9月14日/27日

尊貴にして生命を施す十字架の全地の挙栄祭


小晩課

「主よ、爾にぶ」に讃頌、第一調。

十字架は挙げられて、悪鬼は逐はる、盗賊はエデムの門を啓く、死は殺されて、今虚しき者と為れり、ハリストスは崇めらる。故に地に生るる者皆楽しめ、詛は釋かれたり。二次。

神を愛する者皆来りて、尊き十字架の挙げらるるを見て、惟一の救世者及び神を崇め、且光栄を帰して呼ばん、十字架の木に釘せられし主よ、我等祈る者を棄つる毋れ。

昔モイセイは十字架を預徴するを以て苦を甘くして、イズライリを援けたり。我等信者皆常に奥密に之を我が心に像りて、神妙に其力にて救はる。

  光栄、今も、第六調。

今日生命を施す植物は地の動かざる懐より生ひ出でて、其上に釘せられしハリストスの復活を證し、且聖にせられし手に挙げられて、彼の天に升るを示す。此に因りて我等の堕落せし性は地より起されて、天に住むを得たり。故に我等感謝の心を抱きて呼ばん、其上に挙げられて、此を以て我等を共に挙げし主よ、我等に爾の天の喜を獲しめ給へ、爾は人を愛する主なればなり。

  本日の提綱、「主よ、我等を守り罪なくして」。

  挿句に讃頌、第二調。

言よ、教会は爾の成聖の水及び血を以て新婦の如く美しく飾られて、十字架の光栄を歌ふ。

句、主我が神を崇め讃め、其足台に伏し拝めよ、是れ聖なり。

十字架と偕に戈、釘、及び、其他ハリストスの生命を施す身を釘するに供せし者を挙げて伏拝せん。

句、神我が古世よりの王は救を地の中に作せり。

モイセイは十字形に手を挙げて、アマリクに勝ちし時、ハリストスの至浄なる苦を形れり。

  光栄、今も、第六調。

今日木は現れ、今日エウレイの族は亡び、今日信なる諸王は信を顕す、アダムは木に縁りて陥り、又木に縁りて悪鬼は慄けり。全能の主よ、光栄は爾に帰す。

  讃詞、第一調。

主よ、爾の民を救ひ、爾の業に福を降せ、我が皇帝に敵に勝たしめ、爾の十字架にて爾の住處を守り給へ。

知るべし、此の祭若し主日に當らば、主日の讃頌も、「ネポロチニ」も、本調の品第詞も、一切主日に歌誦する所を用いず、主日の福音経をも読まず、唯「ハリストスの復活を見て」を歌ふ、即總べて本祭の奉事式を用いる。

 

大晩課

若し「スボタ」の晩に遇はば、第一「カフィズマ」全分を誦す。若し主日の晩ならば、其の第一段のみを歌ふ。若し他の諸日ならば、「カフィズマ」を誦せずして、首誦聖詠及び大聯祷の後に「主よ、爾にぶ」を歌ふ、第六調に依る。

  祭日の讃頌、八句を立つ。第六調。

十字架は挙げられて、此の上に挙げられし者の至浄なる苦難を歌はんことを萬物に勧む、蓋彼は此の上に我等を殺しし者を殺し、我等死せし者を活かし、妝ひて、天に住むに堪ふる者と為せり、慈憐仁愛の主なればなり。故に我等喜びて、彼の名を挙げて、其極めて大なる寛容を尊み歌はん。三次。

尊き十字架よ、モイセイは上に手を伸べ、暴虐なるアマリクに勝ちて、爾を預象せり。爾は信者の令誉、苦難者の竪固、使徒の妝飾、義者の援助、凡の敬虔者の拯救なり。故に造物は爾が挙げらるるを見て、楽しみ祝ひ、至大なる仁愛に因りて爾を以て分れたる者を集めしハリストスを讃栄す。三次。

天軍の楽しみて繞れる最尊き十字架よ、爾は今日挙げられて、神の命を以て、凡そ食を竊むに因りて逐はれて死に陥りし者を挙ぐ。故に我等信者は心と口とを以て爾に接吻して、成聖を斟みてぶ、ハリストス至仁なる神を崇めて、彼の神聖なる足臺に伏拝せよ。二次。

  光栄、今も、第二調。

萬民来りて、讃美たる木に伏拝せん、此を以て永遠の義は成就せられたり。蓋木を以て原祖アダムを誘ひし者は十字架にて誘はれ、暴虐を以て王の造物を抑制せし者は擲たれて、甚しき仆にて仆る。神の血を以て蛇の毒は洗ひ去られ、不義なる裁判にて義者が定罪せられしを以て義なる定罪の詛は解かれたり。蓋木を以て木を醫し、無慾の者が木の上に受けし苦を以て定罪せられし者の苦を解くは宜しきに合へり。ハリストス王よ、光栄は我等に於ける爾の睿智なる摂理に帰す、爾は此を以て衆を救ひ給へり、仁慈にして人を愛する主なればなり。

