懐く。生神童貞女よ、衆に益あることを與へて、衆を救ひ給へ、爾は爾の諸僕の為に神聖なる庇護なればなり。
早課
「主は神なり」に讃頌、三次。
「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞、第三調。
敬虔の人々、ハリストスの名を被れる正教の會よ、皆信を以て就きて、神の母の神聖なる像の前に俯伏せん、蓋彼は喜びて病者に醫を予へ、弓の矢の如く邪教の者に傷つけ、己の祈祷を以て我等衆を楽しませ、恩寵にて照し給ふ。
光榮、今も、
神は爾美徳なる童貞女、女の中に無てんなる者を全うして聖にせり、預言者を以て爾を預象し、司祭等を以て祝福して、至聖所に入れ、天使を以て養ひて、天より糧を賜へり、親ら至善なる神獨生の言は爾の中に入りて、肉體を以て爾より出で給へり。故に我等爾に伏拝し、實に眞の生神女として尊む。
第二の誦文の後に坐誦讃詞、第四調。
神の母の多名の祭の輝き、神聖なる歌にて神の母の讃美せらるるを見て、信者の大数は楽しみて祝ふべし、悪魔の軍は泣くべし、蓋祝福せられたる生神女、女宰、神に選ばれたる少女、仇の滅亡、「ハリスティアニン」等の有能の固なる者は神の悦に適ひて讃榮せらる。
光榮、今も、
嗚呼祝福せられたる生神女、女宰、神に選ばれたる少女、光明なる諸預言の應験、使徒の誉、致命者の承認及び榮冠、諸天使に尊まれ、人の諸族に歌はるる者、全世界の慕はるる扶助者、獨恩寵を満ち被る者よ、爾の諸僕を将来の定罪及び火の池より救ひ給へ。
多燭詞の後に坐誦讃詞、第一調。
嗚呼神の母よ、正しき信を以て爾を尊みて、爾に趨り附き、愛を以て爾の聖像に伏拝する者を救ひて、諸敵に奪はるるを許す勿れ。願はくは我が諸罪が招く所のわざわいは我等に及ぶことなく、又我が不法は我が首に溢れざらん、即神に悦ばるる爾の母たる祈祷、我等の為に獻げらるる者は凡そ我等を害する者に勝たん。
光榮、今も、
生神童貞女よ、爾の至浄なる聖像は全世界の為に属神゜の良薬なり、我等之に趨り附きて、爾に伏拝し、之を尊み、接吻して、是より醫治の恩寵を斟み、爾の祈祷に因りて體の諸病、霊の諸慾より釋かる。
品第詞、第四調の第一倡和詞。
提綱、第四調。
我爾の名を萬世に誌さしめん。句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。
「凡そ呼吸ある者」。福音經はルカ四端。
第五十聖詠の後に讃頌、第八調。
来りて、我が族の有能の守護者云々(「主よ、爾によぶ」に載す)。
規程は至聖なる生神女「オディギトリア」(導引女)の、「イルモス」と共に六句に。修士イグナティイの作。第四調。
第一歌頌
イルモス、我が口を開きて、聖神゜に満てられ、言を女王母に奉り、楽しみ祝ひ、喜びて其奇迹を歌はん。
潔き者よ、我大に喜びて、今の讃美を奉り、柔和なる聲を以て爾に呼ぶ、「オディギトリア」よ、慶べ、我歌ひ起す者を智慧に満たしめ給へ。
嗚呼慶べよ、我等の為に永遠の歓喜なるハリストスを生みし衆に歌はるる者、正教者の憑恃、世界に慕はるる「オディギトリア」、讃美たる童貞女よ、我を喜悦に満たしめ給へ。
衆人及び諸天使は祝ひて、天に地に常に心を合せて呼ぶ、「オディギトリア」童貞女よ、慶べ、爾の産にて萬衆を喜悦に満たしめたればなり。
歓喜なる「オディギトリア」、眞の歓喜の母よ、畏を以て爾に呼ぶ者に歓喜を得しめて、諸の憂患より救ひ、凡そ爾に趨り附く者を憐み給へ。
