8月15日/28日

至聖なる我が女宰生神女永貞童女マリヤの就寝祭

 


小晩課

「主よ、爾にぶ」に四句を立てて讃頌を歌ふ、第一調。

神の母の不死の就寝の為に天使の会は喜ぶ。彼は逝きて、永遠の住所に入り、天の楽、神聖なる欣、限なき歓喜に移り給ふ。

神の母、童貞の花なる少女、萬有の生命たるハリストスを生みし者よ、爾は上なる生命を慕ひて、此の世の生命を離れたり。神の聘女よ、使徒の会は敬みて爾の尊き葬に奉事せり。

慈愛なる神の母、夫に適かざる生神女よ、至妙なる奇跡や、爾の逝世と葬との歌、及び爾の上升に由りて空気は聖にせられたり。故に婚姻に與らざる生神女よ、我等信者は熱信を以て爾に伏拝す。

  光栄、今も、第六調。

来りて、全世界の慶賀する至浄なる生神女の就寝を祭らん、蓋天使等は今日神の母の尊き逝世を祝ひ、我等地の者を楽に召して、黙さぬ声にて歌はしむ、地上より逝きて、天上の住所に移りし者よ、慶べ、軽き雲にて門徒の会を一に聚めし者よ、慶べ、我等の憑恃及び拯救よ、慶べ、蓋「ハリスティアニン」等の族は恒に爾を讃揚す。

  本日の提綱。

  挿句に讃頌、第二調。

門徒及び神聖なる使徒の会は集まりて、神の惟一の母の神を受けし肉体を葬る。

句、主よ、爾及び、爾が能力の匱は爾が安息の所に立てよ。

生神女より言ひ難く輝きし主宰よ、子に宜しきが如く、彼の至りて潔き神゜を爾の手に受け給へ。

句、主は真実を以てダワィドに誓ひて、之に背かざらん。

童貞女よ、爾より生れし者に爾が移りし時、使徒等は雲に乗りて集まりて、爾の肉体を葬れり。

  光栄、今も、

天の門よ、至上者の門が光栄を以て其子及び神に往くを見て、挙れ。

  讃詞、第一調。

生神女よ、爾は産む時童貞を守れり、寝る時世界を遺さざりき。爾は生命の母として生命に移れり、爾の祈祷を以て我等の霊を死より脱れしめ給ふ。

  小聯祷及び発放詞。

 

大晩課

第一「カフィズマ」の第一段を歌ふ。

「主よ、爾にぶ」に八句を立てて左の讃頌を歌ふ、第一調。

嗚呼至栄なる奇蹟や、生命の泉は柩に置かれ、天に登る梯は墓と為れり。ゲフシマニヤ、生神女の聖なる堂よ、楽しめ。我等信者はガウリイルを唱導者として呼ばん、恩寵を蒙れる者、慶べよ、爾に因りて世界に大なる憐を賜ふ主は爾と偕にす。三次。

生神女よ、爾の秘密は奇妙なる哉、女宰よ、爾は至上者の寶座と現れて、今日地より天に移れり。爾の光栄は荘厳にして、神聖なる奇蹟を以て輝く。處女等よ、王の母と偕に高きに升れ。恩寵を蒙れる者、慶べよ、爾に因りて世界に大なる憐を賜ふ主は爾と偕にす。三次。

権柄と寶座、首領と主制、能力とヘルワィム、及び威厳なるセラフィム等は爾の就寝を讃栄す。地に生るる者は爾の神聖なる光栄に妝はれて欣ぶ。諸王は差役首及び差役等と偕に俯伏して歌ふ、恩寵を蒙れる者、慶べよ、爾に因りて世界に大なる憐を賜ふ主は爾と偕にす。二次。

  光栄、今も、同調。

捧神なる使徒等は神の指麾に因りて諸方より高き雲に挙げられて、生命の源なる最潔き爾の肉体に至りて、愛を以て之に接吻せり。至上の天軍は己の主宰と偕に来りて、畏を懐きて、神を受けし最潔き肉体を送り、且厳に先導して、見えずして上なる軍長に呼べり、視よ、萬衆の女王、神の聘女は来れり、門を取りて、此の永在の光の母を天上に挙げよ、蓋彼に因りて全人類の救は成れり。我等之に目を注ぐ能はず、之に稱ふ尊敬を帰するを得ず、彼の秀づることは凡の智慧に踰ゆればなり。故に至りて潔き生神女よ、恒に生を施す王、爾の生みし者と偕に居りて、絶えず爾の新なる民を凡の敵の攻撃より護りて救はんことを祈り給へ、蓋我等爾の轉達を得て、世々に爾を讃美讃栄す。

