降誕祭
一月六日
ハリストス降誕祭前期
又克肖致命女聖エウゲニヤの記憶
晩課
「主よ、爾によぶ」に祭前期の讃頌、第五調。
清浄無垢の者は宣べて言へり、爾は神の完全なる形像にしてアダムの姿容を取り、爾の能力を以て手に萬物を持つ者にして、手に抱かれんと欲す。何如に我爾を赤子として襁褓に裹まん、何如に爾萬物を養ふ者を乳にて養はん、何如に爾が智慧に超ゆる謙卑を奇とせん、何如に爾の婢にして、今爾を我の子と名づけん。我爾世界に大なる憐を賜ふ主を歌頌讃栄す。
純潔なる者は永久の神を己より身を取る赤子として見て、手に抱き、屡接吻し、喜悦に満てられて彼に言へり、至上の神、見えざる王よ、何如にして我爾を見て、爾の無量の謙卑の奥秘を悟るを得ざる、蓋最小く、且他人に属する洞は、爾生れて、童貞の胎を損はずして、之を生れざる前の如く守りし者、大なる憐を賜ふ主を其中に容る。
謙遜にして潔浄なる者は博士が洞の前に共に立てるを聞きて、奇として彼等に宣べて言へり、爾等誰をか尋ぬる、蓋我爾等がペルシヤの姿容と風習とある者にして、遠方より来りしを見る。爾等奇妙なる發程と覇旅とを為して、其親ら知るが如く、上より旅行して、奇妙に我の内に入りし者に伏拝せん為に来れり。彼は世界に大なる憐を賜ふ主なり。
次ぎて聖女の讃頌。月課經に載す。
光栄、今も、第二調。(キプリアンの作)。
視よ、我等の救の時は邇づけり、洞よ、己を備へよ、童貞女は産まん為に近づく、イウダの地ワィフレエムよ、歓びて楽しめ、蓋爾より我等の主は輝けり。山と陵とイウデヤの周圍の地よ、聴け、蓋ハリストスは其造りし人を救はん為に臨み給ふ、人を慈しむ主なればなり。
挿句に讃領、第一調。
子よ、東の諸王は爾王たる者が生るるを知りて、乳香、没薬、黄金の禮物を齎して、爾に獻ぜん為に来れり、視よ、門の前に立つ。彼等に爾我が手に抱かるる赤子、古のアダムより老いたる者に見ゆるを命ぜよ。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。
来りて、謹みて入り、見えざる者が見ゆる者と現れて、赤子と為りたるを見よと、童貞女は昔博士に言へり。彼等恭しく入りて、伏拝し、禮物を獻じて、神聖なる預言に應はせたり。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
婚姻に與らざる者は言へり、我爾萬有を保つ者を赤子として手に保ちて訝る、何如にして爾萬物を養ふ者を乳にて養はん。我が子又我が造成主よ、我爾が人々に於ける無量の寛容を讃栄す、爾は此を以て亡ぶる世界を救ひ給ふ。
光栄、今も、第六調。
シオンよ、祝へ、イエルサリムよ、楽しめ、ハリストス神の城よ、洞及び芻槽に入り給ふ造物主を戴け。我の為に門を啓け、我此に入りて、襁褓に裹まるる赤子にして其手に造物を保ち、天使等に絶えざる聲を以て歌はるる者、我が族を救ふ施生主を見ん。
讃詞、第四調。
昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて、ダワィドの血統たるに因りて、翁イオシフと偕にワィフレエムに於て籍に登れり。産期届りて、客舎に一も居る所なかりしに、洞は女王の為に美しき宮と現れたり。ハリストス生れ給ふ、先に陥りし像を起さん為なり。
晩堂課に規程、第六調。「イルモス」及び讃詞、各二次。後に同「イルモス」、両詠隊共に歌ふ。
第一歌頌
イルモス、昔逐ひつめし窘迫者を海の波にて匿しし主、芻槽に匿さるる者を、イロドは殺さんと謀る、然れども我等は博士と偕に歌頌せん、主に歌はん、彼厳に光栄を顕したればなり。
主我が神よ、我降誕の歌頌と祭前期の詩賦とを爾に歌はん、蓋爾は己の神聖なる降誕にて我に再生を賜ひ、我を初の良産に升せ給ふ。
我が救世主よ、天上地下の者は爾が上は寶座に、下は芻槽に在るを覩て、爾の権能を奇とせり、蓋爾は智慧に超えて、二性を以て神人と現れたり。
萬有を爾の光栄に満たさん為に爾は天を傾けて地に来れり、蓋雨が羊の毛に降りし如く、爾は童貞女の腹に降りて、此より今二性なる神人として生れん為に往き給ふ。
第三歌頌
イルモス、造物は爾、全地を寄する所なくして水の上に懸けし者が、洞に生るるを覩て、大く懼れ、戦きてよべり、主よ、爾の外に聖なるはなし。
仁慈の主よ、爾は言ひ難く身を取る状を顕して、異象を増し、預言を含めたり、今来りて、ダワィドの邑に於て、潔き少女より身にて生るるを以て此を慶はせ給へり。
地は己の背を伸べて、諸天使より尊栄を、天より星を、牧者より讃美を、博士より禮物を、全他界より識認を受くる造物主を受く。
先見者、星学者ワラアムの預言は今應ふ、蓋星はイアコフより輝き出でて、ペルシヤより来る諸王、禮物を攜ふる博士を光栄の日に導けり。
第四歌頌
イルモス、アウワクムは爾が童貞女に由りて来るを先見して、驚きてよべり、贖罪主よ、爾は身を取りて南より来れり、退けられしアダムを喚び起さん為なり。
諸民の冀望、世界の拯救たる主は今近づき来る、ワィフレエムの邑よ、洞を備へよ、牧者よ、博士と偕に急ぎて来れ。
救世主よ、爾は神性の力に因りて、混合せざる合一を以て人々に合せられ、肉體の形を以てアダムを新にし、之を接けて救ひ給ふ。
言は言ひ難き摂理に由りて肉體と現れ、見ゆる者と為りて、我等の中に居るなり。信者よ、来りて、彼の光栄、神父の獨生子の如き光栄を見ん。
第五歌頌
イルモス、ハリストスよ、イサイヤは我等の為に仁慈に因りて行はれし爾が神聖なる顕見の暮れざる光を見て、夜中より警醒して呼べり、視よ、童女は孕みて、肉體を取りし言を生まん、之に因りて凡そ地に生るる者は歓ばん。
造成主よ、爾は地の者と為りて、地に生るる者を新にす。芻槽と襁褓と洞とは爾の謙遜の徴なり、爾の母の聘定者、人々が肉體に由る爾の父と為しし者は今爾を生みし父の旨を像る。
異邦の諸王は爾婚姻に與らざる母よりワィフレエムの洞に生れし者に禮物を獻じて、没薬を以て死を、黄金を以て王の権を、乳香を以て神性の卓越を顕す。
父の同永在の言よ、爾は夫を識らざる者より出で、肉體を以て洞に入りて、芻槽を寶座と為せり、博士と牧者とは爾の畏るべき摂理に驚き、天使等は之を奇とす。光栄は爾の権能に帰す。
第六歌頌
イルモス、イオナは鯨の腹に包まれたれども、長く留められざりき、蓋爾生れて、肉體に現れし者を像りて、宮より出づるが如く猛獣より出でたり、今肉體を以て生れし者は柩及び死に入りて、三日目に復活せんとすればなり。
ハリストスよ、爾が肉體を以て来るに由りて、今古の仇の隔は壊れて除かれ、焔の剣は衆の前より退く。我誠に生命を施すエデムの樹に與りて、新に不死の園を造る者と顕る。
贖罪主よ、地獄は罪と共にアダムの時より爾に至るまで王たり、然れども爾が肉體を以てダワィドの族より生るるに及びて、其狂暴なる圧制は亡ぶ、蓋爾は現にダワィドの国の寶座に坐して、世々に王の権を秉り給ふ。
残忍なるイロドは児を殺す者と現れたれども、ハリストスを殺す者たらざりき、蓋嬰児を草の如く無慙に刈りたれども、生命の穂を執へて殺すこと能はざりき、生命を施す者は神として神性の力を以て窘逐者より匿れたればなり。
第七歌頌
イルモス、言ひ盡されぬ哉奇蹟や、爐に於て敬虔の少者を焔より救ひし者は、赤子として卑しき芻槽に臥し給へり、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると、歌ふ者の救の為なり。
誘惑者たる敵は神が赤子として卑しき芻槽に臥せるを見て、傷つけられ、神聖なる手に殺されて呻く、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると、歌ふ者の救の為なり。
福なる哉芻槽や、蓋己の中に赤子として造成主を受けて、ヘルワィムの寶座の如き者と現れたり、我等、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると、歌ふ者の救の為なり。
爾は赤子と現れて、人の法に循ひて襁褓に置かるるを受く、此を以て爾は我等の諸罪の縛を解きて、贖罪主神よ、爾は崇め讃めらると呼ぶ者に自由を賜ふ。
第八歌頌
イルモス、天よ、畏れて戦け、地の基は動くべし、蓋視よ、萬有を手に保つ者は襁褓に裹まれて、小き芻槽に置かる。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。
救世主よ、爾が襁褓に裹まれ、小き洞に、無知の者の芻槽に置かれしに因りて、縛られたるアダムは解かれ、衆信者に自由は賜はりたり。故に我等喜びて、爾の降誕に於て熱切に祭前期の歌を爾に奉る。
ペルシヤの迷は熄みたり、蓋星学者たる東の諸王は生まれたるハリストス萬有の王に禮物として黄金と没薬と乳香とを獻る。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。
嗚呼新なる奇蹟や、嗚呼仁慈及び言ひ難き寛忍や、蓋視よ、至高に居る者は赤子と為り、神は甘じてイロドより逃る。少者よ、彼を崇め讃めよ、司祭よ、讃め歌へ、民よ、萬世に尊み崇めよ。
第九歌頌
イルモス、嗚呼母よ、父が黎明の前に腹より生みし者の今赤子たるを見て、異しむ勿れ、蓋我は陥りし人の性、信と愛とを以て爾を讃揚する者を起して、共に栄を享けしめん為に来れり。
無原なる子よ、我爾の奇異なる産の時に性に超えて病を免れて讃美せられたり、今は爾がイロドより逃るるを見て、我が霊哀の剣にて刺さる。祈る、爾を尊む者を救ひ給へ。
嗚呼母よ、我エギペトの地に往けども、エギペトの手に作られし者を震はせて墜さん、且徒に我が生命を索むる敵を地獄に遣して、獨権能あるに因りて、爾を尊む者を挙げて救はん。
造物は喜ぶべし、蓋造成主は造成せられ、先より在す神は今新なる者として知らる、博士は禮物を以て迎ふべし、牧者は熱心に奇蹟を祝ふべし、人々は天使等と偕に楽しむべし。
早課
「主は神なり」に祭前期の讃詞、「昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて」。三次。
「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞、第六調。
諸預言者の言は今應へり、蓋我等の神は明朝言ひ難く童貞女マリヤより生れ、猶生れざる前に在りし如く止まる。博士は禮物を攜へて集まり、牧者は笛を吹く、我等も和して歌ふべし、童貞女より生れし主よ、光栄は爾に帰す。
光栄、今も、同上。
第二の誦文の後に坐誦讃詞、第八調。
天の軍は牧者の笛の歌を止めて、呼びて曰へり、牧群の諸長よ、笛を吹くを止めて、歌ひて呼べ、神として人類を救はんことを嘉せし主ハリストスは生れ給へり。
光栄、今も、同上。
讃歌 (イルモロギから)祭前期の規程、八句に、及び聖女の、四句に、(月課經に載す)。
祭前期の規程、イオシフの作。第二調。
第一歌頌
イルモス、全く備はれる力は昔ファラオンの全軍を深水に敷き、人體を取りし言、讃栄せらるる主は萬の悪を致す罪を滅し給へり、彼厳に光栄を顕したればなり。
萬有の王よ、爾は人を生命の書に登せんと欲して、ケサリの命に由りて籍に登れり、疎き者の如く己に属する者に来りて、甚しく楽園に疎くなりたる者を天に召し給へり。
ワィフレエムよ、ハリストスを受けよ、蓋身より受けし者は爾に来りて、我が為にエデムを開き給ふ。洞よ、己を備へよ、爾は容れ難き者が奇妙に爾の中に入り、慈憐の富に由りて今貧しくなりたるを見ん。
ハリストスは生れん為に来りて、神としてアダムよりする者に神妙なる再生を賜ふ。實を結ばざる荒地たる地上の萬性は楽しめ、蓋主宰は爾を多くの子ある者となさん為に来り給へり。
第三歌頌
イルモス、主よ、荒地の如く實を結ばざる異邦の教會は、爾の来るに因りて、百合の如く華さけり、我が心は此に縁りて固められたり。
人を愛する主よ、爾は赤子の如く襁褓に裹まれん為に来りて、我を悪の縛より解き給ふ。我爾の神聖なる寛容に伏拝す。
時至りて、童貞女は爾時の有らざる先に父より輝きし者、我等の霊の時毎の諸慾を解き給ふ主を生まん為に来る。
宏慈にして矜恤なる主よ、爾は我罪に由りて迷ひし者を尋ねて、洞を天の如く住所と為して、我が為に彼處なる住所を備へ給ふ。
第三歌頌の後に聖女の坐誦讃詞。
光栄、今も、祭前期の、第八調。
今日地は我が為に天と現れたり、蓋此の上に造物主は生れ、イウデヤのワィフレエムに於て芻槽に置かる。牧者は天使と偕に、至高きに光栄、世界に平安と絶えず歌ひ、博士は星と偕に旅し、疾く往きて黄金と没薬と乳香とを禮物として、萬有の神、永久の王、萬物の造成主、慈憐に由りて洞の中に生れし者に獻る。
第四歌頌
イルモス、童貞女に藉りて来りし者は使者に非ず、天使に非ず、主親ら人體を取りて、我全き人を救ひ給へり。故に我爾に呼ぶ、主よ、光栄は爾の力に帰す。
造物よ、今造物主が造られ、爾を新にして、初の美しきに升す者が赤子と為りたるを見て、一切の舊廃を棄てよ。
神聖なる星に導かるる博士は最光栄なる降誕を奇として立ち、童貞の雲より出づる日を仰ぎて、之に禮物を獻げたり。
視よ、童貞女は来り給ふ、其腹に肥えたる犢、世界の罪を贖ふ者を懐く牝犢の如し。造物は喜びて祝ふべし。
ハリストスの出現を傳ふる諸預言者の宣傳は今日救の終を成せり、蓋彼は幽暗に苦しめる者を身にて照さん為に来り給へり。
第五歌頌
イルモス、ハリストス神よ、爾は神と人との中保者と為れり、主宰よ、我等は爾に依りて、無智の闇より光の原なる、爾の父に就くを得たればなり。
曩より幽暗に坐する人々は、輝ける暮れざる光、昔星が火を崇むるペルシヤの諸王に示し者を観るべし。
至りて神聖なる大王は務めて小き洞に入り給ふ、我小くなりし者を大にし、貧しくなりし者を無量の富にて富まさん為なり。
ワラアムの言ひし如く、今イアコフよりハリストスは生れ給ふ、彼は諸異邦民を己に従はしめん、其国は恩寵に依りて高くなりて、永遠に存せん。
第六歌頌
イルモス、我罪の淵に溺れて、爾が憐の量り難き淵に呼ぶ、神よ、我を淪滅より引き上げ給へ。
ハリストスは疎き者の如く己に属する者に来り給ふ。願はくは我等は諸罪を疎じて、彼温柔の霊に住む者を接けん。
ワィフレエムよ、爾は諸邑の中に於て必ず小き者と為らざらん、蓋王及び主は爾の中に生れ給ふ、選ばれたる民を牧せん為なり。