又祭日の規程、八句に、同調。
第一歌頌
イルモス、同上。
生神女よ、天使首は爾を尊み、聖人の會は恭しく奉事し、義人等は喜びて爾天上の轉達者を讃美す。地も天も共に楽しみて爾を讃め揚げ、我等罪なる者も慈憐を乞ふ。女宰よ、我等の心を照して、爾の聖像の顕現に歌を詠はしめ給へ。
ハリストスの名を蒙れる人々よ、来りて、内心を浄めて、ハリストス我が神の母の聖堂に聚まれ、蓋彼は其の聖像より饒に属神゜の泉を我等に流して、霊と體とを醫し給ふ。故に我等歌はん、爾より生れ給ひし我が神は崇め讃めらる。
至りて無てんなる者よ、爾の神聖なる産の霊妙の奇跡は凡そ聴く者を驚かし懼れしむ。何如にしてヘルワィムの造成主を孕みたる、何如にして勝へられぬ火を胎内に懐きたる、何如にして眞の生命に肉體を衣せて、全世界の為に生命なる神人を生みたる。
女君生神女よ、人の萬族は爾の庇護の下に趨り附く。爾の産の光を以て、我等爾の罪なる諸僕、熱切に祈りて、爾の至浄なる聖像に伏拝して、爾に大なる憐を求むる者を照し給へ。
共頌、「我が口を開きて」。
第三歌頌
イルモス、生神女、生活にして盡きざる泉よ、祝ひて爾を讃め歌ふ者の霊を固め、彼等に爾が神妙なる光榮の中に榮冠を冠らしめ給へ。
嗚呼慶べ、ハリストス至上の王の動かざる浄き活ける宮よ、慶べ、「オディギトリア」よ、慶べ、爾に藉りて我が城邑は毀はれずして護らるればなり。
「オディギトリア」童貞女よ、萬物が容るる能はざる者を爾は婚姻に與らざる腹に身にて容れ給へり。故に我等は職として爾を崇めて歌ふ、慶べよ。
世界の讃美たる歓喜、潔き「オディギトリア」よ、我等恒に歓喜を以て爾を歌ふ者は、爾より生れし者に獻ぐる爾の母たる祈祷に因りて、永遠の歓喜を獲るなり。
潔き「オディギトリア」よ、我等は爾を金の「マンナ」の壺と、燈臺と、杖、及び案と稱へ、斯の名と偕に亦常に爾に慶べよの聲を捧ぐ。
又イルモス、同上。
我等の至極の不能は爾に適ふ何の讃美をか獻げん、蓋爾は至浄なる爾の聖像の顕現を以て、忠信に爾に趨り附く爾の諸僕に豊なる醫治の泉を流し給ふ。
生神童貞女よ、爾の聖像の神聖なる顕現は、光れる日の如く我等に輝き、光明なる奇蹟の光線を放ちて、烈しき危難の暗を拂ふ、爾女宰の聖なる轉達に因りてなり。
女君生神童貞女よ、爾は昔始めて描きたる聖像を恩寵に満てたり。今も彼の始めて描きたる者の如き恩寵は信に由る奇蹟の光を輝かす、神に亞ぎて熱心に爾に趨り附く者の救の為なり。
生神女よ、我等は爾の至浄なる像、及び爾の至愛なる嬰児、永久の暮れざる光なるハリストス、爾が此を以て人の全性を烈しき諸難及び死の朽壊より救ひし者に伏拝す。
坐誦讃詞、第五調。
熱心なる勝たれぬ轉達者、堅固にして耻を得ざる憑恃、爾に趨り附く者の為にかきとおほひと湊なる潔き永貞童女よ、諸天使と偕に爾の子及び神に世界に平安と救と大なる憐とを賜はんことを祈り給へ。
光榮、今も、同上。
第四歌頌
イルモス、光榮の中に神性の寶座に坐するイイスス神は、軽き雲に乗るが如く、朽ちざる手に抱かれ来りて、ハリストスよ、光榮は爾の力に帰すと呼ぶ者を救ひ給へり。
奇蹟の奇蹟たる「オディギトリア」女宰よ、慶べ、諸城諸邑の歓喜なる者よ、慶べ。爾は「ハリスティアニン」等の為に患難に對して勝たれぬ守護、及び敵に對する勝利なり。
正教の諸王の誉よ、慶べ、ハリストスを愛する軍の庇護よ、慶べ、萬衆の女王「オディギトリア」よ、慶べ。爾は我等衆の為に避所及び保固なり。