  聖入。本日の提綱。喩言三篇。

  創世記の読。(二十八章)。

イアコフはワィルサワィヤより出でてハッランに往けり。一處に至りて、日既に入りたれば、彼處に宿れり。彼の地の石を取り、枕と為して、其處に寝ねたるに、彼夢を見たり、視よ、梯地に樹ちて、其上天に至り、神の使等此に縁りて陟降せり。主は其上に立ちて曰へり、我は爾の祖父アウラアムの神、及びイサアクの神なり、畏るる勿れ、爾が臥す所の地は、我之を爾と爾の子孫とに與へん、爾の子孫は地の砂の如くなりて、海東北南に広まり、地上の萬族は爾と爾の子孫とに因りて祝福せられん、視よ、我爾と偕にし、爾何處に往くとも、其途に爾を守り、又爾を此の地に返さん、蓋我は凡そ爾に語りし事を行うに至るまで爾を離れざらん。イアコフ夢覚めて曰へり、誠に主は此の處に在すに、我知らざりき。乃懼れて曰へり、畏るべき哉此の處、是れ他に非ず、即神の家なり、此れ天の門なり。

  イエゼキイリの預言書の読。(四十三、四章)

主是くの如く言ふ、八日に至りて後、司祭等は爾等の燔祭と酬恩祭とを壇の上に献げん、而して我爾等を納れん、主神之を言ふ。彼我を引きて聖所の東に向へる外の門に返れるに、門閉されたり。主我に謂へり、此の門は閉されて開かれざらん、何人も此より入るを得ざらん、蓋主イズラィリの神は此より入りたり、此れ永く閉されん。君は其君たるに因りて、此の内に坐して、主の前に餅を食はん、彼は門の廊の路より入り、又其路より出でん。彼又我を引きて北の門の路より堂の前に至れり、我観しに、視よ、光栄は主の堂に満ちたり。

  箴言の読。(九章)。

智慧は其家を建て、其七つの柱を堅め、其畜を宰り、其酒を調和し、其席を設け、其諸僕を遣して邑の高き處より呼ばしめて云へり、無知なる者よ、此に来れ。智慧の乏しき者に謂へり、来りて、我が餅を食ひ、我が調和せし酒を飲め、無知を棄てて生命を得、聡明の途を行け。侮慢者を戒むる人は己に辱を得、悪者を責むる者は己に疵を得ん。侮慢者を責むる勿れ、恐らくは彼爾を悪まん、智者を責めよ、彼爾を愛せん、智者に伝授せよ、彼益智慧を獲ん、義者を教えよ、彼知識に進まん。主を畏るる寅畏は智慧の始めなり、聖者を知るは聡明なり。我に由りて爾の日は多くせられ、爾の生命の年は増さん。

  「リティヤ」に讃頌、第一調。

言の実見者及び役者には、其肉体に依る母の就寝、之に於ける終の秘密を見ること宜しきに合へり、啻救世主の地より升るを見るのみならず、彼を生みし者の移さるることをも證せん為なり。故に彼等は神の力を以て諸方より集められて、シオンに至り、ヘルワィムより上なる者の天に往くを送れり。我等も彼等と偕に之に伏拝す、其我等の霊の為に祈ればなり。

  第二調。(アナトリイの作)。

天に超え、ヘルワィムより栄え、萬物より尊き者、最優れたる潔浄に因りて永在の主を容るる器と為りし者は、今日至聖なる霊を其子の手に付す。彼と偕に萬有は喜に満てらる、彼は我等にも大なる憐を賜ふ。

  (イオアンの作)。

至りて無てんなる聘女、父の愛子の母、預定せられて神の住所、其混淆せざる合一の處と為りし者は、今日至浄なる霊を造成主及び神に付す。無形の天軍は敬みて之を挙ぐ。生命の母たる者、近づき難き光の燈、信者の救、我が霊の冀望(きぼう)は生命に移さる。

  第三調。(ゲルマンの作)。

地の四極は来りて、神の母の尊き逝世を讃め歌はん、蓋彼は無てんなる霊を其子の手に託せり。故に世界は其聖なる就寝に活かされて、無形の者及び使徒等と偕に聖詠と歌頌と属神゜の詩賦とを以て欣ばしく祝ふ。