悟り難き者よ、如何ぞ小き洞は爾世界の容れ難き者を受けん、父と同無原の者よ、如何ぞ赤子として見られん。
小讃詞、第三調。
童貞女は今日永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃栄せよ。
同讃詞
諸預言者の聖にせられし言は終を成せり、蓋視よ、童貞女は極めて完全なる者をワィフレエムの邑に洞の中に生み給ふ。造物よ、皆新になりて喜び祝へ、萬有の主宰は諸僕と偕に住ひて、我等朽壊に因りて落されし者を敵の権より援けん為に来れり。永久の神は芻糟の中に襁褓に裹まるる嬰児として見らる。
第七歌頌
イルモス、不法なる虐者の神に戻る詔は高き焔を起したれども、讃め歌はるるハリストスは敬虔の少者に聖神゜の露を降し給へり。
雲は上より水を灑ぐべし、厳に雲を以て其車と為す者は、雲に乗るが如く、童貞女の手に載せられて、先に昧まされて艱難の中に在る者に暮れざる光を照さん為に来り給ふ。
神聖なる天使の軍よ、主の言ひ難き寛容を歌頌せん為に己を備へよ、博士よ、速に至れ、牧者よ、急げ、来るべきハリストス、諸民の望と救とは来り給へり。純潔なる者は、ハリストスを手に抱きて、畏れて言へり、言ひ難き産たる我が子、無原なる者よ、何ぞ此れ奇異にして至りて大なる奇蹟や、如何に我爾言にて萬物を保つ者を保たん。
第八歌頌
イルモス、昔ワワィロンの火の爐は神の命にて其勢を分ち、ハルデイを焦して、信者を涼しくせり、主の悉くの造物は主を崇め讃めよと歌へばなり。
無てんの者は實に言ひ難き秘密の高きを見、智慧を以て天を覆ひし者を奇として云へり、我が子よ、爾を載する天の寶座は焔を發す、如何ぞ我爾を戴かん。
我が子よ、爾は父の像を具ふるに、如何ぞ賤しくなりて僕の像を受けたる、如何ぞ我爾衆人を無知より拯ふ者を無知の者の芻槽に置かん。我爾の慈憐を讃め歌ふ。
全地よ、喜べ、視よ、ハリストスがワィフレエムに生るる時は邇づけり、海よ、楽しめ、預言者の會よ、今日爾等の言の應ふを見て祝へ、悉くの義人よ、歓べ。
第九歌頌
イルモス、無原の父の子、神と主は、童貞女より人體を取り、我等に現れて、昧まされし者を明かし、散らされし者を集め給へり。故に我等讃美たる生神女を崇め歌ふ。
地上の諸国は喜びて歌ふべし、異邦民の生土は楽しむべし、山と谷と陵、川と海と一切の造物は今生るる主を崇め讃めよ。
暁り難き主よ、爾は諸預言者の爾を見るを得るが如く、彼等に見られたり。末の時に於て人と為りて、イウデヤの邑ワィフレエムに、星が爾を星学者に示ししに、悉くの人に現れ給へり。
我等が常に讃め揚ぐる純潔なる女宰は呼びて曰へり、嗚呼最甘愛なる子よ、如何ぞ我爾養ふ者を養はん、如何ぞ爾瞬にて萬物を持つ者を持たん、如何ぞ全地を幽暗にて裹む者を襁褓にて裹まん。
光耀歌
近づく可からざる光に居りて萬有を持つ者は、言ひ難き慈憐に因りて童貞女より生れ、赤子として襁褓に裹まれ、洞及び無知の者の芻槽に置かる。我等務めてワィフレエムに急ぎ来りて、博士と偕に彼を拝み、禮物として最美しき行の果を奉らん。
光栄、今も、
我等信者は童貞女マリヤに歌を奉らん、蓋視よ、彼は今ワィフレエム邑にハリストス救世主を生まん為に来る。故に博士よ、星に従ひ、禮物を齎して、我等と偕に伏拝せん為に速に至れ牧者よ、急ぎて天使等と共に生るる者によべ、光栄は爾洞及び芻槽に臥す者に帰す。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌、四句を立つ。第六調。
星はイアコフより洞の中に輝けり、我等も来りて、祭前期の事を行ひて、博士と偕に急ぎ、牧者と偕に往き、襁褓に於て神を見、乳を哺まする童貞女を見ん。嗚呼畏るべき顕見や、イズライリの王ハリストスは来り給ふ。
至浄なる者よ、天使の會は爾の産を喜び祝ひて、爾夫を識らざる光明の母を今歌を以て尊みてよぶ、正教者の恃よ、慶べ、爾を歌ふ者の轉達よ、慶べと。故に我等云はん、崇め讃めらるる哉来り給ひし我が神よ、光栄は爾に帰す。
イエッセイの根より花は出でんと、光明なる預言者より傳へられたり、蓋我等は童貞女が、性に超えて、愛すべき花として、至高きに父と同座たる者を洞の中に生みしを見る。人々よ、云はん、崇め讃めらるる哉来り給ひし我が神よ、光栄は爾に帰す。
今日アダムは迷及び敵の昧き誘より喚び起されたり、蓋ハリストスは童貞女より身を取りて人と為れり、彼は童貞女に藉りて詛を除きて、アダムを新にし給へり。人々よ、云はん、崇め讃めらるる哉来り給ひし我が神よ、光栄は爾に帰す。
光栄、同調。
ワィフレエムよ、進みて降誕の事を備へよ、イオシフよ、来りて、マリヤと偕に籍に登れ、至尊き哉芻槽や、神聖なる哉襁褓や、其中に生命たるハリストス、我が神は裹まれて、死の縛を断ち、人々を不朽に纏め給はん。
今も、
嗚呼神女の福たる腹よ、爾は形而上に天より大なる者と現れたり、蓋天の容るる能はざる者を爾は己の中に容れて保てり。嗚呼童貞女の福たる乳房よ、夫なき少女の胎の内に於て己の為に身を造りしハリストス、凡そ呼吸ある者を養ふ主は爾を哺ひ給ふ。
挿句に讃頌、第二調。
嗚呼童貞女よ、爾は造成主の家と現れたり、蓋光栄の主は爾の内に住ひて、今生れんと欲す。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。
ワィフレエムに於て童貞女より永遠の神は嬰児として無知の者の芻槽に生る、嗚呼奇蹟や。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
天使の霊智なる品位よ、至高きに於て、牧者及び博士と偕に、生るる神に歌へ、光栄は爾に帰す。
光栄、
父と子と聖神゜よ、光栄は爾に帰す、爾に依りて人々の再生の為に畏るべき秘密は営まれたり。
今も、
衆人の救の為に、聖神゜に藉りて世界に生命を生み給ひし生神童貞女よ、慶べよ。
【注意】ハリストス降誕祭の前日の時課式に付きて知るべきこと左の如し。
ハリストス降誕祭若し日曜日、或は月曜日に當らば、時課を預め金曜日に歌誦す。
ハリストス降誕祭若し火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、「スボタ」に當らば、時課を其前日に歌誦す。
ハリストス降誕祭前日の時課式
定刻に及びて鐘を鳴らす。衆堂に集まりて、司祭は祭袍を着、輔祭は祭衣を着る。幇堂者は修飾したる經案を堂中王門に對して立て、燈を燭台に点じて其前に置く。司祭乃福音經を捧持して王門より出で、輔祭香爐を執りて前行す。司祭聖福音經を經案に置き、其前に立ちて、時課を始むること常の如し。
第一時課
司祭、我等の神は恒に崇め讃めらる、今も何時も世々に。
誦經者、「アミン」。
我等の神よ、光栄は爾に帰す、光栄は爾に帰す。及び「天の王」、其他。
高聲の後に司祭爐儀を行ふ、先に福音經の四辺に於てし.次に順次に全堂及び衆人の前に於てす。誦經者聖詠を誦す。
第五聖詠
主よ、我が言を聴き、我が思を悟れ。我が王我が神よ、我が呼ぶ聲を聴き納れ給へ、我爾に祈ればなり。主よ、晨に我が聲を聴き給へ、我晨に爾の前に立ちて待たん。蓋爾は不法を喜ばざる神なり、悪人は爾に居るを得ず、不虔の者は爾が目の前に止らざらん、爾は凡そ不法を行ふ者を憎む、爾は偽りを言ふ者を滅さん、残忍詭譎の者は主之を悪む。唯我爾が憐の多きに依りて爾の家に入り、爾を畏れて爾が聖殿に伏拝せん。主や我が敵の為に我を爾の義に導き、我が前に爾の道を平にせよ。蓋し彼等の口には真実なく、彼等の心は悪逆、彼等の喉は開けたる柩、其舌にて媚び諂ふ、神よ彼等の罪を定め、彼等をして其謀を以て自ら敗れしめ、彼等が不虔の甚しきに依りて之を逐ひ給へ、彼等爾に逆らへばなり。凡そ爾を頼む者は喜びて永く楽み、爾は彼等を庇ひ護らん、爾の名を愛する者は爾を以て自らほこらんとす。蓋主よ、爾は義人に福を降し、恵を以て盾の如く彼を環らし衛ればなり。
第四十四聖詠
我が心善言を湧き出せり、我曰ふ、我が歌は王の事なり、我が舌は迅書者の筆なり。爾は人の子より美し、恩寵は爾の口より湧き出でたり、故に神は爾に降福して世々に至る。剛き者よ、爾の剣を、爾の光栄と爾の美麗とを股に佩びよ、此の飾りにて真実と温柔と公義の為に急ぎて車に乗れ、爾の右の手は爾に奇妙なる事を顕さん。剛き者よ、爾の箭は銛し、諸民爾の前にイトれん、此の箭は王の敵の心に中る。神よ、爾の宝座は世々に在り、爾の国の権柄は正直の権柄なり。爾は義を愛し、不法を悪めり、故に神よ、爾の神は爾に歓の膏を傅けしこと、爾の侶に勝れり。爾の衣は皆没薬廬薈肉桂の如し、象牙の殿より爾を楽ましむ。諸王の女は爾の貴嬪の中に在り、皇后はオフィルの金を妝ひて、爾の右に立てり。女よ、之を聴き、之を視、爾の耳を傾けよ、爾の民と爾が父の家とを忘れよ。王は爾の美しきを慕わん、蓋彼は爾の主なり、爾彼に伏拝せよ。ティルの女は禮物を携え、民中の富める者は爾の顔を拝まん。王の女の光栄は皆内にあり、其衣は金を繍とせり、彼は彩服を衣て王の前に進められ、彼の伴たる童女は彼に従いて爾の前に進めらる、彼等は楽み祝いて導かれ、王の殿に入る。爾の列祖に代へて爾の諸子あらん、爾之を立てて全地の牧伯とせん。我爾の名を萬世に誌さしめん、故に諸民爾を讃栄して永遠に迄らん。
第四十五聖詠
神は我等の避所なり、能力なり、患難の時には速なる佑助なり、故に地は動き、山は海の心に移るとも、我等懼れざらん。其水は號り激くべし、其濤たつに依りて山は震ふべし。河の流れは神の邑、至上者の聖なる住所を楽ましむ。神は其中に在り、其れ撼かざらん、神は早朝より之を佑けん。諸民は騒ぎ、諸国は撼けり。至上者一たび聲を出せば地は融けたり。萬軍の主は我等と偕にす、イアコフの神は我等を護る者なり。来りて主の為しし事、其の地に行いし掃滅を視よ、彼は地の極まで戦を息めて、弓を折り、矛を折き、火を以て兵車を焚けり。爾等止りて、我の神なるを識れ、我諸民の中に崇められ、地上に崇められん。萬軍の主は我等と偕にす、イアコフの神は我等を護る者なり。
光栄、今も、「アリルイヤ」三次。主憐めよ。三次。
光栄、祭前期の讃詞、第四調。
昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて、ダワィドの血統たるに因りて、翁イオシフと偕にワィフレエムに於て籍に登れり。産期届りて、客舎に一も居る所なかりしに、洞は女王の為に美しき宮と現れたり。ハリストス生れ給ふ、先に陥りし像を起さん為なり。 今も、生神女讃詞。
嗚呼恩寵に満たさるる者よ、我等何を以て爾を稱せんか、天とせん、爾義の日を照したればなり、楽園とせん、爾枯れざる花を開きたればなり、童貞女とせん、爾貞操を壊らざればなり、浄き母とせん、爾聖なる懐に萬物の神たる子を抱きたればなり。彼に我等の霊の救はれんことを祈り給へ。
次ぎて左の諸讃詞を歌ふ、各二次。
(イエリサリムの總主教ソフロニイの作)。第八調。
ワィフレエムよ己を備へよ、芻槽よ自ら飾れ、洞よ、受けよ、眞實は来り、影は過ぎ去れり、神は童貞女より我等の如き形を受け、肉體を神成して、人々に現れ給へり。故にアダムはエワと偕に新にせられてよぶ、恩恵は我が族を救はん為に地に現れたり。
左列詠隊同讃詞を附唱なくして歌ふ。
次ぎて右列詠隊左の附唱及び讃詞を歌ふ。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。第三調。
今秘密を傳ふる預言者の宣言は将に應はんとす、云く、イウダの地ワィフレエム、洞を備ふる者よ、爾は諸郡の中に於て聊かも小き者と言はれざらん、蓋爾より我が為に諸民の君、童貞少女より肉體を受くるハリストス神、其民新なるイズライリを牧せんとする者は出でん。我等皆彼を崇め讃めん。
左列詠隊第二の附唱を歌ふ。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
復同讃詞。次に光栄、第八調。
イオシフは斯く童貞女に謂ふ、マリヤよ、我が爾に於て見る所は何事ぞ、我訝り、異しみ、心に懼る、故に私に疾く我を離れよ。マリヤよ、我が爾に於て見る所は何事ぞ、爾は我に尊敬の代りに耻を、歓楽の代りに哀みを、令誉の代りに謗を齎せたり。我人の辱を忍ぶ能はず、蓋我主の殿に於て諸司祭より爾を無てんの者として受けたり、今見る所は何事ぞ。
今も、同上。
次に提綱、第四調。
主我に謂へり、爾は我の子、我今日爾を生めり。句、我に求めよ、我諸民を與へて爾の業と為し、地の極を與へて爾の領と為さん。
喩言
ミヘイの預言書の読。(五章)。
主是くの如く言ふ、ワィフレエム エフラファよ、爾はイウダの諸郡の中に於て小きか、爾より我が為にイズライリの中に主宰たるべき者は出でん、其出づることは原始よりし、永遠の日よりするなり。是を以て彼は産むべき者の産むに迄るまで彼等を棄て置かん、其時イズラリの諸子には其残りたる兄弟は帰らん。彼は立ちて、主の力を以て、主其神の名の威厳に頼りて、其群を牧して、之を安らかに居らしめん、蓋其時彼は大なる者と為りて地の極にまで至らん。
聖使徒パワェルがエウレイ人に達する書の読。(303端)。
昔屡多方を以て、預言者に藉りて、先祖に語りし神は、此の末の日に於て、其子、即之を立てて萬物の嗣と為し、之を以て世世を造りし者に藉りて、我等に語れり。彼は神の光栄の光、其本性の像として、己の能力の言を以て萬物を持ち、既に己を以て我等の罪の浄を為して、高處に在りて威厳の寶座の右に坐せり。彼が天使等に超ゆるは、其嗣ぎたる名の彼等より尊きが如し。蓋神は何の天使に對ひて曾て云ひしか、爾は我の子、我今日爾を生めり、又、我は彼に於て父と為り、彼は我に於て子と為らんと。又冢子を引きて世に入るる時曰く、神の悉くの使は彼を拝す可しと。天使等に及びては曰く、爾は其使者を以て風と為し、其役者を以て火焔と為すと。子には曰く、神よ、爾の寶座は世世に在り、爾の國の権柄は正直の権柄なり。爾は義を愛し、不法を悪めり、故に神よ、爾の神は爾に歓の膏を傳けしこと、爾の侶に勝れり。又曰く主よ、爾初に地を基けたり、天も爾が手の造工なり。此等は亡びん、然れども爾は永く存す、此等は皆衣の如く古び、爾衣服の如く之を捲き、此等は易らん、然れども爾は易らず、爾の年は終らざらんと。
輔祭、睿智、粛みて立て、聖福音經を聴くべし。
司祭、マトフェイな因る聖福音經ま読。(二端)