衆の為に禍の中に速なる救よ、慶べ、凡そ悲しむ者の為に備はりたる慰藉よ、慶べ、凡そ病む者の為に醫師たる祝福せられし「オディギトリア」よ、慶べ。
「オディギトリア」よ、慶べ、萬物は宜しきに合ひて爾の大なるを讃榮せんと務むれども能はず、故に爾に呼ぶ、神を容れし居所たる女宰よ、慶べ。
又 イルモス、同上。
人々よ、潔き心を以て、潔き生神童貞女、及び其神聖なる嬰児ハリストス我が神の聖像を尊み、恐懼と戦栗とを以て之に接吻して讃榮せん、蓋我等は敬虔に聖像を尊みて、實に神の潔き母自身を尊む。
神妙なる預言者ダワィドは遥に預見して曰へり、民中の富める者は爾の顔を拝まんと。我等信者は尊き聖像を拝み、之に接吻して、霊と體とを聖にせらる。
生神女よ、ハリストスの福音經の神聖なる著者ルカは、神の指麾に由りて、爾及び爾の手に於て永久の嬰児の至りて無てんなる像を形りて描けり。之に趨り附く者を爾は危難わざわいより脱れしめ、爾の慈憐を以て衆を覆ひて救ひ給ふ。
嗚呼女王よ、爾は衆聖人の令誉及び榮冠なり、爾は神に亞ぎて我等の倚頼及び扶助者なり、我等皆我が救の冀望を爾に負はしめたり。爾を神の母として爾に祷る、霊を救ふ豊なる爾の慈憐を罪なる爾の諸僕に垂れ給へ。
第五歌頌
イルモス、萬物は爾が神妙の光榮に驚かざるなし、爾婚配を識らざる童貞女は至上の神を孕み、永遠の子を生みて、凡そ爾を歌ふ者に平安を賜へばなり。
仁慈慈憐の淵なる「オディギトリア」童貞女よ、慶べ、衆信者に歓喜を賜ふ者よ、慶べ、嗚呼わざわいに在りて悲しむ者の為に最速なる扶助者よ、慶べ。
我等信者、爾の奇蹟の大なるを見、又見ずして聞く者は、皆歓喜に満てられ、故に常に遍く爾に歌ふ、「オディギトリア」よ、慶べ。
嗚呼「オディギトリア」、ハリストス我が神の居處、其言ひ難き神聖なる光榮の家たる童貞女よ、慶べ。嗚呼最美しく飾りたる宮よ、慶べ、活ける城邑、常に王たる者よ、慶べ。
「オディギトリア」童貞女よ、我等爾を海の如き盡きざる歓喜と認めて、皆喜びて爾に呼ぶ、慶べ、又歌ひて、常に爾より神聖なる見えざる恩賜を俟つ。
又 イルモス、同上。
至浄なる童貞女よ、凡の者は何如に爾を歌頌するを知らず、蓋爾は邇づかれぬ畏るべき萬衆の王及び神を生みて、天上の無形の者より最高く為れり。然れども人々の憐深き速なる扶助者として、爾の諸僕の祷を聆きて、爾の助を與へ給へ。
生神女よ、爾の恩寵の蔭ふ所には、悪魔は懼れて逃げ、其悪謀の誘惑は敗られ、黒暗の鬼は走る、信者は皆喜びて中心より讃揚の歌を爾に奉りて呼ぶ、我等の霊の神聖なる庇護よ、慶べ。
生神女よ、爾の至浄なる聖像の庇蔭に因りて、瞽者に見ること、聾者に聞くこと、唖者に善く言ふこと、跛者に歩むこと、癩者に潔浄、悪鬼を患ふる者に醫治、諸病に在る者に全愈は賜はる。
恩寵を蒙れる生神女よ、我等聖詠と歌頌とを以て爾の大なるを歌ふことを永く息めざらん、蓋爾は實に身を取りし神を生み給へり、全世界の救贖及び拯救の為なり。
第六歌頌
イルモス、神の信者よ、来りて、神の母の此の神妙なる至りて尊き祭を祝ひ、手を拍ちて、彼より生れし神を讃榮せん。
「オディギトリア」潔き童貞女よ、爾はハリストスを妊る時慶べよと聞けり、言ひ難く彼を生みて、衆人より常に慶べよと聞き給ふ。
「オディギトリア」よ、爾は上の者と下の者とを合せて、萬衆を歓喜に盈て給へり。故に天及び全地は今心を合せて爾に慶べよと呼ぶ。
嗚呼常に歌はるる「オディギトリア」、凡の寡婦と孤子との慰藉なる者よ、慶べ、衆貧者に盡きざる富を流す者よ、慶べ。