  聖入。本日の提綱。

(此の祭若し「スボタ」に遇はば、金曜日の晩に本日の提綱を舎きて、大提綱を歌ふ、第七調、我等の神は天に在り、地に在り、凡そ欲する所を行ふ。蓋「スボタ」の晩には「主は王たり」の提綱を歌ふ)。

喩言三篇。

  エギペトを出づる記の読。(15−6章)。

モイセイはイズライリの諸子を紅海より導きて、スルの野に入りしに、彼等野を行くこと三日にして、飲まん為に水を得ざりき。メッラに至りしがメッラの水を飲むこと能わざりき、其苦きを以てなり、故に此の處はメッラ(苦)と名づけられたり。民はモイセイに怨言して曰へり、我等何を飲まんか。モイセイ主にべり、主は彼に一の木を示したれば、之を水に投ぜしに、水甘くなれり。彼處に神は民の為に律例と規定とを立て、彼處に彼を試み、且曰へり、爾若し慎みて主爾の神の声を聴き、其悦ぶ所を行ひ、其誡に耳を傾け、其悉くの律例を守らば、我は我がエギペト人に加へし病を一も爾に加へざらん、蓋我は主爾を醫す者なり。彼等エリムに至れり、其處に水の井十二、棕櫚七十株あり、彼等彼處に水の傍に幕を張れり。エリムより出でて、イズライリの諸子の会衆はシオンの野、即エリムとシナイ山との間に在る處に来れり。

  箴言の読。(3章)

我が子よ、主の懲治を軽んずる勿れ、彼より責められて弱る勿れ、蓋主は愛する者を責め、凡そ納るる所の子を鞭つ。智慧を求めたる人、聡明を得たる人は福なり、蓋智慧を()ふは金銀の宝を市うに愈る、此れ宝石よりも貴し、何の悪も之に敵する能わず、此れ凡そ之に近づく者に著明なり、都ての貴き物は之に比ぶるに足らず、其右の手には長寿あり、其左の手には富と栄とあり、義は其口より出で、律法と慈憐とは其舌に在り、其途は楽しき途なり、其諸途は皆和平なり。此れ凡そ之を執る者には生命の樹なり、之に倚る者は福なり。

  イサイヤの預言書の読。(60章)。

主是の如く言ふ、イエルサリムよ、爾の門は常に啓かれ、晝も夜も閉されず、諸民の貨財の爾の中に攜へられ、其諸王の導かれて来らん為なり。蓋爾に事うるを欲せざらん諸民と諸王とは亡び、此くの若き諸国は全く荒らされん。リワンの光栄は爾に来り、松と杉と黄楊樹とは共に来りて、我が聖所の處を飾り、我は我が足を置く所を栄せん。爾を苦しめし者の諸子は服して爾に来り、爾を藐りし者は皆爾の足下に拝し、爾を主の城、イズライリの聖者のシオンと称へん。爾嘗て棄てられ、憎まれて、爾を過ぐる者なきに至りしが、之に代へて我爾を永遠の華美、世々の歓楽と為さん。爾は諸民の乳を哺ひ、諸王の冨を食ひ、而して我が主爾の救者、爾の贖罪者、イズライリの全能者たるを知らん。

 

  「リティヤ」に讃頌、第一調。(イエルサリムのアンドレイの作)。

今日ダワィドの聖なる言は誠に應へり、蓋視よ、我等は顕に爾の至潔なる足の臺に伏拝し、且爾が翼の蔭を恃みて、爾に呼ぶ、慈憐なる主よ、爾の顔の光を我等に顕し給へ。恩深きハリストスよ、爾の尊き十字架を挙ぐるを以て爾の正教の民の角を挙げ給へ。

髑髏の處に植えられたる眞の生命の樹、古世よりの王が其上に在りて救を地の中に作しし者は、今日挙げられて.地の四極を聖にし、復活の殿を新にす。天使等は天に在りて喜び、人々は地に在りて楽しみ、ダワィドの如くびて曰ふ、主我が神を崇め讃め、其足臺に伏し拝めよ、彼は聖にして世界に大なる憐を賜へばなり。

ハリストスよ、太祖イアコフは爾の十字架を預象して、孫に福を降す時、己の手を其首に交へたり。救世主よ、我等今日此を挙げてぶ、コンスタンティンに敵に勝つを賜ひし如く、我が皇帝に勝利を與へ給へ。