イイススハリストスの生るること左の如し、其母マリヤ イオシフに聘せられて、未だ婚せざる先に、聖神゜に由りて孕めること見れたり。其夫イオシフは義人にして、これを顕にせんことを欲せず、私に彼を離さんことを望めり。然れども此の事を思へる時、視よ、主の使夢に彼に現れて曰へり、ダワィドの子イオシフよ、爾の妻マリヤを納るることを懼るる勿れ、蓋其内に孕まれし者は聖神゜に由るなり、彼は子を生まん、爾其名をイイススと名づけん、彼其民を其罪より救はんとすればなり。凡そ此の事の成りしは、主が預言者を以て言ひし所に應ふを致す、曰く、視よ、童女孕みて子を生まん、其名はエムマヌイルと称へられん、訳すれば神我等と偕にするなり。イオシフ寝より起きて、主の使の彼に命ぜし如く行ひ、其妻を納れたり。惟未だ室を同じくせざるに、其冢子を生むに及べり、則其名をイイススと名づけたり。
次に讃詞。
我が足を爾の言に固め給へ、諸の不法の我を制するを許す毋れ。我を人の迫害より救ひ給へ然せば我爾の命を守らん。爾が顔の光にて爾の僕を照らし、爾の律を我に誨へ給へ。主よ、願はくは我が口は讃美に満てられて、我爾の光栄を歌ひ、日々に爾の威厳を歌はん。
聖三祝文。「天に在す」の後に小讃詞、第三調。
童貞女は今日、永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃栄せよ。
主憐めよ。四十次。
祝文
何の日何の時にも、天にも地にも叩拝讃栄せられ、寛忍、鴻慈、至善にして、義人を愛し、罪人を憐み、来世の福を約して、萬の者を救に招くハリストス神よ、爾主よ、親ら我が此の時の祷をも受け、我等の生命を爾の誡に向はしめ給へ、我等の霊を聖にし、體を潔くし、慮を直くし、思を浄くし、我等を悉くの憂と禍と疾より救ひ、爾の聖なる天使を以て我等を環り、我等が其圍に衛り導かれて、信の一なると爾の近づき難き光栄を悟るに至らせ給へ、蓋爾は世々に崇め讃めらる、「アミン」。
主憐めよ。三次。光栄、今も、「ヘルワィムより尊く」、神゜父よ、主の名を以て福を降セ。
司祭高聲、神よ、我等に恩を被らせ、我等に福を降し、爾が顔を以て我等を照し、並に我等を憐み給へ。
誦經、「アミン」。
次に左の祝文。
眞の光なるハリストス、凡そ世に来る人を照し且聖にする者よ、願はくは爾が顔の光は我等に輝き、我等は是に依りて近づき難き光を見るを得ん、願はくは爾が至浄の母と、爾が諸聖人の祈祷に因りて、我等の足を爾の戒を行ふに向はしめ給へ、「アミン」。
第三時課
来れ、我等の王・神に叩拝せん。三次。
第六十六聖詠
神よ、我等を憐み、我等に福を降し、爾の顔を以て我等を照し給へ、爾の途の地に知られ、爾の救の萬民の中に知られん為なり。神よ、願はくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。願はくは諸族楽み歓ばん。蓋爾は義を以て諸民を審判し、地上の諸族を治む。神よ、願はくは諸民爾を讃揚し、諸民悉く爾を讃揚せん。地は其果を出せり、願はくは神我が神は我等に福を降さん。願はくは神は我等に福を降し、地の極は悉く彼を畏れん。
第八十六聖詠
彼の基は聖山に在り、主はシオンの門を愛すること、イアコフの悉くの住所に愈れり。神の城邑よ、光栄の事は爾に於て伝へらる。我を知る者には、我ラアフとワワィロンとの事を示さん、視よ、フィリスティヤ人、及びティルとエフィオピヤと此にあり、人云わん、某彼處に生まれたり。シオンに至りては云わん、此の人彼の人其中に生れたり、至上者親ら彼を堅固にせり。主は諸民の記録に記さん、此の人其中に生れたり。歌う者も楽を作す者も、凡そ我が泉は皆爾にあり。
第五十聖詠
神よ、爾の大いなる憐に因りて我を憐み、爾が恵の多きに因りて我の不法を抹し給へ。屡我を我が不法より洗ひ、我を我が罪より清め給へ、蓋我は我が不法を知る、我の罪は常に我が前に在り。我は爾獨爾に罪を犯し、悪を爾の目の前に行へり、爾は爾の審断に義にして、爾の裁判に公なり。視よ、我は不法に於て妊まれ、我が母は罪に於いて我を生めり。視よ、爾は心に真実のあるを愛し、我が衷に於て智慧を我に顕せり。「イッソプ」を以て我に沃げ、然せば我潔くならん、我を滌へ、然せば我雪より白くならん。我に喜と楽とを聞かせ給へ、然せば爾に折られし骨は悦ばん。爾の顔を我が罪より避け、我が盡くの不法を抹し給へ。神よ、潔き心を我に造れ、正しき霊を我の衷に改め給へ。我を爾の顔より逐ふこと毋れ。爾の聖神゜を我より取り上ぐること毋れ。爾が救の喜を我に還せ、主宰たる神゜を以て我を固め給へ。我不法の者に爾の道を教へん、不虔の者は爾に帰らんとす。神よ、我が救の神よ、我を血より救ひ給へ、然せば我が舌は爾の義を讃め揚げん。主よ、我が唇を啓け、然せば我が口は爾の讃美を揚げん、蓋爾は祭を欲せず、欲せば我之を獻らん、爾は燔祭を喜ばず。神に喜ばるる祭は痛悔の霊なり、痛悔して謙遜なる心は、神よ、爾軽んじ給はず。主よ、爾の恵に因りて恩をシオンに垂れ、イエルサリムの城垣を建て給へ。其時に爾義の祭、獻物と燔祭とを喜び饗けん、其時に人人爾の祭壇に犢を奠へんとす。
光栄、今も、「アリルイヤ」三次。主憐めよ。三次。
光栄、讃詞、第四調。
昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて、ダワィドの血統たるに因りて、翁イオシフと偕にワィフレエムに於て籍に登れり。産期届りて、客舎に一も居る所なかりしに、洞は女王の為に美しき宮と現れたり。ハリストス生れ給ふ、先に陥りし像を起さん為なり。
今も生神女讃詞
生神女よ、爾は實の葡萄の枝、我等の為に生命の果を結びと者なり、女宰よ、爾に祈る、聖使徒と共に我が霊の憐を蒙らんことを祈り給へ。
次ぎて左の諸讃詞を歌ふ、各二次。第六調。
是は我が神なり、他に復彼と比ぶべき者なし、彼は童貞女より生れて、人と偕に在せり。獨生子は卑しき芻槽に置かれたる人として見られ、光栄の主たる者は襁褓にて裹まれ、星は博士に示して、彼に伏拝せしむ。我等は歌ふ、聖なる三者よ、我等の霊を救ひ給へ。二次。
次に歌ふ、第八調。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。
主よ、爾が降誕の前に霊智の軍は戦きて、爾の秘密を見て異しめり、蓋星にて天を飾りし者は赤子として生るるを甘じ、手にて地の四極を保つ者は無知の者の芻槽に臥し給ふ。斯る摂理に依りて爾の慈憐は顕れたり。ハリストスよ、爾の恩は大なり、光栄は爾に帰す。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
同讃詞を歌ふ。
次に光栄、第三調。
イオシフよ、我等に言へ、如何ぞ爾は聖所より童貞女として受けし者を、孕める者としてワィフレエムに攜へ来たる。答へて曰へり、我諸預言者を究め、且天使より黙示を得て、堅く信ず、マリヤは言ひ難く神を生まん、之に伏拝せん為に博士は敬みて貴き禮物を齎して東より来らん。我等の為に身を取りし主よ、光栄は爾に帰す。
今も、復同讃詞。
提綱、第四調。
嬰は我等の為に生れ、子は我等に賜はりたり。句、権柄は其肩に在り。
イエレミヤの預言書の読。(ワルフ、三、四章)。
是は我が神なり、佗に復彼と比ぶべき者なし。彼は睿智の悉くの道を求め得て、之を其僕イアコフ、其愛する所のイズライリに賜へり。其後彼は地に現れて、人々の間に在せり。此は乃神の誡の書、世々に存する法なり。凡そ之を保つ者は生き、之を棄つる者は死せん。イアコフよ、轉じて之を執り、其光の照らす所に歩め。爾の光栄を他の者に、爾の為に利益なる事を外族に與ふる勿れ。イズライリよ、我等が何者か神の悦ぶ所たるを知るは福なり。
聖使徒パワェルがガラティヤ人に達する書(二〇八端)
兄弟よ、信の来らざる先には、我等律法の下に護られ、閉されて、信の顕るるを俟てり。斯く律法は我等をハリストスに導く師傅たりき、我等信に由りて義とせられん為なり。信の来りし後、我等は已に師傅の下に在らず。蓋爾等皆ハリストスイイススを信ずるに由りて神の子なり。爾等皆ハリストスに於て洗を受けし者はハリストスを衣たり。既にイウデヤ人もエルリン人もなく、奴隷も自主もなく、男性も女性もなし、蓋爾等皆ハリストスイイススに在りて一なり。若し爾等ハリストスに属せば、則アウラアムの裔たり、且許約に由りて嗣子たるなり。
輔祭、睿智、粛みて立て、聖福音經を聴くべし。
司祭、ルカに因る聖福音經の読。(五端)。
彼の日ケサリ・アウグストより詔出でて、天下の人を咸く籍に登らしむ。此の籍はキリニイのシリヤを治むる時、初めて行はれし者なり。是に於て衆人籍に登らん為に、各其邑に往けり。イオシフも亦ダワィドの宗族と血統となるを以て、マリヤ其聘せられたる妻、已に孕める者と偕に、籍に登らん為に、ガリレヤの邑ナザレトより、イウデヤに、ダワィドの邑ワィフレエムと名づくる処に往けり。彼等が彼処に在る時に、産日届れり。乃其冢子を生み、之を襁褓に裏みて、槽に置けり、旅館には彼等の為に居る所なかりし故なり。斯の地に牧者あり、夜間野に於て其羊の群を守れり。視よ、主の天使彼等の前に立ち、主の光栄彼等を環り照せり、彼等大に懼れたり。天使彼等に謂へり、懼るる勿れ、蓋視よ、我爾等に大なる喜、萬民に及ばんとする者を福音す、今日爾等の為にダワィドの邑に於て、救主即主ハリストス生れたり。爾等襁褓に裹まれたる嬰児の槽に臥せるを見ん、是れ其徴なり。忽ち天使と偕に衆くの天軍あり、神を讃美して曰へり、至高きには光栄神に帰し、地には平安降り、人には恵臨めり。天使等が彼等を離れて天に升りし時、牧者互に言へり、ワィフレエムに往きて、彼処に成りし事、主が我等に示しし所を観ん。乃急ぎ来りて、マリヤとイオシフ及び槽に臥せる嬰児を見たり。既に見て、此の児に関して彼等に告げられし事を語れり。聞きし者皆牧者が語りし事を奇とせり。惟マリヤは此等の言を悉く其心に蔵めて之を守れり。牧者は凡そ彼等に告げられし如く、聞きし事見し事の為に、神を讃栄讃美して返れり。
次に
主は日々に崇め讃めらる。神は我等に重荷を負はすれども、亦我等を救ひ給ふ。神は我等の為に救の神なり。
次に聖三祝文。「天に在す」の後に小讃詞、第三調。
童貞女は今日永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃栄せよ。
主憐めよ。四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ。三次。光栄、今も、「ヘルワィムより尊く」神゜父よ、主の名を以て福を降せ。
司祭、吾が諸聖神゜父の祈祷に依りて主イイススハリストス我等の神よ、我等を隣めよ。
誦經、「アミン」。
次に祝文。
主宰神父全能者、主獨生の子イイススハリストス、及び聖神゜、惟一の神性、惟一の能力よ、我罪人を憐み、爾が知る所の法を以て我不當の僕を救ひ給へ、蓋爾は世々に崇め讃めらる、「アミン」。
第三及び第六時課には、輔祭唯福音經、聖像、司祭、及び両詠隊の前に爐儀を行ふ。
第六時課
来れ、我等の王・神に叩拝せん。三次。
第七十一聖詠
神よ、爾の裁判を王に賜ひ、爾の義を王の子に賜へ、裁判の時彼に義を以て爾の民と爾の貧しき者とを判かしめよ。願はくは山は民に平安を施し、邱は義を施さん、願はくは彼は民の貧しき者を判き、乏しき者の子を救ひ、暴虐者を抑えん。日月の在る間、人々爾を世々に畏れん。彼は芟りたる草場に降る雨の如く、土を潤す雨滴の如く降らん。彼の日には義人栄え、多くの平安ありて月の畢るに至らん。彼は宰ること海より海に至り、河より地の極に至らん。曠野に居る者は彼の前に俯伏し、彼の敵は塵を舐めん。ファルシスと島々との諸王は貢を彼に獻げ、アラワィヤとサワとの諸王は禮物を奉らん。列王彼に伏拝し、萬民彼に奉事せん、蓋彼は貧しき者と、呼ぶ者と、苦められて助なき者とを援けん。彼は貧しき者と乏しき者とを憐み、乏しき者の霊を救はん、其霊を詭詐と暴虐より援けん、其血は彼の目の前に寶とならん。彼は生活せん、人々アラワィヤの金を以て彼に饋り、恒に彼の為に祈祷し、日々に彼を祝讃せん。地には穀物豊ならん、山の頂には其穂の揺くことリワンの林の如く、城邑には人の殖ゆること地の草の如くならん。彼の名は祝讃せられて世々に至らん、日の在る間は彼の名伝はらん、地上の萬族は彼に縁りて福を獲、萬民は彼を称讃せん。主神、イズライリの神、獨奇迹を行ふ者は祝讃せらる、彼の光栄の名も世々に祝讃せらる、全地は彼の光栄に満てられん。「アミン」、「アミン。」
第百三十一聖詠
主よ、ダワィドと其悉くの憂とを記憶せよ。彼主に誓ひ、イアコフの有能者に約して云へり、我我が家の幕に入らず、我が榻に登らず、我が目に寝ね、我が瞼に眠るを容るさずして、主の為に處所を得、イアコフの有能者の為に住所を得るに及ばんと。視よ、我等之をエフラファに聞き、之にイアリムの田に遇えり、往きて彼の住所に就き、彼の足台に叩拝せん。主よ、爾及び爾が能力の匱は爾が安息の所に立てよ。爾の司祭等は義を衣、爾の諸聖者は悦ばん。爾の僕ダワィドの為に、爾が膏つけられし者の面を転ずる毋れ。主は真実を以てダワィドに誓ひて、之に背かざらん、曰く我爾が腹の果を以て爾の寶座に坐せしめん。若し爾の諸子我が約と、我が彼等に誨へんとする啓示とを守らば、彼等の諸子も亦永く爾の寶座に坐せん。蓋主はシオンを擇び、此を以て其住所とするを望めり、曰く、此れ我が世々の安居なり、我此に居らん、蓋我之を望めり。我其糧を祝福し祝福せん、餅を以て其の貧しき者を飽かしめん。我救を以て其司祭等に衣せん、其諸聖者は喜び悦ばん。我彼處に於てダワィドに角を長ぜしめ、我が膏つけられし者の為に燈を立てん。我其敵に耻を衣せん、其冕は其上に耀かん。
第九十聖詠
至上者の覆の下に居る者は、全能者の蔭の下に安んず、主に謂ふ、爾は我の避所、我の防禦、我が頼む所の我の神なりと。彼は爾を猟者の網より、滅亡の疫より脱れしめん、彼は其羽にて爾を覆わん、其翼の下にて爾危からざるを得ん、彼の真実は楯なり、鎧なり。爾は夜の震驚と晝の流矢、闇冥に行く行疫と正午に暴す瘴疫を懼れざらん。千人爾の側に、萬人爾の右にイトるとも、爾に近づかざらん、爾只目を注ぎて不虔の者の報いを見ん、蓋爾謂へり、主は我の恃なりと、爾至上者を択びて、爾の避所と為せり。悪は爾に臨まず、疫癘は爾の住所に近づかざらん、蓋爾の為に其天使に命じて、爾の凡の路に爾を護らしめん。彼等其手にて爾を抱へて、爾の足を石に躓かざらしめん。爾蝮と毒蛇とを践み、獅と大蛇とを蹈まん。彼我を愛するに因りて、我之を援けん、彼我の名を識るに因りて、我之を衛らん。我を呼ばば、我彼に聴かん、憂の時我彼と偕にし、彼を援け、彼を栄せん、壽考を以て彼に飽かしめ、我の救を彼に顕さん。