黄金より愈りて光り、旭日より盛に輝ける「オディギトリア」、ハリストスの居處なる者よ、慶べ、童貞女よ、慶べ、聘女ならぬ聘女よ、慶べ。
又 イルモス、同上。
女君童貞女よ、爾の神聖なる産の至りて富める恩寵、爾が昔言を以て至浄なる爾の聖像に合せ給ひし者は、爾を頼む者の救の為に豊に至榮なる大事を行ふ。
恩寵を蒙れる生神女の聖なる名の讃榮せらるる處には諸福の泉は流る。人々よ、自ら潔まりて来れ、蓋視よ、童貞女の神妙なる聖像の顕現は女王の臨むを示す、衆信者の救の為なり。
至りて無てんなる神の母女宰よ、我等信を以て来る者は爾の至浄なる聖像より諸病の醫治、諸慾の屏斥、諸罪の赦免、霊の拯救、永久の贖を受く。
女君よ、正教の者の諸族は爾に趨り附き、大なる憐を求めて、病める者は醫治、災難に遇ふ者は援助、哀しめる者は慰藉を饒に受く。女宰よ、我にも霊を救ふ滴を注ぎ給へ、我も衆と偕に爾の偉大なるを歌はん為なり。
小讃詞、第八調。
人々よ、此の穏なる良き港、すみやかなる扶助者、備れる救、童貞女の庇護に趨り附きて、熱心に祈り、熱切に痛悔せん、蓋至浄なる生神女は我等に豊なる憐を流して、速に援け、善良にして神を畏るる其諸僕を大なる諸難諸悪より救ひ給ふ。
同讃詞
我等心と智慧とを潔めて、生神女に趨り附き、歌を以て喜びて彼を讃美し、彼の至浄なる聖像を讃榮尊敬して、之に伏拝せん、彼自身に於けるが如し、蓋聖像の尊敬は其原像に帰し、尊みて之に伏拝する者は原像自身を尊むなり、神聖なる神゜父等の言ひしが如し、又人若し至聖なる生神女を尊まず、其聖像に伏拝せずば、「アナフェマ」たるべし。蓋彼は之を尊まざる者を辱かしめて滅し、善良にして神を畏るる其諸僕を大なる諸難諸悪より救ひ給ふ。
第七歌頌
イルモス、敬虔の者は造物主に易へて造物に事ふることをせざりき、火の嚇を勇ましく践みて、喜び歌へり、讃美たる主、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
生神女よ、慶べ、衆の信者を常に凡の救の道を履まん為に導く「オディギトリア」よ、慶べ。女宰よ、慶べ、蓋我等爾に藉りて常に諸敵の攻撃より救はる。
「オディギトリア」よ、慶べ、けい醒して我等の為に神に祈りて、爾の轉達を以て衆人を諸の危難諸のさいがいより脱れしむる神の母よ、慶べ。
至聖なる者よ、慶べ、我が冀願を我等の益の為に行ひ、衆が常に愛を以て合一にして、凡の善に進まんことを望む「オディギトリア」よ、慶べ。
航海して危難に遇ふ船の「オディギトリア」よ、慶べ、信者を凡の憂患の中に援け、其諸の疾を速に解く者よ、慶べ。
又 イルモス、同上。
来りて、至浄なる童貞女、及び其至浄なる嬰児、神の言の成聖を流す盡きざる泉より赦免を斟みて、我等の為に人體を取りし主に呼ばん、造成主及び贖罪主、父及び子と偕に讃榮せらるる神よ、爾は崇め讃めらる。
潔き者よ、神の悦に適ふ寐らざる祈祷を獻げ、且勝たれぬ権能を有ちて、我等に對する諸敵の強暴を破り、之を我が皇帝の足下に斃し給へ、我等諸僕が爾の為に楽しみて、爾の子に呼ばん為なり、我が先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
我等信者は至浄なる女宰生神女の聖像の霊妙なる顕現を喜びて楽しむ、蓋醫治の水を流す盡きざる川は現れて、瞽者に見ること、聾者に聞くこと、跛者に歩むこと、凡そ病を負へる者に價なき醫治を與ふ。