  光栄、第五調。(フェオファンの作)。

来れ、祭を愛する会よ、来りて、詠隊を合せん、来りて、神の匱の安息するに因りて、歌を以て教会を修飾せん。蓋今日天は懐を啓きて、萬有に容れ難き主を生みし者を受く、地は生命の源を與へて、祝福と栄華とに飾らる。諸天使は使徒等と偕に会を為して、畏を以て生命の首を生みし者が生命より生命に移さるるを瞻る。我等皆伏拝して彼に祈らん、女宰よ、爾の同族、熱心に爾の至聖なる就寝を祭る者を忘るる毋れ。

  今も、同調。

人々よ、歌へ、我等の神の母に歌へよ、蓋今日彼は其至りて光れる霊を彼より種なく身を取りし主の至浄なる手に付す、且つ彼に息めずして世界に平安と大なる憐とを賜はんことを祈り給ふ。

  挿句に讃頌、第四調。

人々よ、来りて、至聖至潔なる童貞女を歌はん、父の言は言ひ難く身を取りて彼より出でたり。故に我等びて曰はん、爾は女の中に祝福せられたり、ハリストスを容れし腹は福なり。至浄なる者よ、彼の聖なる手に霊を付して、我等の霊の救はれんことを祈り給へ。

句、主よ、爾及び爾が能力の匱は爾が安息の所に立てよ。

人々よ、今日ダワィドの歌をハリストス神に歌はん、云ふ、王の女の伴たる童女は彼に従ひて王の前に進めらる、彼等は楽しみ祝ひて導かれんと。蓋ダワィドの裔よりする者、我等が神成せられし所以の者は己の子及び主宰の手に神妙にして言ひ難く託せらる。我等彼を神の母と歌頌して、呼びて曰はん、爾を生神女と承け認むる我等を凡その危難より救ひて、我が霊を諸のワザワイ より脱れしめ給へ。

句、主は真実を以てダワィドに誓ひて、之に背かざらん。

至聖至潔なる童貞女よ、天使の群は天に、人の族は地に爾の最尊き就寝を讃美す、爾は萬有の造成主ハリストス神の母と為りたればなり。求む、衆に歌はるる生神女、婚姻を識らざる者よ、爾を神と與に恃める我等の為に息めずして彼に祈り給へ。

  光栄、今も、同調。

讃美たる生神童貞女よ、爾が言ひ難く爾より生れし主の許に出でたる時、神の兄、第一の聖首長イアコフ、尊貴なる首座ペトル、神学者の首領、及び衆使徒の神聖なる会は在りき。彼等は光明なる神言を以てハリストス神の摂理の神聖なる畏るべき奥密を讃頌して、生命の源たる神を受けし爾の肉体を葬りて欣べり。上には至聖至尊なる天軍は奇蹟に驚き、相傾きて曰へり、爾の門を挙げて、天地の造成主を生みし者を受けよ、我等の見ざる主を涵れし尊貴聖潔なる肉体を讃頌を以て歌はん。故に讃美たる者よ、我等も爾の記憶を祝ひて、爾に呼ぶ、「ハリスティアニン」等の角を高くして、我等の霊を救ひ給へ。

  餅の祝福に讃詞、第一調。

生神女よ、爾は産む時童貞を守れり云々 三次。(小晩課に載す)。並に誦読。

 

早課

「主は神なり」に祭日の讃詞、三次。

  「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞、第一調。

讃美たる生神女よ、睿智なる使徒の至りて尊き会は奇蹟に因りて集まりて、厳に爾の最潔き肉体を葬れり。天使の大数も彼等と偕に歌ひて、敬みて爾の逝世を讃揚せり。我等信を以て之を祭る。

  光栄、今も、同上。並に誦読。

  第二の誦文の後に坐誦讃詞、第三調。

生神女よ、爾の産に於て懐孕は種なく、爾の就寝に於て死は不朽なり。奇蹟の中に奇蹟は二様に重りたり、蓋何如に夫を識らざる者は子を養ひて貞潔を守る、何如に神の母は死者として舁はれて芳しく薫る。故に我等天使と偕に爾に呼ぶ、恩寵を蒙れる者、慶べよ。

  光栄、今も、同上。

  多燭詞の後に坐誦讃詞、第四調。

ダワィド、告げよ、此の祭は何ぞ、曰ふ、此れ我が昔聖詠の書に歌ひし者、即何如にして神の女童貞女を、彼より種なく生れしハリストスが彼の居所に移しし事なり。故に諸の母及び女、ハリストスの聘女たる者は楽しみて呼ぶ、上なる国に移りし者よ、慶べ。