光榮、今も、「アリルイヤ」三次。主憐めよ。三次。
光榮、讃詞、第四調。
昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて、ダワィドの血統たるに因りて、翁イオシフと偕にワィフレエムに於て籍に登れり。産期届りて、客舎に一も居る所なかりしに、洞は女王の為に美しき宮と現れたり。ハリストス生れ給ふ、先に陥りし像を起さん為なり。 今も、生神女讃詞
生神童貞女よ、我等夥しき罪ありて、己に勇なきに因りて、爾より生れし者に祈り給へ、蓋母の祷は多く主宰の慈憐を得べし、至浄の者よ、罪人の祈を棄つる勿れ、我等の為に甘じて苦を受け給ひし者は仁慈にして人を救ふことを能すればなり。
次ぎて左の諸讃詞、第一調。
信者よ、来りて、神妙に升せられて、ワィフレエムに於て我等に現れたる上よりの神聖なる降臨を見、智慧を浄めて、信を以て降誕の祭を備へ、香料に代へて徳行の度生を奉りて、霊の内蔵よりよばん、至高きには光榮三位なる神に帰す、彼に依りて恵は人に顕れたり。彼はアダムを原の詛より援け給へり、人を愛する主なればなり。二次。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。 第四調。
天よ、聴け、地よ、耳を傾けよ、基は動き、地獄は戦くべし、蓋神及び造成主は肉體の像を衣、権能の手にて造物を造りし者は造られし者の胎孕と見らる。嗚呼深い哉神の富と智慧と知識や、其定は如何に測り難く、其道は如何に究め難き。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
復同上。光榮、第五調。
ハリストスを捧ずる人々よ、来りて、凡の智識を驚かし心を奪ふ奇蹟を見、信を以て歌頌し、敬みて伏拝せん。今日孕みたる童貞女は主を生まん為にワィフレエムに来り、天使の會は之に先だつ。聘定者イオシフは之を見て呼べり、童貞女よ、是の爾に於ける奇妙なる奥密は何ぞや、婚姻に與らざる童女たるに、如何ぞ生まんとする。
今も、復同上。
提綱、第四調。
我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず。句、主我が主に謂へり、爾我が右に坐せよ。
イサイヤの預言書の読。(七、八章)
主又アハズに告げて曰へり、爾は主爾の神に徴を求めよ、或いは深き處、高き處に求めよ。アハズ曰へり、我求めず、主を試みざらん。イサイヤ曰へり、ダワィドの家よ、聴け、爾等人を煩はし、之を小き事として、亦我が神をも煩はさんと欲するか、故に主自ら爾等に徴を賜はん。視よ、童貞女孕みて子を生まん、其名はエムマヌイルと稱へられん。彼は乳と蜜とを食ひて、悪を棄て、善を擇ぶを知る時に及ばん。蓋此の嬰の悪を棄て、善を擇ぶを知るに及ばざる先に、爾が畏るる所の地は其二の王に棄てられん。主は我に謂へり、新にして大なる書巻を取り、其上に人の筆を以て書して云へ、掠は急ぎ、虜は速むと。我は篤実の人、司祭ウリヤとワラヒヤの子ザハリヤとを以て證者と為し、預言女に近づき、彼は孕みて子を生めり。主我に謂へり、其名を掠めは急ぎ、慮は速むと稱へよ。蓋此の子未だ我が父我が母と呼ぶを知らざる先に、ダマスクの富とサマリヤの贓物とは、アッシリヤの王の前に攜へられん。神は我等と偕にす。異邦人よ、此を知りて従へ、地の極までも之を聴け、権力ある者よ、従へ、復勢を張らば、復敗られん、謀を設けば、主は之を毀たん。言を出さば、必成らざらん。神は我等と偕にすればなり。
聖使徒パワェルがエウレイ人に達する書の読。(三〇四端)
主よ、爾初に地を基けたり、天も爾が手の造工なり。此等は亡びん、然れども爾は永く存す、此等は皆衣の如く古び、爾衣服の如く之を捲き、此等は易らん、然れども爾は易らず、爾の年は終らざらんと。神は何の天使に對ひて曾て云ひしか、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄れと。彼等は皆奉事する神゜、遣されて、救を嗣がんとする者の為に役事する者に非ずや。是の故に我等聞きし所を尤慎むべし、恐らくは或は離れ落ちん。蓋若し天使等に藉りて告げられし言は堅く立ちて、凡の違背と不順とは公正の報を受けしならば、我等此くの如き救を顧みずして、如何ぞ逃るるを得ん。斯れ始主に因りて傳へられ、彼より聞きし者に因りて我等の中に堅く立てられたり。
輔祭、睿智、粛みて立て、聖福音經を聴くべし。
司祭、マトフェイに因る聖福音經の読。(三端)
イイススは、イロド王の時、イウデヤのワィフレエムに生れしに、視よ、博士数人東よりイエルサリムに来りて曰く、生れたるイウデヤ人の王は何處に在るか、蓋我等其星を東に見たれば、彼を拝せん為に来れり。イロド王之を聞きて心騒げり、イエルサリム挙りて亦然り。乃凡の司祭長と民間の学士とを集めて、彼等に問へり、ハリストスは何處に生るべきか。彼等曰へり、イウデヤのワィフレエムに於てす、蓋預言者に因りて斯く録されたり、云く、イウデヤの地ワィフレエムよ、爾はイウダの諸郡の中に於て聊も小しとせず、蓋爾より我が民イズライリを牧せんとする君は出でんと。是に於てイロド密に博士を召し、詳に星の現れし時を問ひ、彼等をワィフレエムに遣して曰へり、往きて、細に嬰児の事を尋ね、之に遇はば、我に告げよ、我も往きて彼を拝せん為なり。彼等王に聞きて往けり、視よ、嘗て東に見たる星は彼等に先だちて行き、遂に嬰児の在る所に至りて、其上に止まれり。彼等星を見て喜に勝へざりき。乃家に入りて、嬰児の其母マリヤと偕に在るを見、俯伏して彼を拝し、其寶盒を啓きて、之に禮物を献じたり、即黄金、乳香、没薬なり、既にして夢の中に、イロドに返る可からずとの黙示を得て、他の途より其本地に帰れり。
次ぎて
主よ、願はくは爾の慈憐は速に我等を迎へん、我等甚衰へたればなり、神我等の救世主よ、爾の名の光榮に因りて我等を助け給へ、爾の名に因りて我等を救ひ、我等の罪を浄め給へ。
次に聖三祝文。「天に在す」の後に小讃詞、第三調。
童貞女は今日永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃榮せよ。
主憐めよ。四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ。三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」、神゜父よ、主の名を以て福を降せ。
司祭、「吾が諸聖神゜父の祈祷に依りて」。
次に大ワシリイの祝文。
神・天軍の主、萬物の造成者、爾が量り難き仁愛慈憐を以て我が族を救はん為に、爾の獨生子吾が主イイススハリストスを遣し、其貴き十字架にて我等の罪の書券を破り、又是を以て闇冥の首領と権柄とに勝ちし至仁なる主宰よ、我等罪なる者の此の感謝と祈願との祷を納れて、諸の害を為す暗き罪、及び凡そ我等を残はんと欲する見ゆる又見えざる諸敵より我等を救ひ給へ。我が體を爾を畏るる畏に釘うち給へ、我が心を邪なる言或は思に傾かしむる勿れ、乃爾を愛する愛を以て我等の霊を刺して、我等に常に爾を仰ぎ、爾よりする光に導かれて、爾近づき難き永存の光を望み、爾無原の父、爾の獨生の子、及び至聖至仁生を施す神゜に断えず讃詠と感謝とを奉らしめ給へ、今も何時も世々に、「アミン」。
第九時課
来れ、我等の王・神に叩拝せん。三次。
第百九聖詠
主我が主に謂へり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄れ。主はシオンより爾が能力の杖を遣さん、爾は其敵の中に主たる可し。爾が能力の日に於て、爾の民は聖なる美麗を以て備へられたり、我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず、爾メルヒセデクの班に循ひて司祭と為りて世世に迄らん。主は爾の右にあり。彼は其怒の日に諸王を撃ち、審判を諸民に行ひ、屍を地に満て、廣き地に於て首を毀らん。彼は道端の流に飲まん、故に首を翹げん。
第百十聖詠
主よ、我心を全うして爾を義者の集議の中、および會の中に讃栄す。主の所為は大にして、凡そ之を愛する者の為に慕ふべし。其所為は光栄なり、美麗なり、其義は永く存す。彼は其奇迹を忘る可からざる者と為せり、主は慈憐にして鴻恩なり。彼は己を畏るる者に糧を予へ、永く其約を記念す。彼は其所為の力を其民に顕せり、之に異邦人の嗣業を與へん為なり。其手の所為は真実なり、公義なり、其悉くの誡は正しく、世世に堅固にして、真実と正直とを基と為せり。彼は其民に救を遣し、其約を永遠に立てたり。其名は聖にして畏るべし。主を畏るる畏は智慧の始なり、其誡を守る者は皆明智なり。其讃美は永く存せん。
第八十五聖詠
主よ、爾の耳を傾けて我に聴き給へ、我乏しくして貧しければなり。我が霊を護れ、我爾の前に慎めばなり、我が神よ、爾を恃める爾の僕を救ひ給へ。主よ、我を憐め、我日日に爾に呼べばなり。爾の僕の霊を楽ましめ給へ、主よ、我が霊を爾に挙ぐればなり、蓋主よ、爾は仁慈慈憐にして、凡そ爾を呼ぶ者に洪恩なり。主よ、我が祷を聴き、我が願の聲を聆き納れ給へ。我が憂の日に爾に呼ぶ、爾我に聴かんとすればなり。主よ、諸神の中爾に如く者なく、爾の作為に如くはなし。主よ、爾に造られし萬民は来りて爾の前に伏拝し、爾の名を讃栄せん、蓋爾は大にして、奇蹟を行ふ、爾神よ、獨爾なり。主よ、我を爾の路に導き給へ、然せば我爾の真理に行かん、我が心を爾の名を畏るる畏に固め給へ。主我が神よ、我心を尽して爾を讃美し、永く爾の名を讃栄せん、蓋我に於ける爾の憐は大なり、爾は我が霊を甚と深き地獄より援け給へり。神よ、驕る者は起ちて我を攻め、暴虐者の党は我が霊を尋ぬ、彼等は爾を己の前に置かず。然れども爾主、宏慈にして矜恤、寛忍にして洪恩、真実なる神よ、我を顧み、我を憐み、爾の力を爾の僕に賜ひ、爾の婢の子を救ひ給へ。恩の徴を我に顕し給へ、我を疾む者は之を見て為に愧を得ん、爾主よ、我を助け、我を慰め給ひしに因る。
光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。主憐めよ。三次。
光榮、讃詞、第四調。
昔マリアムは種なき胎孕を腹に懐きて、ダワィドの血統たるに因りて、翁イオシフと偕にワィフレエムに於て籍に登れり。産期届りて、客舎に一も居る所なかりしに、洞は女王の為に美しき宮と現れたり。ハリストス生れ給ふ、先に陥りし像を起さん為なり。 今も、生神女讃詞。
我等の為に童貞女より生れ、十字架に釘うたるるを忍び、神なるに依りて死にて死を滅し、復活を顕しし仁慈なる主よ、爾の手にて造りし者を棄つる勿れ、慈憐の主よ、爾が人を愛する愛を顕して、我等の為に祈祷する所の爾を生みし生神女を受け給へ、我が救主よ、望を失へる人々を救ひ給へ。
次ぎて左の諸讃詞、第七調。
イロドは博士の敬虔を見て奇しみ、怒に堪へずして、年の隔を尋ねたり。諸の母は子なき者となり、嬰の生ひ立たぬ齢は哀しく?られ、乳房は枯れ、乳の源は塞がりたり、其苦難は甚しかりき。是を以て我等信者は敬虔に集まりて、ハリストスの降誕に伏拝せん。二次。
句、神は南より来り、聖なる者は樹蔭繁き山より来らん。
讃詞、第二調。
童貞女よ、イオシフがワィフレエムに往きて、哀に傷められし時、爾は之に呼べり、我が孕めるを見て、胡為れぞ憂ひて惑へる、爾は全く我に於ける畏るべき秘密を知らず。此より悉くの畏を去りて、至榮なる事を知れ、蓋神は仁慈に縁りて地に降る、彼は今我が胎内に於て肉體を取り給ふ。爾は其自ら欲せし如く生るるを見、喜に満てられて、彼を爾の造成主として伏拝せん。諸天使は常に彼を歌頌して、父及び聖神゜と偕に讃栄す。
句、主よ、我爾の風聲を聞きて懼れたり、主よ、我爾の作為を悟りて驚けり。
復同讃詞。
次ぎて規程首唱者堂中に立ちて、左の讃頌を高誦す、第六調。
今日萬物を手に保つ者は童貞女より生れ、本性の触るべからざる神は地の物の如く襁褓に裹まれ、太初に言を以て天を堅めし者は芻槽に臥し、野に於て人々に「マンナ」を雨らしし者は乳房より乳にて養はれ、教会の新郎は博士を召し、童貞女の子は其禮物を受け給ふ。ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、爾の神聖なる神現をも我等に示し給へ。
三拝を為す。
次ぎて輔祭高聲を以て萬寿詞を唱ふ、左の如し。
主よ、萬世一系の帝位を履む我が今上皇帝に福寿安寧なる生命、壮健と救贖、萬事に於ける善き進歩、諸敵に対する勝利を與へて、彼を幾歳も護り給へ。
両詠隊歌ふ、幾歳も。各三次。
主よ、皇后、皇太子、皇太子妃、及び皇族を幾歳も護り給へ。
両詠隊歌ふ、幾歳も。各三次。
主よ、教会を司る至善なるロッシヤの會院を幾歳も護り給へ。
右列詠隊歌ふ、幾歳も。三次。
(若し首教座の本堂ならば、主よ、コンスタンティノポリ、アレクサンドリヤ、アンティオヒヤ、及びイエルサリムの至聖なる正教の總主教等を幾歳も護り給へ。
左列詠隊歌ふ、幾歳も。三次。)
主よ、聖尊なる府主教、大主教、主教等、及び聖にせられたる全教衆を幾歳も護り給へ。
詠隊、幾歳も。三次。
主よ、百官有司、帝国議會、皇軍、及び全国民に安寧、福寿、五穀の豊穣を與へて、幾歳も護り給へ。
詠隊、幾歳も。三次。
修道院に於て行ふ時は、ハリストス神よ、我が克肖なる院長、及び主に於ける其兄弟を救ひ、此の聖なる修道院を平安に護り、此の聖堂を世々に堅め給へ、「アミン」。
詠隊歌ふ、ハリストス神よ、救ひ給へ。三次。
知るべし、此の萬寿詞は主教座の在る所の本堂、及び其他の適当なる處には、祭前期に聖体禮儀の發放詞の後に之を行ふ、祭前期若し「スボタ」又は主日に當らば、晩課の後に之を行ふ。唯諸修道院に於ては祭前期の時課の此の處に及びて之を行ふ規程あり。
次ぎて両詠隊共に前述の讃頌を歌ふ。
光榮、今も、第六調。