童貞女よ、爾の懐孕の深義は極め難く、奥密は識り難く、形状は暁り難し、受孕は種なく、産は夫なし。身なき者は身にて生れ、永久の者は嬰児と為り、神の子は爾童貞女の子と為れり。我等彼に呼ばん、神よ、爾は崇め讃めらる。
第八歌頌
イルモス、生神女の産は敬虔の少者を爐の中に守れり。其時に預め徴され、今已に應ひし此の産は全世界に勧めて爾に歌はしむ、造物は主を歌ひて萬世に彼を讃め揚げよ。
至りて讃美たるマリヤよ、慶べ、蓋爾に藉りて至りて讃美たる神は我全き人を衣たり、之を衣て言ひ難き合一を以て己の神性に合せ給へり。恩寵を蒙れる童貞女「オディギトリア」、全世界の歓喜よ、慶べ。
悪鬼を逐ふ者よ、慶べ。生神女「オディギトリア」よ、慶べ、無形の天軍が常に讃榮し、神の母として崇むる者よ、慶べ、下の者を上の者に合せし者よ、慶べ。
衆天軍に并なく超ゆる者よ、慶べ、「オディギトリア」よ、慶べ、神を生みし者として萬物に女君たる者よ、慶べ、嗚呼常に歌はるる女宰よ、慶べ、産の後に潔き童貞女に止まればなり。
悉くの婦女の光榮よ、慶べ、我が神の至りて聖にせられたる殿なる「オディギトリア」よ、慶べ、全世界の為に霊の救たる者よ、慶べ、蓋へる雲、天より廣き者よ、慶べ、神聖なる香料を盈てたる香合よ、慶べ。
又 イルモス、同上。
生神女よ、天使及び人々の智慧は驚く、何如に爾は天の神を胎内に容れて身にて生みたる、何如に彼を赤子として生み、子として手に抱きたる。萬物は彼を畏れ、天上の寶座は戦きて、絶えず呼ぶ、聖、聖、聖なる哉神、歌はれて世々に讃め揚げらるる者や。
生神女よ、我等は天使首ガウリイルと偕に爾に呼ぶ、全世界の眞の歓喜よ、慶べ、容れられぬ者の容處よ、慶べ、全き神性の恩寵なる乗輿よ、慶べ、アダムの喚起よ、慶べ、主は爾と偕にす、又爾に藉りて我等と偕にして、我等を救ひ給ふ。我等彼を歌ひて世々に讃め揚ぐ。
爾はイエッセイの聖にせられし根にして、我等の罪の根を抜き、アアロンの華を發きたる杖にして、生命を施す華たるハリストスを生じ、マンナを受けし壺にして、死の力を全く滅して、人類に生命を與へ給へり。故に我等爾諸福の起原者を歌ふ。
女宰よ、爾は「ハリスティアニン」等の誉、爾は敵に對する武器、爾に趨り附く者の為にかきなり。女君よ、我等今も援助の為に爾を呼ぶ、生神女よ、爾をも爾の子をも尊まず、爾の聖像に伏拝せざる諸敵に爾の民の上に権を執ることを許す勿れ、之に勝ちて、我等の霊を救ひ給へ。
第九歌頌
イルモス、凡そ地に生るる者は聖神゜に照されて楽しみ、形なき智慧の性も祝ひ、神の母の聖なる祭を尊みて呼ぶべし、至りて福なる潔き生神女、永貞童女よ、慶べよ。
暮れざる光を放ちて、多神教の暗を拂ひし燈よ、慶べ、爾の産を以て人々を地獄の淵より脱れしめて、彼等の為に萬福を求め得る生神女「オディギトリア」よ、慶べ。
信者の為に天の穂を生じて、全世界を霊を滅す饑饉より救ひし霊智なる活ける地よ、慶べ。嗚呼生命の房を生ぜし葡萄樹たる潔き生神女「オディギトリア」よ、慶べ。
奥密の花の最美しき楽園よ、慶べ、光れる潔浄を以て無形の者よりも輝ける母童貞女よ、慶べ、神を生みし少女よ、慶べ、全世界の奇蹟及び聾聞なる「オディギトリア」よ、慶べ。
童貞女よ、爾の佑助を以て我が生命の餘日を損なく守りて、善き終を受くるに勝へさせ給へ、蓋我等爾を歌ひて呼ぶ、至りて福たる生神女、潔き「オディギトリア」よ、慶べ。
又 イルモス、同上。
