§質問§
正教会では降誕祭は1月7日で祝われると教えられましたが、教会の予定表では12
月25日ですね、どうしてですか
<答え>
ユリウス暦とグレゴリウス暦
正教会では、年間の奉神礼を、ユリウス暦に基づいて決定し、やむを得ず今日社会で一般的に使われているグレコリウス暦上に表示します。ユリウス暦は古代ローマ時代にジュリアス(ユリウス)・シーザーの命令で作られた太陽暦で、カトリック教会が、教皇グレコリウス13世の命令でユリウス暦を改訂制定したより正確なグレコリウス暦を採用する(1582)まで、全教会が用いていました。
正教会が降誕祭を1月7日に祝う理由
正教会はかつて一致してユリウス暦を採用してきましたが、近年では一部の教会(ギリシャの新暦派、アメリカ正教会<O.C.A>など)ではグレコリウス暦を採用しています。4年毎に閏年を設けるユリウス暦と、100で割り切れるが400では割り切れない年には閏年を設けないグレコリウス暦では、四百年間に三日ずれが生じ、例えば、主の降誕祭は古代教会で当時のユリウス暦上の12月25日と定められましたが、グレコリウス暦とのずれによって、19世紀では1月6日、今世紀と来世紀では7日、22世紀では8日となり大変ややこしいからです。グレコリウス暦に基づけば、古代と同じ12月25日で固定できます。(注意:他教派との復活祭の日付のずれは、ユリウス暦も絡んだいますがまた複雑な別の理由です)
ただ、大半の教会はグレコリウス暦の採用を、正教会の聖伝を破り、カトリック教会主導の「教会一致」にくみするものとして留保、ないし批判しています。
日本教会が降誕祭だけ新暦を採用する理由
日本正教会も原則的にはユリウス暦を使用します。ただし、降誕祭に限りグレコリウス暦を採用し他教派と同じ12月25日とします。
キリスト教は日本では圧倒的に少数派ですが、奇妙なことに「クリスマス」だけは、商業主義で歪められた形においてですが年中行事として定着しています。そのため、以前は日本教会も、1月7日に降誕祭を行っていましたが、12月24日、25日に教会を訪れる一般の方々が余りに多いため、教会暦の一貫性を破ることを承知の上で、宣教的な特例措置として、降誕祭のみ12月25日と定めました。
我が国はキリスト教圏と異なり、教会は伝統的な教会生活をひたすら守ってさえいればよいという環境にはありません。できるだけ多くの人々に「福音」を伝え、教会に招き寄せねばなりません。「クリスマス」に浮かれる「ミーハー」は相手にせず、という独尊は許されません。今後見直しはなされるかもしれませんが、現在のところ、敢えて変則を許してきた主教さまたちの真意を正しく理解し、宣教に生かさねばなりません。
元来、降誕祭も冬至に行われていた古代ローマの太陽神崇拝の祭りを、教会が取り込み、偶像化された太陽ではなく、真の太陽・ハリストスく「義の日」<降誕祭トロパリ>)に目を向けさせる、「伝道的な」祝祭だったことも忘れてはならないでしょう。