  光栄、今も、同上。

讃歌

右、ハリストス我が神の純潔なる母よ、我等爾を讃揚して、爾の至榮なる就寝を讃榮す。
  次ぎて同詠隊又歌ふ。
右、全地よ、神に歓びて呼び、
左、其名の光榮を歌へ。
右、主王の前に祝へ。
左、彼を讃榮し、其名を崇め讃めよ、 萬軍の主の城邑、我が神の城邑に於てなり。 其住所はサリムに在り、其居所はシオンに在りき。 神の城邑よ、光榮の事は爾に於て傳へらる、 神は之を固めて永遠に迄らん、 至上者は其住所を聖にし給へり。 能力と美好とは其聖所に在り。 我我が光榮を以て謳ひ歌はん。 我救の爵を受けて主の名をばん。 我安然として偃し寝ぬ。 我が霊よ、爾の平安に帰れ、蓋主は爾に恩を施せり。 主は義なり、彼は悪者の縛を断てり。 主よ、爾及び爾が能力の匱は爾が安息の所に立てよ。 主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。 我爾の名を萬世に誌さしめん。

  光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。

  品第詞、第四調の第一倡和詞。

  提綱、第四調。

我爾の名を萬世に誌さしめん。句、女よ、之を聴き、之を観、爾の耳を傾けよ。

「凡そ呼吸ある者は」。福音経はルカ四端。

  第五十聖詠の後に讃頌、第六調。(ワィザンティイの作)。

爾の至浄なる体の遷移の備れる時、使徒等は牀を環りて、慄きて爾を視たり。或者遺体に目を注ぎて大く驚き、ペトルは涙を流して爾に呼べり、嗚呼童貞女よ、我明に爾、衆の生命たる者、未来の生命の楽の寓りし者の平臥せるを見て、異に勝へず。嗚呼至浄なる者よ、爾の子及び神に爾の群の害なく救はれんことを切に祈り給へ。

規程二篇。コスマ師の作及びダマスクのイオアン師の作。両規程の「イルモス」各二次、讃詞共に十二句に。

共頌には両詠隊各其「イルモス」を歌ふ。

第一の規程、其冠詞は、神智者は慶賀すべし。第一調。

  第一歌頌

イルモス、童貞女よ、神妙の光栄に妝はれたる聖にして尊栄なる爾の記憶は、衆信者を聚めて之を楽しませ、始むるマリアムに随ひて、舞と鼓とを以て爾の独生子に歌はしむ、彼厳に光栄を顕したればなり。

生神女よ、無形の天軍はシオンに於て爾の神聖なる体を環り、使徒の会も俄に地の極より集まりて、爾の前に立てり。潔き童貞女よ、彼等と偕に我等も爾の尊き記憶を讃栄す。

潔き者よ、爾は神を生みて、天然に勝つ尊敬を得たり。然れども己の造成主及び子に傚ひて、天然に超えて天然の法に遵ふ。故に死して復起き給ふ、子と偕に永遠に在さん為なり。

  第二の規程、第四調。

  第一歌頌

イルモス、我が口を開きて、聖神゜に満てられ、言を女王母に奉り、楽しみ祝ひ、喜びて其就寝を歌はん。

少き處女よ、今預言女マリアムと偕に逝世の歌を歌へ、蓋童貞女唯一の生神女は天の居所に移され給ふ。

至浄なる者よ、神聖なる天の居所は宜しきに合ひて爾を生ける天として受けたり、爾美しく妝はれたる者は純潔なる聘女として王及び神の前に立ち給へり。

  第三歌頌

イルモス、萬有を造り萬有を守る神の智慧及び能力たるハリストスよ、教会を動揺なく推移なき者として竪め給へ、爾独聖にして、聖者の中に息ひ給へばなり。

純潔なる者よ、光明の使徒等は爾が死すべき婦にして、天然に超えて神の母なるを見て、戦ける手を以て光栄にて輝く者に触れ、神を容れし幕として爾を覩たり。

神の義判は狂妄者の悪を為す手を忽ち断りて、神聖なる光栄を以て、言が肉体と為りし所の生ける櫃の尊きを衛れり。

  又

イルモス、生神女、生活にして盡きざる泉よ、祝ひて爾を讃め歌ふ者の霊を固め、彼等に爾が神妙なる記憶の中に栄冠を冠らしめ給へ。

潔き者よ、爾は死す可き腰より出でて、天然に合ふ終に遇ひたれども、真の生命を生みし者として、神聖なる実在の生命に移り給へり。

女宰よ、全能の指麾に因りて、神学者の会は四極より、天使の大数は上よりシオンに集まりて、宜しきに合ひて爾の葬に奉事せり。

  應答歌、第八調。

生神童貞女よ、我等萬族は爾を讃美す、蓋容れ難きハリストス我等の神は爾の内に入るを嘉し給へり。我等も爾の轉達を有ちて福なり、蓋爾は日夜我等の為に祈る、諸国の権柄は爾の祈祷に因りて固めらる。故に我等歌ひて爾に呼ぶ、恩寵を蒙れる者、慶べよ、主は爾と偕にす。

