ОСМОГЛАСИЯ

八調で歌う

宮廷オビホードについて


【解説】

どこの正教会でも伝統的に、トロパリやスティヒラには8つの調が指定されている。各調にはさまざまなメロディの部品(ポペフキ)があって、、祈祷書のテキストを見ながら、部品を組み合わせて微調整しながら音楽付けしていく。

八調のメロディは時代、地域によってさまざまだが、今ロシアや日本で一般的に歌われているメロディは19世紀ロシア宮廷の教会音楽長だったリヴォフとバフメテフによって、キエフの八調をもとに少年と男声の四声和声的合唱として編纂されたもので、オビホードと通称される。伝統的な八調に比べる極端に単純化されて、メロディの部品も各調3つか4つのパターンに縮小されており、音楽性や歌詞とのバランスの面で批判はあるものの、今でもロシア系教会で最も広く用いられている。

それ以前の八調の伝統、ズナメニイと総称される美しい単旋律聖歌は、各調に100以上ものポペフキ(メロディーのパターン)があり、合唱聖歌に比べてことばや奉神礼との一体感が優れていた。17世紀以降の西欧化と共産主義による凍結によって忘れられた存在になっていたが、ソ連崩壊後、研究が進み注目されていている。

日本でも、明治時代ニコライ大主教によって導入された聖歌は、当時ロシア帝国で歌われていたオビホードに則ったものだった。四声開離の合唱聖歌、さらにそこから適宜主旋律を取り出した「単音聖歌」の二本立てであった。

正教会聖歌は本来聞き覚え、聞き伝えで継承されるものだが、17世紀から始まる西洋音楽の影響によって楽譜も多く用いられるようになった。ニコライ大主教は、通常テキスト(祈祷文)のみを見て歌われるスティヒラやトロパリもすべて楽譜に書き起こし日本人の音楽レベルを鑑みて、スティヒラなどはさらに簡略化して楽譜に書きおこし、出版配布した。

4声の場合、19世紀ロシアでは少年と男声の編成が一般的だったために、「開離」によるアレンジ(ソプラノとアルトの幅が広く、全体に広いハーモニー)で歌われ、日本でも4声は伝統的に開離(ふつうハ長調の楽譜で書かれている)で歌われているが、ロシアでも女声の導入などによってその後改訂され、今はロシアでもアメリカでも大半の教会で、歌いやすい密集(狭いハーモニー)で歌われている。

19世紀末から20世紀初頭のロシアではほかにもさまざまなアレンジのオビホードが作られ(アルハンゲリスキーの、ソロヴィヨフの、フェオファンのなど)、なかでもスモレンスキー・カスタリスキーのオビホードは優れているといわれる。また地域や修道院によってもさまざまなバリエーションがある。

ここでは単音(単声)に加え、エカテリーナ加藤さんのアレンジ、ロシアやアメリカのアレンジを参考にして歌いやすい密集の基本パターンを紹介する。密集だと音域が狭く素人にも歌いやすいことに加え、主旋律だけの単音(単声)、二声、三声でも4声でもその場の状況で変化しやすい利点がある。ここで紹介するメロディ・パターン、アレンジの方法はあくまでも一例で、従来の開離でもかまわないし、音楽付けは無数にある。

調に合わせて歌う場合、テキストの文章の区切り、ことばのイントネーション、アクセントなどを考慮する。メロディがテキストの日本語に合っていること、テキストの内容に即していることが大切である。、メロディパターンを見ながら何度も歌ってみて、歌いやすいように、意味が伝わりやすいように工夫する。簡単なものであれば、あらかじめ書き写して、区切りのしるしを入れておくだけでも歌いやすい。

八調ポケットブック(単音のオビホードのメロディによるトロパリ、スティヒラ、イルモス、ポロキメン、アリルイヤ)は
      こちらから pdf378kb 

トロパリ 1調
2調
3調
4調
5調−15調−2 2種類あるが、どちらを用いてもよい
6調−16調−2 2種類あるが、どちらを用いてもよい
7調
8調
ティヒラ 1調
2調
3調
4調
5調 トロパリ5−2と共通
6調 トロパリ6−2と共通
7調
8調
イルモス 1調 工事中
2調
3調
4調
5調
6調
7調
8調