  第二調。(フェオファン作)。

神聖なる寶、生命を施す主の十字架は地に隠されて、敬虔なる王に天に顕れ、霊妙の文を以て敵に對する勝利を示せり。王は喜びて、信と愛とを以て神聖に明悟の高きに登りて、熱切に之を地の懐より取り出せり、世界の援助、我等の霊の拯救の為なり。

  (キプリアンの作)。

太祖イアコフが子に福を降す時に手を交ふるは爾の十字架の権能の號を預め示せり。我等之を堅固なる守護と有ちて、勇ましく悪鬼の軍を逐ひ、ワェリアルの驕傲を敗り、痛く敵するアマリクの害の甚しき力に勝つ。今も我等信者は敬虔の心を以て之を挙げて、諸罪の潔浄の為に爾の仁慈の前に捧げ、多くの声を以てぶ、主よ、憐み給へ、童貞女より身を取りし仁慈の者よ、爾の手の巧妙なる造物に慈憐を垂れ給へ。

  (帝レオの作)。

ハリストスの三重の十字架よ、爾は我の権能のおほひなり、爾の能力にて我を聖にせよ、我が信と愛とを以て伏拝して爾を讃栄せん為なり。

  第四調

今日我等手を拍ち、歌頌して祝ひ、欣ばしき面と舌とを以て朗に呼ばん、ハリストスよ、爾は我等の為に裁判を受け、唾せられ、傷つけられ、赭き衣を衣せられ、十字架に挙げられたり。日と月とは之を見て光を隠し、地は畏懼を以て震ひ、殿の幕は二に裂けたり。爾は今も爾の尊き十字架を我等に守護、防固、悪鬼を逐ふ者として與へ給へ、我等皆之に接吻して呼ばん為なり、十字架よ、爾の能力を以て我等を救へ、尊き十字架よ、爾のW煌を以て我等を聖にし、爾の挙げらるるを以て我等を固め給へ、蓋爾は光及び我が霊の救として我等に賜はりたり。

  (アナトリイの作)。

十字架よ、星にて光れる爾の形は敬虔なる大王に預め勝利の凱旋を示せり。其母エレナは之を覓め獲て、世界に顕れたる者と為せり。我等信者の会は今日爾を挙げて呼ぶ、生命を施す十字架よ、爾のW煌にて、我等を照せ、最尊き十字架よ、爾の能力にて我等を聖にせよ、諸敵を禦がん為に挙げらるる者よ、爾の挙栄を以て我等を固め給へ。

  光栄、今も、同調。(アナトリイの作)。

ハリストスよ、モイセイは尊き十字架の能力を預象して、シナイの野に於て仇敵アマリクに勝てり、蓋手を舒べて十字架の形を為しし時、民力を得たり。今は預象の事實我等の中に成れり、今日十字架は挙げられて、悪鬼は逐はる、今日造物は皆朽壊より解かれたり、蓋十字架に因りて一切の賜は我等に輝けり。故に我等皆喜びて、爾に俯伏して曰ふ、主よ爾の工作は何ぞ大なる、光栄は爾に帰す。

  挿句に讃頌、第五調。

慶べよ、生命を施す十字架、敬虔の勝たれぬ勝利、楽園の門、信者の堅固、教会の衞護、朽壊の敗られて虚しくせられ、死の権の践まれ、我等が地より天に挙げられし所以の者、敵すべからざる武器、悪魔の防禦、致命者の光栄、克肖者の眞の修飾、救の湊、世界に大なる憐を賜ふ者や。

句、主我が神を崇め讃め、其足臺に伏し拝めよ、是れ聖なり。

慶べよ、最尊き主の十字架、人類が詛より釋かれし所以の者、眞の喜の號、其挙栄を以て敵を逐ふ者、我等の輔助、諸王の権柄、義者の堅固、司祭等の妝飾、記されてわざわいを脱れしむる者、我等が牧せらるる能力の杖、和平の武器、天使等が畏を以て環る者、世界に大なる憐を賜ふハリストスの神聖なる光栄や。

句、神我が古世よりの王は救を地の中に作せり。

慶べよ、尊き十字架、瞽者の相、病者の醫師、衆死者の復活、朽壊に陥りし我等を起しし者、詛の釋かれ、不朽の栄え、地上の者が神成せられ、悪魔の全く仆されし所以の者や。我等今日爾が司祭首の手にて挙げらるるを見て、爾の上に挙げられし者を崇め、爾に伏拝して、豊に大なる憐を斟む。

  光栄、今も、第八調。(修士イオアンの作)。

ハリストス神よ、我等罪なる者は今日爾の尊き十字架に伏拝す。昔モイセイは己を以て之を預象して、アマリクを斃して勝ち、聖詠者ダワィドも爾の足臺に伏し拝むを命じて、之を示せり。我等は不當の口を以て、爾其上に甘じて釘せられし者を歌頌して祈る、主よ、盗賊と偕に我等を爾の國に入るに勝へさせ給へ。