  第四歌頌

イルモス、ハリストスよ、預言者の預言と預象とは爾が童貞女より身を取り給ふを示せり、爾の光の輝きは異邦民を照らす為に顕れん、淵も楽しみて爾にばん、人を愛する主よ、光栄は爾の力に帰す。

諸民よ、視て驚くべし、光栄なる神の聖山は天の居處よりも高く挙げられ、地上の天は天上の不朽なる地に移さる。

潔き者よ、爾の死は永久なる最善き生命に移ることと為れり、此は爾至浄の者を暫時の生命より誠に神聖なる終なき生命に移せり、爾が欣びて爾の子及び主を仰ぎ瞻ん為なり。

天の門は挙げられ、諸天使は歌ひ、ハリストスは其母の貞潔の寶蔵を受け給へり。ヘルワィム等は楽しみて爾に伏拝し、セラフィム等は喜びて爾を讃栄す。

  又

イルモス、預言者アウワクムは爾至上者が童貞女より身を取り給ふ神の測り難き定制を洞察してべり、主よ、光栄は爾の力に帰す。

萬有の王の生ける天が地の懐に降るを見るは奇異なりき、爾の行為は何ぞ奇妙なる。主よ、光栄は爾の力に帰す。

若し彼の悟り難き果、天を其住所と為す者が、死すべき者の如く、甘じて葬に服せしならば、婚姻に與らずして生みし者は安ぞ葬を辭せん。

神の母よ、爾の逝世の時、天使の軍は、敬畏と歓喜とを以て、至聖なる翼にて爾の最廣くして神を涵れし身を覆へり。

  第五歌頌

イルモス、ハリストスよ、我爾が萬徳の神聖なる言ひ難き華美を讃栄す、蓋爾、同永自在の光として、永久の光栄より輝きし者は、童貞女の腹より身を取りて、幽暗と蔭とに居る者に日の如く輝き給へり。

童貞女よ、使徒の会は雲に乗せられし如く、地の涯よりシオンに聚まりて、爾軽き雲たる者に奉事せり。蓋此の雲より至上の神は義の日として幽暗と蔭とに居る者に輝き給へり。

神学者の神に悦ばるる口は聖神゜に感ぜられて、角(らっぱ)よりも高く生神女に逝世の歌を奉りてべり、衆人の為に生命と救とを施す神が人体を取り給ひし潔き泉よ、慶べ。

  又

イルモス、萬物は爾の尊き就寝に驚かざるなし、爾婚配を識らざる童貞女は地より永久の居所に終なき生命に移りて、凡そ爾を歌ふ者に救を賜へばなり。

神学者の角(らっぱ)は今日厳に鳴るべし、人々の能辯の舌は今讃美を述ぶべし、空気は無量の光に輝きて響を傳ふべし、諸天使は至浄なる童貞女の就寝を歌ふべし。

至栄なる童貞生神女よ、驚奇歓楽に満てられし選ばれたる器、全く神に聖にせられ、聖神゜に感ぜられ、且実に斯く現れたる者は爾を讃詠するに堪へたり。

  第六歌頌

イルモス、深處に居る海の鯨の内の火は預言者イオナを包みて、爾が三日の葬の預象を為せり、蓋預言者は未だ呑まれざる時の如く、傷はれぬ者としてべり、主よ、我讃美の声を以て爾に祭を献げん。

萬有の王及び神は爾に於て天然に超ゆることを顕す。蓋彼は生るる時に爾を童貞女として守りし如く、ひつぎに於ても爾の肉体を朽ちざる者として守り、神妙の遷移を以て爾を栄して、子の母に適ふが如く、尊敬を爾に帰せり。

