聖イリヤ

 8月2日は、紀元前9世紀頃にイスラエル北王国で活躍した預言者・イリヤの祭日です。

 ギレアデのテシベ出身のイリヤは、イスラエル北王国のアハウ王の治世に神様から召されて預言者となりました。「イリヤ」という名前は「主は神である」という意味を持っています。

 アハウ王は主を唯一の神と信じ主により頼むことよりも、人の知恵を優先しました。イスラエルと信仰を異にするフェニキアと同盟を結び、ツロの王女イエザワェリ(イゼベル)を王妃として迎え入れ、カナン土着の習慣を積極的に取り入れていきました。その習慣の中には偶像を拝むカナンのバアル信仰も含まれていました。イエザワェリは主・ヤーヴェの預言者を皆殺しにしようとさえしました。王たる者がイスラエルの神・主を離れたことに対し、イリヤは敢然と挑んでいったのです。

 イリヤはアハウ王の迫害を逃れ、ケリテ川のほとりに身を隠しました。この時、朝夕毎にイリヤのもとへからすがパンと肉を運びました。この頁に掲載した聖像の他、川辺に座るイリヤを中心に描き、端の方に小さくからすを描く構図もよく目にします。その女性の息子をよみがえらせる姿はエリセイを、ザレパテの地でやもめの女性にイリヤが水を求める姿を加えてイイススの姿を思い起こさせます(列王記上17章)。

 イリヤはアハウ王の前に進み出、バアルの預言者とアシラの預言者とをカルメル山に集めるように求めました。カルメル山上でイリヤは「ただ一人残った主・ヤーヴェの預言者」として「主・ヤーヴェが神かバアルが神か」の二者択一をイスラエルに求めると共に、バアルの預言者との対決に勝利しました(同18章)。

 怒ったイエザワェリはイリヤを殺そうとしましたが、イリヤはベエルシバを通ってホレブ山へ逃げました。イリヤはそこで大きな風や地震、火の中にではなく、「静かな細い声」で語る主と神秘的に出会いました。主はイリヤにエリセイを後継者とするよう命じられました(同19章)。

 イオルダンの辺でエリセイと共に語っていた時、火の車と火の馬が二人を隔て、イリヤはつむじ風に乗って天に昇りました。預言者マラヒヤ(マラキ)は「主の大いなる恐るべき日が来る前に」主はイリヤを遣わされる、と預言しました。