今日萬物を手に保つ者は童貞女より生れ、本性の触るべからざる神は地の物の如く襁褓に裹まれ、太初に言を以て天を堅めし者は芻槽に臥し、野に於て人々に「マンナ」を雨らしし者は乳房より乳にて養はれ、教会の新郎は博士を召し、童貞女の子は其禮物を受け給ふ。ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、ハリストスよ、我等爾の降誕に伏拝す、爾の神聖なる神現をも我等に示し給へ。
第九時課には輔祭全堂に爐儀を行ふ。
提綱、第四調。
シオンに至りては云はん、此の人彼の人其中に生れたり。句、彼の基は聖山に在り。
イサイヤの預言書の読。(九章)
嬰は我等の為に生れ、子は我等に賜はりたり、権柄は其肩に在り、其名は奇妙なる者、議士、大能の神、永遠の父、和平の君と称へられん。彼の権柄と彼の和平との増加はダワィドの位に其國に於て已むなからん、彼が審判と公義とを以て今より世々に至るまで之を理め、之を固めん為なり。主サワオフの熱心は之を成さん。
聖使徒パワェルがエウレイ人に達する書の読(三〇六端)。
兄弟よ、聖にする者と聖にせらるる者とは、皆一の者より出づ、是の故に彼等を兄弟と称ふるを愧ぢずして曰く、我爾の名を我が兄弟に傳へ、爾を會中に詠はん。又曰く、我彼を頼まん。又曰く、視よ、我及び神が我に與へし諸子は此に在りと。夫れ諸子は肉と血とに属するが故に、彼も亦親しく之を受けたり、死を以て、死の権を秉る者、即悪魔を空しくし、死を畏るるに由りて、生涯奴役に服せし者を釈たん為なり。蓋彼は天使等より受くるに非ず、即アウラアムの裔より受く。故に凡の事に於て兄弟に肖るべかりき、神の前に矜恤、忠信なる司祭長と為りて、民の罪を贖はん為なり。蓋彼親ら試みられて、難を受けしが故に試みらるる者にも能く助くるを為すなり。
輔祭、睿智、粛みて立て、聖福音經を聴くべし。
司祭、マトフェイに因る聖福音經の読。(四端)
博士の帰りし後、視よ、主の使夢にイオシフに現れて曰く、起きて、嬰児と其母とを攜へて、エギペトに奔り、彼處に在りて、我が爾に告ぐるを待て、蓋イロドは嬰児を索めて、之を殺さんと謀る。彼起きて夜間嬰児と其母とを攜へて、エギペトに往き、彼處に在りてイロドの死するに至れり。是れ主が預言者を以て言ひし所に應ふを致す、云く、我吾が子を召してエギペトより出だせりと。當時イロドは己が博士に欺かれたるを見て、大に怒り、人を遣して、曾て詳に博士に問ひし時を按り、ワィフレエム及び其四の境の内なる二歳以下の嬰児を尽く殺せり。是に於て預言者イエレミヤの言ひし事應へり、云く、ラマに悲み哭き甚しく號ぶ声は聞ゆ、ラヒリは其子の為に哭きて慰むるを欲せず、子の無きが故なりと。イロドの死せし後、視よ、主の使エギペトに於て夢にイオシフに現れて曰く、起きて、嬰児と其母とを攜へて、イズライリの地に往け、蓋嬰児の生命を索むる者は死せり。彼起きて、嬰児と其母とを攜へて、イズライリの地に来れり。惟アルヘライが其父イロドに継ぎて、イウデヤに王たりと聞きて、彼處に往くことを懼れ、乃夢の中に黙示を得て、ガリレヤの境に往き、ナザレトと名づくる邑に来りて、此に居りたり、諸預言者を以て、彼はナゾレイと称へられんと、言はれし事に應ふを致す。
次ぎて
爾の名に因りて我等を終まで棄つる勿れ、爾の盟約を破る勿れ、爾の憐を我等より除く勿れ、爾が愛する所のアウラアムと、爾の僕イサアクと、爾の聖なるイズライリとに因りてなり。
次に聖三祝文。「天に在す」の後に、小讃詞、第三調。
童貞女は今日永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃榮せよ。
主憐めよ。四十次。祝文、「何の日何の時にも」。主憐めよ。三次。光榮、今も、「ヘルワィムより尊く」、神゜父よ、主の名を以て福を降せ。
司祭、「吾が諸聖神゜父の祈祷に依りて」。
次に大ワシリイの祝文。
主宰イイススハリストス吾が神よ、我等の罪を寛忍して、我等を今の時に至らしめ給ひし主よ、昔此の時に生命を施す木に懸りて、善智なる盗賊の為に天堂の道を啓き、死を以て死を滅し給ひし主よ、我等罪なる爾の當らざる僕を浄め給へ、我等罪を犯し、不法を行ひ、目を挙げて天の高きを見るに堪へざればなり、蓋爾の義の道を離れ、私慾を恣にして日を送れり。主よ、爾の量り難き仁慈に祈る、爾が多くの憐に因りて我等を宥め、爾の聖なる名に因りて我等を救ひ給へ、我が日空しく消ゆればなり。我等を敵の手より援け給へ、我等が諸の罪を赦し給へ、我等が肉體の念を殺し給へ、我等舊き人を脱ぎ、新しき人を衣、爾我等の主宰及び恩者の為に生き、此くの如く爾の誡に遵ひて、悉くの楽しむ者の住所なる永遠の安息に至らん為なり。蓋ハリストス吾が神よ、爾は實に爾を愛する者の眞の楽と喜なり。我等爾と、爾の無原の父と、至聖至仁生命を施す爾の神゜とに光榮を帰す、今も何時も世々に、「アミン」。
第百二聖詠
我が霊よ、主を讃め揚げよ、我が中心よ、其聖なる名を讃め揚げよ。我が霊よ、主を讃め揚げよ、彼が悉くの恩を忘るる毋れ。彼は爾が諸の不法を赦し、爾が諸の疾を癒す、爾の生命を墓より救い、憐と恵とを爾に冠らせ、幸福を爾の望に飽かしむ、爾が若復さるること鷲の如し。主は凡そ迫害せらるる者の為に義と審判とを行ふ。彼は己の途をモイセイに示し、己の作為をイズライリの諸子に示せり。主は宏慈にして矜恤、寛忍にして鴻恩なり、怒りて終あり、憤りを永く懐かず。我が不法に因りて我等に行はず、我が罪に因りて我等に報いず、蓋天の地より高きが如く、斯く主を畏るる者に於ける其憐は大なり、東の西より遠きが如く、斯く主は我が不法を我等より遠ざけたり、父の其子を憐むが如く、斯く主は彼を畏るる者を憐む。蓋彼は我が何より造られしを知り、我等の塵なるを記念す。人の日は草の如く、其栄ゆること田の華の如し。風之を過ぐれば無に帰し、其有りし處も亦之を識らず。唯主の憐は彼を畏るる者に世より世に至り、彼の義は其約を守り、其誡を懐ひて、之を行ふ子々孫々に及ばん。主は其寶座を天に建て、其国は萬物を統べ治む。主の諸の天使、能力を具へ、其聲に遵ひて其言を行ふ者よ、主を讃め揚げよ。主の悉くの軍、其旨を行ふ役者よ、主を讃め揚げよ。主の悉くの造工よ、其一切治むる處に於て主を讃め揚げよ。我が霊よ、主を讃め揚げよ。
光榮は父と子と聖神゜に帰す。
第百四十五聖詠
我が霊よ、主を讃め揚げよ。我生ける中主を讃め揚げん、我存命の中吾が神に歌はん。牧伯を恃む毋れ、救ふ能はざる人の子を恃む毋れ。彼気絶ゆれば土に帰り、凡そ彼が謀る所は即日に消ゆ。イアコフの神に佑けらるる人は福なり、主神、即天地と海と凡そ其中に在る物とを造り、永く真実を守り、窘迫せらるる者の為に判をなし、飢うる者に糧を與ふる主を恃む人は福なり。主は囚人を釈き、主は瞽者の目を開き、主は屈められし者を起し、主は義人を愛す。主の羇客を護り、孤子と寡婦とを佑け、惟不虔者の途を覆へす。主は永遠に王とならん、シオンよ、爾の神は世世に王とならん。
今も何時も世々に、「アミン」。
神の獨生の子并に言よ、死せざる者にして、我等を救はん為に甘じて聖なる生神女、永貞童女マリヤより身を取り、性を易へずして人と為り、十字架に釘うたれ、死を以て死を踏み破りしハリストス神よ、聖三者の一として、父及び聖神゜と共に讃栄せらるる主よ、我等を救ひ給へ。
次ぎて誦す。
主よ、爾の国に来らん時我等を憶ひ給へ。
神゜の貧しき者は福なり、天国は彼等の有なればなり。
泣く者は福なり、彼等慰を得んとすればなり。
温柔なる者は福なり、彼等地を嗣がんとすればなり。
義に飢え渇く者は福なり、彼等飽くを得んとすればなり。
矜恤ある者は福なり、彼等矜恤を得んとすればなり。
心の清き者は福なり、彼等神を見んとすればなり。
和平を行ふ者は福なり、彼等神の子と名づけられんとすればなり。
義の為に窘逐せらるる者は福なり、天国は彼等の有なればなり。
人我の為に爾等を詬り、窘逐し、爾等の事を偽りて諸の悪しき言を言はん時は、爾等福なり。
喜び楽しめよ、天には爾等の賞多ければなり。
眞福詞には月課經の讃詞を誦せず。又使徒及び福音經の誦読なし。
光榮は父と子と聖神゜に帰す、今も何時も世々に、「アミン」。
主よ、爾の国に来らん時我等を憶ひ給へ。
主宰よ、爾の国に来らん時我等を憶ひ給へ。
聖なる者よ、爾の国に来らん時我等を憶ひ給へ。
天軍爾を歌ひて曰ふ、聖、聖、聖なる哉主サワオフ、爾の光榮は天地にあまねし。
句、目を挙げて彼を仰ぐ者は照されたり、彼等の面は愧を受けざらん。
天軍爾を歌ひて曰ふ、聖、聖、聖なる哉主サワオフ、爾の光榮は天地にあまねし。
光榮は父と子と聖神゜に帰す。
聖天使及び天使首の群は衆天軍と共に爾を歌ひて曰ふ、聖、聖、聖なる哉主サワオフ、爾の光榮は天地にあまねし。
今も何時も世々に、「アミン」。
第一公會の信經。(若し聖體禮儀あらば、茲に之を誦せず、即「今も」の後、直に「神よ、我が自由と自由ならざると」其他を誦す。)
我信ず一の神父、全能者、天と地、見ゆると見えざる萬物を造りし主を。又信ず一の主イイススハリストス、神の獨生の子、萬世の前に父より生れ、光よりの光、眞の神より眞の神、生れし者にて造られしに非ず、父と一體にして萬物彼に造られ、我等人々の為、又我等の救の為に天より降り、聖神゜及び童貞女マリヤより身を取り、人と為り、我等の為にポンテイピラトの時十字架に釘うたれ、苦を受け、葬られ、第三日に聖書に應ひて復活し、天に升り、父の右に坐し、光榮を顕して生ける者と死せし者とを審判する為に還来り、其国終なからんを。
第二公會の信經
又信ず聖神゜、主、生を施す者、父より出で、父及び子と共に拝まれ讃められ、預言者を以て嘗て言ひしを。又信ず一の聖なる公なる使徒の教会を。我認む一の洗禮、以て罪の赦を得るを。我望む死者の復活、並に来世の生命を、「アミン」。
次に祝文
神よ、我が自由と自由ならざると、言と行と、知ると知らざると、晝に夜に、思と心にて犯しし諸の罪を宥め、之を釋き、之を赦せ、仁慈にして人を愛する主よ、皆我等に赦し給へ。
「天に在す」の後に、小讃詞、第三調。
童貞女は今日、永久の言を言ひ難く洞の中に生まん為に来る。全地よ、聞きて祝へ、嬰児として現れんと欲する永久の神を諸天使及び牧者と偕に讃榮せよ。
主憐めよ。四十次。
次に左の祝文
至聖なる三者、一性の権柄、分れざる国、萬善の源よ、我罪人の為にも慮り給へ。我が心を固め、之を悟らせ、我が諸の汚を除き給へ。我が智識を照し、我に常に讃栄讃頌叩拝して唱へさせ給へ、聖なるは一、主なるは一、神父の光榮を顕すイイススハリストスなり、「アミン」。
次ぎて「常に福にして」、及び本日の發放詞。
右畢りて後衆散帰して晩課の時を俟つ。
晩課は定刻に及びて、大ワシリイの聖體禮儀と合せ行ふ。第33聖詠を升壇外の祝文の後に誦す。
若し聖體禮儀なくば、之を此に誦す。
願はくは主の名は崇め讃められて今より世々に至らん。三次。
光榮、今も、第三十三聖詠
我何の時にも主を讃め揚げん、彼を讃むるは恒に我が口に在り、我が霊は主を以て誇らん、温柔なる者は聞きて楽まん。我と偕に主を尊め、偕に彼の名を崇め讃めん。我嘗て主を尋ねしに、彼は我に聆き納れて、我が都ての危きより我を免れしめ給へり。目を挙げて彼を仰ぐ者は照されたり、彼等の面は愧を受けざらん。此の貧しき者呼びしに、主は聆き納れて、之を其悉くの艱難より救へり。主の使は主を畏るる者を環り衛りて、彼等を援く。味へよ、主の如何に仁慈なるを見ん、彼を恃む人は福なり。凡そ主の聖人よ、主を畏れよ、蓋彼を畏るる者は乏しきことなし。少き獅は乏しくして餓え、唯主を尋ぬる者は何の幸福にも缺くるなし。小子よ、来りて我に聴け、主を畏るる畏を爾等に訓へん。人生くるを望み、又壽へて幸福を見んことを欲するか、爾の舌を悪より、爾の口を偽の言より止めよ。悪を避けて善を行ひ、和平を尋ねて之に従へ。主の目は義人を顧み、其耳は彼等の呼ぶを聆く。唯主の面は悪を為す者に対う、其名を地より滅さん為なり。義人は呼ぶに、主は之を聴き、彼等を悉くの憂より免れしむ。主は心の傷める者に近し、霊の謙る者を救はん。義人には憂多し、然れども主は之を悉く免れしめん。主は彼が悉くの骨を護り、其一も折れざらん。悪は罪人を殺し、義人を憎む者は亡びん。主は其諸僕の霊を救ひ、彼を頼む者は一人も亡びざらん。
「常に福にして」、并に發放詞。
【注意】知るべし、降誕祭の前日若し「スボタ」或は主日に當らば、金口の聖体禮儀を歌ひ、祭日には大ワシリイの聖体禮儀を歌ふ。神現祭にも亦此くの如し。前日若し「スボタ」及び主日の外の日に當らば、大ワシリイの聖体禮儀を行ひ、祭日には金口の聖体禮儀を行ふ。神現祭にも亦然り。
降誕祭及び神現祭若し主日に當らば、主日の諸讃歌は一切歌誦せず。
【注意】更に知るべし、ハリストス降誕祭より神現祭に至るまでは齋なし、堂中に於ても室内に於ても膝を屈めず。
一月七日
主神我が救世主イイススハリストスの降誕祭
晩課
定刻に及びて大鐘を撞き、連鐘を鳴らす、衆堂に聚りて、晩課を始むること常の如し。輔祭曰く、君よ、祝讃せよ。司祭、「父と子と聖神゜の国は崇め讃めらる」。誦經、「天の王」、聖三祝文、「天に在す」の後に主憐めよ、十二次。光榮、今も、「来れ、我等の王」、三次。第103聖詠、「我が霊よ、主を讃め揚げよ」。
次ぎて輔祭大聯祷を誦す。若し「スボタ」の晩ならば、第一「カフィズマ」全分を誦す。若し主日の晩ならば、此の「カフィズマ」の第一段のみを歌ふ。若し其他の諸日ならば、聖詠を誦せずして、大聯祷の後直に「主よ、爾によぶ」を歌ふ、第二調に依る。
此の時司祭奉獻禮儀を行ふ。次ぎて輔祭堂中に爐儀を行ふこと常の如し。詠隊八句を立てて、祭日の讃頌を歌ふ。
第二調。(ゲルマンの作)。
来りて、主の前に喜びて、現今の奥義を述べん。隔の垣は毀たれ、焔の剣は却りし、ヘルワィムは生命の樹より退き、嘗て背きしに因りて楽園より逐はれたる我は復楽園の糧に與る。蓋父の変らざる像、其永在の姿は、嫁がざる母より出で、変易に與らずして、僕の形を受け給ふ、其眞の神として、有りし儘を失はず、又人を愛するに因りて人と為りて、有らざりし事を受けたればなり。我等彼によばん、童貞女より生れし神よ、我等を憐み給へ。二次。
(アナトリイの作)。
主イイススが聖なる童貞女より生れし時、萬有は照されたり、蓋牧者は笛を吹き、博士は伏し拝み、天使は讃め揚げ、唯イロドは惶れ惑へり、神我等の霊の救主が肉體にて現れ給ひしに因る。二次。