  次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひて」。

  餅の祝福に讃詞、第一調。

主よ、爾の民を救ひ、爾の業に福を降せ、我が皇帝に敵に勝たしめ、爾の十字架にて爾の住處を守り給へ。三次。

并に尊貴なる十字架の詞の誦読。

 

早課

「主は神なり」に祭日の讃詞、三次。

  「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞、第六調。

主ハリストスよ、爾の十字架の木の樹てらるるばかりにして、死の基は震へり、蓋地獄が貪りて呑みたる者を慄きて出せり。聖なる者よ、爾は我等に爾の救を顕せり。我等爾を讃頌す、神の子よ、我等を憐み給へ。

  光栄、今も、第一調。

人を愛する主よ、我等爾の十字架の木に伏拝す、蓋爾は、萬有の生命よ、其上に釘せられたり。救世主よ、爾は信を以て爾に就きたる盗賊の為に楽園を啓き給へり、爾を承け認めて、主よ、我を記念せよと求めし者は福楽を獲たり。彼の如く爾に向ひて、我等皆罪を犯せり、爾の慈憐に由りて我等を棄つる毋れと呼ぶ者をも納れ給へ。

  第二の誦文の後に坐誦讃詞、第六調。

今日預言者の言は應へり、蓋視よ、我等は爾主の足の立ちし處に伏拝す。独人を愛する主よ、我等は救の木を受けて、罪悪の苦より釋かれたり、生神女の祈祷に因りてなり。

  光栄、今も、第八調。

我が救世主よ、昔イイススナワィンは奥密に十字架の形を預象せり。彼が手を十字形に舒べし時、爾神に逆ふ敵を斃すに至るまで日は停まれり。今は日爾が十字架に在るを見て晦みしに、爾は死の権を敗りて、全世界を己と偕に起し給へり。

  多燭詞の後に坐誦讃詞、第八調。

木は曩に楽園に於て我を裸體にし、敵は食に因りて死を入れたり。十字架の木は地に樹てられて、生命の衣を人々に與へしに、全世界は凡の喜に満てられたり、其挙げらるるを見て、我等人々は信を以て声を合せて神にばん、爾の家は光栄に満ちたり。

  光栄、今も、同調。

讃歌
右、生命を賜ふハリストスよ、我等爾を讃揚して、爾が我等を敵の奴隷より救ひし聖なる十字架を尊む。
  次ぎて同詠隊又歌ふ。
右、主よ、我と争ふ者と争ひ、我と戦ふ者と戦ひ給へ。
左、盾と甲とを執り、起ちて我を助け給へ。
右、主よ、爾の顔の光を我等に顕し給へ。
左、爾恵を以て盾の如く義人を環らし衞ればなり。 爾を畏るる者に旗を賜ひて、彼等に眞實の為に之を挙げしめ給へ、 爾の途の地に知られ、爾の救の萬民の中に知られん為なり。 凡そ地の極は我が神の救を見たり。 往きて、彼の足<台>に叩拝せん。 林の諸木は主の顔の前に舞ふべし。 神我が古世よりの王は救を地の中に作せり。 主我が神を崇め讃め、其足<台>に伏し拝めよ、是れ聖なり。 願はくは神我が神は我等に福を降し、願はくは神に我等に福を降さん。 爾の民を救ひ、爾の業に福を降し、 之を牧し、之を世々に挙げ給へ。
光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。

  品第詞、第四調の第一倡和詞。

  提綱、第四調。

凡そ地の極は我が神の救を見たり。句、新なる歌を主に歌へ、蓋彼は奇迹を行へり。

「凡そ呼吸ある者」。句、「神を其聖所に讃め揚げよ」。

  福音経はイオアン42端の半より。

次ぎて「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。

  讃頌、第六調。

ハリストスの十字架、「ハリスティアニン」等の倚望、迷ふ者の導引、颶風に遭ふ者の投泊、戦に於ける勝利、世界の堅固、病者の醫師、死者の復活よ、我等を憐め。

規程は十字架の。コスマ師の作。其冠詞は、十字架を頼みて歌頌を棒ぐ。「イルモス」二次、讃詞十二句に。第八調。

  第一歌頌

イルモス、モイセイは杖を以て十字架の縦を象りて、徒歩にて行けるイズライリの為に紅の海を撃ち分ち、ファラオンの兵車に向ひては、勝たれぬ武器の横を記して、海を撃ち合せたり。故に我等ハリストス吾が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

昔モイセイは司祭等の間に立ちて、己を以て至浄なる苦を預象し、舒べたる手にて十字架を形り、勝利の旌を挙げて、兇暴なるアマリクの能力を滅せり。故に我等ハリストス吾が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