生神女マリヤよ、預言者の會は爾人類の堅固なる扶助者を多方に預象して、聖なる蔭、天より最廣き者、神の録しし石坂、焚かれざる棘、神の過る門、山及び梯、橋及び華を發きたる杖と為せり。我等は爾が實に生神女たるを讃め揚ぐ。
童貞女よ、爾の産の深き奥義は天使の智慧を驚かし、至浄なる聖像は悪鬼を逐ひ、不虔者の顔色を損ひて耻に入らしむ、蓋其力を視るに堪へずして、走り去る。我等は愛を以て伏拝し、之に接吻して、爾生神女を讃め揚ぐ
至上の王の前に退かぬ轉達者として、耻を得ざる母の勇敢を有つに因りて、正教者の生命を深き平安に固め、我が皇帝を高くし、一切の有益なる事を常に爾の諸僕に與へ給へ、我等が爾生神女を讃め揚げん為なり。
嗚呼「ハリスティアニン」等の至りて仁慈なる扶助者よ、人及び天使の智慧は宜しきに合ひて爾を歌ふ能はず、蓋爾は萬物より尊貴、天上地下の者より光榮なる者なり、萬有の造成主及び神を生みたればなり。然れども女宰よ、慈憐を以て中心より爾に獻ぐる歌を受けて、常に我等を救ひ給へ、我等爾を恃めばなり。
光耀歌
歌はるる神の母は尊まるべし、彼は眞の生命たるハリストス我等の神、楽園の門の開啓、全世界の潔浄、我等を生命に升す者を生み給へり。彼は預言者を以て言ひ給ひし主なり。我等は彼我が霊の神及び救主に伏拝せん。二次。
光榮、今も、
信者よ、潔き心を以て来りて、我が神の至浄なる母及び神聖なる嬰児救世主ハリストスの奇蹟の聖像を崇めん。蓋ハリストスを生みて手に抱きし者は、其前に母の勇敢を有ちて、絶えず我等の為に祈りて、己の諸僕に豊なる憐を賜ふ。
「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ、第四調。
信者よ、恩寵を蒙れる生神女を讃榮せん、特に其祝福せられたる聖なる名を常に我が口に有ちて、絶えず其醫を施す至浄なる聖像に趨り附かん。蓋彼に藉りて我等は地上に一切の福及び有益なる事を獲、且空中に在る悪鬼の誘惑を免る、萬有の造成主を生みし母として、我が霊をわざわいより救ひ給へばなり。二次。
不虔者の群、爾を産に於て潔き神の母と承け認めず、爾の至浄なる聖像に伏拝せざる者は永遠に哭くべし。我等信者は喜びて爾眞の生神童貞女を承け認む、蓋爾は實に身にてハリストス我が神を生み、爾の神聖なる産を以てアダムの朽壊を践み、全世界を罪より潔め、終なき生命を賜ひ、楽園の門を信者の為に啓き給へり。信を以て爾の奥義を歌ふ我等の救はれんことをハリストスに祈り給へ。
敬虔の者の大数は言ひ難き喜悦を以て喜びて楽しみ、皆敬と畏とを以て神の母に俯伏して、神に亞ぎて之に感謝す。蓋大にして至りて豊なる憐を有つハリストス我が神は、生神女を以て、天使等も窺はんと欲する至大なる福の為に、神の前に轉達する者として、信者に賜へり。
光榮、今も、第八調。
生神童貞女よ、爾の聖像は爾の恩寵の至りて豊にして天下の為に湧く泉、聖神゜の光線、醫治の光明を以て全世界の前に輝ける者なり。蓋爾は天使首ガウリイルより、恩寵を蒙れる者、慶べよ、主は爾と偕にす、又聖神゜爾に臨まんと聞きて、神言を言ひ難く身にて生み給へり。爾は又始めて描きたる爾の聖像を見て云へり、我の恩寵は之と偕に在らんと。斯くして爾の権ある言は聖像に適へり、凡の智慧に超ゆる神聖なる恩寵は絶えず之に伴ひて、常に休徴と奇蹟とを行ひ、信を以て之に就く衆に霊を益する醫治を予ふ、爾神の母の神に獻ぐる息めざる祷に因りてなり。
大詠頌。發放詞。
聖體禮儀の奉事は生神女の式に据る。