ハリストス神よ、爾の国は萬世の国、爾の主権は代代に在り。聖神゜に藉りて孕まれ、永貞童女マリヤより人體を取りしハリストス神よ、爾の降臨は我等に光を輝かせり、光よりする光、父の光明なる者よ、爾は萬物を照し給へり。凡そ呼吸ある者は爾父の光榮の像を讃め揚ぐ。永在にして永遠なる主、童貞女より輝きし神よ、我等を憐み給へ。二次。
ハリストスよ、爾が我等の為に人として地に現れしに因りて、我等何を以て爾に奉らん、蓋爾が造りし物は各爾に感謝を奉る、天使は歌を、天は星を、博士は禮物を、牧者は奇蹟を、地は洞を、野は芻槽を、我等に於ては母、童貞女を奉る。世々の前より在す神よ、我等を憐み給へ。二次。
光榮、今も、同調。(カッシヤの作)。
アウグストが地に獨権を秉(と)れる時、人々の衆権は熄み、爾が潔き者より人體を取りし時、偶像の多神は虚しくなれり。諸邑は治世の一権に服し、諸民は神性の獨裁を信ぜり。人々はケサリの命に因りて籍に登り、我等信者は爾人體を取りし我が神の神性の名に因りて記されたり。爾の憐は大なり、主よ、光榮は爾に帰す。
【注意】福音經捧持の聖入。「穏なる光」。本日の提綱。次に喩言、其讃詞及び諸句と共に。
ハリストス降誕の前晩若し金曜日に當らば、本日の提綱を歌はずして、大提綱、「何の神か我が神の如く大なる」を其諸句と共に歌誦す。
創世記の読(一章)
元始に神天地を造れり。地は形なく虚しくして、暗は淵の面に在り、神の神゜水の面に覆育せり。神曰へり、光あるべし。即光成れり。神光を観て善とせり、神光を暗より判てり。神光を晝と名づけ、暗を夜と名づけたり。夕あり、朝あり、是れ一日なり。神曰へり、水の中に穹蒼ありて、水を水より判つべし。即斯く成れり。神穹蒼を造りて、穹蒼の下の水を穹蒼の上の水より判てり。神穹蒼を天と名づけたり。神之を観て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第二日なり。神曰へり、天下の水は一区に匯りて、陸顕るべし。即斯く成れり。天下の水其区に匯りて、陸顕れたり。神陸を地と名づけ、水の匯を海と名づけたり。神之を観て善とせり。神曰へり、地は青草と、種を其類其肖に従ひて蒔く草と、地上に其類に従いて己の内に核を懐く実を結ぶ所の果の木とを生ずべし。即斯く成れり。地は青草と、種を其類其肖に従ひて蒔く草と、地上に其類に従ひて己の内に核を懐く実を結ぶ所の果の木とを生ぜり。神之を観て善とせり。夕あり、朝あり、是れ第三日なり。
民数記の読(二十四章)
神の神゜ワラアムに臨みたれば、彼其箴言を述べて曰へり、イアコフよ、爾の住所は美しき哉、イズライリよ、爾の天幕は美しき哉、是は布き列ること谷谷の如く、河辺の園の如く、主の栽えし沈香樹の如く、水の畔の柏香木の如し。人は其裔より出でて、衆くの民を治めん、其國は高くなりて振ひ興らん。神は彼をエギペトより導き出せり。彼は強きことのうしの如く、彼に敵する諸民を呑み、其骨を砕き、箭を以て敵を刺さん。彼は身を屈めて伏すこと、牡獅の若く、牝獅の若し、敢て彼を起さん。爾を祝する者は祝せられ、爾を詛ふ者は詛はる。イアコフより星出で、イズライリより人興りて、モアフの諸侯を破り、シフの諸子を悉く擒にせん、エドムは彼の嗣業と為り、其敵イサフは其嗣業と為らん。イズライリは其力を顕さん。
ミヘイの預言書の読(四、五章)
主曰く、我彼の日に於て足萎えたる者を集へ、逐ひ散らされし者と我が禍に付しし者とを聚め、足萎えたる者を以て遺餘と為し、遠く逐はれし者を以て強き民と為さん。主はシオン山に於て彼等の王と為りて今より世々に至らん。ワィフレエム、エフラファよ、爾はイウダの諸郡の中に於て小きか、爾より我が為にイズライリの中に主宰たるべき者は出でん。其出づることは原始よりし、永遠の日よりするなり。是を以て彼は産むべき者の産むに迄るまで彼等を棄て置かん。其時イズライリの諸子には其残りたる兄弟は帰らん。彼は立ちて、主の力を以て、主其神の名の威厳に頼りて、其群を牧して、之を安らかに居らしめん。蓋其時彼は大なる者と為りて地の極にまで至らん。
次ぎて誦經者高誦す、讃詞、第六調、而して衆起ちて後、左の讃詞を誦す。
救世主よ、爾隠に洞に生れたれども、天は爾を衆人に傳へて、星を口の如くに進め、博士を導きて、信を以て爾に伏拝せしめたり、彼等と共に我等を憐み給へ。
第一句、彼の基は聖山に在り、主はシオンの門を愛すること、イアコフの悉くの住所に愈れり。神の城邑よ、光榮の事は爾に於て傳へらる。我を知る者には我ラアフとワワィロンとの事を示さん。
詠隊讃詞の末辞を歌ふ、博士を導きて、信を以て爾に伏拝せしめたり、彼等と共に我等を憐み給へ。
第二句、視よ、フィリスティヤ人、及びティルとエフィオピヤと此にあり、人云はん、某彼處に生れたり。シオンに至りては云はん、此の人彼の人其中に生れたり、至上者親ら彼を堅固にせり。
又歌ふ、博士を導きて、信を以て爾に伏拝せしめたり、彼等と共に我等を憐み給へ。
第三句、主は諸民の記録に記さん、此の人其中に生れたり。歌ふ者も楽を作す者も、凡そ我が泉は皆爾にあり。
又歌ふ、博士を導きて、信を以て爾に伏拝せしめたり、彼等と共に我等を憐み給へ。
次に光榮、右列詠隊讃詞の末辞を歌ふ。
今も、左列同じく末辞を歌ふ。
其後誦經讃詞全章を復誦して、自ら其末辞を歌ふ、
救世主よ、爾隠に洞に生れたれども、天は爾を衆人に傳へて、星を口の如くに進め、博士を導きて、信を以て爾に伏拝せしめたり、彼等と共に我等を憐み給へ。
又次を逐ひて左の喩言を誦す。
イサイヤの預言書の読。(十一章)。
主是くの如く言ふ、イエッセイの根より芽は出で、其根より枝は生ぜん。主の神゜は彼に止らん。明智と聡慧との神゜、謀略と勇毅との神゜、超織と虔誠との神゜なり。彼は主を畏るる敬畏にて満てられん。彼の判を為すは其目の見る所に憑るに非ず、事を定むるは其耳の聞く所に憑るに非ず。彼は義に依りて貧しき者を判き、眞實に依りて地の苦む者の諸事を定めん、彼は其口の杖を以て地を撃ち、其唇の気を以て不虔の者を殺さん。義は其腰の紳と為り、眞實は其脅の帯と為らん。其時狼は羔と偕に宿り、豹は小山羊と偕に臥し、犢と稚き獅と牡牛とは偕に居り、幼き童は彼等を牽かん。牝牛は牝熊と同じく草場に在り、其子は共に臥し。獅は牛の如く藁を噛まん。哺乳児は毒蛇の穴の上に戯れ、断乳の児は手を蝮の巣に入れん。我の聖山には到る處として悪と害とを為す者なからん。蓋水の海を満つる如く、地は主を知る知識にて満てられん。其日イエッセイの根は樹ちて諸民の為に旗と為り、異邦民彼に帰せん、彼の安息は尊榮と為らん。
イエレミヤの預言書の読(ワルフ三、四章)
是は我が神なり、佗に復彼と比ぶべき者なし。彼は睿智の悉くの道を求め得て、之を其僕イアコフ、其愛する所のイズライリに賜へり。其後彼は地に現れて、人々の間に在せり。此は乃神の誡の書、世々に存する法なり。凡そ之を保つ者は生き、之を棄つる者は死せん。イアコフよ、轉じて之を執り、其光の照らす所に歩め。爾の光栄を他の者に、爾の為に利益なる事を外族に與ふる毋れ。イズライリよ、我等が何者か神の悦ぶ所たるを知るは福なり。
ダニイルの預言書の読(二章)
ダニイルはナワゥホドソルに謂へり、王よ、爾の見し所是くの如し。茲に一の巨なる像あり、此の像は高大にして、異常の耀きを以て爾の前に立てり、其形は懼るべかりき。此の像は、其首は純金、其胸と手とは銀、其腹と股とは銅、其脛は鐵、其足は一分は鐵、一分は赭土なり。爾此を見たるに、遂に石は手に依らずして山より鑿たれ、像の鐵と赭土との足を撃ちて、之を壊れり。其時皆共に砕けて、鐵と赭土と銅と銀と金とは、夏の禾場の糠の如くに為り、風之を飛ばして、其迹を遺さざりき、然れども像を撃ちたる石は大なる山と為りて、全地に満ちたり。是れ夢なり、我等今其解を王の前に述べん。天の神は世世に亡されざる國を建てん、此の國は他の民に付されず、一切の國を破りて、之を滅し、自ら立ちて永遠に至らん、蓋爾は石が手に依らずして山より鑿たれて、鐵と銅と赭土と銀と金とを砕けるを見たり。大なる神は将来に有るべき事を王に知らせたり。此の夢は眞にして、此の解は確なり。
次ぎて誦經左の讃詞を誦す、第六調。
ハリストス、神゜霊の義の日よ、爾は童貞女より輝きしに、星は爾容れ難き者が洞に容れらるるを示せり。爾は博士を導きて、爾に伏拝せしめたり、彼等と偕に爾を崇め讃む、生命を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。
第一句、主は王たり、彼は威厳を衣たり、主は能力を衣、又之を帯にせり、故に世界は堅固にして動かざらん。爾の寶座は古より堅く立ち、爾は世世の前より在せり。
詠隊歌ふ、爾は博士を導きて、爾に伏拝せしめたり、彼等と偕に爾を崇め讃む、生命を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。
第二句、諸川聲を騰げ、主よ、諸川其聲を騰げ、諸川其波を騰ぐ、然れども主が最高きに於て強きは、多くの水の聲に勝り、海の強き浪に勝れり。
又歌ふ、爾は博士を導きて、爾に伏拝せしめたり、彼等と偕に爾を崇め讃む、生命を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。
第三句、爾の啓示は誠に正し。主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。
又歌ふ、爾は博士を導きて、爾に伏拝せしめたり、彼等と偕に爾を崇め讃む、生命を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。
光榮、讃詞の末辞。
今も、又末辞。
次に讃詞全章。
ハリストス、神゜霊の義の日よ、爾は童貞女より輝きしに、星は爾容れ難き者が洞に容れらるるを示せり。爾は博士を導きて、爾に伏拝せしめたり、彼等と偕に爾を崇め讃む、生命を賜ふ主よ、光榮は爾に帰す。
誦經自ら讃詞の末辞を歌ひ、畢りて後誦す、
イサイヤの預言書の読。(九章)。
嬰は我等の為に生れ、子は我等に賜はりたり、権柄は其肩に在り、其名は奇妙なる者、議士、大能の神、永遠の父、和平の君と称えられん。彼の権柄と彼の和平との増加はダワィドの位に其國に於て已むなからん、彼が審判と公義とを以て今より世々に至るまで之を理め、之を固めん為なり。主サワオフの熱心は之を成さん。
イサイヤの預言書の読(七、八章)
主又アハズに告げて曰へり、爾は主爾の神に徴を求めよ、或は深き處、或は高き處に求めよ。アハズ曰へり、我求めず、主を試みざらん。イサイヤ曰へり、ダワィドの家よ、聴け、爾等人を煩はし、之を小き事として、亦我が神をも煩はさんと欲するか、故に主自ら爾等に徴を賜はん。視よ、童女孕みて子を生まん、其名はエムマヌイルと稱えられん。彼は乳と蜜とを食ひて、悪を棄て、善を擇ぶを知る時に及ばん。蓋此の嬰の悪を棄て、善を擇ぶを知るに及ばざる先に、爾が畏るる所の地は其二の王に棄てられん。主は我に謂へり、新にして大なる書巻を取り、其上に人の筆を以て書して云へ、掠は急ぎ、虜は速むと。我は篤実の人、司祭ウリヤとワラヒヤの子ザハリヤとを以て證者と為し、預言女に近づき、彼は孕みて子を生めり。主我に謂へり、其名を掠は急ぎ、虜は速むと稱えよ。蓋此の子未だ我が父我が母と呼ぶを知らざる先に、ダマスクの富とサマリヤの贓物とは、アッシリヤの王の前に攜へられん。神は我等と偕にす。異邦人よ、此を知りて従へ、地の極までも之を聴け、権力ある者よ、従へ、復勢を張らば、復敗られん。謀を設けば、主は之を毀たん。言を出さば、必成らざらん。神は我等と偕にすればなり。
次に小聯祷。
高聲、「蓋我が神よ、爾は聖なり」。
高聲の後に聖三祝文
提綱、第一調、主我に謂へり、爾は我の子、我今日爾を生めり。句、我に求めよ、我諸民を與へて爾の業と為し、地の極を與へて爾の領と為さん。
使徒の誦読はエウレイ書(303端)。
昔屡多方を以て預言者に藉りて云云 終爾の年は終らざらんと。「アリルイヤ」、
第五調、主我が主に謂へり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄れ。句、主はシオンより爾が能力の杖を遣さん。句、我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず。
福音經の誦読はルカ(5端)。
彼の日ケサリアウグストより詔出でて云云 終神を讃榮讃美して返れり。(本日の順序の提綱、使徒及び福音の誦読は、ハリストスの降誕及び神現祭の前日には之を誦せず)。
次ぎて序を逐ひて大ワシリイの聖體禮儀を行ふ。「常に福にして」に代へて、「恩寵を満ち被むる者よ、凡の造物」を歌ふ。領聖詞は一、「天より主を讃め揚げよ」、「アリルイヤ」。三次。
聖体禮儀の發放詞の後、幇堂者燭臺に燈を點じて、之を堂中に置く。両詠隊進みて共に立ち、高聲を以て祭日の讃詞、「ハリストス我が神よ、爾の降誕」を第四調に依りて歌ひ、光栄、今も、小讃詞、「今童貞女は永在の主を生む」を第三調に依りて歌ふ。畢りて後皇帝、聖「シノド」、及び主教等の萬寿詞を歌ふ。其後食堂に入りて油を加へたる植物性の煮物を食す、魚類を用いず。(此は修通院の例なり、但し俗人の食も亦此の品質の物たるべし)
【注意】知るべし、降誕祭の前日若し「スボタ」或は主日に當らば、齋なし、(齋なしとは此の日に二食を許すを云ふ、即聖体禮儀の後及び晩課の後なり、下に示すが如し。)王の時課の諸讃詞を諸誦読と共に「スボタ」及び主日に歌誦せず、即王の時課は預め序に依りて金曜日に歌誦す、前に示ししが如し。其時には「我信ず一の神」を誦す、又第三十三聖詠「我何の時にも主を讃め揚げん」、及び發放詞。聖体禮儀を其日に行はず、唯晩課を定刻に歌誦す。「スボタ」及び主日には、定刻に於て金口の聖体禮儀を行ふ。發放の後に餅一片を食して晩課の時を侯つ。時至りて晩課を誦すること左の如し。若し「スボタ」の晩ならば、第一の「カフィズマ」の全分を誦す、若し主日の晩ならば、此の「カフィズマ」の第一段のみを誦す。「主よ、爾によぶ」に八句を立て、第二調に依りて「来りて、主の前に喜びて」及び其他の讃頌を歌ふ、光榮、今も、「アウグストが地に獨権」。福音經捧持の聖入。「穏なる光」。本日の提綱。若し「スボタ」の晩ならば、「主は王たり」の提綱を歌ふ。序に依りて喩言を読む。畢りて後聖三祝文を歌はず、即小聯祷を誦す。高聲の後、提綱、第一調。「主我に謂へり、爾は我の子」、句、「我に求めよ」を誦す。使徒の誦読はガラティヤ書207端、「兄弟よ、我人の情に循ひて言ふ」。「アリルイヤ」、第五調、「主我が主に謂へり」、句、「主はシオンより」、句、「我黎明の前に」。福音經の誦読はマトフェイ53端、「主は左の譬を言へり、天国は芥種、人取りて其田に播きたる」。其後重聯祷、「我等霊を全うして曰はん」。次ぎて「主よ、我等を守り、罪なくして此の晩を」。増聯祷「我等主の前に吾が晩の祷を増し加へん」。高聲の後輔祭誦す、睿智。詠隊、祝讃せよ。其他常の如し、及び發放詞。發放の後、燭台に燈を點じて堂中に置き、両詠隊共に立ちて、祭日の讃詞、光榮、今も、小讃詞を歌ふ。畢りて後食堂に入りて食に就く、但し魚類を用いず、即油を加へたる植物性の物及び茹でて蜜或は砂糖を和したる麦又は米を食す。