モイセイは良薬を柱に挙げて、命を奪ふ毒悪の噛傷を醫し、地に匍ふ蛇を十字架を形れる木に縛りて、禍に勝てり。故に我等ハリストス吾が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

天は敬虔なる有権者、神智の王に十字架の勝利の號を顕せり、此を以て悪敵の兇暴は敗られ、迷は散らされ、神の教は地の涯まで弘まれり。故に我等ハリストス吾が神に歌はん、彼光栄を顕したればなり。

共頌、両詠隊共に、「モイセイは杖を以て十字架の縦を象りて」。

  第三歌頌

イルモス、杖は秘密の預象として受けらる、蓋芽を出すに因りて司祭を指し示せり。嘗て實を結ばざる教会にも今十字架の木は華さきて、其権力及び堅固と為れり。

磐は撃つに因りて不順にして剛愎なる民に水を注ぎて、神の召し給ひし教会の秘密を象れり、蓋十字架は其権力及び堅固なり。

至潔なる脇が戈にて刺されし時、約を改め罪を浄むる水と血とは出でたり、蓋十字架は信者の誉、諸王の権力及び堅固なり。

  坐誦讃詞、第四調。

三重に福なる生活を施す十字架よ、人々は爾を祭りて、無形の軍と偕に祝ひ、司祭首の会は敬みて爾を歌頌し、修士及び守齋者の大数は爾に伏拝し、我等衆は爾の上に釘せられしハリストスを讃栄す。

  光栄、今も、同上。

  弟四歌頌

イルモス、主よ、我爾が摂理の秘密を聆き、爾の作為を悟り、爾の神性を讃栄せり。

昔モイセイは野に於て木を以て苦き泉を變じて、十字架に藉りて異邦民が敬虔の教に帰するを象れり。

イオルダンは斧を深處に匿し、木に藉りて之を返して、十字架と洗礼とに依りて迷の絶たるるを示せり。

民は前兆をなす證詞の幕に先だちて、聖軍に於て四部に分たれ、十字形の列に依りて光栄を得たり。

奇妙に懸りたる十字架は日の如き光線を放ち、天は吾が神の光栄を伝へたり。

  第五歌頌

イルモス、嗚呼ハリストス王及び主が懸りたる木は三重に福なる哉。木を以て誘ひし者は爾に誘はれて墜ちたり、神我が霊に平安を賜ふ者は身にて爾の上に釘せられしに因る。

ハリストスが懸り給ひし十字架、常に讃詠せらるる木よ、エデムを守護する旋る剣は爾に耻ぢ、畏るべきヘルワィムは爾の上に釘せられしハリストス、吾が霊に平安を賜ふ主の前より退けり。

地獄の敵軍空中に居る者は、空中に畫する十字架の記號に戦き、天上地下の諸族は吾が霊に平安を賜ふハリストスの前に膝を屈む。

神聖なる十字架は浄き光線の中に顕れ、心を奪ふ迷に昧まされし諸民を神聖なる光にて照して、此を其上に釘せられしハリストス、吾が霊に平安を賜ふ主に属せしむ。

  第六歌頌

イルモス、イオナは海の猛獣の腹の内に手を十字形に伸べて、明に救を施す苦を象れり、三日の後に出でて、身にて釘うたれ、三日目の復生を以て世界を照ししハリストス神の天然に超ゆる復活を預象せり。

年老いて衰へ、病みて弱りたるイアコフは、手を交へ置く時に、堅固なるを得て、生活を施す十字架の力を顕せり、蓋此の上に身にて釘せられし神は影なる文の律法の舊きを新にし、霊を害ふ迷の疾を逐ひ給へり。

神聖なるイズライリは十字形に手を少者の頂に按きて、長子が律法の下に在りて神に務むる民を示すを顕せり、人が之を誤れりと云ふ時、彼は生活を施す號を改めずして呼べり、ハリストス神が新に植え、十字架にて守らるる民は秀づるあらん。

  小讃詞、第四調。

甘じて十字架に挙げられしハリストス神よ、爾が同名の新なる住處に爾の慈憐を賜へ。爾の力を以て我が皇帝を楽しましめて、彼に敵に勝たしめ給へ、彼は爾の援助として平安の武器、勝たれぬ旗を有てばなり。

  同讃網

第三重の天に楽園に挙げられて、道ひ難き神聖なる言、人の舌を以て語る能はざる所を聞きし者は、何をかガラティヤ人に達して書する書を愛する者の読みて知れるが如し、曰く、我に在りては唯主の十字架、主が其上に苦を受けて諸慾を殺しし者の外に誇る所なしと。我等衆も此の主の十字架を堅く有ちて誇と為すべし、蓋此は我等の為に救の木なり、平安の武器、勝たれぬ旗なり。