童貞女よ、爾の産は爾を無形の火の実に明なる燈臺、神聖なる炭を盛りたる金の香爐、壷と杖、神の録しし石版、聖なる、生命の言の案として至聖所に入れ給へり。

  又

イルモス、神の信者よ、来りて、神の母の此の神妙なる至りて尊き祭を祝ひ、手を拍ちて、彼より生れし神を讃栄せん。

爾より生命は輝きて、童貞の門を啓かざりき、如何にして爾が生命を生みし至浄なる肉体は死に與る者と為りたる。

爾は生命の宮と為りて、永遠の生命を獲たり、蓋自在の生命を生みし者として、死に藉りて生命に移り給へり。

  小讃詞、第二調。

祈祷に眠らざる生神女、轉達に変らざる倚望なる者を、柩と死とは留めざりき、蓋永貞童女の胎に入りし者は彼を生命の母として生命に移し給へり。

  同讃詞

我がハリストスよ、我の思意を衛り給へ、我毅然として世界の城垣たる爾の潔き母を歌へばなり。我の言を高くし、我の心意を深くせよ、蓋爾は信を以て爾に呼びて求むる者の冀願を行ふ。爾我に辯才の舌と耻を得ざる意念とを與へ給へ、永貞童女の胎に入りし光を施す主よ、凡の光照は爾より賜はるに因る。

  第七歌頌

イルモス、神聖なる愛は耻なき激怒と火とに逆ひて、火に露を注ぎ、激怒を嘲り、楽器に反きて、聖神゜に感ぜらるる霊智なる義人の三音の琴を以て焔の中にべり、先祖及び我等の讃栄せらるる神よ、爾は崇め讃めらる。

モイセイは怒の中に神の作り、聖神゜の書しし石版を砕けり、其の主宰は己の母を損ひなく守りて、今之を天の居處に入れ給へり。我等彼と偕に祝ひて、ハリストスにばん、先祖及び我等の讃栄せらるる神よ、爾は崇め讃めらる。

我等は潔き童貞女の逝世の最著しき吉日に於て、浄き口を以てにょうはちの如く、心を以て和声の笛の如く、高き思念を以て大声の角(らっぱ)の如く、善徳を以て手を拍つが如くしてばん、先祖及び我等の讃栄せらるる神よ、爾は崇め讃めらる。

神智なる人々よ、聚まれ、蓋神の光栄の居處はシオンより天の宮に移さる。彼處に祝ふ者の浄き声、言ひ難き喜の声は歓楽の中に於てハリストスにぶ、先祖及び我等の讃栄せらるる神よ、爾は崇め讃めらる。

  又

イルモス、敬虔の者は造物主に易へて造物に事ふることをせざりき、火の嚇を勇ましく践みて、喜び歌へり、讃美たる主、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

少者と處女、翁と諸、諸王と審判者よ、童貞女、神の母の記憶を尊みて歌へ、主先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。

天に聳ゆる諸山は神゜の角(ラッパ)を以て鳴るべし、諸の陵は喜ぶべし、神聖なる使徒等は祝ふべし、女王、其子と偕に王たる者は、彼に移り給ふ。

神聖にして不朽なる爾の母の至聖なる逝世は上品の天軍を聚めて、地に於て爾に、神よ、爾は崇め讃めらると歌ふ者と與に楽しましむ。

  第八歌頌

イルモス、神の全力の使は、焔を以て義者に露を注ぎ、不義者を焦す者として少者の前に顕し、生神女を以て、生命を流す泉、死の為には壊滅、我等の為には生命を注ぐ者と為せり、故に我等救はれし者は歌ふ、惟一の造物主を歌ひて萬世に讃め揚ぐ。

神学者の大衆は挙りてシオンに於て神妙なる聖櫃に随ひ、びて曰へり、生活の神の幕よ、今何くにか往く、我等を絶えず顧み給へ、蓋我等救はれし者は信を以て歌ふ、惟一の造物主を歌ひて萬世に讃め揚ぐ。

純潔なる者は世を離るる時、嘗て人体を取りし神を抱きたる手を挙ぐるが如く、母たるに因りて毅然として其生みし者に言へり、爾が我に賜ひし人々を世々に護り給へ、蓋彼等は爾に向ひてぶ、我等救はれし者は惟一の造物主を歌ひて萬世に讃め揚ぐ。

  又

イルモス、生神女の産は敬虔の少者を爐の中に守れり。其時に預め徴され、今已に應ひし此の産は全世界に勧めて爾に歌はしむ、造物は主を歌ひて、萬世に彼を讃め揚げよ。

至浄なる童貞女よ、爾の記憶を首領、権柄、能力、差役、差役首、寶座、主制、ヘルワィム及び畏るべきセラフィムは讃栄す、我等人類も之を歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

生神女よ、人体を取る時奇妙に爾の至浄なる腹に入り給ひし者は、債を償ふ子として、親ら爾の全く聖にせられし神゜を享けて、己の中に安息せしめ給へり。故に我等爾童貞女を歌ひて、萬世に讃め揚ぐ。