晩堂大課
知るべし、主の降誕祭何の日に當るに論なく、晩堂大課を行ふこと左の如し。
定刻に及びて大鐘を撞き、次ぎて連鐘を鳴らす。司祭は輔祭と偕に祭服を著、誦し始むること主の祭日の常例の如し。輔祭曰く、君よ、祝讃せよ。司祭、「我等の神は崇め讃めらる」、誦經、「アミン」、「我等の神よ、光榮は爾に帰す」。「天の王」。聖三祝文。其他晩堂大課の式の如し。此の時司祭爐儀を行ふ、「神は我等と偕にす」に至りて、之を歌ふ。常例の諸讃詞、「ハリストス神よ、我が目を明にして」に代へて、祭日の讃詞を誦し、「主よ、我等を憐めよ、我等を憐めよ」に代へて、祭日の小讃詞を誦す。
「至高に光榮神に帰し」を誦し畢りて、前院に出でて、「リティヤ」を歌ふ。
「リティヤ」に讃頌、第一調。(修士イオアンの作)。
天地は今日諸預言者と偕に楽しむべし、諸天使と衆人とは属神゜に祝ふべし、蓋神は童貞女より生れて、肉體を以て幽闇と蔭とに坐する者に現れ給へり。洞及び芻槽は彼を受け、牧者は奇蹟を傳へ、東方の博士はワィフレエムに禮物を攜ふ。我等も不當の口を以て天使の如く讃歌を彼に奉らん、至高きには光榮神に帰し、地には平安降れり、蓋諸民の期望は来り、来りて我等を敵の奴隷より救ひ給へり。
今日ハリストス生れ給ひしに、天と地とは合せられたり、今日神は地に降り、人は天に升れり、本性の見るべからざる者は、今日人の為に肉體にて見らる。故に我等も彼を讃栄してよばん、至高きには光榮神に帰し、地には平安降れり、蓋爾の降臨は之を賜へり。我が救世主よ、光榮は爾に帰す。
至高きには光榮神に帰すと、今日我ワィフレエムに於て無形の者が平安を地に賜ひし主に歌ふを聞く。今童貞女は天より廣し、蓋幽暗に在る者に光を輝かし、謙卑の者を高くして、天使の如く歌はしむ、至高きに光榮は神に帰す。
イイススは像と肖とに形られたる者が犯罪に縁りて朽ちたるを見て、天を側けて下り、性を易へずして、童貞女の腹に入り給へり、其内に於て、朽ちたるアダムを新にして、よばしめん為なり、我が贖罪主及び神よ、光榮は爾の顕見に帰すと。
光榮、第五調。(修士イオアンの作)。
ペルシヤの王たる博士は明に天の王の地に生れしを知り、光れる星に導かれてワィフレエムに至り、精選の禮物、黄金乳香没薬を獻げて、伏して拝めり、洞の中に無原なる赤子の臥し給ふを見たればなり。
今も、第六調。(ゲルマンの作)。
今日ワィフレエムに生れし主救世者の為に衆天使は天に在りて楽しみ、人々は歓び、萬物は祝ふ、蓋凡の偶像の迷は熄みて、ハリストスは世々に王となり給へり。
挿句に自調の讃頌、第二調。(ゲルマンの作)。
今日至大至榮なる奇蹟は行はれたり、童貞女は生みて胎は損はれず、言は身を取りて父を離れず。諸天使は牧者と偕に讃榮し、我等も彼等と偕に<よ>ぶ、至高きには光榮神に帰し、地には平安降れり。
第三調
句、我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず。
今日童貞女は萬有の造成主を生む。エデムは洞を奉り、星は黒暗に在る者に日たるハリストスを示し、博士は信に照され、禮物を獻じて伏拝し、牧者は奇蹟を見、諸天使は讃詠して曰ふ、至高きには光榮神に帰す。
同調
句、主我が主に謂へり、爾我が右に坐せよ。(アナトリイの作)。
主イイススがイウデヤのワィフレエムに生れし時、東より博士来りて、人體を取りし神に伏拝し、其寶盒を啓きて、熱心に貴き禮物を獻じたり、其世世の王たるに由りては錬金を、萬有の神たるに由りては乳香を、不死の三日の死者たるに由りては没薬を。萬民来りて、我等の霊を救はん為に生れ給ひし主に伏拝せん。
光祭、第四調。(修士イオアンの作)。
イエルサリムよ、楽しめ、シオンを愛する者よ、皆祝へ。今日アダムの定罪の久しき縲絏は釋かれ、楽園は我等の為に啓かれ、蛇は虚しくせられたり、蓋其先に誘ひし者が今造物主の母と為りしを見たり。嗚呼深い哉神の富と智慧と知識や、凡の肉身の為に死の縁由と為りし者、罪の器は、生神女に縁りて、全世界の救の首と為れり、蓋純全なる神は赤子として彼より生れ、其生るるを以て童貞を封印し、襁褓を以て罪の縛を解き、嬰児たるを以てエワの産痛の患を醫し給ふ。故に萬物は祝ひて楽しむべし、蓋ハリストスは之を新にし、且我等の霊を救はん為に来り給へり。
今も、同調。
ハリストス神よ、爾は洞に入り給へり、芻槽は爾を受け、牧者と博士とは伏拝せり。其時諸預言者の宣伝は應へり、天使の軍は奇としてよびて曰へり、獨人を愛する主よ、光榮は爾の寛容に帰す。
次ぎて「主宰よ、今爾の言に循ひ」。聖三祝文。「天に在す」の後に、
讃詞、第四調。
ハリストス我が神よ、爾の降誕は世界に智慧の光を照せり、此れに由りて星に勤むる者は星に教へられて、爾義の日を拝み、爾上よりの東を覚れり。主よ、光榮は爾に帰す。三次
盤上の五餅等を祝福す。
詠隊、「願はくは主の名は崇め讃められて」、三次。第33聖詠、「我何の時にも主を讃め揚げん、終何の幸福にも缺くるなし」。次に祭日の誦読にマトフェイ福音の講義を読む。其後「至高きには光榮神に帰し」、及び常式に循ひて早課の六聖詠を誦す。
早課
「主は神なり」に祭日の讃詞、「ハリストス我が神よ、爾の降誕」、三次。
「カフィズマ」の第一の誦文の後に坐誦讃詞、第一調。
寛忍なる救世主よ、爾は我等の為に甘じて赤子と為りて、無智の者の芻槽に置かれたり。牧者は諸天使と偕に爾を歌ひてよべり、地に生れて、地上の者の性を神成せしハリストス我が神に光榮と讃美とは帰す。
光榮、今も、同上、并に誦読。
第二の誦文の後に坐誦讃詞、第三調。
生神女よ、爾は世の無き前より在す悟り難き主、無形の父と同永在の者、聖三者の一位の混合せざる神性の受けし肉體を胎内に宿せり。讃美たる者よ、爾の恩寵は世界に輝けり、故に我等常によぶ、潔き童貞女母よ、慶べよ。
光榮、今も、同上、并に誦読。
多燭詞の後に坐誦讃詞、第四調。
信者よ、来りて、ハリストスの生れし處を見ん、東の王たる博士と偕に星の導く所に従はん。彼處に諸天使は常に彼を歌頌し、牧者は笛を吹きて、宜しきに合ふ歌を歌ひて云ふ、至高きに光榮は今日童貞生神女よりイウデヤのワィフレエムに洞の中に生れ給ひし主に帰す。
光榮、今も、同上。
讃歌
右、生命を賜ふハリストスよ、我等爾今我等の為に婚姻を識らざる至浄なる童貞女マリヤより身にて生れ給ひし主を讃揚す。
次ぎて同詠隊又歌ふ。
右、全地よ、神の歓びて呼び、
左、其名の光榮を歌ひ、
右、光榮と讃美とを彼に帰せよ。
左、其悉くの奇蹟を傳へよ。 神に謂ふべし、爾は其行事に於て何ぞ畏るべき。 諸天は楽しむべし、地は祝ふべし。 我等の神に歌ひ、其名に歌へ。 其所為は光榮なり、美麗なり。 彼は其民に救を遣せり。 其名は聖にして畏るべし。 神はシオン即極めて美しき處より顕る。 我等の神は天に在り、地に在り、凡そ欲する所を行ふ。 主よ、我永く爾の慈憐を歌はん。 彼我を呼びて云はん、爾は我が父なり、我彼を長子となして、 地の諸王より高くせん。 列王彼に伏拝せん。 何の神か我が神の如く大なる、爾は奇迹を行ふ神なり。 爾が有能の臂にて爾の諸敵を散らせり。 我黎明の前に腹より爾を生めり、 主は誓ひて悔いず、 爾メルヒセデクの班に循ひて司祭と為りて世々に迄らん。 主我に謂へり、爾は我の子なり、 我今日爾を生めり、 我に求めよ、我諸民を與へて爾の業と為し、 地の極を與へて爾の領と為さん。 書巻の中に我の事を記せり。 神よ、爾の寶座は世々に在り、 爾の国の権柄は正直の権柄なり。 故に神よ、爾の神は爾に歓の膏を傅けたり、 爾萬民を継がんとすればなり。 主は世々に崇め讃めらる、「アミン」、「アミン」。
光榮、今も、「アリルイヤ」、三次。
品第詞、第四調の第一倡和詞。
提綱、第四調。
我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず。句、主我が主に謂へり、爾我が右に坐して、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄れ。
凡そ呼吸ある者は主を讃め揚げよ。句、神を其聖所に讃め揚げよ云々
福音經はマトフェイ二端。
イイススハリストスの生るること左の如し云々
第50聖詠の後、「生神女の祈祷に依りて」に代へて歌ふこと左の如し、
光榮は父と子と聖神゜に帰す。萬有は今日歓喜に満てらる、ハリストスは童貞女より生れ給へり。
今も何時も世々に、「アミン」。萬有は今日歓喜に満てらる、ハリストスはワィフレエムに生れ給へり。
次ぎて「神よ、爾の大なる憐に依りて」。讃頌、第六調。
至高きには光榮神に帰し、地には平安降り、今日ワィフレエムは常に父と偕に坐する者を受け、今日諸天使は生れし嬰児を神に適ふが如く讃榮す、至高きには光榮神に帰し、地には平安降り、人には恵臨めり。
規程二篇
両規程の「イルモス」各二次、讃詞共に十二句に。
第一の規程、コスマ師の作、其冠詞はハリストスは人と為りて、依然として神なり。第一調。
第一歌頌
イルモス、ハリストス生る、崇め讃めよ、ハリストス天よりす、迎へよ、ハリストス地に在り、上れよ、地挙りて主に歌へよ、人々よ、楽しみて讃め揚げよ、彼光榮を顕したればなり。
原神に像りて造られ、罪に由りて腐れ、全く朽壊に従ひて、最美しき神聖なる生命を失ひし者を、睿智なる造成主は改め造り給ふ、彼光榮を顕したればなり。
造物主は其手にて造りし人の亡ぶるを見て、天を傾けて降り、神聖なる神聖なる潔き童貞女より實に身を取りて、人の全性を活かし給ふ、彼光榮を顕したればなり。
睿智と言と能力、父の子及び光なるハリストス神は、天上又地上の有能者に奥密を顕さずして人と為りて、我等を新にし給へり、彼光榮を顕したればなり。
第二の規程、イオアン師の作、同調。
イルモス、昔主宰は海の波を涸らし、奇蹟にて民を拯へり、今甘じて童貞女より生れて、我等の為に天に通る路を開き給ふ。我等は彼、性に因りて父と人々とに等しき者を讃榮す。
聖にせられし腹、明に焚けざる棘にて預象せられし者は神言を生めり。彼は己に人の像を受けて、エワの難みたる腹を古の苦しき詛より解き給ふ。我等地上の者は彼を讃榮す。
爾日の先より在す言、罪を滅さん為に来り、卑しき洞に於て其慈憐に因りて襁褓に裹まれたる者を、星は明に博士に示ししに、彼等喜びて、之を人及び主として見たり。
共頌には第一の規程の「イルモス」、右列詠隊之を歌ふ。第二は、左列詠隊。
第三歌頌
イルモス、世の無き前に分離なく父より生れし子、末の日に種なく童貞女より身を受けしハリストス神に呼ばん、我等の角を高くせし主よ、爾は聖なり。
上よりの吹嘘に與りたる土のアダム、女の誘の為に朽壊に従ひし者は、ハリストスが女より生るるを見てよぶ、吾が為に我に似たる者と為りし主よ、爾は聖なり。
朽ち易くして低き合成に與りて、其受けたる賤しき身に神の性を合せ、人と為りて神たるを失はずして、我等の角を高くせしハリストス主よ、爾は聖なり。
ワィフレエム、イウダの諸侯の王城よ、楽しめ、蓋イズライリの牧者、ヘルワィムの肩に在る主ハリストス、顕に爾より出でて我等の角を高くせし者は萬衆の王と為れり。
又
イルモス、見ざる所なき恩主よ、爾が諸僕の歌を聆きて、敵の高ぶれる傲を卑くせよ、福たる主よ、歌ふ者を罪より上に挙げて、彼等を信の基に揺撼なく固め給へ。
笛を吹く會は至りて潔き聘女の智慧に超ゆる至福なる産と、種なく人體を取りしハリストス王を歌ふ無形の軍とを見る恩を獲て、常ならず驚きたり。
天の高きに王たる言は、其慈憐を以て我等の為に聘女ならぬ少女に由りて来り、始より形なき者にして、季の日に於て肉體を衣給へり、陥りし初造の者を己に就かしめん為なり。
應答歌、第八調。
天は星を以て博士を召して、爾芻槽に臥し給ふ嬰児に異邦民の初物を獻れり。彼等を驚かしし者は権柄と寶座とに非ずして、至極の貧窮なり、蓋何物か洞より賤しき、何物か襁褓より卑き、是等の内に爾の神性の富は輝けり。主よ、光榮は爾に帰す。
第四歌頌
イルモス、イエッセイの根より生ぜし枝及び其花なる讃美たるハリストスよ、爾は童貞女より出で給へり。形なき者且神よ、爾は夫に適かざる者より身を取りて、樹蔭繁き山より来給へり。主よ、光榮は爾の力に帰す。
昔イアコフの預言して、萬民の俟つ所の者と名づけしハリストスよ、爾はイウダの族より輝き出で、来りて、ダマスクの権とサマリヤの虜物とを奪ひ、迷に代へて、神に適ふ教を立て給へり。主よ、光栄は爾の力に帰す。
主宰よ、爾はイアコフより出づる星として光り、古の預言者ワラアムの言を守りて星を学ぶ智者、異邦民の初物として爾に導かれたる者を悦に充てて、明に彼等を受け給へり。主よ、光榮は爾の力に帰す。
ハリストスよ、爾は童貞女の腹に降りしこと、雨が羊の毛に降るが如く、點滴が地に墜つるが如し。救世主よ、エフィオピヤとファルシス、アラワィヤの諸島とミディヤのサワ、全地に権を執る者は爾に俯伏せり。主よ、光榮は爾の力に帰す。
又
イルモス、昔預言者アウワクムは言ひ難く預象を見る恩を獲て、歌を以て人類の新にせらるるを預言せり、蓋新なる嬰、言は山たる童貞女より人々を新にせん為に出で給へり。
至上者よ、爾は甘じて童貞女より肉體を取りて、蛇の首の毒を潔めん為に人人とrしき者として来り、神たるに因りて衆人を暗き門より生を施す光に導き給ふ。
古より朽壊に沈みたる諸民は兇敵の害を脱れしに因りて、手を拍ち、讃歌を以て、惟一のハリストスを仁慈に因りて我等に来りし恩主として崇め讃めよ。