  第七歌頌

イルモス、不虔なる苛虐者の恐嚇と聞くに堪へざる神に於けるそしりとを吐く無智なる命令は民を擾せども、三人の少者は残忍の怒と滅亡の火とを懼れずして、露を送る風に涼しくせらるる焔の中に在りて歌へり、讃詠せらるる先祖と我等との神よ、爾は崇め讃めらる。

初の人は木の果を食ひ、朽壊に服して、命を失ふ辱に定められ、肉體の病毒の如くなりて、全人類に病を伝染せしめたり、然れども我等地に生るる者は十字架の木に藉りて救はるるを獲て呼ばん、讃詠せらるる先祖と我等との神よ、爾は崇め讃めらる。

不順は神の誡を破り、木は其果を時ならず食ふに因りて人を死に致せり、故に福たる生命の樹は禁ぜられて隔れり、智慧は死する盗賊の為に復之に往く途を闢けり、蓋彼呼べり、讃詠せらるる先祖と我等との神よ、爾は崇め讃めらる。

未来を見透すイズライリはイオシフの杖の頭に首を俯して、至栄なる十字架が王権の力を獲んとするを預象せり、蓋是は諸王の為に勝を獲る誉、信を以て、讃詠せらるる先祖と我等との神よ、爾は崇め讃めらると呼ぶ者の為に光なり。

  第八歌頌

イルモス、聖三者と同数なる少者よ、神父造物主を崇め讃め、降りて火を露に變ぜし言を讃め歌ひ、萬有に生命を施す至聖神゜を世々に尊み崇めよ。

身を取りし神言の血の灑がれたる木を挙ぐる時、天軍は歌ひて、地上の者の復生を祝へ、諸民はハリストスの十字架に伏拝せよ、此に因りて復活は世界に世々に賜はりたればなり。

地に在りて恩寵を司る者よ、敬みて手を以てハリストス神が釘せられし十字架と、神言の肉體の刺されし戈とを挙げよ、萬民が神の救を見て、彼を世々に讃栄せん為なり。

神の旨に由りて預選せられたる虔誠なる諸王、ハリストスを奉ずる者よ、喜べ、神より尊き十字架を受けて、此の勝利の武具を己の誉と為せ、蓋此に藉りて残忍なる戦を挑む諸族は世々に敗らる。

第九歌頌に「ヘルワィムより尊く」を歌はずして、聖日の附唱を歌ふ。我が霊よ、最尊き主の十字架を讃め揚げよ。

次に「イルモス」、「生神女よ、爾は奥密なる楽園」。左列詠隊も此の附唱及び「イルモス」を歌ふ。六讃詞の前にも同附唱を用いる。

  第九歌頌

イルモス、生神女よ、爾は奥密なる楽園、耕作せられずしてハリストスを生育せし者なり、彼は地上に生命を施す十字架の木を植え給へり、故に今之を挙ぐる時.我等之を拝みて、爾を崇め讃む。

林の諸木は喜ぶべし、蓋其性は元始に此等を植え給ひしハリストス、木に懸りたる者に藉りて聖にせられたり、故に今之を挙ぐる時、我等之を拝みて、爾を崇め讃む。

神智者の為に萬有の首の聖にせられし角たる十字架は挙げられたり、之に藉りて罪人等の悉くの角は奇妙に折かる、故に今之を挙ぐる時、我等之を拝みて、爾を崇め讃む。

他の附唱、我が霊よ、生命を施す主の十字架の挙栄を讃め揚げよ。次に「イルモス」、「木の果を食ふに縁りて」。左列詠隊も同じく此の附唱及び「イルモス」を歌ふ。六讃詞にも右の附唱を用いる。

  又「イルモス」

木の果を食ふに縁りて人類に入りし死は今十字架にて空しくせられたり、蓋原母に藉る一般の詛は潔き神の母の産にて滅されたり、天軍皆彼を崇め讃む。

主よ、爾は死を致す木の苦を遺さずして、十字架を以て全く之を滅し給へり、故に昔木はメッラの水の苦を除きて、十字架の力を預象せり、天軍皆之を崇め讃む。

主よ、爾は常に原祖の罪の暗に陥る者を今十字架を以て挙げ給へり、蓋我が性が禁むる能はずして迷に誘はれし時、爾の十字架の光は全く我等を起せり、故に我等信者は之を崇め讃む。