嗚呼永貞童女、神の母の奇蹟は何ぞ悟り難き、彼き柩に入りて、之を楽園と為し給へり。我等今日其前に立ちて、喜びて歌ふ。造物は主を歌ひて、萬世に讃め揚げよ。

第九歌頌には「ヘルワィムより尊く」を歌はず、乃祭日の附唱を歌ふ。我等萬族は爾惟一の生神女を讃め揚ぐ。或は諸天使は至浄なる者の就寝を見て驚けり、如何にして童貞女は地より天に升る。

次に「イルモス」、「潔き童貞女よ、天然の法は」。

左列詠隊同附唱及び「イルモス」を歌ふ。

讃詞毎に同附唱を歌ふこと一次。

  第九歌頌

イルモス、潔き童貞女よ、天然の法は爾に於て勝たれたり、童貞は産む時に守られ、生命は死に配偶せらる、生神女よ、爾産む後には童貞女、死する後には生ける者として、常に爾の嗣業を救ひ給ふ。

天使の軍は、己の主宰がシオンに於て其手に婦の霊を承くるを見て驚けり、蓋彼は子に合ふが如く、潔く彼を生みし者に言へり、最尊き者よ、来りて、子及び神と偕に光栄を受けよ。

使徒の会は神を涵れし爾の体を送りて、敬畏を以て之を観、傷感の声を以てべり、生神女よ、爾は天の宮に子の許に登りて、常に爾の嗣業を救ひ給ふ。

次ぎて右列詠隊第二の規程の附唱を歌ふ。我が霊よ、神の母の地より天に逝く尊き逝世を讃め揚げよ。次に「イルモス」、「凡そ地に生るる者は」。

左列詠隊同附唱及び「イルモス」を歌ふ。

讃詞毎に同附唱を歌ふこと一次。

  又

イルモス、凡そ地に生るる者は聖神゜に照されて楽しみ、形なき智慧の性も祝ひ、神の母の聖なる逝世を尊みて呼ぶべし、至りて福なる潔き生神女、永貞童女よ、慶べよ。

来りて、生神女がシオンに、生活の神の是の神聖なるえたる山に在るを仰ぎ瞻て喜ばん、蓋ハリストスは之を母として、更に美しき至りて神聖なる居處、至聖所に移し給ふ。

信者よ、来りて、神の母の柩に就き、之を抱きて、熱切に心と、口と、目と、面とを之に触れて、竭きざる泉より流るる醫療の豊なる恩賜を斟まん。

生活の神の母よ、我等より逝世の歌を享け、爾が光を施す神聖なる恩寵にて覆ひて、皇帝には勝利を、ハリストスを愛する民には平安を、歌ふ者には罪の赦と霊の救とを與へ給へ。

次ぎて両詠隊共に第一の規程の附唱及び「イルモス」、「潔き童貞女よ、天然の法は」を歌ひ、又第二の規程の附唱及び「イルモス」、「凡そ地に生るる者は」を歌ふ。並に躬拝。

  光耀歌

地の極より此に集まりたる使徒等よ、我の体をゲフシマニヤの村に葬れ、爾我が子及び神よ、我の神゜を接け給へ。三次。

「凡そ呼吸ある者」に四句を立てて讃頌を歌ふ、第四調。

婚姻を識らざる至聖なる童貞女、人類を原祖の定罪より脱れしめし者よ、爾の光永なる就寝を諸天は祝ひ、天使の軍は悦び、全地は楽しみて、爾萬有を掌る主の母に逝世の歌を奉る。二次。

使徒の選ばれたる者は神の指麾にて地の極より爾を葬らん為に集まりて、爾が地より高きに挙げらるるを見て、ガウリイルの声を以て喜びて爾にべり、全き神性を載せし者よ、慶べ、独爾の産にて地の者を上なる者に合せし女宰よ、慶べ。

生命を生みし童貞女母、神の聘女よ、爾は尊き就寝にて不死の生命に移れり。

諸天使、首領、権柄、諸使徒、預言者、及び一切の造物は爾を送り、爾の子は其不朽の手にて爾の無てんなる霊を接け給へり。

  光栄、今も、第六調。

生神女生命の母よ、爾が不死の就寝の時に雲は使徒等を空中に挙げたたるに、世界に散じ居たる者は斉しく爾の至聖なる体の前に集まり、恭しく之を葬りて、ガウリイルの言を爾に歌ひて呼べり、恩寵を蒙れる童貞女、聘女ならぬ母よ、慶べ、主は爾と偕にすと。彼等と偕に爾の子我等の神に我が霊の救はれんことを祈り給へ。