イエッセイの根より生ひ出でし童貞女よ、爾は人性の法に超えて、世の無き先より在す父の言を生めり、蓋彼親ら奇異なる謙卑を以て爾の封印せし胎を通らんことを嘉し給へり。
第五歌頌
イルモス、和平の神、仁慈の父よ、爾我等に和平を賜ふ爾の大なる議事の使者を遣し給へり。故に我等神を知る光に導かれて、夜過ぎて朝に爾人を愛する主を崇め讃む。
ハリストスよ、爾はケサリの命に従ひて、僕の籍に登りて、我等敵と罪との僕たる者を自由にし、全く我等の如く貧しくなりて、此の合一と體合とを以て塵に属する者を神成し給へり。
視よ、古に預言せし如く、童貞女は孕みて、人と為りし神を生みて、童貞女たるを失はず。我等罪なる者は彼に依りて神と和睦し、信を以て眞の生神女を讃め歌はん。
又
イルモス、ハリストスよ、祈る、我等今昧き迷の行の夜より醒めて、爾を恩主として讃め歌ふ者に来りて、我等に潔浄と、光榮に至らしむる便宜の道とを與へ給へ。
主宰は肉體に現るるを以て我等が彼に於ける兇暴の仇を全く絶ちて、霊を滅す有権者の力を敗り、世界を無形の者と合せ、造物の為に父を邇づくべき者と為し給へり。
昔黒暗に在りし民は遂に上の光のW煌を見たり。子は異邦人を嗣業として神に至らしめ、罪の極めて熾なりし處に言ひ難き恩寵を予へ給ふ。
第六歌頌
イルモス、海の猛獣はイオナを受けしまま産児の如く腹より出せり。童貞女に入りて身を受けし言は其傷なきを守りて通れり、蓋自ら壊に従はず、生みし者をもそこなはずして守り給へり。
父が黎明の前に腹より生み給ふハリストス吾が神は人體を以て来り、至浄なる天軍を司る主は家畜の芻槽に置かれ、襁褓に裹まるれども諸罪の重なれる縲絏を解き給ふ。
アダムの合成より新なる嬰児は生れ、子は信者に賜はりたり。彼は来世の父及び宰にして、大なる議事の使者と稱へらる、彼は大能の神にして、萬物を其権に保ち給ふ主なり。
又
イルモス、イオナは海の深處に居て、神が来りて、暴風を鎮めんことを祈れり。我は苦しむる者の矢に刺されて、爾悪を滅す主ハリストスに祈りて、速に我怠れる者に来らんことを求む。
太初に神と共に在りし神言は古より弱のたる我等の性を守らんと欲して、今親ら降りて、新に之と體合し、復之を諸慾より自由なる者と為して、之を固め給ふ。
光に居る主、人々の救の為に今卑くなりて、芻糟に臥すを甘ずる者は、罪悪の黒暗に沈みたる我等の為、深く陥りし者の諸子を起さん為に、アウラアムの裔より来り給へり。
小讃詞、第三調。
今童貞女は永在の主を生み、地は載せ難き者に洞を獻ず、天の使は牧者と偕に讃め歌ひ、博士は星に従ひて旅す、蓋我等の為に永久の神は嬰児として生れ給へり。
同讃詞
ワィフレエムはエデムを啓けり、来りて観るべし、我等隠なる處に富を獲たり、来りて、洞の内に楽園の福を受けん。彼處に灌がれずして赦を生ずる根は露れ、彼處に掘らざる井は出でたり、昔ダワィドは是より飲まんことを渇望せり、彼處に童貞女は赤子を生みて、アダムとダワィドとの渇を止めたり。故に我等彼處に往かん、永久の神は嬰児として此に生れ給へり。
第七歌頌
イルモス、偕に敬虔に養はれし少者は、不虔の命を顧みずして、火の嚇を恐れず、乃焔の中に立ちて歌へり、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
笛を吹く牧者は奇妙なる光の顕見に遇へり、蓋主の光榮は彼等を照し、天使はよびて曰へり、讃め歌へ、ハリストス生れたればなり。先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
天使の言に従ひて倏(たちまち)天軍はよべり。至高きには光榮神に帰し、地には平安降り、人には恵臨めり、ハリストスは出でて光る。先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
牧者曰へり、此の言は何ぞや、往きて、成りし事、神聖なるハリストスを観ん、乃ワィフレエムに至り、伏拝して、生みし者と與に歌へり、先祖の神よ、爾は崇め讃めらる。
又
イルモス、全能者を愛する愛に満たされし少者は烈しく怒れる苛虐者の神に戻る悪言を侮りしに、盛なる炎は彼等に、爾は世々に崇め讃めらると、主宰によぶ者に服へり。
七倍熱くせられたる烈しく燃ゆる炎は役者を甚しく焼き、少者を拯ひて、之に榮冠を冠らしむ、敬虔の為に豊に露を賜ふ主の命に因りてなり。
救主ハリストスよ、爾は言ひ難く肉體を衣て、人々の敵を辱しめたり、蓋我等嘗て神たる榮福を望みしに因りて、高きより黒暗の淵に陥りしに、今爾は我が像を受けて、我等に此の榮福を攜へ給へり。
恩を施す主よ、爾は甘じて肉體を受けて、己の全能を以て、壊乱せし世界の禁め難く傲り、耻なく狂へる罪を滅して、其先に誘ひし者を今網より救ひ給ふ。
第八歌頌
イルモス、露を出す爐は天然に超ゆる奇蹟の象を顕せり、蓋受けし所の少者を焚かず、神性の火が入りし所の童貞女の腹を焚かざる如し。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて、萬世に讃め揚げよ。
ワワィロンの女は虜にせられしダワィドの子をシオンより牽きて己に就かしめ、自ら己の子たる博士を遣はし、献物を齎して、神を己の内に受けしダワィドの女に伏拝せしむ。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて、萬世に讃め揚げよ。
悲は楽器を遠ざけたり、蓋シオンの諸子は異邦の地に在りて歌はざりき、ワィフレエムに出でて光れるハリストスはワワィロンの悉くの迷謬と音楽の調和とを解き給へり。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて、萬世に讃め揚げよ。
ワワィロンはシオンの国の獲物と掠めたる富とを取れり、ハリストスは導く星を以て其寶と星学者たる王とをシオンに就かしめ給ふ。故に我等歌ひて呼ばん、悉くの造物は主を崇めて、萬世に讃め揚げよ。
又
イルモス、焚かれずして火に圍まれたる旧約の少者は、天然に超えて産む所の封印せられたる少女の腹を預象す、奇跡を行ふ惟一の恩寵は両の事を行ひて、人々に勧めて歌はしむ。
悉くの造物は、迷謬に因りて神として尊ばるる害を免れて、少者の如く戦きて、己を卑うせし神言を常に歌ひ、智慧を以て造られたれども、朽つる者として、恐れて不當なる讃美を彼に捧ぐ。
萬民の再興者よ、爾は迷へる人の性を荒れたる丘より花の發きたる草場に帰さん為に来りて、己の慮を以て、殺人者の強迫の主権を滅さん為に、人及び神と現れ給へり。
第九歌頌に「ヘルワィムより尊く」を歌はずして、祭日の附唱を歌ふこと左の如し。
我が霊よ、天軍より尊貴光榮なる童貞女、至浄なる生神女を讃め揚げよ。
第九歌頌
イルモス、我奇異にして至榮なる秘密を瞻る、洞は天と為り、童貞女はヘルワィムの寶座と為り、芻槽は容れ難きハリストス神の臥し給ふ置き所と為れり、我等歌ひて、彼を崇め讃む。
左列詠隊も亦右の附唱及び「イルモス」を歌ふ。
以下の六附唱は讃詞の前に歌ふこと各1次。
我が霊よ、童貞女より身にて生れし神を讃め揚げよ。
我が霊よ、洞に生れし王を讃め揚げよ。
博士は、新に顕れて著しく天に光れる奇異なる新星の常ならぬ運行を観て、ハリストス王の我等の救の為に地上にワィフレエムに生れしを悟れり。
我が霊よ、博士に伏拝せられし神を讃め揚げよ。
我が霊よ、星に藉りて博士に傳へられし主を讃め揚げよ。
星の顕しし新に生れたる幼き君は何處にか在る、我等之に伏拝せん為に来れりと、博士の言ひし時、イロドは心騒ぎて大く怒り、神の敵としてハリストスを殺さんことを謀れり。
我が霊よ、ハリストス王を生みし潔き童貞女、惟一の生神女を讃め揚げよ。
博士と牧者とはワィフレエムの城に生れしハリストスに伏拝せん為に来れり。
イロドは、博士を導きて禮物を攜へワィフレエムにハリストスに伏拝せしむる星の現れし時を問へり、唯彼等は星に依りて故土に送られて、無慙なる殺児者を辱しめたり。
次ぎて右列詠隊第二の規程の附唱を歌ふ。
今日童貞女は洞の中に主宰を生み給ふ。
イルモス、童貞女よ、畏るるが故に黙すことは危からずして宜しきに適へり、愛するが故に調の諧ひたる歌を作ることは易からず、求む、母よ、我等の熱心に循ひて、親ら我等に力を與へ給へ。
左列詠隊附唱を歌ふ。
今日主宰は赤子として母童貞女より生れ給ふ。
又右の「イルモス」、童貞女よ、畏るるが故に云々
以下の附唱を讃詞の前に歌ふ。
今日牧者は襁褓に裹まれて芻槽に臥し給ふ救世主を見る。
今日捫り難き主宰は赤子として麁き布に裹まる。
今日萬物は楽しみて喜ぶ、ハリストスが童貞少女より生まれ給ひしに因る。
鳴呼潔き母よ、我等明ならざる前兆と過ぎ去りし影とを見し者は今閉せる門より新に顕れたる言の眞實の光を仰ぎて、宜しきに合ひて爾の腹を崇め讃む。
天の軍は生れし救世主、君、主宰を世に傳ふ。
「光榮」に代へて歌ふ、
我が霊よ、三位にして分れざる神性の権柄を讃め揚げよ。
「今も」に代へて歌ふ、
我が霊よ、我等を詛より脱れしめし童貞女を讃め揚げよ。
ハリストスを愛する民は願ふ所を獲、神の臨み給ふを辱なうして、今生命を施す復新を俟つ。至浄なる童貞女よ、神の光榮に伏拝する恩寵を與へ給へ。
次ぎて両詠隊共に祭日の第一の附唱及び「イルモス」「我奇異にして至榮なる秘密」を歌ふ。
畢りて後第二の規程の附唱及び「イルモス」「童貞女よ、畏るるが故に」を歌ふ。終りて躬拝す。
光耀歌
我等の救世主、東の東は、上より我等に望みしに、幽暗と陰翳とに居る者は眞實を獲たり、蓋主は童貞女より生れ給へり。三次。
「凡そ呼吸ある者」に讃頌、四句を立て歌ふ。(イエルサリムの聖アンドレイの作)。
第四調
義人よ、楽しめ、諸天よ、喜べ、諸山よ、躍れ、ハリストス生れ給ひしに因る。童貞女はヘルワィムに似て坐して、身を取りし神言を其懐に抱き、牧者は生れし者を奇とし、博士は主宰に禮物を獻げ、天使は歌ひて言ふ、悟り難き主よ、光榮は爾に帰す。
救世主を生みし生神童貞女よ、爾はエワの初の詛を虚しくせり、蓋父の愛憐の母と為りて、身を取りし神言を懐に抱き給ふ。秘密は試を容さず、我等皆唯信を以て之を讃榮し、爾と偕によびて曰ふ、言ひ難き主よ、光榮は爾に帰す。
来りて、救世主の母、産の後にも仍童貞女と顕れし者を歌はん。王及び神の生ける邑よ、慶べ、ハリストスは此の内に居て、救を成し給へり。我等ガウリイルと偕に爾を讃美し、牧者と偕に讃榮してよぶ、生神女よ、爾より身を取りし者に我等を救はんことを祈り給へ。
父は許し、言は肉體と為り、童貞女は人と為りし神を生み給へり。星は示し、博士は伏拝し、牧者は奇とし、萬物は歓ぶ。
光榮、第六調。(ゲルマンの作)。
爾が地に降る時至りて、天下に初の登籍は行はれたり。其時爾は己の降誕を信ずる人々の名を記さんことを望み給へり、故に此くの如き命はケサリより下りき、蓋爾の降誕にて爾が永遠の国の最上の権は新にせられたり、之に因りて我等も資産の貢に代へて、爾神及び我が霊の救主に正数の神学の富を獻る。
今も、第二調。(修士イオアンの作)。
今日ハリストスはワィフレエムに童貞女より生る、今日始なき者は始を受け、言は身を取り給ふ。天軍は喜び、地は人々と偕に楽しみ、博士は主宰に禮物を捧げ、牧者は生れし者を奇とす。我等は絶えずよぶ、至高きには光榮神に帰し、地には平安降り、人には恵臨めり。
大詠頌。聖三祝文の後に祭日の讃詞。聯祷。發放詞。
第一時課に祭日の讃詞。「天に在す」の後に祭日の小讃詞。其他。最後の發放詞。
聖體禮儀
第一倡和詞、第百十聖詠、第二調。
第一句、主よ、我心を全うして爾を讃栄し、爾の悉くの奇迹を傳へん。
附唱、救世主よ、生神女の祈祷に因りて我等を救ひ給へ。
第二句、義者の集議の中、及び會の中に於て主の所為は大なり。附唱、救世主よ云云
第三句、凡そ之を愛する者の為に慕ふべし。救世主よ云々
第四句、其所為は光榮なり、美麗なり、其義は永く存す。救世主よ云々
両詠隊合聲、光榮、今も、救世主よ云々
第二倡和詞、第百十一聖詠、第二調。
第一句、神を畏れ、其誡を極めて愛する人は福なり。
附唱、童貞女より生れし神の子よ、我等爾に「アリルイヤ」を歌ふ者を救ひ給へ。
第二句、其裔は地に力あり、正直の者の族は祝福せられん。附唱、童貞女より生れし云々
第三句、富と財とは其家にあり、其義は永く存す。童貞女より生れし云々
第四句、正直の者の為に光は闇冥の中に出づ、彼は慈あり恵ありて義なる者なり。 童貞女より生れし云々
両詠隊合聲、光栄、今も、「神の獨生の子并に言よ」。
第三倡和詞、第百九聖詠、第四調。
第一句、主我が主に謂へり、爾我が右に坐せよ。
讃詞、ハリストス我が神よ、爾の降誕は世界に智慧の光を照せり、此れに由りて星に勤むる者は星に教へられて、爾義の日を拝み、爾上よりの東を覚れり。主よ、光栄は爾に帰す。
第二句、我が爾の敵を爾の足の台と為すに迄れ。讃詞、ハリストス我が神よ云々
第三句、主はシオンより爾が能力の杖を遣さん、爾は其敵の中に主たる可し。 ハリストス我が神よ云々
第四句、爾が能力の日に於て、爾の民は聖なる美麗を以て備へられたり。 ハリストス我が神よ云々
聖入の句、我黎明の前に腹より爾を生めり、主は誓ひて悔いず。爾メルヒセデクの班に循ひて司祭と為りて世々に迄らん。
最高聲を以て讃詞を歌ふ、「ハリストス我が神よ、爾の降誕は」。
光榮、今も、小讃詞、「今童貞女は、永在の主を生み」。
聖三詞に代へて歌ふ、
ハリストスに於て洗を受けし者はハリストスを衣たり、「アリルイヤ」。
提綱、第八調。
至上者よ、願はくは全地は爾に叩拝し、爾を歌ひ、爾の名に歌はん。句、全地よ、神に歓びて呼び、其名の光榮を歌ひ、光榮と讃美とを彼に帰せよ。
使徒の誦読はガラティヤ書二百九端。
兄弟よ、期満つるに至りて、神は其子を遣し云々「アリルイヤ」、第一調、諸天は神の光榮を傳へ、穹蒼は其手の作為を誥ぐ。句、日は日に言を宣べ、夜は夜に智を施す。
福音經の誦読はマトフェイ三端。
イイススはイロド王の時イウデヤのワィフレエムに生れしに云々 領聖詞、主は其民に救を遣せり、「アリルイヤ」。三次。
【注意】 知るべし、主の降誕祭若し水曜日或は金曜日に遇ふとも、俗人は肉食し、修道士は乾酪及び鶏卵を食ふ。本祭日より神現祭の前日に至るまでの間は都て此くの如し。