主よ、拝まるべき十字架の形を其悉くの光栄の中に於て世界に顕さん為、爾之を無量の光を放つ者、勝たれぬ武具として王の為に天に畫し給へり、故に天軍皆爾を崇め讃む。

共頌、附唱と共に、「生神女よ、爾は奥密なる楽園」。他の「イルモス」、「木の果を食ふに縁りて」。并に躬拝。

  光耀歌

十字架は全世界の守護、十字架は教会の妝飾、十字架は諸王の権柄、十字架は信者の堅固、十字架は天使の光栄、及び悪魔の苦悩なり。二次。

  光栄、今も、

今日十字架は挙げられて、世界は聖にせらる、蓋父及び聖神゜と偕に坐する者は其の上に手を伸べたり、此は全世界を引きて、ハリストスよ、爾を識る知識に就かしめたり。求む、爾を恃む者を神聖なる光栄に堪ふる者と為し給へ。

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ。第八調。

嗚呼至栄なる奇蹟や、生命を施す植物たる至聖なる十字架は今日高く挙げられて現る、地の四極は讃栄し、悪魔の群は戦慄す。嗚呼如何なる賜か地上の者に賜はりたる、ハリストスよ、此を以て我等の霊を救ひ給へ、爾獨慈憐の主なればなり。二次。

嗚呼至栄なる奇蹟や、生命を満つる葡萄の實の如く、至上者をフぐる十字架は今日地より挙げられて見らる。此を以て我等皆神に就くを得、死は全く滅されたり。嗚呼最尊き木や、爾に藉りて我等ハリストスを讃栄する者はエデムに於て不死の糧を獲たり。

嗚呼至栄なる奇蹟や、十字架の縦横は天に斉し、蓋神聖なる恩寵にて萬有を聖にす、此を以て夷狄は勝たる、此を以て諸王の権柄は固めらる。嗚呼神聖なる梯や、我等主ハリストスを歌ひて崇むる者は之に藉りて天に升る。

  光栄、今も、第六調。

今日主の十字架は現れ出づ、諸信者は愛を以て之を承けて霊と體との諸病を醫さるるを得。我等喜且畏を以て之に接吻せん、畏を以てするは罪ありて不當なるに因り、喜を以てするは之に釘せられしハリストス神、大なる憐を有つ主が世界に賜ふ所の救に因りてなり。

大詠頌、諧和の声を以て緩唱す。

十字架を挙栄し、及び之に伏拝することは、規定の命ずる如く之を行ふ。

尊貴なる十字架に接吻する時、十字架の讃頌を歌ふ。第二調。

信者よ、来りて、生命を施す木に伏拝せん。昔敵は逸楽を餌にして我等より福を奪ひ、我等を神より遠ざけられし者と為せり、今ハリストス光栄の王は甘んじて其上に手を舒べて、我等を初の福に挙げ給へり。信者よ、来りて、聖なる木に伏拝せん、我等は此を以て見えざる敵の首を砕くに堪ふる者と為れり。諸族諸民よ、来りて、歌を以て主の十字架を尊まん。墜ちたるアダムの全き救なる十字架よ、慶べ、虔誠なる諸王は爾を以てほこりと為す、爾の力に因りて異民を制服すればなり。我等「ハリスティアニン」は今畏を以て爾に接吻して、爾の上に釘せられし神を讃栄して曰ふ、其上に釘せられし主よ、我等を憐み給へ、爾は仁慈にして人を愛する主なればなり。

  第五調。

人々よ、来りて、至栄なる奇蹟を見て、十字架の力に伏拝せん、蓋木は楽園に死を生ぜり、然れども此の木は生命の華を發けり、罪なき主が其上に針せられしに因る。我等衆民彼より不朽を獲て呼ぶ、十字架を以て死を空しくして、我等を釋きたる主よ、光栄は爾に帰す。

  同調

神よ、爾の預言者イサイヤ及びダワィドの言は應へり、云く、主よ、萬民来りて、爾の前に伏拝せんと、蓋視よ、爾仁慈なる主の恩寵に満てられたる民は爾のイエルサリムの庭に在り。我等の為に十字架を忍びて、爾の復活を以て活かし給ふ主よ、我等を守りて救ひ給へ。

  第六調

ハリストス我が神よ、今日爾の四出の十字架は挙げられて、四極の世界は聖にせられ、我が皇帝の角は高くなりて、諸敵の角は折かる。主よ、爾の所為に於て爾は大にして奇妙なり、光栄は爾に帰す。

  同調

諸預言者の声は聖なる木、アダムが此を以て古の死の詛より釋かれし者を預言したり。造物は今日其挙げらるるを見て、共に声を揚げて、大なる恩を神に求む。独慈憐の測り難き主宰よ、我等の為に潔浄と為りて、吾が霊を救ひ給へ。