  大詠頌。発放詞。

  第一時課、及び最後の発放詞。

 

聖体禮儀

真福詞は、第一の規程の第三歌頌四句に、又第二の規程の第六歌頌四句に。聖入の後に祭日の讃詞。光栄、今も、小讃詞。

  提綱、生神女の歌、第三調。

我が霊は主を崇め、我が神゜は神我が救主を悦べり。句、蓋其婢の卑しきを顧みたり、今より後萬世我を福なりと謂はん。使徒の誦読はフィリッピ書240端。「アリルイヤ」、第二調、主よ、爾及び爾が能力の匱は爾が安息の所に立てよ。句、主は真実を以てダワィドに誓ひて、之に背かざらん。

  福音経の誦読はルカ54端。

「常に福にして」に代へて「イルモス」、「潔き童貞女よ、天然の法は爾に於て勝たれたり」。本祭の末日に至るまで此くの如し。

領聖詞、我救の爵を受けて、主の名をばん。「アリルイヤ」。(115:4三次。

此の祭期は九日間なり。

 

【注】至聖生神女の就寝祭若し主日に當らば、式左の如し。

「スボタ」の小晩課には、「主よ、爾によぶ」に、讃頌は主日の本調の四句に。光栄、今も、祭日の。挿句に、讃頌は主日の一、祭日の大晩課の挿句の、祭日の附唱と共に。光栄、今も、祭日の。讃詞は主日の、光栄、今も、祭日の。小聯祷及び発放詞。

大晩課には、常例の「カフィズマ」の後に、「主よ、爾にぶ」に、讃頌は主日の三章、アナトリイの一、及び祭日の六。光栄、今も、祭日の。聖入。本日の提綱、及び祭日の喩言三篇。「リティヤ」には、讃頌、及び光栄、今も、祭日の。挿句に、讃頌は主日の、光栄、今も、祭日の。餅の祝福に祭日の讃詞、三次。使徒書札の講義の誦読、或は祭日の。

早課には「主は神なり」に、讃詞は主日の、二次。光栄、今も、祭日の。常例の「カフィズマ」の後に、坐誦讃詞は主日の、其生神女讃詞と共に。福音経講義の誦読。次ぎて多燭詞及び諸讃詞、「救世主よ、天使の軍は」。應答歌は本調の。坐誦讃詞は祭日の、各一次。光栄、多燭詞の後の坐誦讃詞、今も、他の。祭日の誦読。品第詞は本調の。提綱、及び福音経は祭日の。次ぎて「ハリストスの復活を見て」。第五十聖詠。常例に依りて福音経の接吻あり。光栄、「生神女の祈祷に依りて」、今も、同上。讃頌は祭日の。規程は主日の、「イルモス」と共に四句に、生神女の二句に、及び祭日の二規程八句に。共頌には両規程の「イルモス」を歌ふ。第三歌頌の後に、小讃詞及び同讃詞は主日の、又坐誦讃詞は祭日の、二次。第六歌頌の後に、小讃詞及び同讃詞は祭日の。祭日略解を読む。第九歌頌には附唱を歌はずして、「ヘルワィムより尊く」を歌ふ。光耀歌は主日の、光栄、今も、祭日の。「凡そ呼吸ある者」に、讃頌は主日の四、及び祭日の四、祭日の附唱と共に。光栄、祭日の、今も、「生神童貞女よ、爾は至りて讃美たる者なり」。大詠頌。聖三祝文。復活の讃詞のみ。聯祷及び発放詞。次ぎて光栄、今も。福音の讃頌。前院に出づること常例の如し。第一時課に、讃詞は主日の、光栄、祭日の、今も、時課の生神女讃詞。「天に在す」の後に、小讃詞は主日の、及び発放詞。同じく他の時課にも、讃詞は主日の、光栄、祭日の、今も、時課の生神女讃詞。小讃詞は祭日及び主日のを交互誦す。

聖体禮儀には、真福詞は主日の本調の六句に、及び祭日の第三歌頌四句に。聖入の後に、讃詞は主日及び祭日の、光栄、小讃詞は主日の、今も、祭日の。提綱、使徒、「アリルイヤ」、及び福音経は先に主日の順序の、後に生神女のを読む。本調の提綱を用いず。領聖詞は、「天より主を讃め揚げよ」、及び祭日の「我救の爵を受けて」。