  第八調

神よ、爾の預言者モイセイの言は應へり、云く、爾等の生命が爾等の目の前に懸れるを見んと。今日十字架は挙げられて、世界は迷より釋かる。今日ハリストスの復活は新にせられて、地の四極は喜び、ダワィドの如く琴を以て歌を爾に奉りて云ふ、神よ、爾は救を地の中に作せり、是れ十字架及び復活、爾が、仁慈にして人を愛する主よ、我等を救ひ給ひし者なり。全能の主よ、光栄は爾に帰す。

  同調

今日造物の主宰、光栄の主は十字架に釘せられ、脅を刺さる。教会の甘味たる者は膽と醋とを嘗む、雲を以て天を覆ふ者は棘の冠を冠らせられ、侮辱の衣を衣せらる。手を以て人を造りし者は朽つべき手にて批たる、雲を以て天に服する者は頬を批たれ、唾及び傷、辱及び笞を受く。我の贖罪主并に神は、慈憐なるに因りて、我定罪せられし者の為に一切を忍ぶ、世界を迷惑より救はん為なり。

  光栄、今も、同調。

今日性の捫られぬ者は我に捫らる、我を苦難より解く者は苦難を受く。瞽に光を賜ふ者は不法の口より唾せられ、虜にせられし者の為に其肩を苔に予ふ。至浄なる童貞女母は彼を十字架に見て、痛く哀しみて曰へり、嗚呼吾が子よ、何ぞ之を為したる、衆人より美しき者は気息なく、華栄なく、美しき容なき者と現る。嗚呼吾が光よ、我爾の寝ぬるを見るに忍びず、心は裂かれ、利き剣は我が霊を貫く。我爾の苦を尊み歌ひ、爾の慈憐に伏拝す、恒忍の主よ、光栄は爾に帰す。

次ぎて聯祷、以下常式の如し、最後の發放詞に至る。

 

聖體礼儀

  第一倡和詞、第二調、第二十一聖詠。

第一句、我が神よ、我が神よ、我に聴き給へ、何ぞ我を遺てたる。附唱、救世主よ、生神女の祈祷に因りて我等を救ひ給へ。左列詠隊第二句、我が呼ぶ言は我が救より遠し。附唱、救世主よ云々 右列詠隊第三句、我が神よ、我晝に呼べども、爾耳を傾けず、夜に呼べども、我安を得ず。 救世主よ云々 左列詠隊第四句、然れども爾聖者はイズライリの讃頌の中に居るなり。  救世主よ云々 光栄、今も、救世主よ云々

  第二倡和詞、第二調、第七十三聖詠。

第一句、神よ、何為れぞ永く我等を棄てたる。附唱、神の子、身にて釘せられし主よ、我等爾に「アリルイヤ」を歌ふ者を救ひ給へ。左列詠隊第二句、爾が古より獲たる会を記憶せよ。附唱、神の子云々  第三句、爾が居る所の此のシオン山を記憶せよ。神の子云々  第四句、神我が古世よりの王は救を地の中に作せり。

神の子云々 光栄、今も、 神の独生の子并に言よ云々 両詠隊共に歌ふ。

  第三倡和詞、第一調、第九十八聖詠。

第一句、主は王たり、諸民戦くべし。讃詞、第一調、主よ、爾の民を救ひ、爾の業に福を降せ、我が皇帝に敵に勝たしめ、爾の十字架にて爾の住處を守り給へ。第二句、主は王たり、諸民戦くべし、彼はヘルワィムに坐す、地は震ふべし。讃詞、主よ、爾の民を救ひ云々 第三句、主はシオンに在りて大なり、彼は萬民の上に高し。主よ、爾の民を救ひ云々 第四句、主に其美しき聖所に伏拝せよ。 主よ、爾の民を救ひ云々

次に聖入。輔祭曰く、睿智、粛みて立て。聖入の句、主我が神を崇め讃め、其足臺に伏し拝めよ、是れ聖なり。讃詞、主よ、爾の民を救ひ云々 光栄、今も、小讃詞、第四調、甘じて十字架に挙げられしハリストス神よ、爾が同名の新なる住處に爾の慈憐を賜へ、爾の力を以て我が皇帝を楽しましめて、彼に敵に勝たしめ給へ、彼は爾の援助として平安の武器、勝たれぬ旗を有てばなり。聖三祝文に代へて歌ふ、主宰よ、我等爾の十字架に伏拝し、爾の聖なる復活を讃栄す。

  提綱、第七調。

主我が神を崇め讃め、其足臺に伏し拝めよ、是れ聖なり。句、主は王たり、諸民戦くべし。使徒の誦読はコリンフ書百二十五端、「アリルイヤ」、第一調、爾が古より獲たる会を記憶せよ。句、神我が古世よりの王は救を地の中に作せり。

  福音経の誦読はイオアン六十端。

領聖詞、主よ、爾の顔の光は我等に顕れたり。「アリルイヤ」三次。